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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIM/CIM > 発注者が推進するダムCIM-立野ダム工事事務所の事例-

はじめに

当事務所は、i-Construction推進モデル事務所の一つとして、立野ダム本体建設事業を3次元情報活用モデル事業として取り組んでいるところである。
ダム事業の調査・測量・設計、施工、維持管理を通して、一元的にCIMモデルを共有・活用、発展させ、業務・工事の効率化・高度化を図るためにCIM活用の試行・検証を行っている。
 
ここで得られた知見やノウハウは、全国BIM/CIM担当者会議や整備局内のダムCIM分科会において共有することで、後発事業へ生かされる方針となっている。
 
本稿では、現在の立野ダム建設事業におけるCIMの取り組みについて報告するものである。

 
 

CIMの取り組み概要

当事務所におけるCIMの取り組みは、下記の3つを柱として、職員一人一人が問題意識を持ち、検討を行っている。
 
①総括CIM:阿蘇にふさわしい風景の追求
②施工CIM:地元企業にも着目した施工管理の合理化
③管理CIM:維持管理段階を見据えた管理手法の検討と体制づくり
 
今回は、このうち、今後の地元企業などへの展開を見据え、施工CIMに関する取り組みについて述べる。
 
 
基礎掘削
堤体基礎掘削工において、丁張設置の省力化を目指し、MGおよびMCを搭載したバックホウと、MGを搭載したブレーカを用いたICT土工を実施しており、従来工法であれば、丁張を1,000本近く設置して施工すべきところが、ICT土工により0本にでき、省力化が図られた。
 
また、掘削期間中の出来高・工程管理において、横断測量などの現場測量作業が不要となることによる省力化を目指し、3次元モデルを用いた出来高管理を実施した。
 
 
コンクリート数量算出への活用
コンクリート岩着部の施工数量算出は、凹凸の大きい地形から数量を求めるため、従来は2~5m程度の小間隔で横断測量を実施し、平均断面法にて数量を算出していたが、3次元地形モデルの活用により、横断測量が不要となり、試験的に実施した箇所では約60%の省力化が図られた。
 
 
遠隔臨場立会
法枠工の出来形管理において、UAV写真測量から得られる高密度な点群データを用いたPC上での出来形計測を行った。
点群データをモデル化し、法枠工の「法長」、「延長」、「吹付枠中心間隔」の出来形管理項目においてPC上で距離を計測し、現地測量作業の省力化を図るとともに、監督員検査においても、現地立会を行わず、机上確認での検査を実施し、その効果検証を行った。
 
また、基礎処理については現場で実施した検測などの動画を情報共有システムに登録することで、任意の時間に監督職員が確認を行うという手法の試行も行っており、高価な設備投資を行うことなく実施した。
 
これは地元Cクラスの施工業者が多くの投資をすることなく、気軽に取り組めるよう日常使いを念頭に試行した結果であり、i-Constructionモデル事務所の一つの目的である3次元データ活用の普及にあたる取り組みであると考えている。

岩着部の数量算出イメージ

図-1 岩着部の数量算出イメージ

遠隔立会イメージ

図-2 遠隔立会イメージ



 

今後の展開

立野ダム本体工事のように大手JVの施工会社においては、3次元データおよびCIMモデルを活用することにより、工事、数量算出、異工種間の調整、遠隔立会について、効率化・高度化が図られている。
一方、工事の多くは地元企業が受注することが多いことから、それほどの投資をしなくても、CIMに取り組めるように検討を進めているところである。
今後、当事務所が発注する工事などにおいて、地元企業が日常的に、効率化・高度化を図っていくための仕組みづくりが必要であるため、具体的な取り組みについて紹介する。
 
 
3次元データによる契約図書の取り組み
本事業においては、ICT活用工事により取得された点群データを活用するために、工事施工中および完成後の仮設工事用道路について、3次元データを作成し、本体工事と周辺工事(地元企業)との施工調整および工事契約図書の変更を行う取り組みを実施した。
従来の発注図面に加え、施工対象箇所および周辺の地形を3次元化し、発注データの一部として契約後ではあるが、提供した。
現在、受注した地元の施工業者と情報共有システムKOLC+)を活用し、受注時、施工途中、竣工時の各場面において、3次元データの活用方法や効果、地元企業による修正方法やデータの更新方法についてワークフローを整理するとともに、技術的課題を抽出し、改善策の検討を行っているところである。
 
 
施工管理の効率化、監督検査の合理化
施工管理の効率化、監督検査の合理化を目指し、施工管理に特化した情報共有システム(CIMPHONYPlus)を試行導入している。
想定している活用のメリットは、受発注者間で、特別なソフトウエアをインストールすることなく、①掘削形状などの「見える化」が可能となる、②掘削実績による断面確認、土量算出、出来高管理、出来形管理の作成が可能となる、③施工状況をVRへ出力し、遠隔立会が可能となる、④受発注者間で3次元モデルを共有し、そのモデルを活用し、設計変更などの協議が可能となる。
 
現在、工事受注者を交えた検討会を定期的に行っており、施工上の課題の解決策、施工調整、活用状況や効果について意見交換を実施し、メリット・デメリットの抽出、整理を行い、今後の活用方針について整理している。
 
 
情報共有による協議の省力化・省人化
現場で取得する点群データ、3次元モデルを受発注者間で情報共有システムを活用して共有することにより、協議時の見える化と職員のPCで気軽に3次元モデルを確認できる環境を構築し、協議の省力化、省人化を図っている。
また、情報共有システムの利用が、地元施工業者の負担とならないよう、事務所でシステム環境を構築・提供し、どのような効果があるのか、また、それぞれの活用場面を整理することで、今後、発注を予定している工事においても遠隔臨場機能や3Dモデル閲覧機能などの積極的な活用を推進していくことが可能となると考えている。

施工調整モデル

図-3 施工調整モデル

3次元モデルの共有イメージ(KOLC+)

図-4 3次元モデルの共有イメージ(KOLC+)
   出典:https://kolcx.com/feature/overview/



 

おわりに

本年度の取り組み成果による課題などを整理し、次年度以降の工事において、さらに地元企業にCIMが浸透していくようにさまざまな取り組みを行い、CIM活用を進める方針である。
 
さらに本事業は2年後には管理段階に移行することから、施工時の情報をどのように継承していくか、管理において必要なCIMモデルとは何か、どのようにすれば活用することができるのか、事務所としてのメリットは何か、といったユースケースの検討を進めている。
これらの取り組みについては、i-Constructionモデル事務所における成果として、ダム事業のみではなく、さまざまな工種において効率化・高度化を図るための基礎資料となるよう、取りまとめを行い、局内で展開したいと考えている。

 
 

国土交通省 九州地方整備局 立野ダム工事事務所 建設監督官
弓削 琢郎

 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集1 建設DX、BIM/CIM
建設ITガイド_2022年


 
 

最終更新日:2023-07-14

 

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