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西日本高速道路株式会社 技術本部技術環境部
枦木(はしのき) 正喜・大原 基憲

 

1.はじめに

高速道路会社(NEXCO3社)が管理する高速道路の構造物は、表-1に示すように、供用後30年以上経過している割合が橋梁で約4割、
トンネルで約2割を占めており、安全安心な道路機能の提供において構造物の老朽化対策が大きな課題となっている。
 

表-1 構造物の経過年数比率(%)(H25.3現在)

表-1 構造物の経過年数比率(%)(H25.3現在)


 
老朽化した構造物の補修や更新を効果的かつ効率的に行うには、信頼性の高い点検データを取得して、
変状の進行程度を的確に把握する必要がある。
 
また、平成26年7月に「道路法施行規則の一部を改正する省令」が施行され、これに対応するため、
高速道路の定期点検(詳細点検)の基準が見直され、保全事業に占める点検業務の割合がさらに増加する傾向にあり、
よりいっそうの点検の効率化が求められる状況となっている。
点検基準の主な改定内容は以下のとおりである。
 
 ●点検頻度:5年~10年に1回→ 5年に1回
 ●点検手法:肉眼による近接目視が基本
 
そこで、構造物点検の信頼性および効率性の向上を図ることを目的に、デジタル画像を用いた点検システムの導入を進めている。
本稿では、橋梁デジタル点検システムおよびトンネル覆工点検システムの概要について述べる。
 
 

2.橋梁デジタル点検システム

2.1 橋梁点検の現況

現在の橋梁点検では、検査路や足場、点検車両等により対象物に接近して、構造物の変状箇所を手書きで写し取り、
その状態を写真撮影して点検報告書を作成している。
点検報告書には確認したひび割れや鉄筋露出、エフロレッセンス等の変状発生状況を模式図もしくは近接写真で記録する。
その状況図や現地で得られた情報に基づき変状程度の判定を行うとともに、補修、経過観察等の判断を行っている。
 
こうした点検員の技能を主体とした手法では判定に個人差が生じることが潜在し、
健全度評価や変状の進行程度の評価にばらつきが生じる可能性がある。
また、変状部のみが記録されるため、健全部の健全である客観的なデータが取得されていないという問題もある。
 
また、点検業務は高所や高速道路本線上の作業も伴う肉体労働である一方で、技術的知見も求められる業務でもある。
点検業務の重要性が高まる中、人材育成および人材確保が課題となっており、
本システムのようなデジタル機器を導入することによって省力化を実現し、適正な体制の維持に寄与することも必要とされている。
 

2.2 デジタルカメラシステムの概要

平成23年度からデジタル一眼レフカメラを用いたコンクリート表面の自動撮影システム(デジタルカメラシステム、写真-1
の開発を始め、平成25年度から実際の点検現場への導入を進めている。
 

写真-1 デジタルカメラシステム

写真-1 デジタルカメラシステム


 
本システムは、高性能デジタルカメラにより高分解能で撮影したコンクリート表面の画像を正確に貼り合わせ、
径間ごとに一枚の写真を生成し、コンクリート表面に生じたひび割れを高精度で自動抽出するものである。
撮影システムの仕様を表-2に示す。
 
表-2 撮影システムの仕様

表-2 撮影システムの仕様


 
本システムは表-2の撮影機器とそれを制御するソフトウェアから構成され、①~⑦に示す手順で撮影および、ひび割れ自動抽出を行う。
 
①点検対象構造物の下に撮影機器をセットし、制御ソフトを起動する(写真-2)
 
写真-2 システム設置

写真-2 システム設置


 
②パソコンの画面上に表示される撮影可能な範囲から撮影範囲を手動で指定し、ソフトウェアが撮影計画を自動設定する(写真-3)
 
写真-3 撮影計画自動設定

写真-3 撮影計画自動設定


 
③自動撮影が開始される。
 
④自動で生成される簡易貼り合わせ画像(写真-4)により、写真がエラーなく撮影されたか確認する。
 エラーがあった場合はその部分のみを指定することにより自動で撮り直しを行う。
 
写真-4 簡易貼り合わせ画像

写真-4 簡易貼り合わせ画像


 
⑤漏れなく撮影されていることが確認されたら、次の撮影位置に移動し、①~④を繰り返す。
 
⑥以降は室内作業となる。
 簡易貼り合わせ画像では、色むらや貼り合わせ誤差が存在するため、詳細な貼り合わせをあらためて自動で行う(写真-5)
 
