• 建設資材を探す
  • 電子カタログを探す
ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 生産性向上 > 新たな担い手確保とDXへの取り組み

はじめに

建設業は新たな時代を迎えている。
国土を脅かすさまざまな災害が全国各地で発生し、防災・減災・国土強靱化や復旧など、地域の守り手である建設業界は、どのような環境下にあろうとも変わらぬ精神力と英知で生活の安全安心を支えている。
 
一方、団塊ジュニア世代が高齢者となる2040年に労働者の供給不足が1100万人超えになるとの予測も耳にするところであり、これまで業界を支えてきた技術者や技能者の高齢化による離職は、より一層の人材不足を促しかねない。
今後、これまでと同様に地域の守り手であるためには、新たな担い手の確保や生産性の向上が不可欠である。
 
 

1.「担い手・DX部会」の設置

一般社団法人山梨県建設業協会(以下:山梨建協という)は、建設業で働く人々や建設業を目指す若者が夢と誇りをもち、希望に満ちた産業となるよう、新3Kの実現に向け、働き方改革の推進や生産性の向上に努めている。
 
また、労働者の処遇改善や、女性のさらなる活躍に向けた職場環境の整備、DXの普及促進による生産性の向上に加え、地域建設業が活躍する姿を広く社会に周知するための広報活動の強化を目指し、令和3年度に新たに内部組織として「担い手・DX部会」を設置した。
以下に「担い手」と「DX」による新たな取り組みを紹介する。
 

動画-1 女性バージョンCM
動画-1 女性バージョンCM
動画-2 男性バージョンCM
動画-2 男性バージョンCM

 
 

2.やまなし建設産業担い手確保・育成アクションプラン

建設業の未来を支える担い手の確保に向け、「人材確保」「人材育成」「魅力ある職場づくり」等について検討することとし、山梨県県土整備部との連携により「やまなし建設産業担い手確保・育成アクションプラン」を実施することになった。
 
このプランは、産学官が連携し、県内建設産業の担い手をめぐる現状や課題に関する認識を共有し、建設産業の健全な発展を図るための若手の担い手確保を目的としている。
 

1)建設産業の魅力を伝える

職場体験等の受け入れ企業と生徒のマッチングや、小学校の環境整備活動を通じた建設産業の魅力発信のため、小・中学生に対する出前講座等を実施している。
 

①小学生向け出前授業の開催

現在の小学1年生の国語の授業に「じどう車くらべ」という内容があり、「ショベルカー」という項目に焦点を当て、青年部会のメンバーが中心となり実際に建設機械を小学校に持ち込んで出前授業を実施している。
幼少期にインパクトのある建設業の魅力を発信することで、将来の建設業への志望を期待している。
 
写真-1 小学校「じどう車くらべ」
写真-1 小学校「じどう車くらべ」
 

②中学生向け職業講話の開催

中学生へのアプローチとして職業講話を行い、建設業の現状や魅力に加え、進学についての情報を提供することで建設業につながる高校等にエントリーする学生を掘り起こしている。
近年、建設系列(土木系)の進学に関する高校の入試倍率は0.5倍を下回る年もあるため、中学生に向けての取り組みをさらに充実させていく必要がある。
 
写真-2 中学校「職業講話」
写真-2 中学校「職業講話」
 

③高校生向け建設産業説明会の開催

建設系列学科や総合学科等の系列選択前の生徒に対し説明会を開催している。
実業高校等の建設系列学科においては、その後の建設業への入職につながることを期待するとともに、総合学科等に在籍する系列選択前の生徒には、一人でも多くの生徒に建設系列学科を選択してもらうため、建設業の現状や最新情報等に加え、男女ともに活躍する姿を通じて効果的なアプローチを試みている。
 
