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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 自然と向き合い学ぶ山岳道路工事〜舞鶴若狭自動車道 敦賀衣掛大橋〜《前編》

 

中日本高速道路株式会社 名古屋支社 敦賀工事事務所

 

1 完成まで10年の月日

舞鶴若狭自動車道は、中国自動車道の吉川(よかわ)JCTを起点とし、
福知山市、舞鶴市、小浜市などを経て敦賀市の北陸自動車道に至る約162kmの高速道路です。
このうち敦賀工事事務所が担当する小浜IC〜敦賀JCT間約39kmが2014年7月20日(日)15時に開通し、
舞鶴若狭自動車道は全線開通となりました(図-1)
 

図-1 舞鶴若狭自動車道における小浜IC〜敦賀JCT間の概要

図-1 舞鶴若狭自動車道における小浜IC〜敦賀JCT間の概要


 
この区間は、小浜市、若狭町、美浜町、敦賀市の2市2町を通過し、福井県の嶺南(れいなん)地方を結ぶ大動脈です。
今回の開通により、嶺北(れいほく)地方と嶺南地方がより身近となることによる地域の活性化など、
多くの整備効果が見込まれ、県民の期待が大きい道路です。
そして、中国自動車道、名神高速道路および北陸自動車道が一体となり、関西圏、中京圏、北陸圏の広域ネットワークが形成され、
物流、観光、文化の交流や、災害時における代替道路の機能を果たすことが期待されています。
現在のところ、予想交通量6,000台/日を上回る交通量となっています。
 
図-2 敦賀工事事務所管内の構造物比率

図-2
敦賀工事事務所管内の構造物比率


当管内の構造物比率は、図-2に示すとおり、トンネルと橋梁の比率が約60%を占め、
典型的な山岳道路です。
なお、当区間は、暫定2車線道路で運用しています。
 
また、雪氷地域でもあり、その対策として、雪氷Uターン路の配置、
ロードヒーティングなどの対策を行っています。
 
小浜IC〜敦賀JCT間は、2004年12月に本格的に工事着手し、
完成までに約10年間の工事期間を要しましたが、
工事の中には困難を極めるものが多数ありました。
 
本稿では、
 
●交差する重要インフラ(高圧送電線、JR北陸本線、国道8号など)への万全な安全対策
●斜度40度、高低差68mの急しゅんな斜面における橋台・橋脚の施工
 
など、厳しい現場条件であった敦賀衣掛(きぬがけ)大橋(橋長560m)の工事における課題と対処について報告します。
 
 

2 敦賀衣掛大橋の設計・施工

2.1 敦賀衣掛大橋の概要

 

図-3 敦賀衣掛大橋の橋梁一般図

図-3 敦賀衣掛大橋の橋梁一般図


 
図-3は敦賀衣掛大橋の橋梁一般図です。
本橋の特徴は、基礎工にはP2、P3橋脚の2基にニューマチックケーソン工法を用い、下部工は最大63.5mの高橋脚であること、
また、上部工は波形鋼板ウェブを用いたPC箱桁ラーメン橋で、最大スパン長は160.0mと、
同形式の橋梁では国内最大級であることです。
一般的なコンクリートウェブを用いた上部工は、主桁の重量の30〜40%を占めるウェブに波形鋼板を用いることにより、
上部工重量を飛躍的に軽減させることができ、スパンの長大化と橋脚のスリム化を実現しています。
 

2.2 インクライン架設工

急しゅんな地形であるA1およびP1施工ヤードへのアプローチには、通常であれば仮桟橋を架設するところですが、
本工事では工事用道路の借地面積と用地外の伐採面積の削減を目的として、インクラインを併用しました。
 
インクラインとは、高低差の大きい山腹に架台を設け、
土砂運搬用のダンプトラックやコンクリートミキサー車などの工事用車両を台車に積載して
斜面に沿って昇降する装置です(写真-1)
 

写真-1 A1およびP1に設置されたインクライン

写真-1 A1およびP1に設置されたインクライン


 
インクラインは、積載量×斜度:40t×40°、高低差:68m、軌条長:124mの大型運搬設備で、
橋梁建設工事に用いられることは極めて稀なことです。
軌条は、まずインクライン台車上に35t級ラフテレーンクレーンを設置し、
ダウンザホールハンマーにより地山を掘削、杭を建て込み、1スパン分の軌条設備を架設した後、
セルフクライミング装置で台車を1スパン分上昇するサイクルを繰り返すという手延べ式架設工法により設置しました。
 

