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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 土木施工単価 > 第11回 産学官連携功労者表彰 国土交通大臣賞受賞 液状化調査の新革命 −地盤のリアルタイム液状化判定装置の開発−《後編》
(技術名:ピエゾドライブコーン(NETIS:TH-100032-A))

 

応用地質株式会社 エンジニアリング本部
地盤解析部 副部長 博士(工学)
澤田 俊一

 

6.地盤情報の解像度の向上

開発において目指した最大の目的に“地盤情報の解像度の向上”がある。
いわゆる、地盤調査におけるハイビジョン化である。
従来の液状化判定は、標準貫入試験から得られるN値と室内土質試験結果からの地盤情報としている。
深度方向に1m間隔に1点しか結果が得られない従来法は、地盤の情報としての解像度は低いと言わざるを得ない。
新しく採用したのは、1打撃の貫入量から算出したN値相当のNd値である。
このNd値を採用すれば、図-6に示すように数cmごとに深度方向に連続した情報が得られ、飛躍的に地盤情報の解像度が向上する。
さらには、特異値の棄却等も可能となり、地盤情報としての信頼性も向上する。
 

図-6 従来法とピエゾドライブコーンの結果比較

図-6 従来法とピエゾドライブコーンの結果比較


 
 

7.軽量化とコンパクト化の実現

新規建設予定地での地盤調査であれば、地盤調査する場所の広さによる調査手法の制限を受けるケースは少ない。
しかし、供用中の既存構造物の地盤調査となると、作業時間やスペースが限られることが多い。
狭い場所でも設置が可能であること、人力での搬入ができること、
さらにはコンパクトで機動性が高いことが既存構造物や小規模建築物の地盤調査に求められている。
 
写真-3に、動的貫入試験として採用している軽量型動的コーン貫入装置(通称:ミニラム)を示す。
 

写真-3 人力でも移動可能な機動力

写真-3 人力でも移動可能な機動力


 
ミニラムは人力で移動が可能であり、機動力に優れている。
一方、写真-4は動的貫入試験装置を中心に計測システムを実測状態で配置した現場状況であり、
幅1.5mの狭いスペースでの実施も可能である。
 
写真-4 狭い場所でも実施可能なコンパクト化の実現

写真-4 狭い場所でも実施可能なコンパクト化の実現


 
また、写真-5は河川水面上での作業状況である。
 
写真-5 簡易足場上でも実施可能な動的貫入試験

写真-5 簡易足場上でも実施可能な動的貫入試験


 
単管と足場板のみの簡易な足場でも実施ができ、貫入反力を必要としない動的貫入試験法の利点を活用している。
試験機重量の軽量化と共に、コンパクト化を実現して機動力の向上を図っている。
 
 

8.開発経緯 〜土槽実験そして原位置計測〜

開発最初のステップでは、写真-6に示す様に先端コーン内部に水圧を計測するための圧力センサを組込んだミニチュアコーンを試作し、
室内での土槽実験を行った。
 

写真-6 ミニチュアコーンを用いた土槽実験

写真-6 ミニチュアコーンを用いた土槽実験


 
この試作機は技術長の手造りで、一式の計測システムおよび実験スペースを提供頂き、
会社の休日に基礎実験を遂行し、研究開発のための企画書を書き上げた。
 
次のステップでは、図-3に示す水圧センサを組込んだ先端コーンを設計し、
写真-7に示す実物大の動的貫入試験装置を用いて土槽実験を実施した。
 
写真-7 実物大動的貫入試験を用いた土槽実験

写真-7 実物大動的貫入試験を用いた土槽実験


 
実用化のための実物大土槽実験は、グループ会社で実験場所および実験資材を提供してもらうと共に、職員各位の協力を得て行った。
実物大の土槽実験では、センサの応答レベルの設定や増幅装置の感度、データ取得方法、
機器・装置の耐力性能の確認、また各部位の不具合を微調整して試作機を完成させた。
 
写真-8 現場実験全景(当初仕様)

写真-8 現場実験全景(当初仕様)


 
その後に、写真-8に示す現場検証実験を繰返した。
写真は現場実験第1回目の記念すべき全景写真である。
現場に出ることで解決できた問題点も多くあったがその反面、
現場故の問題点も新たに発生し、実用化を目指した改善と実験を繰返した。
現場実験で最初に前に立ちはだかった難題は、打撃貫入に伴う衝撃でのセンサ、トリガー等電気部品の破損であった。
 
 

9.耐衝撃性能への挑戦

打撃貫入の衝撃による電気部品の破損は致命的であった。
「打撃貫入するコーン貫入体に電気センサを組込むとは地盤調査法としては非常識」と
機器に関わる専門技術者や製造部門からの指摘を浴び、開発が滞った時期もあった。
しかし、表-2および写真-9に示す耐衝撃性能として20,000Gに耐え得るセンサに出会うことで、1つ目の難は突破できた。
 

表-2 圧力センサ仕様

表-2 圧力センサ仕様


 
写真-9 圧力センサ

写真-9 圧力センサ


 
しかし一難去ってまた一難、センサの破損は収まったが、今度はセンサ背面の結線部の断裂損傷であった。
電気に詳しい関連会社の技術者に相談し、協力を得て結線方式の改良に取り組んだ。
 
