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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 設備BIMの運用について現状と希望《その2》

 

新菱冷熱工業株式会社 谷内 秀敬

 

設備BIM活用事例

1)生産空間
BIMの活用実例として、生産工場の新築現場でBIMモデルを運用した例を紹介する。延床面積9,300㎡のこの工場は、基礎工事開始から竣工まで約8カ月、その内実質の設備工程は3週間程度のプロジェクトであった。
 

設備工事 工程表

設備工事 工程表


 
超短工期の設備工程で工事を進めるためには、施主、ゼネコン、工事関係者間のさまざまな情報の共有および迅速な意思決定が必要であり、短工期であっても無理のない工事を行い、無事故で安全に工事を進めるため、工事工程の効率化および分散化を行う必要があった。これらを実現するために、この現場ではBIMを採用した。
 

BIM化=見える化

まず、約1週間程度でラフなBIMモデルを構築した。3次元のBIMモデルにより「見える化」が実現したため、2次元図面では「見える人にしか見えなかった」課題が、最初から関係者全員の共通認識となった。今までの2次元図面では難しかったが、BIMモデルによる空間の取り合い調整作業において、効率的に進めるための多くのアイデアが生まれた。
 
例えば、工事工程の工夫である。通常、設備工事は建築の躯体工事が完了してから行われる。しかしこの物件は、設備工事の実質工程が3週間ほどしか見込めなかったため、少しでも設備工事のピークを分散したかった。そこで生まれたのが、鉄骨躯体屋根工事完了後と床コンクリート工事開始の間にあるわずかなタイムラグに設備工事を先行するというアイデアであった。これにより天井内設備の8割を先行工事として完了することが可能となり、実質3週間だった工程を5週間に拡大することができたのである。
 

高所作業車を用いた作業
高所作業車を用いた作業
設備ルート確保のため床ピットを計画
 設備ルート確保のため床ピットを計画

 
また、この物件は生産工場のため、生産機械が多数設置される。中には設置実績のない生産機器もあり、必要とするレイアウト空間が不明な機器も存在した。
 
機能的な機器のレイアウトや多様な各種専門設備との取り合いは、精度の高い生産空間を実現するために非常に重要な要素である。専門家にしか分からなかった従来の2次元図面とは違い、「見える化」されたBIMモデルは、容易に空間を把握できるため、施主、工事側の意思疎通がスムーズになり、意思決定、合意形成が迅速に行われた。
 
一般的に、変更事項はその決定が遅れるほどコスト増や品質低下を招くが、この現場では合意形成が迅速に行われたため、精度の高い生産空間を提供することができた。当初構築したラフなBIMモデルは、関係者との調整や打ち合わせを重ねるに従い、徐々にその精度を上げていった。
 
次の段階では、ラフモデルをベースとした調整から、「当初天井レベルにあった生産冷却系配管を床レベルに変更する」など、さまざまなアイデアが提案され、多くの変更事項がBIMモデルに盛り込まれていった。提案と意思決定が迅速に行われるため、変更事項の多さが工事工程を圧迫することなくプロジェクトを進めていくことができた。
 

搬入計画 3Dモデルによる周知
搬入計画 3Dモデルによる周知
搬入作業 実施
 搬入作業 実施
搬入計画 作業者への説明資料
 搬入計画 作業者への説明資料

 
また、これら3次元CADデータを活用し、搬入(重機使用による楊重作業)の事前検討や、より良い搬入計画書の作成と施主、施工関係者への周知にも役立てられた他、超短工期にも関わらず、無事故無災害で精度の高い生産空間を提供できた。
 
BIMモデルの構築は、2次元の図面を作成することに比べれば、確かに手間が増えることは否定できない。時には自分達の工事区分だけでなく、他工種の工事区分範囲の入力が必要な場合も多い。しかし、BIMモデルは関係者への趣旨説明、合意形成、周知確認にかかる時間を短縮でき、新しいアイデアが提案され、関係者のコミュニケーションを円滑にすることで、プロジェクトの進行をスムーズにする。BIMは施主の高い要求に答えるために必要なツールなのである。
 

設備機器レイアウト設計 天井配管
設備機器レイアウト設計 天井配管
設備機器レイアウト計画 床支持配管
 設備機器レイアウト計画 床支持配管

 
2)生産空間コンポジット
空調設備業者の先端施工技術が投入される建物用途として医薬品製造施設、実験施設等がある。それらは一般ビルの建築設備に比較して多くの用途の管路が交錯し、なおかつ製造施設の生産プラント配管等が加わる。各工事区分の2次元の設計図面を基に統合調整を行うのだが、着工したばかりの現場ではその調整に多くの労力が費やされることになる。
 
そこで当社では、S-CADの軽快な参照機能による課題の絞込み・属性連携による判断基準の見える化を駆使して空間コンポジットを行った。コンポジットとは複数のものを組み合わせ、それぞれ単独では得られない特性を獲得することである。
 

課題解決に向けた具体的手法

7,100坪 工期13カ月の医薬工場であるが、課題として工場着工時における施工情報の構築・全体最適を実現することが求められた。ただし生産設備周りの空間調整は専門メーカーの範疇であり調整範囲外である。
 

BIMコーディネータによるスペースマネジメント

BIMコーディネータによるスペースマネジメント


 
①運用目的を設定した組織構築+ITインフラ整備
 短期に全体調整するマネジメント組織権限の付与とともに情報共有ネットワークを敷設した。
②関係者に対するITツール教育
 情報の欠損・遅れ・後積みの存在しないルール、ネットワーク運用教育。
③調整会議や情報交換ツールによるコミュニケーション機会の設定
 情報は自動的に進化していかないことを踏まえ、チェックポイントを設定して情報を重ね合わせることで全体における各々の位置を確認し、フィードバックすることを実施した。
④施工情報の構築、進捗工程の管理、情報精度の管理
 情報で大切なことは時間軸が揃っていることである。タイムリーな情報共有、鮮度の高い情報を構築することで無駄なモデル入力を極力しないことを徹底した。
⑤課題解決に必要な見える化作業
 専門技術者であってもITツールとしてのBIMを操作することはスキル習得まで時間を要する。3DPDFモデルの運用で簡単な情報共有を実現した。
⑥スプール図作成・施工図の完成に向けた調整
 施工情報として施工に引き渡す情報が「製作図としてのスプール図・施工図」である。支持金物やメンテナンススペースも含めた調整を再度実施した。
 
以上を短期間のうちに行った。従来の2次元データによる調整であれば6カ月かかる作業を、わずか3カ月で実現することができた。
 
課題を抽出し優先度を判断し、解決に導く選択肢を提示することはBIMの優位点であるが、判断するエンジニアが判断スキルと全体における位置を把握しないままでは、課題解決に至らなかったであろう。
 

多くの干渉が見られる
多くの干渉が見られる
BIM運用で解決
 BIM運用で解決

 
設備エンジニアリング会社としての技術力とBIMのもたらす課題解決の選択肢提示力がマネジメントによって有効に進められた案件である。
 

空間最適化が可能なスペースマネジメント

空間最適化が可能なスペースマネジメント


 
 
 

設備BIMの運用について現状と希望《その1》
設備BIMの運用について現状と希望《その2》
設備BIMの運用について現状と希望《その3》
設備BIMの運用について現状と希望《その4》
設備BIMの運用について現状と希望《その5》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 

 

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