2.3 ニューマチックケーソン工法

2.3.1 概要
P2、P3橋脚の基礎は、ニューマチックケーソン工法で施工しました。
 
この工法は、ケーソン下部に気密性の作業室を設け、
空気圧により湧水を防ぎながら掘削作業を行い、所定の深さまでケーソンを沈設する工法です。
イメージとしては、風呂桶を逆さまにして、風呂に押し込んだ時に風呂桶内の空気が逃げずに空気が残った状態になるように、
水の浸入を空気の圧力によって防ぐ原理を応用したものです。
 
当現場は、周辺の地下水位が高いことから、通常の基礎工事を実施すると、
地下水位が低下することにより、周辺地盤の沈下が発生する危険性がありました。
また、P2、P3橋脚は、JR北陸本線や国道8号などの重要インフラが近接しており、
沈下の影響がこれらに及ぶことを回避するため、周辺への影響が小さいこの工法を採用しました。
 
沈下掘削には主に重機を用いましたが、硬岩層部での施工効率を向上させるため、発破掘削を併用しました。
なお、施工箇所には国道や民家が近接していることから、それらへの影響を最小限にするために、分割発破方式を採用しました。
 
2.3.2 分割発破掘削
 

図-4 ケーソン沈下掘削方法。

図-4 ケーソン沈下掘削方法。
ケーソン下部に圧縮空気を送り地下水の浸入を防ぐ


 
図-4はP3ケーソンの沈下掘削方法です。
前述した推定支持層までの先行掘削を主に重機により沈下掘削し、その後、硬岩区間では4分割、3分割の制御発破を使い分けました。
 
図-5 分割発破方式によるケーソン発破振動の例

図-5 分割発破方式によるケーソン発破振動の例


 
図-5は4分割制御発破方式の例を示したものです。
ケーソン内部を①内部東側、②内部西側、ケーソン周辺を③周辺孔 先行発破部、④周辺孔後行発破部とし、
大きく4つのエリアに分割し、合計62孔に火薬を設置しています。
なお、図-5中の数値は着火後に発破を開始する時刻で、
25ms(msは1/1,000秒)ずつ発破のタイミングをずらして制御発破を行うことで、
芯抜き・払いを効率的に行い、かつ地表面に伝搬される発破振動を極力小さくしました。
 
図-6 発破振動の予測と実測値

図-6 発破振動の予測と実測値


 
図-6は、発破振動について事前に推定した理論波形と施工時の実測波形を示したものです。
計測箇所は、ケーソン中心から約30m離れた地表面です。
この図から、実測値の波形は理論値とおおむね同様の傾向を示しており、最大振動値についても高い精度であることが評価できました。
発破のパターンや火薬量を変更する際には、
このように事前に振動波形を推定し、周辺環境への影響を評価したうえで本発破を行いました。
 

2.4 橋脚施工

 

写真-2 橋脚の施工

写真-2 橋脚の施工


 
高橋脚であるP2、P3橋脚については、高所での足場・型枠の解体作業量の削減と災害発生リスクの低減を目的として、
クライミングフォーム工法を採用し、足場付き移動式型枠(Auto Climbing System)で施工しました(写真-2(a))
1ロット当たりの高さを4.0mとし、P2橋脚を16ロット、P3橋脚を15ロットに分割しました。
 
鉄筋の組み立ては、帯鉄筋をあらかじめ地上で組み立てるプレファブ化により施工効率を向上させました(写真-2(b))
 

2.5 上部工の施工

 

図-7 上部工の施工方法と上げ越し量

図-7 上部工の施工方法と上げ越し量


 
図-7は、上部工の施工方法と上げ越し量を示したものです。
本橋はP1橋脚のみに支承を有するラーメン橋で、A1、A2 の側径間施工部分を除き、すべてを張出し架設により施工しました。
張出し架設の1ブロック長は標準3.2mで、最も多いブロック数はP2、P3張出しの23ブロックです。
 
