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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 阪神高速道路における建設事業の概要

1 はじめに

阪神高速道路のネットワークは,総延長258.1kmに及び,関西の大動脈として,1日平均64万台のお客さまにご利用いただいている(図-1)。
 
しかし,大阪都心部,大阪~神戸間では,都心部に向かう交通と,都心部を目的地としない通過交通が混在するため,慢性的な渋滞が発生しており,物流,観光,交流など,経済活動が大きく阻害されている。
 
また,2025年に大阪・関西万博の開催が決定しており,ミッシングリンクの解消に向けた早期の道路ネットワーク整備が期待されている。
 
それらの課題を解決すべく,最近では,2020年1月に「西船場JCT信濃橋渡り線」が開通し,2020年3月には「大和川線」が全線開通した。
 
また,現在事業中の建設中路線としては,大阪湾岸道路を構成する「大阪湾岸道路西伸部」,大阪都市再生環状道路を構成する「淀川左岸線2期」および「淀川左岸線延伸部」の3路線がある。
 
今般,阪神高速道路における建設事業の概要を説明するものとする。
 
なお,「大阪湾岸道路」および「大阪都市再生環状道路」の説明は,以下のとおりである。

◆大阪湾岸道路

神戸淡路鳴門自動車道(垂水JCT)から関西国際空港(りんくうJCT)までを結ぶ約80kmの自動車専用道路である。
大阪湾沿岸地域の既存幹線道路の交通負荷を軽減し,都市環境の改善を図るとともに,大阪湾沿岸諸都市を有機的に連絡して,都市の活力を向上させることにつながる道路である。

◆大阪都市再生環状道路

大和川線,湾岸線,淀川左岸線および近畿自動車道などから構成する新たな環状道路であり,大阪都心部の慢性的な渋滞緩和や沿道環境の改善とともに,新たな拠点エリアを誘引する都市活性につながる道路である。

阪神高速道路ネットワーク図

【図-1 阪神高速道路ネットワーク図】



 

2 最近の開通路線

(1)大和川線

大和川線は,大阪都市再生環状道路を構成し,阪神高速4号湾岸線と阪神高速14号松原線を接続する延長9.7kmの路線で,このうち未開通区間の7.7kmを大阪府・堺市とともに整備を進め,2020年3月29日に全線開通した(写真-1)。
 
当該路線は,土工2.0km,高架橋0.9km,トンネル6.8kmで構成し,トンネル区間のうち3.9kmは地下鉄御堂筋線と交差する制約や地上施設への影響等を考慮してシールド工法で整備している。
 
当該路線の開通により,大阪都心部の通過を必要としないルートが形成されたことで,走行距離や所要時間の短縮が図られ利便性が向上するとともに,都心部の交通負荷の軽減に寄与している(図-2)。

開通後の大和川線

【写真-1 開通後の大和川線】


開通後の大和川線

【図-2 大和川線開通に伴う時間短縮効果等】


(2)西船場JCT信濃橋渡り線

西船場JCT信濃橋渡り線は,阪神高速16号大阪港線東行きと阪神高速1号環状線北行を直結する渡り線で,両路線の増設車線も含めて,2020年1月29日に開通した。
 
従来は,大阪港線東行きから環状線北行きに乗り入れる際,環状線の南半分(約5.5km)を迂回する必要があったが,本渡り線の開通で直結したことにより,走行距離や所要時間の短縮が図られ,お客さまの利便性が向上した(図-3)。

西船場JCT信濃橋渡り線開通に伴う開通効果等

【図-3 西船場JCT信濃橋渡り線開通に伴う開通効果等】

西船場JCT信濃橋渡り線開通に伴う開通効果等



 

3 事業中の建設路線

(1)‌‌大阪湾岸道路西伸部(六甲アイランド北~駒栄)
1)路線概要

本路線は,前述の大阪湾岸道路の一部を構成し,開通済みの5号湾岸線六甲アイランド北からさらに西に延伸し,ポートアイランド,和田岬を橋梁で結び,駒栄地区にて既設の阪神高速31号神戸山手線へ接続する延長14.5kmの路線である(図-4)。
当該路線は,2016年度に公共事業として事業化し,2017年度に公共事業と有料道路事業との合併施行方式を導入,2018年度に港湾事業の参画を決定している。
 
また,本路線は,六甲アイランド~ポートアイランド間,ポートアイランド~和田岬間で,国際航路を跨ぐ形で計画されており,当該地の長大橋の架設においてさまざまな課題等へ対応していくため,有識者委員会を設立し検討を実施している。
その委員会にて長大橋の橋梁形式の選定等に関して一定の整理が行われたため,「災害時の道路機能確保」,「景観性」および「維持管理性」などの観点から橋梁形式の選定結果について,2019年12月に公表した(図-5)。

大阪湾岸道路西伸部の概要

【図-4 大阪湾岸道路西伸部の概要】


長大橋の橋梁形式(上図:新港・灘浜航路部,下図:神戸西航路部)

