• 建設資材を探す
  • 電子カタログを探す
ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 「政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン」の策定経緯と概要《後編》

 

前 総務省行政管理局副管理官 大平 利幸
(おおだいら としゆき、現 愛媛県西予(せいよ)市企画財務部長)
現 総務省行政管理局副管理官 大堀 芳文
(おおほり よしふみ、併任 内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室)

 

5.ITマネジメント編

ITマネジメント編では、情報システム及びその業務の企画、運営及び見直しについて
PJMOが主に関与するプロセスを中心にまとめている。
その内容は多岐にわたるため、本稿では次の項目に絞って解説する。
 

5.1. プロジェクトの管理

これまでの指針類では、
プロジェクトの管理は専ら情報システムの整備等に係る「受注者」(民間事業者)が行うものであると考えられてきたことから、
その内容を政府として具体的に規定してこなかった。
しかし、情報システムの導入に係るプロジェクトの失敗例も報告されるようになり、
発注者によるプロジェクト管理の重要性が指摘された。
これを踏まえ、標準ガイドラインでは、プロジェクト計画書及びプロジェクト管理要領の作成、
第三者によるレビュー(工程レビュー)制度の導入等を具体的に盛り込んだ。
 
また、最適化指針ではプロジェクトの終期を規定していなかったが、
標準ガイドラインではこれを規定し、情報システムのライフサイクル全体を一つのプロジェクトと捉えるようにした。
すなわち、標準ガイドラインは、プロジェクトの概念について、
PJMOの視点に立ち、情報システムによる政策目的・目標の実現がプロジェクトの役割に他ならないことから、
原則、情報システムの更改までを一つのプロジェクトと捉えた(図表-1)
 

図表-1 プロジェクトの管理

図表-1 プロジェクトの管理


 

5.2. 予算要求

予算要求については、毎年「戦略的予算重点方針」を政府CIOが打ち出し、これを踏まえ、各種作業や調整が行われる。
このうち基本的なものを標準ガイドラインで規定した。
この際、経費については「別紙2」に基づき、区分等する(図表-2)
 

図表-2 標準ガイドライン別紙2 情報システムの経費区分

図表-2 標準ガイドライン別紙2 情報システムの経費区分


 
また、見積りについては、定量化した根拠を求めるため、ファンクション・ポイント(FP)による見積りを原則化した。
PJMOが情報システムに担わせたい機能等について事前にその内容を詰めなければ、FPによる見積りが概算でも困難である。
よって、法令等の制度を立案する時点で新制度施行後の実際の運用までを見据えた検討をするよう方向付けることを
意図したものである。
 

5.3. 業務の見直しと要件定義

最適化指針においては、米国のエンタープライズ・アーキテクチャ(EA)を参考に、
機能情報関連図(DFD)といった業務・システムの分析と要件を検討する上で作成するドキュメント類を標準化していた。
しかし、ドキュメントの整備が重視され過ぎ、最適化の計画策定が多大なドキュメントワークと化してしまった上、
その後ドキュメントの更新がなされないといった問題が生じた。
 
このため、標準ガイドラインでは、どのようなドキュメントを作成するかでなく、どのように業務を分析し、業務を組み立て、
また、どのような情報システムとして稼働させていくかという点を中心に規定を設けた。
 
また、要件定義では、最適化指針と調達指針との整合性を図り、機能要件と非機能要件に整理の上規定した。
特に、政府共通プラットフォームといった府省共通システムが提供する機能等を最大限活用することとした。
中立性に関する事項については、最適化指針では明確でなかったことから、
標準ガイドラインでは、技術及び製品の中立性として再整理し、製品指定をしたい場合にはここで記載することとした。
 

5.4. 調達

今回、調達指針における調達の原則分離発注の要件を緩和した。
調達指針では、もともとベンダーロックインを排除し、大手以外のベンダーにも受注の機会を拡大させる狙いがあった。
しかし、情報システムの機能を分離して調達し、その結果、思わぬ結果を招いた事例が報告されるなど、
プロジェクト管理に慣れないPJMOが複数の事業者を管理・統括することに困難が伴った。
 
