- 2015-03-19
- 積算資料
公益財団法人 神奈川県公園協会
霊峰富士と芦ノ湖の素晴らしき景観
神奈川県立恩賜箱根公園は、1884(明治17)年、当時の宮内省が、
笹が密生していた「塔ヶ島」と呼ばれた芦ノ湖に突出した半島のかたちをしたこの地を中心に16.5haを買収し、
皇族の避暑と外国からの賓客のための離宮を造営した、その敷地内にある(写真-1)。
1889(明治19)年に完成した箱根離宮(箱根塔ヶ島離宮)は2階建ての西洋館と日本館を中心に官舎、兵舎が立ち並び(写真-2)、
華麗な姿を芦ノ湖に映していたが、1923(大正12)年の関東大震災や1930(昭和5)年の北伊豆地震などの災害で倒壊。
その後、箱根離宮を再建する計画もあったが、時代が戦争へと大きく傾いてゆく中にあって再建計画は打ち切られてしまった。
そして、終戦後、1945(昭和20)年3月18日、離宮跡地は神奈川県に下賜され、
その年の5月5日から神奈川県は、ここを「恩賜箱根公園」として一般に開放することになった。
その後、1959(昭和34)年4月には県立都市公園に指定され、車道や駐車場、展望広場、園路などが整備され、
1989(平成元)年には大規模な再整備が行われた。
恵まれた環境と富士山を正面に芦ノ湖を見下ろす素晴らしい景観によって、
箱根を訪れる人々の憩いの場として愛される公園になっている。
緑の庭園の中でひと際映える湖畔展望館(写真-3)は、
1992(平成4)年7月に箱根離宮跡地に旧離宮西洋館をモチーフとして建てられた。
1階には箱根離宮建設計画から完成までの資料が展示されているほか、
2階には休憩所や茶処「緑賜庵」、バルコニーがあり、霊峰富士と芦ノ湖、箱根外輪山の見事な眺望を楽しむことができる。
また、茶処「緑賜庵」では抹茶をはじめとした喫茶を営業している。
園内は、手入れの行き届いた庭園樹や生け垣が、離宮時代の雰囲気を伝えているほか、
箱根町芦川地区の旧道に架かっていたものを恩賜箱根公園内に移し保存され、
1991(平成3)年に「かながわの橋100選」の1橋として選定された芦川橋と呼ばれる江戸時代に造られた名橋といわれる石橋がある。
他に雄大な富士山や美しい緑を映した芦ノ湖を一望できる展望台や銅板で葺かれた入母屋造りの休憩所、
湖畔展望館前の芝生広場では離宮当時の礎石跡があり、往時の華やかな西洋館がしのばれる。
国登録記念物をはじめ多くの名所として登録
また恩賜箱根公園は、このほかにも別表のように数々の名所として選定されていることからも、
多くの人々から愛され魅力ある公園であることがうかがえる。
公園の周辺には、1619(元和5)年頃に設置されたといわれる、
「入鉄砲に出女」を取り締まった箱根関所跡があり、等身大の人形で往時の様子を再現しているほか、
1618(元和4)年に箱根宿設置に伴い植えられた旧東海道杉並木(写真-4)は、
現在、幹周2~4.5mの大木が約400本立ち並び、霊験あらたかな空間を醸し出している。
また奈良時代に創建され、古くから山岳信仰の霊場として崇められている箱根神社(写真-5)などの観光スポットも多く、
公園を拠点にした散策が楽しめるのも魅力のひとつだ。
箱根離宮の建築物の大半は震災害などにより失われたが、現在も多くの史跡が残り、
またそれらを生かした公園整備が行われていることから、近代造園文化の発展に寄与した意義深い事例として、
2013(平成25)年8月1日に「国登録記念物」(名勝地)に登録された。
「国登録記念物」(名勝地)とは、文化財保護法によって定められた、
保存および活用のための措置が特に必要とされる記念物のことで、
恩賜箱根公園は「造成後50年を経過」し、「造園文化の発展に寄与」しているという条件を満たしたことから、
文部科学大臣によって新規登録された。
今回の登録には、恩賜箱根公園のほか同じ箱根地域から「箱根美術館」と「強羅公園」を合わせて3施設が登録された。
箱根町ではこの3施設の「国登録記念物」の新規登録の経緯等を編集した冊子を作成している。
みどり・環境の保全と創造への取り組み
公益財団法人神奈川県公園協会は、
1975(昭和50)年の設立以来2005(平成17)年まで神奈川県より公園の維持管理業務を受託していたが、
現在では県の施策による指定管理者制度のもと、2009(平成21)年からは、株式会社小田急ランドフローラとのグループで、
それぞれの得意分野を活かし維持管理運営を行っている。
今後も離宮の庭園美をはじめ、今回登録された「国登録記念物」の構成要素である、
庭園、中央広場、山上門、正面園路、ベルツの碑、塔の鼻広場、馬場跡、展望台(写真-6)、二百階段(写真-7)、
堀および石垣の10項目のほか、園内で観察できる国と神奈川県の絶滅危惧種に指定されている苔や、県内でも珍しい苔(写真-8、9)など、
これらの素晴らしい素材を活かし、また保護していきながら皆さまに愛される公園を目指していきたい。
【出典】
月刊積算資料2014年12月号
最終更新日:2015-03-19
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