- 2015-04-26
- 建設ITガイド
IFC検定委員会委員長 足達 嘉信
IFCデータ連携の仕組み
ここでは、IFC検定においてどのような検証が行われるかの理解を深めるために、
BIMソフトウェア間で行われるIFCデータ連携の基本的な仕組みを確認してみたい。
図-4は、BIMソフトウェア間でIFCデータがどのようにデータ連携するかを示した模式図である。
●IFC出力:IFCデータを出力する
BIMソフトウェア上で作成された内部モデルは、パラメトリックな3D幾何形状、
および属性情報から構成されるオブジェクトの集合として存在する。
パラメトリックな3D幾何形状とは、そのオブジェクトの属性情報を制御することにより、
幾何形状やその性質が変化する仕組みで、モデリング作業の効率を高くすることができる。
例えば、ドアオブジェクトの高さ属性を変化させると、ドアの3次元形状の高さも連動して変化することが挙げられる。
MVD-Aに対応したBIMソフトウェアであれば、その内部モデルをMVD-Aに沿った内容で3D幾何形状、
および属性情報が含まれるIFCデータへ変換する。
●IFC入力:IFCデータを入力する
BIMソフトウェアは、IFCデータを内部モデルへ取り込む。
その際、IFCデータが含む3D幾何形状と属性情報が、パラメトリックな3D幾何形状、
およびオブジェクトの属性情報へと変換される。
またこの変換の際、IFCのオブジェクトが持つ3D幾何形状および属性情報からパラメトリックな3D幾何形状を生成される。
または、IFCの3D幾何形状をそのまま、参照モデルとして取り込むこともある。
さらに、IFCデータを入力するBIMソフトウェアの種類によって、BIMデータ連携の内容が変化するが、
その基本的なパターンを図-5に示す。
(1)設計BIMソフトウェアからビューワ系BIMソフトウェア:
IFCデータに含まれている3D幾何形状・属性情報を、
ビューワ系BIMソフトウェアでは編集する必要のない参照モデルとして3D幾何形状をそのまま変換することができるので、
比較的データ変換品質が高い。
(2)設計BIMソフトウェアから解析系ソフトウェア:
IFCデータに含まれている3D幾何形状・属性情報を、解析モデルへ変換する。
設計BIMモデルと解析モデル間にはさまざまな差異が存在するため、
3D幾何形状の補正・簡素化、不足している属性情報の追加、名称・コード番号などの属性値の補正などが必要となる。
(3)設計BIMソフトウェアから設計BIMソフトウェア:
IFCデータに含まれている3D幾何形状・属性情報を、
受け取り側の設計BIMソフトウェアの編集可能な内部設計モデル形式へ変換する。
設計モデルを構成するオブジェクト
(壁・柱、梁などのソフトウェア特有のオブジェクトや、パーツライブラリのオブジェクトなど)には、
2つの設計BIMソフトウェア間に差異があるため、データ変換品質の向上が課題となる。
同様の理由で、設計BIMソフトウェアに対するIFC入力認証は難易度が高くなる。
IFC検定の構成要素
IFC検定において、その対象となるBIMデータ連携仕様を記述するために必要な構成要素を以下に示す。
●BIMデータ連携シナリオ:
目的に合わせたBIMデータ連携仕様の記述。
誰から誰へ、どのような情報を含むBIMモデルがやり取りさせるか、実務上の効果、
BIMソフトウェアへの実装可能性なども考慮して作成することが求められる、IFC検定の基礎的な出発点となる。
●IDM(Information Delivery Manual):
BIMデータ連携シナリオで設定されたユースケース、プロセスおよび情報を体系的に定義するドキュメント。
データ連携に関する要求分析、データフロー分析等をプロセスマップ、Exchange Requirements(ER)などの表現で定義する。
プロセスマップにより、誰から誰へどのような情報が伝達されるかが表現され、ERにより情報の中身に関する内容が定義される。
●MVD(Model View Definition):
データ連携仕様をIFCに基づいて記述するドキュメント。
通常はIDMで定義されたデータ連携要求に基づいて作成される。
MVDコンセプトという単位でIFCのデータ連携仕様が記述されている。
ソフトウェア開発者がIFCデータ入出力を組み込む際のデータ連携仕様の主要な情報となる。
●IAI日本編纂MVD:
IAI日本技術調査委員会が編纂したMVDコンセプト集。
buildingSMART InternationalのMVD CV2.0のサブセットとして編纂されたMVDコンセプト集。
IAI日本のWEBサイトでデータ共有サービス内にて公開される。
●検定の対象となるMVD:
