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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > BIM > 設計施工一貫方式におけるBIMワークフローの効果検証・課題分析 -国土交通省BIM連携事業検証と運用について-

設計施工一貫のBIM標準ワークフローの定義、各ステージの効果検証・報告

 

はじめに

令和2年度、国土交通省にてBIM推進会議連携事業の応募者選定があり、当社が応募した「設計施工一貫方式におけるBIMワークフローの効果検証・課題分析」が、連携事業者として選定された。
ゼネコンにおける設計施工一貫方式でのBIMの効果的な活用方法の検証、それらを踏まえたBIMを主体とした新たな業務フローを見いだす目的として取り組んだ。

 
 

検証の概要について

本プロジェクトは、実施案件であった地上3階建てRC造の共同住宅を検証題材とした。
検証の方法として、従来の手法による実際の設計、工事と並行して、BIMを用いた場合の設計から工事まで活用効果を比較し、効果的な手法の抽出、ワークフローへの反映を行った。

検証物件外観

図-1 検証物件外観



 

プロジェクトの事前準備

着手時に実施設計から維持管理までのBIM活用について目的を明確化するためにBIM実行計画書を作成した。
この実行計画書を基に、定期的に関係者がプロジェクトの推移を確認し、目的の達成度合い、解決が必要な課題の抽出を行った。
 
また、各フェーズで目標とするLOD(LevelOfDetail)およびLOI(LevelOfInformation)を策定し、設計・施工・維持管理のプロセスそれぞれのステージでの情報の確定度を、エレメント別に定義する試みを実施し、検証の材料とした。

 
 

実施設計における取り組み

設計段階での取り組みの目的は、従来設計と比較しBIMによる設計のメリット、課題を抽出し、新たにBIMを中心とした設計ワークフローを作ることとした。
また、BIMのメリットである一つのデータを関係者全員で横断的に共有することでモデル・図書の精度向上、データ連携の効率化を図る。
 
設計段階での具体的な取り組みは下記の2点である。
 
①BIMを統括するBIMMg(BIMマネージャー)およびBIMOp(BIMオペレーター)による専門チームが参画し、モデルに関わる業務を選業することでモデルの精度、各種連携の効率化を検証。
②BIMデータの横断的な活用としてS4段階で施工技術者による施工図の前倒し作成(フロントローディング)。
 
結果としては、設計完了時に従来の2D設計に比べ不整合が約80%減少した。
これはBIMMgを主体とするBIM専門チームが実施設計に参画し、モデルの整理が行われたことにより、図面の整合性、積算や後工程との連携に一定の効果があった。
また、同じデータを活用し早期に施工図に着手することで、施工図レベルでの精度、整合性が確保できたことが大きい。
さらに、一つのデータを横断的に共有したことで、着工時に整合性の取れた設計図・施工図の提供が可能となり、現場で行っていた各分野間の調整を済ませた状態でモデルを引き継ぐことができたため、現場での手戻りが少なく生産性の向上の効果も大きかった。

 
 

BIM標準ワークフローの作成

今回の設計段階での取り組みから見えてきた、BIMによる効果を最大限生かすために、従来の設計ワークフローの変革を行った。
具体的には、①BIM専門チームによる実施設計、②施工情報を設計段階で取り込むフロントローディング、③プロセス横断型のBIMデータの一貫活用を主軸とした新たな設計ワークフローを作成し、運用を開始した。
 
さらに、本検証後の運用で見えてきた新たな問題点を解決し、より効果的にBIMを取り入れるため、ワークフローのブラッシュアップと併せて組織体制の見直し、BIM人材の強化を行っている。
 
竣工、維持管理についてもワークフローの見直しを行い、BIMのメリットを生かし会社全体の業務改革に取り組んでいる。

新たな設計ワークフローの構築

図-2 新たな設計ワークフローの構築



 

積算検証について

意匠、構造の設計Revitモデルを、積算ソフトΗΕΛΙΟΣ(ヘリオス)に取り込む手法を採用した。
対象部位は構造躯体および内部仕上げとし、整合調整されたBIMデータを利用することで、インプット情報の精度が上がり、より精度の高い積算手法が実現可能である。
 
