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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 公園・緑化・体育施設 > 都市公園における官民連携の動向について

はじめに

都市公園は,人々のレクリエーション空間となるほか,良好な都市景観の形成,都市環境の改善,都市の防災性の向上,生物多様性の確保,豊かな地域づくりに資する交流の空間など多様な機能を有する都市の根幹的な施設であり,Park-PFI制度の創設等を契機として官民連携による魅力向上の取組みが広がっている。
 
本稿では,都市公園における官民連携に関する動向として,Park-PFIの活用状況や,令和2年に新たに設けられた都市公園リノベーション協定制度の概要等について報告する。
 
 

公募設置管理制度(Park-PFI)について

1-1 概要

平成29年の都市公園法改正により創設された公募設置管理制度(以下,「Park-PFI」という)は,公園施設の設置管理許可の事業者を公募する手続きおよび関連する特例措置を法律に定めたものであり,当該公募においては,飲食店,売店等(公募対象公園施設)の設置と,当該施設から生ずる収益を活用して施設周辺の園路,広場等(特定公園施設)の整備,改修等を一体的に行う者を募集することとされている(図-1)。
 
Park-PFIは,従前は実現し得なかった取組みを可能にしたというよりも,大都市を中心に見られた民間事業者による公園再整備の動きを全国に展開することを意図したものであり,新たに,設置管理許可の更新の保証,建ぺい率の特例,看板や広告等に関する占用特例,社会資本整備総合交付金や都市開発資金による財政支援が措置されている。
 
設置管理許可の更新については,公園管理者が認定する公募設置等計画の有効期間を最大20年とし,当該期間内の設置管理許可の更新を担保している。
これにより,民間事業者が収益施設を新たに建築する場合でも,事業が安定的なものとなることが期待される。
 
Park-PFIの概要

図-1 Park-PFIの概要

 

1-2 制度の活用状況

国土交通省では,公園管理者がPark-PFIの活用に当たっての留意点や想定される手続きについて,「都市公園法運用指針」および「都市公園の質の向上に向けたPark-PFI 活用ガイドライン」で示すとともに,公募設置等指針のひな形を公表し制度活用を図っている。
2022年3月末時点で,102カ所で制度が活用されており,39カ所で公募対象公園施設が供用されている(表-1,図-2,図-3)。
 
公募対象公園施設として導入された施設は,飲食系が最も多いが,図書館,ジムなどの文化・スポーツ系,ホテル,キャンプ場などの宿泊・レクリエーション系,複数の施設が組み合わさった複合系など,設置される施設のバリエーションも多様化している。
 

Park-PFIの活用状況

表-1 Park-PFIの活用状況
 

Park-PFIの活用事例①(東京都豊島区/としまみどりの防災公園)

図-2 Park-PFIの活用事例①(東京都豊島区/としまみどりの防災公園)

 

Park-PFIの活用事例②(神奈川県湯河原町/万葉公園)

図-3 Park-PFIの活用事例②(神奈川県湯河原町/万葉公園)

 

2. 都市公園リノベーション協定制度について

2-1 概要

人口減少や少子高齢化が進み,地域の活力の低下が懸念される中,都市の魅力を向上させ,まちなかに賑わいを創出することが多くの都市に共通して求められている。
 
令和2年には,「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの創出(=「ウォーカブルなまちづくり」)を通じた,魅力的なまちづくりに向けた各種特例措置を講じることとした都市再生特別措置法等の一部を改正する法律(令和2年法律第43号)が施行された。
同法には,都市再生整備計画に定める滞在快適性向上区域(以下,「まちなかウォーカブル区域」という)内の都市公園が,交流・滞在拠点として重要な役割を果たすよう,当該都市公園のリノベーションを促進する制度として,公園施設設置管理協定制度(以下,「都市公園リノベーション協定制度」という)が設けられた。
 

