• 建設資材を探す
  • 電子カタログを探す
ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIM/CIM > 中国整備局におけるBIM/CIMの取り組み

はじめに

国土交通省では、デジタル技術を駆使して業務や働き方などの改革を目指す「インフラ分野のDX(デジタルトランスフォーメーション)」が動き出しました。
そのインフラ分野のDXの取り組みの一つがBIM/CIM(Building Information Modeling/Construction Information Mo deling)であり、令和5年度までに小規模なものを除く全ての公共事業におけるBIM/CIM原則適用に向けて、段階的に適用拡大しています。
 
中国地方整備局においてもBIM/CIM活用の取り組みも含めた「生産性向上」と「働き方改革」をより強力に推進するため、「中国地方整備局i-Construction推進本部」を改編した「中国地方整備局インフラDX推進本部」を令和3年10月12日に設置しました。
 
本稿では、これからの建設業の「生産性向上」に欠かせないBIM/CIMの活用について、中国地方整備局の取り組みを紹介します。

 
 

中国地方整備局のBIM/CIM活用状況

令和5年度までに小規模なものを除く全ての公共事業におけるBIM/CIM原則適用に向けて中国地方整備局においてもBIM/CIM活用業務および工事の活用拡大を進めています。
 
BIM/CIM活用の対象業務は、令和元年度が大規模構造物詳細設計、令和2年度は詳細設計に加え予備設計も原則適用としました。
 
BIM/CIM活用の対象工事は、詳細設計のBIM/CIM成果品がある工事について原則適用としました。
 
業務および工事のBIM/CIM活用の対象事業を拡大したことによってBIM/CIM活用が増えております(表-1)。
 
令和3年度からは大規模構造物以外の道路設計や河川構造物設計などの詳細設計もBIM/CIM原則適用とし、さらなる活用拡大に取り組んでいます。

BIM/CIM活用件数(令和元・2年度)

表-1 BIM/CIM活用件数(令和元・2年度)



 

国道2号大樋橋西高架橋(3次元情報活用モデル事業)の事例

集中的、継続的にBIM/CIMを活用し、3次元データの活用やICTなどの新技術の導入を加速化する『3次元情報活用モデル事業』の対象である国道2号大樋橋西高架橋の事例を紹介します。
 
国道2号大樋橋西高架橋工事(工事延長L=約640m)は国道2号の慢性的な交通渋滞の緩和を目的に国道2号の立体化を行う工事です。
また、本工事はECI方式で発注を行いました。

(1)ECI方式の活用

交通量の非常に多い交差点で行われる工事であり、かつ、道路占用物件の移設や交差点内の建築限界確保、既設水路および架空送電線との離隔確保、施工ヤードの用地制約など、設計与条件が多いため、早い段階から施工者の意見を聞きながら詳細設計を進めていくECI方式を採用しました。
 
ECI方式の活用により、設計段階から施工者の意見を反映した3次元モデルでの設計や施工計画の検討が行えたことにより、BIM/CIM成果が施工にスムーズに引き継ぐことができました。

(2)施工を見据えたBIM/CIMモデルの構築

設計者のモデル作成段階で施工者の意見(上部工のブロック分割(図-1)、付属物のモデル化(図-2)など)を取り入れたことにより、施工者が新たにモデル化する手間が省け、効率化が図れました。

上部工架設時のブロック割を考慮したモデル作成

図-1 上部工架設時のブロック割を考慮したモデル作成


付属物確認(検査路等)

図-2 付属物確認(検査路等)


(3)3Dモデルを活用したWeb工場検査を実施

CIM-LINKを活用してデータの重い3次元モデルを画面上に表示させ、遠隔臨場検査を実施しました(写真-1)。
工場での仮組検査はウエアラブルカメラなどを装着した受注者の担当者に測定箇所を指示して実施することができ、移動時間の短縮また、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策としても有効でした。

遠隔臨場による工事検査

写真-1 遠隔臨場による工事検査


(4)BIM/CIMを用いた施工計画

交通量の非常に多い場所で、かつ、限られた施工ヤードでの施工となるため、施工計画は十分に検討して計画する必要がありました。
 
そこで、設計段階から施工ステップや重機・仮設材の配置および安全対策などを3次元に時間軸を加えた4Dモデルで表現し、施工計画の共有を行いました(図-3)。
さらに施工段階では、設計段階で作成した4Dモデルを用いて、切廻し時の一般車両の通行を再現した走行シミュレーションやクレーン付近に監視員、出入り口に警備員のモデル配置を反映したクレーン仮設アニメーションをVRで確認することで警備員や仮設材の配置計画など、施工内容がより視覚的に表現され、従来では分かりにくい施工内容も理解することが可能となりました。

BIM/CIMを用いた施工計画

図-3 BIM/CIMを用いた施工計画


(5)関係者間での情報連携

3次元情報共有クラウドサービスCIM-LINKを導入し発注者・設計者・施工者でBIM/CIMモデルなどを共有し情報連携を行いました。
その結果、発注者・設計者・施工者の三者間で合意形成がスムーズに行え、問題の早期発見、対応を検討することができました。

 
 

BIM/CIM活用拡大に向けた人材育成

BIM/CIMの活用促進に向けて、発注者である中国地方整備局の職員に対しても、BIM/CIMに関する講習や3次元CADソフトを使った操作の実演などを実施し、3次元情報を利活用できる職員の育成に取り組んでいます(写真-2)。
 
さらに、中国地方整備局の職員に対して行った講習を地方自治体職員に対しても実施したところです。

BIM/CIM活用研修

写真-2 BIM/CIM活用研修



 

おわりに

令和5年度までに小規模を除く全ての公共工事についてBIM/CIMを原則活用する目標に向け、業務および工事のBIM/CIM活用が進んでおりますが、一方で3次元測量データの設計段階への活用や後工程を見据えた3次元データの詳細度の設定など、調査、設計、施工の各段階で作成している3次元データ活用の課題もあります。
 
そのため、中国地方整備局内に「BIM/CIM活用検討会」を設け、BIM/CIM活用の課題解決や効果的、効率的な有効活用の検討に取り組んでいきます。

 
 

国土交通省 中国地方整備局 企画部 技術管理課 建設専門官
村上 友章

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド_2022年


 
 

最終更新日:2023-07-14

 

同じカテゴリの新着記事

ピックアップ電子カタログ

最新の記事5件

カテゴリ一覧

話題の新商品