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ホーム > 建設情報クリップ > 建築施工単価 > 廃校施設の有効活用について

1 はじめに

近年、少子化による児童生徒数の減少により、毎年500校前後の廃校が発生しています。
このような中、活用が図られず、遊休施設となっている廃校が多く存在し、その有効活用が課題となっています。
 
文部科学省が行った「廃校施設等活用状況実態調査」によると、平成14年度から平成23年度の過去10年間に発生した廃校は、
建物が現存するもののうち、約7割が何らかの施設として活用されている一方、約2割が活用用途未定となっています(図-1 、2)
 

図-1 廃校の活用用途

図-1 廃校の活用用途


 
図-2 公 立学校の廃校活用状況( 平成24年5月1日現在)

図-2 公 立学校の廃校活用状況( 平成24年5月1日現在)


 
廃校施設の活用が進まない理由としては、各地方公共団体(都道府県・市区町村)において活用を検討しているものの、
地域等からの要望がない、活用方法が分からないといったことが挙げられています。
 
文部科学省においては、このような課題の解消を図るため、これまでの取組に加え、
平成22年に「みんなの廃校プロジェクト」を立ち上げ、各地方公共団体の廃校活用を支援することとしました。
 
 

2 これまでの取組~財産処分手続の大幅な弾力化・簡素化~

国庫補助金により整備された公立学校施設を、当初の補助目的に反して処分する場合は、
「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」(昭和三十年法律第百七十九号)の規定により、
当該施設を整備した地方公共団体は、
国庫補助相当額を国に納付した上で文部科学大臣の承認を得る手続(財産処分手続)が必要となります。
 
文部科学省では、これまでも財産処分手続の弾力化・簡素化を図ってきましたが、
近年における急速な少子高齢化の進展、産業構造の変化等の社会経済情勢の変化に対応するとともに、
既存ストックを効率的に活用した地域活性化を図るため、平成20年6月に財産処分手続を大幅に弾力化・簡素化しました。
主なものとしては、次のとおりです。
 
(1)国庫補助事業完了後10年以上経過した施設等を無償で財産処分(転用・貸与・譲渡・取壊し等)する場合は、
  原則として相手先を問わず国庫納付金を免除したこと。
 
(2)国庫補助事業完了後10年以上経過した施設等を有償で財産処分する場合は、
  国庫補助相当額を、当該地方公共団体の学校施設整備のための基金へ積み立てることを条件に、
  国庫納付金を免除したこと。
 
(3)耐震補強事業又は大規模改造事業(石綿及びPCB対策工事に限る)を実施した施設等を無償で財産処分する場合は、
  国庫補助事業完了後10年未満でも国庫納付金を免除したこと。
 
(4)大規模改造事業((3)を除く)で、以下の条件に該当する場合は国庫納付金を免除したこと。
  ●建物本体は国庫補助事業完了後10年以上経過している。
  ●無償による財産処分である。
 
(5)国庫補助事業完了後10年未満でも、市町村合併に伴い、
  学校統合などをした建物等の無償による財産処分について、国庫納付金を免除したこと。
 
このように、ほとんどの場合で国庫納付金を免除するとともに、
事務手続においても、承認ではなく報告で済ませることができるようにするなど、財産処分手続を大幅に弾力化・簡素化しました。
 
 

3 みんなの廃校プロジェクト

文部科学省では、平成22年に「みんなの廃校プロジェクト」を立ち上げ、地方公共団体における廃校の活用を支援しています。
 
まず、各地方公共団体において活用方法や利用者を募集している未活用の廃校の情報について、
地方公共団体の希望に基づき「活用用途募集廃校施設等一覧」として集約し、文部科学省のホームページ上で公表しています。
多くの民間企業、学校法人、NPO法人等に情報を提供することで、
廃校の情報と活用ニーズのマッチングに繋がるものと考えています(図-3)
 