写真-5 詳細貼り合わせ画像

写真-5 詳細貼り合わせ画像


 
⑦0.2mm以上のひび割れを自動抽出する(写真-6)
 ひび割れ自動抽出は、人の目で確認して作成したひび割れ展開図と比較して現状では80%以上の精度である。
 
写真-6 ひび割れ自動抽出

写真-6 ひび割れ自動抽出


 
なお、⑥⑦の作業は自動で順次実行させることができるため、人の付添い無しで大量のデータ処理をまとめて行うことが可能である。
 
デジタルカメラシステムの適用は、写真-2のように撮影対象物下にシステムを設置できる地盤があり、
また画像解析処理のために撮影対象物が平面であることが条件となる。
なお、撮影距離40mまで80%以上の精度で0.2mm以上のひび割れ自動抽出が可能である。
撮影、詳細画像貼り合わせに要する時間は条件により異なるが、
桁下6.7mのRC 中空床版下面約85㎡(12.7m×6.7m)の撮影において、13分間で144枚撮影し、
簡易貼り合わせに1分、詳細貼り合わせに15分、ひび割れ自動抽出に100分を要した。
 

2.3 小型ビデオカメラシステムの概要

デジタルカメラシステムでの撮影が困難なPC箱桁内部や鋼桁橋の床版等の撮影障害物の多い箇所、
および対象面の下に三脚を設置できない河川上の構造物等の撮影に適用するため、
平成24年度から小型ビデオカメラを用いたシステムを開発し、試行導入を行っている。
このシステムは、点検員が撮影機器を装着して歩行撮影を行う。
画像解析に用いるソフトウェアはデジタルカメラシステムと同一のものであり、ひび割れ抽出の精度も同等である。
撮影距離は1~20mとしている(写真-7・8)
 

写真-7 小型ビデオカメラシステム

写真-7 小型ビデオカメラシステム


 
写真-8 台車を用いたPC箱桁内部の撮影状況

写真-8 台車を用いたPC箱桁内部の撮影状況


 
本システムについては、ビデオカメラのコンパクト化による軽量化を検討しているところである。
 

2.4 期待される効果

橋梁デジタル点検システムは、近年進歩が著しいデジタルカメラ等による高精細画像撮影技術を用いることにより、
これまで双眼鏡による目視や高所作業車等を用いて点検を行っていたような高所においても、
地面からの自動撮影で近接目視相当の点検画像を得ようとするものである。
これにより、点検作業の効率化および点検結果のばらつきの排除が可能となる。
また、点検対象をすべて画像に残すため、健全部の記録も残せることとなる。
さらに、過去に撮影された画像と現在の画像を比較することで、変状の進行程度を定量的に把握し、
コンクリート構造物のモニタリングも可能となる。
今後、この画像比較を自動で行う技術も開発していく予定である。
 
ただし、これらの高精細画像による点検は主に構造物の表面の情報を取得するものであり、
そのまま打音点検を要する点検の代替とするには、いくつかの課題を解決する必要がある。
しかし、点検の記録としては、大幅な信頼性の向上と効率化が図れるものと考えている。
 
 

3. トンネル覆工点検システム

3.1 トンネル覆工点検システムの現況

トンネル覆工点検システムは、走行する車両からトンネル覆工表面を撮影し、
覆工表面画像からトンネル覆工表面の状態を評価することを可能としており、
西日本高速道路管内のトンネル点検に使用されている。
 
従来から使用しているトンネル覆工点検システム(以下、「従来システム」という)は、
撮影用車両にハイビジョンビデオカメラを搭載し、80km/hで走行しながら覆工表面画像を取得できる仕組みになっている。
取得した覆工表面画像からひび割れ等を人力作業により机上で抽出し、
損傷展開図を作成した後、覆工表面の損傷程度を判定していた。
そのため、作業に従事する点検員の技能によっては、ひび割れ等の抽出や変状程度の判定にばらつきが生じる可能性があり、
トンネル覆工表面の定量的な評価が難しい状況であった。
さらに、人力作業であるため、損傷展開図の作成には多大な時間と費用が必要であった。
 
そこで、上記の課題を解決し、トンネル点検の更なる効率化、精度向上および安全性向上を図るため、
新たなトンネル覆工点検システム(以下、「新システム」という)を開発した。
ここでは、新システムの内容について紹介する。
 

3.2 新システムの開発目標

新システムの開発目標は、従来システムと比較して、以下の内容を満足するものとした。
 
①覆工表面画像の合成、および損傷展開図の作成に要する作業期間を短縮する。
②ひび割れ抽出を自動化し、トンネル覆工表面の状態を定量的に評価する。
&#9314
;覆工撮影時において、撮影用車両による一般車両(お客さま)への交通障害をなくす。
 

