- 2015-06-18
- 積算資料公表価格版
1.はじめに
平成26年8月1日から8月10日にかけて台風第12号および台風第11号が四国地方に襲来し、本県にも多大な爪痕を残した。
7月30日から8月26日までの総雨量は、香美市繁藤2,377.5mm、馬路村魚梁瀬2,293.0mm、仁淀川町鳥形山2,253.0mm、
津野町船戸2,038.5mm、本山町本山で1,911.5mmを記録し、
未曾有の災害を引き起こした昭和51年災害に匹敵する規模(図-1)の降雨となり、
県内全域でがけ崩れが196カ所、地すべりが22カ所発生した。
以下、今回の豪雨災害を受けて本県の土砂災害に対するソフト対策およびハード対策を紹介する。
2.ソフト対策
本県は、山地面積が85.5%と広大で、土砂災害危険箇所数は18,112カ所にのぼり全国7位である。
しかし、市町村の地域防災計画で警戒避難体制が整備される土砂災害警戒区域等の指定率は、42.1%(平成27年2月末現在)であり、
これらに対する県民の意識もいまだ醸成されていないため、平成27年度から砂防基礎調査の調査箇所を倍増させるとともに、
4つの対応策(図-2)を打ち出すこととした。
2.1 土砂災害危険箇所のさらなる周知
砂防基礎調査の促進を図っていくものの、県内全域の土砂災害警戒区域等の指定には一定の期間を要するため、
その間の備えとして土砂災害危険箇所等の再周知を図ることとした。
具体策としては、土砂災害危険箇所マップ(図-3)および土砂災害への備えを啓発する冊子の全戸配布(約33万世帯)である。
このマップの特徴は、国土交通省所管の土砂災害危険箇所に加えて、
林野庁所管の山地災害危険地区8,716箇所および農林水産省所管の地すべり危険箇所120カ所も収録している点である。
土砂災害は、雨の降り方や地形、地質によって、危険箇所等以外でも起こりうるため、所管を超えた再周知を図ることとし、
冊子と併せて6月の土砂災害防止月間を目標に全戸配布予定である。
また、冊子を基にした防災学習用の教材を作成して市町村等に配布することで、
マップや冊子を活用した自主防災組織等での防災学習にも役立てる予定である。
2.2 住民の避難行動に結びつく訓練の充実
本県は、全国有数の多雨地域であるだけでなく、
30年以内の南海地震の発生確率が70%程度あり、大規模土砂災害発生の危険性が高まっている。
したがって、豪雨や地震による大規模土砂災害が多発した場合、山間部では孤立集落が発生することが想定される。
そこで、行政機関による豪雨後の大規模土砂災害や南海トラフ地震後の河道閉塞を想定した
情報伝達訓練および地域住民による避難訓練を実施することとした。
平成26年度は、四万十市大用地区(図-4)、越知町南ノ川地区、馬路村日浦地区、高知市鏡的渕地区において実施し、
孤立集落対策を含む大規模土砂災害発生時の土砂災害防止法に基づく国、県、市町村の連携強化を図った。
今後も危機管理部局等とも協力して訓練を継続する予定であり、住民の避難行動に結びつく訓練を充実させていきたいと考えている。
2.3 土砂災害危険箇所等の緊急点検
今回の豪雨で土砂災害が発生または記録的な雨量を観測した市町村では、
地盤が緩み今後の出水で土砂災害が多発する可能性があるため、
人的被害の恐れの高い土砂災害危険箇所(土石流危険渓流Ⅰ 822カ所、地すべり危険箇所83カ所)
および砂防施設等(砂防施設460基、地すべり施設15施設)について緊急点検することとした(図-5)。
点検方法は、平成10~15年度に整備された各危険箇所のカルテを基に現地踏査を行い、
当時のカルテと比較した県内の渓流の荒廃状況および土砂災害の危険性等を把握するものである。
これにより、砂防施設の流木除去の維持管理や、
災害時要配慮者施設等が含まれる危険箇所に対する対策施設の必要性等を検討していく予定である。
2.4 大規模盛土造成宅地の現状調査
今回の豪雨により、住宅背後地からの土石流等の被害や、豪雨に起因する変状等が発生している可能性があることから、
住宅団地背後の斜面、擁壁、排水施設等の変状や湧水の痕跡等を把握するため、
中核市である高知市を除く県内33市町村の3,000㎡を超える盛土により造成された住宅団地38カ所において、調査を実施した。
調査により、判明した変状等は住宅団地のある市町村に報告する他、
公共施設に変状が確認された場合は、公共施設管理者に調査結果を報告する予定である。
3.ハード対策
台風12号より発生した地すべり22カ所のついては、状況に応じた対策を進めている。
その中で、とりわけ被害が顕著であり早急な対策が必要である
ため災害関連緊急地すべり対策事業を実施する3カ所(図-6)を紹介する。
3.1 高知市鏡的渕地区(写真-1・2)
①地すべりの状況
台風12号の記録的な降雨(図-7)により間隙水圧が上昇し、比高差約130mの斜面上部において、地すべり活動が活発化し、
崩壊土砂が斜面下部の脆弱部を浸食しながら、直下の二級河川鏡川支川的渕川(川幅20m程度)まで達した。
降雨による出水のために河道閉塞には至らなかったが、活発な地すべり活動を呈した不安定土塊が斜面上部に残った。
このような状況を踏まえ高知市は、対岸の12世帯34人に避難指示を出した。
②対策の概要等
発生日時:平成26年8月3日
保全対象:人家12戸、県道、二級河川的渕川
崩壊の規模:幅120m 長さ100m
主な対策工:アンカー工N=120本、集水井1基
3.2 大豊町川戸連火地区(写真-3~5)
①地すべりの状況
破砕作用を強く受けた地質帯に位置し、地すべりが発生しやすい地域において、
台風12号による記録的な降雨により間隙水圧が上昇することによって、地すべり活動が活発化した。
崩壊した土砂は、人家を貫通し斜面下部に位置する町道に至った。
被災人家は居住者がいなかったため人的被害は出ていないが、
大豊町では広い範囲で土砂崩壊や地すべり現象が見られ、町全体に避難勧告や避難指示が出された。
②対策の概要等
発生日時:平成26年8月3日
保全対象:人家4戸、町道、一級河川吉野川
崩壊の規模:幅180m 長さ150m
主な対策工:アンカー工N=180本
3.3 大豊町西久保地区(写真-6・7)
①地すべりの状況
川戸連火地区と同じく破砕作用を強く受けた地質帯に位置し、地すべりが発生しやすい地域において、
台風12号による記録的な降雨により間隙水圧が上昇することによって、地すべり活動が活発化し、崩壊が発生した。
②対策の概要等
発生日時:平成26年8月3日
保全対象:人家2戸、町道
崩壊の規模:幅100m 長さ130m
主な対策工:アンカー工N=72本、集水井1基
【出典】
月刊 積算資料公表価格版2015年5月号
特集 高知発! インフラ防災の最新技術~Made in 高知~
最終更新日:2015-07-14
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