写真-3 高等学校「建設産業説明会」
写真-3 高等学校「建設産業説明会」
 

2)建設産業の魅力を高める

就労環境の改善等による離職防止策として新規入職者向けのフォローアップ意見交換会の開催や、女性活躍の推進を積極的に行っている。
 

①女性活躍推進

県内の建設業関連で働く会員企業に属する女性職員・社員を中心に、平成29年に「けんせつ小町甲斐」を発足、発注者や教育関係者とも連携した活動を進めている。
この活動では、「建設業に従事する女性の活力向上について語る会」により、日頃抱えている諸問題をメンバーが情報交換するとともに、今後の課題等を検討している。
また、女性の働き方検討会や他県女性技術者団体との意見交換会の開催により、女性が安心して働ける環境を目指した活動を進めている。
また、女性活躍の推進事業としてオリジナルのチラシや動画を作成しYouTube等により情報を発信している。
 
画像-3 けんせつ小町甲斐動画
画像-3 けんせつ小町甲斐動画
 

②女性技術者と女子学生との意見交換会の開催

建設系列の女子学生との意見交換会の場では、実際に活躍している「けんせつ小町甲斐」のメンバーが直接説明するのに加え、現場での様子を動画等を用いてよりわかりやすく紹介している。
 
写真-4 高等学校「女子学生らとの意見交換会」
写真-4 高等学校「女子学生らとの意見交換会」
 
 

3.山梨建協におけるDXの推進

生産性向上は、全産業において欠かすことのできない事項として認識している。
国土交通省におけるICTの全面的な活用について、国に次いで山梨県においても導入が進んでいる。
さらにデジタル技術によってより良いものへ変革させるためにDXを推し進め、単に生産性向上に限定したデジタル化ではなく、新たな価値や環境を生み出すことを目的としている。
 

1)山梨県i-Construction推進連携会議

建設現場における生産性を向上させ、魅力ある建設現場の実現を目指すi-Constructionの取り組みを推進するため、関係機関が連携してさまざまな視点から議論し、課題解決に向けた取り組みを山梨県と連携し進めている。
この会議では3次元データの全面的な活用に向け、業界からの意見や情報を伝えるとともに、モデル工事を計画し、具体的な課題の抽出や今後の活用について検討できる場となっている。
 

2)デジタル関係のスキルアップ研修

平成29年から国土交通省との連携により直轄工事現場にて行う「ICT土工体験講座」を皮切りに、デジタル分野のさまざまな研修に着手し、建設機械における3次元データの活用による「MG(マシンガイダンス)・MC(マシンコントロール)」での施工や、3次元データ作成に関する演習等、小規模工事にも導入可能な研修を会員向けに展開してきた。
今後も関係発注機関と連携しながら地方の工事規模にも対応可能な生産性向上の取り組みを継続していきたい。
下記に例を示す。
 

3)やまなし建設DX展の開催

建設現場のDX促進・女性活躍推進に向け、令和5年2月に「やまなし建設DX展」を開催した。
近年、デジタル技術の普及・拡大により、インターネットやソフトウエアといった技術革新が急速に進んでおり、これまでの現実空間を前提とした業務そのものが効率化の対象となっている。
さらに抜本的に変革する「DX」を進展させるとともに、近年、建設業における女性の進出と活躍が期待されていることから、山梨建協では女性の活躍による建設現場の環境改善について学び体験できる研修会を開催した。
 

写真-5 パネルディスカッションの様子
写真-5 パネルディスカッションの様子
写真-6 展示ブースの様子
写真-6 展示ブースの様子

 
 

おわりに

建設産業の基幹産業としての持続可能な発展が、国民の「安全・安心」を支える礎となる。
そのためには、新たな担い手に建設業の魅力・やりがいが正しく伝わることと、生産性を少しでも向上できる進化が両輪として機能する必要がある。
これからも山梨建協は、生産性の向上およびDXの推進や働き方改革の取り組みで、会員全社が理解し活躍できる体制を目指し、さまざまな課題に誠心誠意取り組んでいきたい。
 
 
 

一般社団法人 山梨県建設業協会 業務部長 
山本 憲一

 
 
【出典】


積算資料公表価格版2023年6月号



最終更新日:2023-06-23

 

同じカテゴリの新着記事

ピックアップ電子カタログ

最新の記事5件

カテゴリ一覧

話題の新商品