3.3 撮影用車両

(1)ラインセンサカメラの導入
新システムの撮影用車両(写真-9)に搭載するカメラには、効率的な損傷展開図の作成を目的として、ラインセンサカメラを採用した。
ラインセンサカメラは、センサ(感光部)が1列に配置されており、撮影対象を帯状に撮影することができる。
これにより、従来システムでは、ハイビジョンビデオカメラで記録した動画から静止画像を抽出し、合成・編集する必要があったが、
新システムでは、撮影用車両が走行することにより、トンネル横断方向の帯状の画像が、
トンネル縦断方向に連続で撮影された静止画像として取得されるため、従来システムのような画像の合成作業が不要となる。
 

写真-9 撮影用車両外観(新システム)

写真-9 撮影用車両外観(新システム)


 
加えて、採用したラインセンサカメラは、従来システムのハイビジョンカメラと比較して画像解像度が高く、
覆工表面を細部まで撮影が可能であるため、高解像度の覆工画像を取得することができる。
つまり、新システムでは、従来システムと比較して、効率的に高解像度の覆工画像作成が可能となった。
 
さらに、カメラのシャッタースピードが超高速度であるため、
撮影時の走行速度が100km/hでも覆工表面画像を撮影することが可能となった。
この結果、撮影用車両の走行速度に起因する交通阻害で一般車両の走行環境に与える影響がなくなり、
お客さまサービスの向上に寄与している。
 
(2)赤外線照明の採用
ラインセンサカメラの導入に加えて、撮影時に使用する照明には、赤外線照明を採用した。
従来システムでは、照度の高い照明を採用していたため、
撮影時、一般車両のドライバの視界阻害や脇見運転の原因となる恐れがあり、
安全面から後尾警戒車の伴走が必要であった(写真-10)
 
写真-10 後尾警戒車の伴走状況

写真-10 後尾警戒車の伴走状況


 
一方、新システムでは、不可視光である赤外線照明を採用したことにより、撮影に伴うドライバへの影響がなくなり、
お客さまへの安全安心の向上につながった(写真-11)
さらに、従来伴走させていた後尾警戒車も不要となり、撮影費用の削減が可能となった。
 
写真-11 赤外線照明による覆工撮影状況

写真-11 赤外線照明による覆工撮影状況


 
さらに、赤外線が苔や煤塵などを透過する特性から、苔や煤塵に覆われた覆工表面のひび割れが判読しやすくなった(写真-12)
 
写真-12 赤外線による苔の透過

写真-12 赤外線による苔の透過


 
これは、赤外線の波長が長波長であることに影響していると推察される。
この赤外線の特性により、苔や煤塵などの付着した覆工表面であっても、
ひび割れの撮影および捕捉、ならびにひび割れ抽出精度が向上するものと思われる。
 

3.4 ひび割れ自動抽出システム

新システムでは、前述した橋梁デジタル点検システムに使用しているひび割れ自動抽出機能を組み入れ、
覆工画像の解析を自動で行うシステムとした。
ひび割れ自動抽出機能は、高解像度画像の色の濃淡差を二値化アルゴリズムにより解析することで、ひび割れを自動で抽出し、
撮影画像にひび割れを自動で描画して損傷展開図を出力する機能である。
この機能を組み入れたことにより、覆工画像を用いてひび割れの抽出から損傷展開図の作成までを自動で行うことが可能になり、
点検員による人力作業は、損傷展開図の最終的な確認行為のみとなった(写真-13)
 

写真-13 ひび割れ自動抽出

写真-13 ひび割れ自動抽出


 
この結果、従来システムの課題であった点検員による判定のばらつきが低減でき、ひび割れ幅も含めた定量的な抽出が可能となった。
また、この自動化により、現地撮影から損傷展開図作成までにかかる作業期間が、
従来システムに比較して約1/3に短縮されると試算しており、作業の効率化にも寄与できる。
これは、トンネル覆工表面の損傷の早期発見につながるため、お客さまの安全安心に寄与することが期待される。
さらに、作業の効率化に伴い、上記作業に要する費用は、従来システムで実施した場合の費用に比べ、約3割削減することが可能となる。
 
 

4.おわりに

当社では、デジタル画像を用いた点検システムとして、他にも舗装路面の撮影システム等も導入しており、
膨大な量の画像データを用いて点検を行っている。
これらの画像に位置情報を付与し、位置情報付き路上走行画像システム(写真-14)を用いて一元管理することで、
これまで個別に開発されてきた点検技術の相乗効果が発揮されることも期待できる。
 

写真-14  路上走行画像システム

写真-14  路上走行画像システム


 
また、赤外線を用いた点検システムとの連携、蓄積したデータや点検・調査結果のマネジメントシステムへの反映が、経年変化のモニタリング、マネジメントシステムの精度向上、ひいてはより効率的な資産管理につながると期待している。
 
 
 
【出典】


月刊 積算資料公表価格版2015年4月号
特集「高速道路を守る技術と製品」
月刊 積算資料公表価格版2015年4月号
 
 

 

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