- 2014-02-07
- 建設ITガイド
株式会社 大林組 杉浦 伸哉
はじめに
BIM(Building Information Modeling)という言葉が建設業界で使い始められ、あっと言う間に建築業界で普及した。建築の世界のことだと思っていたわれわれ土木関係者は、2012年、真っ只中に置かれてしまった。国土交通省から提唱されたCIM(Construction Information Modeling)が2012年7月から本格的な検討に入ったのだ。
土木をあまりご存じない方は、「土木」という言葉で全ての公共構造物を表現できると思われている方も多いと思うが、「建築」と「土木」は、具体的に「取り扱うもの」が違うのである。「建物一般」を総称して「建築」と表現するならば、「土木」は何と表現すべきか。ダムとかトンネルとか、思い描いただけでもさまざまな表現方法があり、建築のように一言では表現できない。
建築がBIMで成果を挙げているのだから、土木もCIMというものを利用すれば成果を挙げられるはずであると言われる方が多いが、実態はそんなに簡単なものではなく、建築と比較をすれば、営業・設計・施工までの建設プロセスにおける環境の違いや、現時点で利用可能なBIMを表現するための3次元CADソフトの種類などを考えると、土木はまだスタートラインに立ったばかりである。そのような環境の中で、施工でCIMの活用検討を始めてみたものの、何がポイントなのかよくわからないというのが実態であった。しかし、ここ数カ月、施工という観点からCIMの本質をじっくり考えてみたところ、一筋の明かりが見えてきた。
ここでは、これらの苦難を乗り換えながら、CIMという概念をうまく活用した事例を紹介し、そこでの利点や今後解決していかなければならない課題を提示したのち、次に進むべき道を示すことができればと思う。
今回の報告で重要なキーワードが2つある。「プロダクトモデル」「情報共有」である。このキーワードがなぜ重要なのかを考えながら、以下を読み進めていただきたい。
BIMとCIMの違い
BIMの概要が説明される時、よく目にする資料を以下に拝借した。この図で分かるように、設計段階において、実物大の3次元モデルを設計段階で構築することにより、意匠や構造といった構成要素ごとに検討を行うことが可能であることから、建築ではBIMの効果をいち早く認め、設計段階での効果的な活用を見出してきた。
土木分野においても、調査・設計・施工・維持管理という建設プロセスの中で、BIMと考えを同じにするならば、特に設計分野におけるCIMの適用については十分検討に値すると思われる。
しかし、BIMがここまで進んだのは、「建物プロダクトモデル」というものがあるからではないだろうか。
ここで「プロダクトモデル」という言葉について、このレポートでは「プロダクトモデル=建物の構成要素」と定義したい。
建物というのは、その利用用途として、商業ビル、マンション、病院、住宅、工場などの種類があるが、これらの種類は全て、建物があっての話である。
BIMソフトがお手元にある方は見ていただきたい。どのBIMソフトにも、必ず「柱」「梁」「壁」などの部材がすでに用意されている。
ではこの考え方を土木に適用するとどうなるか。土木構造物は建築構造物と違って、「建物」という1つのプロダクトモデルで表現できるだろうか。
土木構造物は、トンネル・ダム・橋梁・港湾・タンク・地下躯体など、さまざまな「建物」が存在する。ここに土木がCIMを進めていく上での難しさがある。
トンネル・ダム・橋梁・港湾・タンク・地下躯体などのそれぞれの建物=プロダクトモデルが存在するため、BIMと同じように、簡単にできるといった感覚を持って進めてみると、3次元モデルをBIMソフトで表現するだけでも難しいことが分かる。
特に自由変形断面などといった土木構造物を表現する時の難しさは困難を極める。
つまり、BIMとCIMの違いは、プロダクトモデルの多さにあった。
従って、CIMの適用はBIMの数倍の難しさを伴う作業であることをご理解いただきたい
ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その1》
ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その2》
ゼネコン目線のCIM「施工CIMの行方」《その3》
【出典】
建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
最終更新日:2014-02-07