• 建設資材を探す
  • 電子カタログを探す
ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 令和4年度土木工事積算基準等の改定について

1. はじめに

国土交通省では,建設現場を取り巻く環境の変化や最新の施工実態を踏まえ,直轄土木工事を対象とする積算基準を毎年度改定している。
 
令和4年度の改定では,「働き方改革に取り組める環境整備」,「i-Constructionの更なる拡大」,「円滑な施工体制の確保」の三つの施策方針の中で基準を改定した。
また,企業として継続するために必要な経費の対象等を考慮し,低入札価格調査基準の計算式を改定した。
本稿では,これら主な基準改定の概要を紹介する。

 
 

2. ‌‌働き方改革に取り組める‌環境整備

時間外労働規制を見直した改正労働基準法の適用について,建設業には5年間の猶予が設けられているが,法適用がなされる令和6年4月まで残すところ2年となった。
 
また,令和元年6月には,新・担い手3法が改正され,週休2日の確保をはじめとする適正な工期設定が発注者の責務として明確に位置付けられた。
このように,建設業における技術者・技能労働者の週休2日の確保が喫緊の課題となっている。

(1) 週休2日工事における間接工事費等の補正(表-1

国土交通省では,平成29年度より現場閉所の状況に応じた週休2日工事の経費補正を実施してきたが,実態調査の結果を踏まえ,令和4年度も補正係数を継続することとした。
 
また,令和元年度より試行を開始した交替制による休日確保を推進するモデル工事の補正係数についても,令和4年度も継続することとした。

週休2日工事における間接工事費等の補正

表-1 週休2日工事における間接工事費等の補正



 

3. ‌‌i-Constructionの更なる拡大

国土交通省では,i-Constructionの推進を図るため,ICTの全面的な活用などの取組を進めてきたが,直轄工事の中でも全国企業では9割以上がICT施工実績を有する一方,地域企業ではICT施工経験企業は約半分となっている。
そのため,中小企業へのICTの普及が課題となっている。

(1) 小規模土工に対応したICT実施要領等の策定(図-1

中小建設業が施工する現場は比較的小規模な現場が多いため,小規模な現場に対応したICT施工の導入が求められている。
そこで,都市部や市街地などの狭小現場でも,小型のマシンガイダンス(MG)技術搭載バックホウを使うことで,ICT施工を可能とするICT実施要領等を策定した。
 
これにより,丁張を行うことなく作業が進められるため,土工作業全体の迅速化,現場の補助員削減による安全性の向上等が期待できる。
また,ICT土工・床掘工・小規模土工・法面工における出来形管理は,衛星測位(RTK-GNSS)やトータルステーション(TS)等を活用した断面管理を標準とし,市販のモバイル端末を活用した面管理も活用可能となる。

小規模土工に対応したICT実施要領等の策定

図-1 小規模土工に対応したICT実施要領等の策定


(2) 3次元起工測量及び3次元設計データ作成費用見積り参考資料の改定(図-2

ICT施工に伴う3次元起工測量,3次元設計データ作成の積算について,原則として見積徴収による積み上げとしているが,見積りの妥当性を判断するに当たり参考となる見積り参考資料を令和2年度に作成しており,施工現場の実態に合わせ,見積り参考資料の算定式を改定することとした。

3次元起工測量及びx3次元設計データ作成費用見積り参考資料の改定

図-2 3次元起工測量及びx3次元設計データ作成費用見積り参考資料の改定



 

4. ‌‌円滑な施工体制の確保

円滑な施工体制を確保することは,公共事業予算の計画的な執行とともに,建設現場の魅力向上にも資するものであり,毎年度,建設現場の実態を踏まえて基準改定に反映してきたところである。
令和4年度は,以下に示す事項について改定を行った。

(1) 少雪時における除雪工事の積算(精算時)の試行(図-3

道路除雪は降雪量に応じて毎年度の工事量が大きく変動する工事であり,工事を受注する除雪事業者にとっては安定した収入を確保しにくい傾向にある。
そのような中,令和元年度は全国的に記録的な少雪となり,一部の地域を除いて除雪の出来高が上がらず,除雪事業者において作業員の確保や重機の維持といった最低限必要となる経費をまかなうことが困難になるという課題が発生した。
 
これを受け,令和3年12月から道路除雪工において,少雪時においても固定的に発生する経費を計上できるよう,除雪機械の機種や台数に応じて固定的経費(①直接工事費分+②間接工事費分)を計上する新たな積算方法の試行を開始している。

少雪時における除雪工事の積算(精算時)の試行

図-3 少雪時における除雪工事の積算(精算時)の試行


(2) 大規模災害における復興係数・復興歩掛(表-2

岩手県,宮城県,福島県(東日本大震災),熊本県(熊本地震)及び広島県(西日本豪雨)の各被災地においては,復興事業に伴う工事量の増大により資材やダンプトラック等の不足が発生し,作業効率が低下している。
 
このため,実態調査の結果を踏まえ,間接工事費の補正等について一部見直しを行った上で,令和4年度も継続することとした。

大規模災害における復興係数・復興歩掛

表-2 大規模災害における復興係数・復興歩掛


(3) 一般管理費等率の改定(図-4

最新の本社経費の実態を反映し,一般管理費等率を改定することとした。

一般管理費等率の改定

図-4 一般管理費等率の改定


(4) 鋼橋積算基準の改定(表-3

鋼橋製作工の間接工事費率や材料費について,経費等の実態を踏まえ改定するとともに,桁輸送費について,燃料費などの輸送費用の実態を踏まえ,改定することとした。

鋼橋積算基準の改定

表-3 鋼橋積算基準の改定



 

5. ‌‌‌‌低入札価格調査基準の‌計算式の改定(工事)

低入札価格調査基準は,予算決算及び会計令第85条において,「当該契約の内容に適合した履行がされないこととなるおそれがあると認められる場合」の基準と定められている。
この基準に基づいて算出した価格を下回った場合には,履行可能性についての調査を実施し,履行可能性が認められない場合には,落札者とはしないこととしている。
 
今般,最近の諸経費動向調査の結果に基づくとともに,企業として継続するために必要な経費の対象を考慮し,工事の低入札価格調査基準の計算式を改定した(図-5)。

低入札価格調査基準の計算式の改定(工事)

図-5 低入札価格調査基準の計算式の改定(工事)



 

6. ‌‌‌‌おわりに

現在,建設業が直面している課題はどれも容易に解決できるものではない。
しかし,働き方改革や生産性向上,施工の円滑化,ダンピング対策の徹底などに先導的に取り組み,課題の解決に向けて,直轄土木工事の発注者としての責任を果たしてまいりたい。

 
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課 事業評価・保全企画官
藤浪 武志(ふじなみ たけし)

 
 
【出典】


積算資料2022年5月号
積算資料2022年05月号

最終更新日:2022-12-07

 

同じカテゴリの新着記事

ピックアップ電子カタログ

最新の記事5件

カテゴリ一覧

話題の新商品