【図-5 長大橋の橋梁形式(上図:新港・灘浜航路部,下図:神戸西航路部)】


2)整備効果等

本路線の整備により,阪神臨海地域の交通負荷を軽減し,交通渋滞や沿道環境など交通課題の緩和を図るとともに,国際戦略港湾である阪神港の機能強化による物流の効率化,災害や事故などの緊急時の代替機能確保等を期待している。
 
特に現在,神戸市内を東西に結ぶ阪神高速3号神戸線においては慢性的な渋滞が発生しており,速達性・定時性に課題がある。大阪湾岸道路西伸部(六甲アイランド北~駒栄)の整備により阪神高速3号神戸線の交通分散が図られ,神戸港や大阪駅などの物流拠点への移動時間が短縮され物流の効率化も期待される(図-6)。

整備効果

【図-6 整備効果】


3)進捗状況

現在,当社では,六甲アイランド北から六甲ライナーを越える区間の橋梁上部工事および下部工事,並びに神戸山手線の接続部付近の開削トンネル工事を契約締結している。
なお,六甲アイランド地区については,現在準備工の段階で,駒栄地区の開削トンネル工事は掘削作業等を実施し,工事の進捗を図っている(写真-2)。

整備効果

【図-6 整備効果】


(2)淀川左岸線2期,淀川左岸線延伸部
1)路線概要

淀川左岸線2期および淀川左岸線延伸部(以下,両路線)は,前述の「大阪都市再生環状道路」の北側の一部を構成する道路である。両路線は沿道地域の環境に配慮し,トンネル構造を主体に計画している(図-7)。
 
淀川左岸線2期は,開通済みである阪神高速2号淀川左岸線(淀川左岸線1期)および阪神高速3号神戸線と海老江JCTで接続し,豊崎(国道423号新御堂筋)までの4.4kmを結ぶ路線である。
当該路線は1996年に都市計画決定がされ,2000年に当社の前身である阪神高速道路公団が事業着手,当社の民営化を経て2006年からは大阪市の街路事業と当社の有料道路事業との合併施行方式により事業を実施している。
当該路線の大部分は開削トンネル構造であり,河川堤防との一体構造とする計画となっている。
 
淀川左岸線延伸部は,淀川左岸線2期から延伸する8.7kmの路線であり,門真JCTで第二京阪道路および近畿自動車道と接続する。
2017年に事業化し,公共事業と有料道路事業との合併施行方式を導入している。
当該路線は,開削トンネル工法およびシールドトンネル工法により大部分をトンネル構造として構築し,一部区間については淀川左岸線2期と同様に河川堤防と一体構造となった計画としている。
当該路線の設計・施工に当たっては,河川堤防と道路構造物を一体とした場合の安全性や地下水流動の影響,近接シールドの併設影響等,建設に際しさまざまな技術的課題を解決する必要があるため,有識者委員会を設置し技術的検討を行いながら事業を進めている。

淀川左岸線2期,淀川左岸線延伸部の概要

【図-7 淀川左岸線2期,淀川左岸線延伸部の概要】



 

2)整備効果等

両路線の整備によって第二京阪道路と接続することで,大阪ベイエリア(阪神港・夢洲・咲洲地区)と名神高速道路などの主要な高速道路を結び,物流の効率化や周辺地域との連結強化による大阪・関西の経済・地域の活性化,災害時の避難・救援活動への活用等が期待される。
また,大阪都市圏内の交通集中についても,大阪都市再生環状道路が整備されることで,都心部に用事のない交通を外周に転換し,交通が円滑化されることが期待されている(図-8)。

淀川左岸線2期,淀川左岸線延伸部の開通により期待される整備効果

【図-8 淀川左岸線2期,淀川左岸線延伸部の開通により期待される整備効果】


3)進捗状況

淀川左岸線2期については,共同事業者の大阪市とともに事業を進めており,大阪市より当社が受託した海老江地区および豊崎地区の工事(開削トンネル,橋梁,換気所)については,開削トンネルの土留工や橋脚基礎工などを実施している(写真-3)。
 
淀川左岸線延伸部については,共同事業者である国および西日本高速道路株式会社とともに事業を進めており,トンネルの構造,施工技術などについて有識者委員会による審議も踏まえて設計検討を実施している。
また,豊崎地区では地中障害物撤去工や換気所工事などを進めている(写真-4)。

橋脚基礎工の状況(海老江JCT)

【写真-3 橋脚基礎工の状況(海老江JCT)】

地中障害物撤去工の状況

【写真-4 地中障害物撤去工の状況】



 

4 結びに

事業中の建設路線について,早期完成,供用を目指し,共同事業者とも協力しながら,事業推進に向けて引き続き取り組んでいく。

 
 
 

阪神高速道路株式会社

 
 
【出典】


積算資料2022年2月号
積算資料

最終更新日:2023-07-07

 

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