なお、張出し架設区間どうしの中央閉合は移動作業車(以下、「トラベラー」)によって行いました。
張出し施工区間の上げ越し量はおおむね50mm程度で、P3張出し架設先端では最大67mmの上げ越しを行う計画としました。
 
2.5.1 架設
P1〜P4それぞれの橋脚から行う張出し施工では、工事最盛期では計3橋脚、6トラベラーが同時に稼働しました。
本橋の特徴である波形鋼板ウェブの架設は、工期短縮のため、先行架設工法を採用しました(図-8)
 
図-8 波形鋼板先行架設工法

図-8 波形鋼板先行架設工法


 
これは、張出しブロックのコンクリート打設後、トラベラーを移動する前に次のブロックの波形鋼板ウェブを架設する工法で、
コンクリート打設後の養生期間を有効活用することができるものです。
施工に当たり、トラベラーの下段ステージ前方を拡幅したり、ステージ上の前方足場を省略するなど、
波形鋼板を先行架設するスペースを確保するよう改良しました。
なお、これらの工法により、張出架設の施工サイクルは、1ブロック当たり実働6日程度の急速施工が可能となりました。
 
2.5.2 側径間工
A1側径間では、支保工桁長が大きいため、コンクリート打設時には、プレロード工による支保工桁のたわみ量制御を行いました。
これは床版上に設置したカウンターウェイトにより、あらかじめ支保工桁に変位を生じさせておくことで、
コンクリート打設による支保工桁のたわみ量を制御するものです。
 
図-9 A1側径間部のプレロード工。

図-9 A1側径間部のプレロード工。
カウンターウェイトを後退しバランスを取ることで曲げモーメントを保つ


 
図-9は、プレロード工の施工ステップを示したものです。
 
ステップ(1)該当箇所にカウンターウェイトを設置し、型枠を所定の高さにセット
ステップ(2)(3)コンクリート打設時には、発生する曲げモーメントの分、カウンターウェイトを後退させる
 
この工法により、コンクリート打設に伴う異常な沈下が生じることなく、側径間部の施工が可能となりました。
 
写真-3 A2側径間部の支保工横移動

写真-3 A2側径間部の支保工横移動


 
A2側径間工はトラス桁支保工により施工しました。
高所作業を極力減らすため、主桁側面に設置されている桟橋上でトラス桁とステージを組み立てた後、
それらをスライドさせて桁下に支保工を構築しました(写真-3(a))
また、解体時には同様に桁下からスライドさせて引き出すことで、躯体下の支保工を撤去しました(写真-3(b))
 
2.5.3 橋面工
本工事では、橋面工として壁高欄、落下物防止柵を施工しました。
これらの施工には、国道や鉄道といった他のインフラへの落下物防止対策として、専用の橋面施工台車を用いました(写真-4)
 
写真-4 橋面施工台車

写真-4 橋面施工台車


 
これは、主構を門形として左右の張り出し床版下に作業床を有するダブルハンガータイプの施工台車です。
壁高欄施工用の張り出し足場の設置・解体はもちろんのこと、
施工台車本体に揚重設備を搭載することで、落下物防止柵の施工にも兼用しました。
 
壁高欄のコンクリート打設については、地上高が高くポンプ車のブームを使用できないこと、
橋面施工時には橋脚足場をすでに解体していること、橋面上には施工台車が設置されていることから、
A1橋台またはA2橋台から橋面上に配管し、コンクリートを圧送して施工しました。
 
使用したコンクリートは、はく落防止対策としてポリプロピレン繊維を、
ひび割れ防止対策として膨張材をそれぞれ混入したコンクリートです。
繊維材を混入するためスランプの圧送ロスが大きく、配管延長によっては打設箇所でのスランプも大きく異なるため、
圧送距離に応じて2種類のスランプを使い分ける配合としました。
 
 
 
自然と向き合い学ぶ山岳道路工事〜舞鶴若狭自動車道 敦賀衣掛大橋〜《前編》
自然と向き合い学ぶ山岳道路工事〜舞鶴若狭自動車道 敦賀衣掛大橋〜《後編》
 
 
 
【出典】


月刊積算資料2015年1月号
月刊積算資料2015年1月号
 
 

 

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