質量があるものに衝撃となる加速度が加わると力が生じる。
頑丈に結線するために質量を増やすと、より大きな力が生じて断線することが判った。
そこで、結線部をできるだけ軽量化するように工夫し断裂破損事例を減らすことに成功した。
2つ目の難も突破である。この様に、次々と生じる難に、関係者を巻き込み一丸となって順番に1つずつ解決していった。
 
当初は、過酷な現場条件を強いられる地盤調査の現状を知らない門外漢だからこそとの発想と非難され、
実用化に向けての開発は無理とバッサリ切られた。
しかし、コストを増やさずに地盤情報の解像度を向上したいという、自ら掲げた目的達成のため、関係者への説得を繰返した。
結果、ようやく実用に耐え得る製品仕様に仕上がった。
 
この衝撃断裂損傷との戦いを克服したハウジングの設計においては計測システム事業部の技術者、元技師長、現技術長、
グループ会社や関連会社の経営者兼技術者等々の磐石たる布陣の技術者の協力が存在したことは言うまでもない。
 
 

10.パッケージ化と全天候型システム

試作した試験装置が組み上がり、日々現場を探して原位置調査に出る機会を伺った。
とにかく、原位置での実証実験の数を増やしたく、現場を探し出向いた。
試作機が壊れる度に「振出しに戻る」を繰返し、修理と改善作業に明け暮れる日々が続いた。
このため、遠方の現場に出向く際には、現場で壊れてもその場で交換する準備として全ての機材を二重で持参することとなり、
運搬資材が毎回山の様になり、発送や回収も手間がかかった。
この資材を如何に効率的に梱包して運送するかも問題となり、
悩みながら解決して辿り着いたのが打撃装置に変位計やトリガーを組込んだパッケージ化である。
パッケージ化により、運搬の手間が軽減された。
 

写真-10 悪天候でも実施できるピエゾドライブコーン

写真-10 悪天候でも実施できるピエゾドライブコーン


 
さらに、現場作業はなぜかいつも天候不順であった。
雨なら良いが、台風や写真-10に示す季節外れの積雪等、恵まれないことが多く、誰が“雨男”なのかと言い合ったこともあった。
その甲斐あってか、悪天候への対応は完璧なものとなった。
“雨降って地固まる”ではないが、全天候型のシステムが幸いにも組み上がった。
 
 

11.おわりに

写真-11 製品化したピエゾドライブコーン

写真-11 製品化したピエゾドライブコーン


 
写真-11は、最新型の製品化したピエゾドライブコーン装置である。
筆者の身長をスケールとしてイラスト化してある。
写真-1と比べて見て頂ければ幸いである。
 
解析を担う門外漢が、なぜ原位置試験法の開発に挑んできたのか、であるが、
解析業務を遂行する際に提供される地盤情報の解像度の低さ、言い換えれば“空間的な分解能”が低いために、
せっかく高度で精緻な解析を実施しても解の精度は上がらないことに発する。
何とかしたいなら自分で得たい地盤情報を調べる装置を開発するしかないとの思いからではあるが、
関わり始めたら地盤調査の面白さを知ったというのが本当かもしれない。
 
ピエゾドライブコーンは、昨年(2013年)8月に第11回産学官連携功労者表彰で国土交通大臣賞を受賞した。
この賞は、産学官連携の推進に多大な貢献をした成功事例に対して、その功績を称える功労者表彰である。
“貢献”、“功績”さらには“功労”と名の付く受賞式に参加して、改めて自分の歳を感じた次第である。
新鮮で新たな発想は、既に若手技術者の出番なのであろう。
 
今回の開発を通して習得した思いは、良く言われることではあるが、技術開発には、最初に少しだけの思い付きがあれば良い。
ただ、思いを諦めないで継続することが肝心。
諦めさえしなければ、必ず成果は出る。
また、個人の技術力のみではできないことがたとえあったとしても、必ず周りには可能へと導いてくれる協力者がいる。
解決できない問題はない、と信じて継続することである。
 
ピエゾドライブコーンを命名して頂いた大先輩技師長からの今年の年賀状には、
「新しい挑戦をし続ける勇気を持っているのが本当の技術者である。」との激励が記してあった。
真摯に受け止め、地盤調査の楽しみと共に、更なる挑戦を続けて行くことを自身にも叱咤した次第である。
 
ピエゾドライブコーン装置の開発の全ては、本当は、周りの協力者が解決してくれた賜物である。
最後にはなるが、携わって頂いた関係各位には本当に感謝の意を表し“おわりに”としたい。
 
 
 
第11回 産学官連携功労者表彰 国土交通大臣賞受賞 液状化調査の新革命 −地盤のリアルタイム液状化判定装置の開発−《前編》
第11回 産学官連携功労者表彰 国土交通大臣賞受賞 液状化調査の新革命 −地盤のリアルタイム液状化判定装置の開発−《後編》
 
 
 
【出典】


季刊土木施工単価2014年春号
季刊土木施工単価2014年春号
 
 

 

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