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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > 今すぐ使える、実践BIMテクニック~シェルパブログから~《前編》

 

株式会社 シェルパ

 

はじめに

シェルパでは、「BIMはツールに過ぎない」ということを忘れないように心がけている。
 
BIMで形ができて、そのモデルを見ることで説得力があるように感じるが、
そのモデルに宿している意図や信頼性がなかなか伝わってこないケースも多く見られる。
 
BIMの操作であれば、何日間か徹底して習得すればそのスキルを持つことができるが、
モデルを作る根拠が不明であれば大きな間違い、手戻りとなりかねない。
 
シェルパでは建築技術のナレッジ蓄積とその活用(PDCC)を徹底して行ってきている。
一例として、「事前検討会」「中間検討会」「技術相談」「改善提案」などがある。
BIMを導入した理由も、あくまでも建築技術のナレッジ蓄積とその活用のためのツールとして用いるためである。
 
シェルパBIM活用フローが下図の通りである。
建築技術ナレッジとBIMの融合を図り、建物品質の向上を狙いとしている。
 
シェルパBIM活用フロー
 
BIMの大まかな活用フローは、「①目的と目標」を明確にし、「②手法」をどのようにするかを決め、
「③設定、テンプレート(準備)」でモデリング前に入力のための事前準備をし、
「④作図ノウハウ」でモデリング効率化のためのテクニックなどを確認し、
モデリング後、「⑤モデルチェック」でモデル入力ミスがないかを確認、「⑥成果物」として完成、という流れである。
 
蓄積してきた建築技術ナレッジとBIMツールの融合は、まず「①目的と目標」を明確にした上で、「A:事前検討会」を実施したり、社内での「B:技術相談」や過去の「C:改善提案」の資料を確認し、提案資料としてまとめる。
 
その後、BIMツールやモデルチェッカーの機能を使った「⑤モデルチェック」によりモデルの整合を確認し、
「D:ビジュアル質疑書」で建築的な問題箇所を指摘、提案していく。
そして、作業が完了またはプロジェクト業務が終了した時点で、「⑥成果物」として「E:改善提案」資料を作成、
「F:報告書」をまとめていく。
 
これら一連の流れから作成された資料を、工種やツールを基にカテゴリ分けをして整理し、次期プロジェクトで活用することが、
再評価と改善を繰り返すPDCCサイクルを構築する仕組みになっている。
 
シェルパブログには「改善提案」などの事例も掲載している。
BIMに関する記事も多くなり、今回はシェルパブログの記事からいくつかの内容紹介と
シェルパでのナレッジ的な取り組みについて紹介させていただく。
 
【シェルパブログ http://sherpa-net.blogspot.jp/
 
 

①目的と目標

BIMに限らず業務に取りかかる前にその業務に対し明確な「目的」があり、
それをさらに具体的な「目標」へとはっきりさせることが重要である。
ここが曖昧であると、業務が進むにつれて大きく的が外れていってしまう。
BIMも同じで、目標が不明確であると、必要な形や情報が欠落し不必要なものが多くなり、そのモデルのインパクトはあるが、
そこから一体何が得られるのかが分からず使えない、使いづらいということに陥ってしまう。
 
例えば「配筋検討をするためにモデルを作る」という場合の目的は、「鉄筋を干渉なく納める」ことであり、得たい効果は明確か、
または干渉確認したい対象物は決めているか、という「目標は何か」へと掘り下げる必要がある。
鉄筋同士が納まるかを考えた時に動かすことが可能なものと不可能なものとに分け、柱・梁の四隅の主筋や鉄骨柱のアンカーボルト、
PC梁の鋼線などは動かせないもの、中央部分の柱・梁主筋や柱HOOP筋などは自由度があ
るものとし、動かせないものから優先順位を付けて干渉チェックをしていくことが重要である。
動かせるものは、動く余裕をあらかじめ見込んでおけば良い。
つまり配筋検討では、「動かせないもの同士が干渉していないことを確認する」ことが目標となる。
 

2013.7.1掲載 BE-Bridgeコンバーターで配筋干渉チェック

ArchiCADで作図した配筋図の配筋の干渉チェックが出来るという話は前々回のブログで紹介されていますが、
BE-Bridgeコンバーターの干渉チェック機能を使ってみました。
アドオンのパイプツールを使用して作図した図面ですが、鉄筋の重なりはゼロタッチで書いています。

 
BE-Bridgeコンバーターで配筋干渉チェック
 
 
このように目的は何で、目標が何になるのか、を明確にしてから業務に取りかかり、
解決ツールとしてBIMを活用していくことが重要だと考えている。
 
 

②手法

ArchiCADスケルトンモデルの活用例 シェルパブログ 2014.5.14掲載

外壁の部分的な改修工事が建物の4面にあって、その概要を説明する資料を作ることになりました。
通常なら4枚の立面図を使って説明することになるのですが、
普段図面を見慣れていない人にイメージを伝えるのはなかなか難しいのではないでしょうか。
アイソメ図で表現しても2面ずつ、2枚の図面を見てもらわなければなりません。
そこでスケルトンの3Dモデルで説明すると、イメージが瞬時に説明できて直感的に相手に伝えることが可能になります。

 
ArchiCADスケルトンモデルの活用例
 
 
この事例の目標は、「改修工事の概要説明をするのに、建物のどこの部分を改修するか分かりやすく表現する」ことである。
 
3Dモデルは関係者共通の見える化がスムーズになる利点があるが、建物の全貌を一度に確認しようと思うと、
意外と「その裏側が分からない」など見えない部分が随所に現れてしまう。
 
そこでこの事例ではその目標を明確にするために、
建物を透明なボリュームで表現して、本来伝えたいものを色付けと注釈で表現している。
建物を輪郭で分かりやすく表現するためにスラブツールを用いて建物を一塊で作成している。
不要な輪郭線を表示しない、というコツが必要で、そのまま建物モデルを利用してもこのように単純に表現することはできない。
しかし、レイヤを分けて作成することで解消できる。
 
レイヤを分けて作成することで解消
 

ArchiCAD 引き出し線付きコメント シェルパブログ 2012.8.1掲載

引き出し線付きのコメントができましたね。
では、F5で3D表示にしてみます。

 
ArchiCAD 引き出し線付きコメント
 
3Dでも表示されました!
施工時の注意事項を書き込んだりするのに利用できますね!