一方、BIM連携後のチェックに一定数の時間が必要なため、BIM連携後のチェック項目の洗い出しを、より効率的に行うための改善案の検討を日積サーベイ社と共同で行った。

積算ソフトΗΕΛΙΟΣ(ヘリオス)との連携

図-3 積算ソフトΗΕΛΙΟΣ(ヘリオス)との連携



 

環境影響評価の算定積算手法

循環型社会の構築に向けた展開として、効率的に環境影響評価を行う手法について検討を行った。
LCA(Life Cycle Assessment)の中でも最も認知度が高いCO²の排出量を試算し、その算定結果を一般公表するカーボンフットプリント認証を取得した。
実務レベルでの積算数量内訳明細書を活用することは有効であり、単位換算データベース拡充など必要な対策を行った。

 
 

社内施工技術コンサル早期参画

実施設計2の段階で施工技術者が参画することで、施工図作成のフロントローディング効果を検証した。
着工時に、施工目線での納まり調整がされたBIMモデルと、モデルに連動した施工図があることで、作業所での検討作業の省力化ができ、着工から総合図の承認までの期間を、総じて前倒しにすることが可能となった。

 
 

共通データ環境の整備

設計・施工通して共通したBIMモデルを利用するため、共通データ環境を整備した。
 
アプリケーションの選定については、基幹ソフトと合わせた一社単独で検証を行ったが、操作性やコストにおいて最適解を求め複数のアプリケーションで検証を行っている。
 
また、データ権限設定・フォルダ構成やネーミングルールなどの定義を行い、運用を開始した。
引き続き、最新機能の確認や専門工事業者との連携手引きについて、運用しながら検証している。

 
 

設計確定範囲の掲示方法について

設計の確定範囲の提示方法として、モデルとセットでLOD、LOIの状態を示した資料を引き継ぐことが明確な方法と考えた。
当社標準のLOD・LOI表に則しているものよりも、特記として伝達する事項のみを受け渡すことで、業務負担とならないように考えた。
 
また、施工へ引き継いだ後に設計変更が生じた際の対応については、設計変更の起因別に「施主要望」「設計要望」「工事要望」に仕分けし、モデル更新者・責任者が誰になるかを明確に整理した分担表のもと対応することとした。

モデル更新分担表

図-5 モデル更新分担表



 

LODおよびLOIの最適解

当社ではBIMやその他の情報を横断して活用するための手法として、当社版のLOD指標によりマネジメントする試みを実施した。
当社従来版のBIMモデル作成区分表を元に、表記方法については米国や英国の事例も参考に検討を進めた。
 
形状と情報を分けて定義し、かつ3Dおよび2Dに区分した計4つの指標で状態整理することで、より明確な情報伝達が可能となった。
さらには、意匠、構造、設備の状態をあえて併記することで、どの情報を優先するか、より明確に定義できた。

 
 

本事業を経て

フロントローディングによる生産性向上実現のため、データ不連続の課題に対しては、設計と施工がワンチーム体制で共通データ環境の下、アジャイル型で業務を実施すれば解決すると考える。
当初懸念していたデータ引き継ぎに関しても、MET(ModelElementTable)に沿った運用により、特段引き継ぎをせずシームレスに受け渡すことができたと考えている。
 
今後の課題は、実践検証を重ね標準のMETを早期に確立することと、METのバリエーションを拡充すること、METのとおりBIMが構成されているかを判断する手法を確立することであり、S6竣工・S7維持管理に対する検証を継続し、実務展開を推し進めていく。

Model Element Tableの整理

図-4 Model Element Tableの整理



 

 

株式会社安藤・間 生産設計部 生産設計グループ
米満 雄太(左)
株式会社安藤・間 生産設計部 施工BIMグループ
福田 篤(右)
福田 篤

米満 雄太


 
 
【出典】


建設ITガイド 2022
特集2 建築BIM
建設ITガイド_2022年


 

最終更新日:2023-07-14

 

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