BIMデータ連携シナリオに基づくIDM、またはIDMに準ずるBIMデータ連携仕様を基に、
IAI日本編纂MVDから必要なMVDコンセプトを選択したものとなる。
検定対象MVDには、どのIFCクラスが対象か、必要な属性、
3D幾何形状の表現パターン(ソリッドモデル・サーフェースモデルなどの形式)などの情報が体系的に記述されることになる。
IFC検定の対象となるMVD例
2014年度にIFC検定の対象となるMVDは、「設備モデルビュー定義2014」と呼ばれるもので、
設備分野のオブジェクト(制気口、ダクト、配管、電気ケーブルラックなど)についての、
IFCの3D幾何形状表現、属性、プロパティセットなどのBIMデータ連携を目的としている(図- 6、7)。
基本的な部分は、国際IFC認証のMVDであるCV2.0をベースとしており、その部分は互換性が保たれるようになっている。
「設備モデルビュー定義2014」は、59のMVDコンセプトから構成されており、そのうちの5つが、
IAI日本設備FM分科会が策定した設備IFC利用標準で定義されているプロパティセット定義のコンセプトとなっている。
IFC検定の将来像
2014年度は、MVD設備モデルビュー定義2014を対象としたIFC検定が実施される。
2015年以降のIFC検定対象となるBIMデータ連携シナリオについては、IAI日本の各分科会で検討が進められている。
以下に、今後IFC検定対象となる可能性のある分野を示す。
●意匠分科会:
・確認申請分野:申請者から確認機関へのBIMデータ連携
・仕上げ積算:設計者から積算技術者へのBIMデータ連携
●構造分科会:
・通芯、部材断面などのBIMデータ連携
・ST-BridgeからIFCへの変換
●設備分科会:
・エネルギー計算へのBIMデータ連携
・CFD(熱流体シミュレーション)へのBIMデータ連携
●土木分科会:
・道路中心線形モデル
BIMによるコラボレーション活性化には、設計・施工・維持管理などのエンドユーザ、BIMコンサルタント、
BIMソフトウェアベンダーなどさまざまな立場の関係者が参加して、
BIMデータ連携シナリオの策定や実務でのBIMデータの活用を担うBIM人材の育成を共に進めることが必要である。
IFC検定のプロセス全体を通して、IDMやMVDなど、BIMデータ連携仕様を体系的に定義する手法を、
BIM人材共通の知識として共有していきたいと考えている。
また、その延長線上に、日本発のBIMプロセスを海外へ発信するとともに、
現在海外で行われている国際IFC認証を日本国内でも行えるような体制を築いていく予定である。
おわりに
本稿では、IAI日本が今年度から開始したIFC検定について、
過去に日本で行われた初期のIFC R2.0認証から現在行われている国際IFC認証までの流れ、
そしてBIMデータ連携仕様の定義に用いられているIDMやMVDなどの仕組みについて触れ、IFC検定の概要を紹介した。
IFC検定が開始される2014年度は、MVD設備モデルビュー定義2014のみがIFC検定の対象であるが、
IAI日本の各分科会ではさまざまなBIMデータ連携シナリオの可能性を今後も検討して行く予定である。
日本のBIMを活性化させるため、より多くの皆様のIAI日本への参加、IFC検定に関わる活動への参加をお待ちしている。
参考文献
●IFC検定ガイドライン, 一般社団法人 IAI日本, 2014年11月
●IAI日本編纂MVDコンセプト集, 一般社団法人 IAI日本, 2014年11月
●設備モデルビュー定義2014, 一般社団法人IAI日本, 2014年11月
●IFC認証:IAI日本News Letter, Vol.8, 2002年10月
●IFC R2.0 認証ワークショップ:IAI日本 News Letter, Vol.9, 2003年1月
●IFC Certification 2.0, buildingSMART Technical WEB site:http://www.buildingsmart-tech.org/certification/ifc-certification-2.0
BIMデータ連携を支えるIFC検定の概要《前編》
BIMデータ連携を支えるIFC検定の概要《後編》
【出典】
建設ITガイド 2015
特集2「進化するBIM」

同じカテゴリの新着記事
- 2019-07-31
- 建設ITガイド
- 2019-07-24
- 建設ITガイド
- 2019-07-19
- 建設ITガイド
- 2019-07-12
- 建設ITガイド
- 2019-07-05
- 建設ITガイド
- 2019-07-03
- 建設ITガイド
- 2019-06-28
- 建設ITガイド