 
3Dでも表示されました
 
 
この事例の目標は、「3D上にテキストを配置することでウォークスルーをしながら注意点などを把握してもらう」ことである。
 
モデルを画面上で回したり歩いたりして見ただけでは、どこの何を確認して欲しいのかがよく分からないことが多い。
そこでデフォルトのオブジェクトである「3D座標」を使い、オブジェクトの設定画面で座標値などを非表示にし、
伝えたい内容を入力したテキストだけを表示して配置している。
 
テキストだけを表示して配置
 

Solibri メンテナンス通路を確保する シェルパブログ 2014.4.23掲載

免震構造の建物の計画時に、「免震装置のメンテナンス通路の確保」がよく問題になりますよね。
Solibri Model Checkerを使って、メンテナンスの為のスペースが確保されているかどうかをチェックしてみましたよ!
 
まず、ArchiCADで躯体モデルへメンテナンスに必要な通路、スペースをモデル入力します。
黄色い部分がメンテナンス通路、ピンクの部分が免震装置を引き抜く際に必要なスペースですよ。
今回はスラブオブジェクトで入力しました。

 
Solibri メンテナンス通路を確保する
 
 
この事例の目標は、「免震階のメンテナンス通路が確保されていることを確認する」ことであり、
Solibriをツールとして用いたものである。
 
この事例でのポイントは、メンテナンスに必要な通路・スペースをモデルで作成し、その部分と設備配管の干渉を確認することであり、
干渉していなければスペースが確保されているということが確認できる。
Solibriはいろいろなルール設定ができるため、チェックする対象を増やしてしまうと結果が分かりづらくなってしまうことがある。
この事例のように、チェックする対象物を「メンテナンススペース」と「設備配管」に絞ることにより
簡単にチェックを行うことが可能となる。
Solibriでは「分類」の機能を使い、属性情報などによるグループ化でチェック対象物を絞り込むことで、
このような確認での使い勝手が良くなる。
 
チェック対象物を絞り込む
 
チェック対象物を絞り込む
 

ArchiCAD 埋設配管の見える化 シェルパブログ 2014.10.9掲載

今回、とある新築工場の外構を含めた埋設配管モデルを作成してみました。
生産工場では将来的な設備更新や増床などで埋設配管類はどんどん進化していってしまいます。
特に既設改修工事では、既存の埋設配管調査が必須となりますよね。
そこで今回は給排水・電気・雨水排水の配管をモデル化しました。
給排水・電気配管のモデルは、サブコンさんが作成したモデルを頂きました。
それぞれをレイヤーに分けて何の配管か解るようにしています。

 
ArchiCAD 埋設配管の見える化
 
 
この事例の目標は、「将来的な敷地利用計画で建物の増築工事における、
“掘削時の注意場所”や“既存埋設管との接続箇所”を見える化する」ことである。
 
工場など、増改築を繰り返す敷地では、新旧の埋設管の状況が分かりにくい。
敷地内の各建物の図面は残っていても図面情報が更新されない、
建物単体の図面はあるが敷地全体のインフラの最新の状態が図面に反映されていない、という事態が多いのが現状である。
問題は、「図面が更新されないこと」であるが、「情報を一つに集約し、施工後に必ず図面を更新する」というルールを決めれば、
各建物を新たに計画する際には、情報をいち早く確認でき、
施工する際には、工場の生産施設を止めてしまうという重大事故を未然に防ぐことができる。
 
「埋設配管の情報の確認」という観点から、埋設管をモデル化し配管系統ごとに色分けをすることで、
どの配管系統がどの場所に埋設されているか、埋設管がどこへ接続さているかが一目瞭然である。
「安全な施工」という観点からは、建物や設備を新築・増築・改築する際に、基礎工事で掘削を行う時の危険箇所の把握、
配管切り回し時の断水範囲や停電範囲など既存建物への影響などを検討することも容易になる。
 
既存建物への影響などを検討
 
 

シェルパの「事前検討会」

シェルパでは社内総力でプロジェクトを支えていく。
社員一人があるプロジェクトに携わっていても、その個人の知識、ノウハウだけでは期待以上の成果が上げられない。
そこでシェルパでは「事前検討会」や「中間検討会」でそのプロジェクトに携わる社員を全社員で支えていく。
またそこで得られた成果を資料として残していくことで、次のプロジェクトへその知識、ノウハウを活用していくことができる。
 
シェルパの「事前検討会」
 
シェルパの「事前検討会」
 
 
 
 

今すぐ使える、実践BIMテクニック~シェルパブログから~《前編》
今すぐ使える、実践BIMテクニック~シェルパブログから~《後編》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2015
特集2「進化するBIM」
建設ITガイド 2015
 
 

最終更新日:2015-05-28

 

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