また、入札制限については、標準ガイドラインでは、従来取り組んできた透明性及び公正性確保の観点だけでなく、
確実な契約履行等を重視する考え方も踏まえて、各工程の調達仕様書の作成に直接関与した事業者等に係る制限を示した。
さらに、従来、特定の情報システムの調達案件については、総務省行政管理局の承認が必要であったが、
これを廃止し、工程レビュー制度に置き換えた。
 

5.5. 設計・開発

最適化指針では、設計・開発は主に事業者が実施主体として記述されていたが、
標準ガイドラインでは、PJMO を主体として規定し直している。
 
最適化指針における進捗管理では必須とされたアーンドバリューマネジメント(EVM)については、議論があったことから、
府省CIO補佐官の助言の下、ケースバイケースで適用することとした。
 
また、情報システムの移行については、度々問題が発生したことから、標準ガイドラインでは「移行判定」という考え方を設けた。
 

5.6. 業務の運営と改善

これまでの指針類にはない、全くの新しい内容として「業務の運営と改善」の章を設けた。
PJMOにとって、想定どおりの情報システムの導入及びその安定運用により、対象とする業務自体がうまく機能することが重要であり、
その観念の定着を図ったものである。
 
内容としては、業務開始前のリハーサルの実施、教育・訓練の実施、運営状況のモニタリング、運営の定着、業務の改善等とし、
情報システムを用いたより効果的な業務の実施とこれによる政策目的・目標の実現を推進している。
 

5.7. 運用及び保守

運用及び保守については、従来、「作業」であるという考え方の下、作業項目とその作業水準についてのみ要求し、
サービスマネジメントの概念がなかった。
そこで、標準ガイドラインでは、運用及び保守段階においても不断の改善を求めることとし、
その管理のための計画書及び管理要領の作成等を義務付けることで、サービスマネジメントの実行を要求した。
 
また、最適化指針では、運用及び保守をまとめて規定していたが、運用及び保守は異なるものであることから、
標準ガイドラインでは両者を分けて規定した。
定常時と障害発生時でも対応が異なることから、これも分けて規定している。
大規模災害に備え、緊急時のための訓練を実施することも明記した。
 
さらに、標準ガイドラインでは、ライセンス管理とシステム構成管理を行うため、情報システムの現状確認を取り入れるとともに、
運用及び保守業務の改善や事業者間の引継ぎについても規定している。
 

5.8. システム監査

標準ガイドラインでは、システム監査を明記し、毎年PMOが洗い替えをする3カ年分のシステム監査計画に原則基づいて、
特定のPJMOが監査を行うこととした。
監査対象のプロジェクトに関与していない者が半数以上を占める監査体制の確立、
監査実施計画書、監査手続書、監査調書等の作成、フォローアップ等を位置付けた。
 
 

6.おわりに

標準ガイドライン策定の総括を担当した筆者にとっては、未だ不十分な点の指摘はあるものの、
情報システム共通のルールとしてスタートが切れたことにまずは意義があると考えている。
 
次のフェーズは、実際にこれをどううまく活用するかである。
標準ガイドラインは現時点版が最終型ではない。
技術の進展や政府における実践の積上げ等により、進化させることが重要である。
 
また、民間事業者の理解なくして標準ガイドラインの実効性は担保できない。
説明会を開催し、図表-3等を用い、趣旨・内容の周知に努めている。
 

図表-3 政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン(概要)

図表-3 政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン(概要)


 
今後とも、一層の電子政府の推進がなされるよう最善を尽くしたい。
 
 
 
「政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン」の策定経緯と概要《前編》
「政府情報システムの整備及び管理に関する標準ガイドライン」の策定経緯と概要《後編》
 
 
 
【出典】


月刊積算資料2015年4月号
月刊積算資料2015年4月号
 
 

最終更新日:2015-12-09

 

同じカテゴリの新着記事

ピックアップ電子カタログ

最新の記事5件

カテゴリ一覧

話題の新商品