2-2 Park-PFIとの違い

都市公園リノベーション協定制度は,まちなかウォーカブル区域内で認められる特例措置の一つであり,官民一体で「居心地が良く歩きたくなる」まちなかの形成に取り組む一環として,都市公園に飲食店,売店等の整備を行う場合に,都市公園法の特例を付与するものである。
 
具体的には,都市公園と一体となってまちづくりに取り組む一体型事業実施主体等が,公園管理者と締結した協定に基づき,都市公園内において飲食店,売店等の公園利用者の利便の向上等に資する施設の設置と,当該施設から生ずる収益を活用してその周辺の園路,広場等の一般の公園利用者が利用できる特定公園施設の整備・改修等を一体的に行う場合に,当該飲食店,売店等に係る
建ぺい率の上限緩和や設置管理許可期間の延長といった都市公園法の特例を付与するものである。
同様の特例はPark-PFI を活用する場合にも付与されるが,都市公園リノベーション協定制度は,都市公園がまちなかウォーカブル区域における交流・滞在拠点として重要な役割を果たすよう,都市公園の質の向上,公園利用者の利便の向上を図るための整備・管理手法であることから,実施主体は公募により選定するのではなく,まちなかウォーカブル区域で公共空間を創出している主体である一体型滞在快適性等向上事業の実施主体やまちづくり活動を行っている都市再生推進法人に限定される。
また,一体型事業実施主体等は,整備・管理しようとする都市公園において,利用者の利便の増進に資する事業を行った実績が求められる。
 
このように,都市公園のみを捉えて制度設計しているPark-PFI と,エリア全体を見渡す観点から制度設計している都市公園リノベーション協定制度は,制度趣旨が異なるため,法的効果は同等であるものの,事業主体やその選定手続きに差異があるので,対象とするエリアの性格等に応じて使い分ける必要がある。
 

Park-PFIと都市公園リノベーション協定制度の比較

図-4 Park-PFIと都市公園リノベーション協定制度の比較

 

2-3 制度の活用状況

【事例】こすぎコアパーク

川崎市と東急株式会社が,東急東横線・目黒線武蔵小杉駅前にある川崎市管理の都市公園「こすぎコアパーク」において,駅前の立地特性や隣接する鉄道施設の公共性を相互に生かした日常的な賑わい・憩いの創出および一体的な空間利用による回遊性・利便性の向上などに向けて,連携・協力しながら,整備工事を実施。
 
<取り組みの概要>

●協定締結者 川崎市,東急株式会社
●協定の内容
● 滞在快適性等向上公園施設:飲食・食物販も可能な休養施設
● 特定公園施設:ベンチ,植栽等
●東急株式会社が実施する一体型滞在快適性等向上事業
● こすぎコアパークと隣接する東急武蔵小杉
駅間の分断解消のため,東急武蔵小杉駅高架下のフェンス,植栽を撤去,舗装整備し,歩行者空間を創出

 

こすぎコアパークのイメージ

図-5 こすぎコアパークのイメージ

 
 

おわりに

新型コロナウイルス感染症の拡大を機に,都市にゆとりと潤いをもたらす公園などのオープンスペースの価値が再認識される中,量的・質的な不足などの課題も改めて顕在化した。
 
今後,ニューノーマルの時代に一層多様化するであろう都市公園に対するニーズに迅速,柔軟に応えることが求められている。Park-PFIは制度の活用が進みさまざまなバリエーションが出てきており,ウォーカブルなまちづくりの観点から都市公園リノベーション制度といった新しい制度も作られてきている。
引き続き,公園に関わるあらゆる主体と連携して整備・管理運営の充実,魅力の向上に取り組める環境づくりに努めてまいりた
い。
 
 
 

国土交通省 都市局 公園緑地・景観課 公園利用推進官
曽根 直幸

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2022年8月号
積算資料公表価格版2022年8月号2022年8月号


最終更新日:2023-06-28

 

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