図-3 「みんなの廃校プロジェクト」~廃校の情報と活用ニーズのマッチング~

図-3 「みんなの廃校プロジェクト」~廃校の情報と活用ニーズのマッチング~


 
次に、「廃校施設等活用事例リンク集」を掲載しています。
現在、廃校は様々な用途に活用されており、公民館などの社会教育施設や、体育館などの社会体育施設といった公共施設以外にも、
宿泊施設や美術館、創業支援施設など、民間のアイディアを活用して廃校を生まれ変わらせた事例も数多く存在しています。
「廃校施設をどう活用してよいのか分からない」という地方公共団体から多く聞かれる声に応えるため、
このリンク集で特徴的な廃校の転用事例をまとめました。
多くの事例を紹介することにより、
地方公共団体や地域住民、その他運営主体の創意工夫を生み出すきっかけとなるものと考えています。
 
廃校を活用する際に改修が必要となる場合は、関係省庁の補助金を活用することができる場合があります。
このため、「廃校施設等の活用にあたり利用可能な補助制度」を取りまとめて周知しています。
 
 

4 廃校施設の有効活用による地域活性化の取組

活用事例1

温泉トラフグ養殖施設(栃木県那珂川(なかがわ)町、旧武茂(むも)小学校)
町に湧き出る天然温泉の有効成分を利用して、トラフグの養殖生産を行い町の特産品ブランドとして町おこしを行っている事例です。
 

教室に設置されたトラフグの水槽

教室に設置されたトラフグの水槽


 

活用事例2

京都国際マンガミュージアム(京都府京都市、旧龍池(たついけ)小学校)
マンガ資料を収集・保存し、博物館・図書館、研究、生涯学習、新産業創出・人材育成の各種機能を有する
全国初のマンガ文化の総合拠点として活用されています。
 

ミュージアムの外でくつろぎながらマンガを読んでいる人々

ミュージアムの外でくつろぎながらマンガを読んでいる人々


 

活用事例3

なみの高原やすらぎ交流館(熊本県阿蘇市、旧小池野(しょうちの)小学校)
住民による特産野菜を活用した地産地消メニューの開発や、学校と連携した農林業体験型研修、環境教育事業を実施するなど、
都市と農村の交流拠点として活用されています。
 

施設をバックに集合写真

施設をバックに集合写真


 

活用事例4

神奈川県立横浜ひなたやま支援学校(神奈川県横浜市、旧日向山(ひなたやま)小学校)
市立小学校の廃校施設を、県立特別支援学校へ転用した事例です。
地域活動の拠点機能も備え、生徒と住民の交流も盛んに行われています。
 

正門からの校舎写真

正門からの校舎写真


 

活用事例5

多度津(たどつ)町高見島研修センター(香川県多度津町、旧高見小中学校)
豊かな自然環境の中で、廃校施設を社会教育団体や学校の活動拠点として活用している事例です。
野外活動体験施設として炊事場も併設され、子どもたちの宿泊キャンプなども行われています。
 

社会教育活動の一コマ

社会教育活動の一コマ


 

活用事例6

グループホームのんびり館・老人ホーム高原の郷(高知県大月町、旧春遠(はるどお)小学校)
厚生労働省の補助を利用し、廃校施設を老人福祉施設として活用している事例です。
廃校を活用することにより、地域の人に親しみを持ってもらえる施設となりました。
 

学校時代の柱が残る内装

学校時代の柱が残る内装


 
 

5 おわりに

廃校施設の活用は、アイディア次第で無限の可能性を秘めています。
地方公共団体においては、教育委員会や管財部局のみならず、
子育て・福祉・経済・観光関連部局など様々な部局と活用の可能性を模索していただき、
民間事業者等においては、
公共の枠にとらわれない柔軟な発想を持って新たな活用の可能性を地方公共団体に提案していただきたいと考えています。
 
文部科学省としては、財産処分手続の大幅な弾力化・簡素化や、
「みんなの廃校プロジェクト」による「活用用途募集廃校施設等一覧」、
「廃校施設等活用事例リンク集」や「廃校施設等の活用にあたり利用可能な補助制度」などの情報提供を行い、
引き続き、各地方公共団体の廃校施設の有効活用への取組を積極的に支援していきます。
 
※文部科学省施設助成課
「みんなの廃校プロジェクト」ホームページ
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyosei/1296809.htm
 
「みんなの廃校プロジェクト」ホームページ
 
 

筆者

文部科学省大臣官房文教施設企画部 施設助成課振興地域係
 
 
 
【出典】


季刊建築施工単価2014年春号
季刊建築施工単価2014年春号
 
 

最終更新日:2015-07-21

 

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