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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > CALSの成果をCIMにつなげるBCPサポートシステムプロジェクト~東日本大震災の被災地における実証実験~《前編》

 

一般財団法人 日本建設情報総合センター 研究開発部 建設ICT推進グループ
主任研究員 富岡 光敏
グループ長 元永 秀
主任研究員 影山 輝彰

 

はじめに

「建設CALS整備基本構想」(以降、基本構想という)が平成8年4月に策定され、公共事業におけるCALSがスタートし15年が経過した。建設生産システム全体を対象として、ICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)を用いたBPR (Business Process Reengineering:業務改善)を推進することを目指していた。
 
この15年間で大きな成果が得られたが、パーツとしての整備も多く、建設生産システム全体としての活用、展開に課題が残る状況といえる。具体的には、①電子入札は拡大したが、電子契約は未達成、②電子納品はルール化したが成果品の利活用は進んでいない等である。
 
平成23年には災害史上、未曾有の東日本大震災が発生した。現在、関係機関は東日本大震災からの復興等および国民の安全・安心の確保に総力をあげて取り組むとともに、震災を契機としてわが国が抱える諸課題を克服し、わが国の明るい未来を築くため、「持続可能で活力ある国土・地域づくり」を推進している。これらの取り組みの基礎となる建設生産システムのイノベーションには、これまでのCALSの成果をまとめあげ、具体的に実践する新たな方策が不可欠であると考えられた。そこで、JACICでは平成23年度より自主研究事業として、CALSの成果を最大限生かして被災地の復旧・復興の加速に資する「BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)サポートシステムプロジェクト」を立ち上げた。現在、一定の研究成果が整理されてきているが、その成果は国土交通省が今年度導入の検討を開始したCIMの推進に大きくつながるものである。
 
 

BCPサポートシステムプロジェクト

BCPサポートシステムの概要

今回のBCP サポートシステムは、新たにシステムを開発し、そのシステムを試行し、普及・展開するものではない。日々進展するICTを最大限に活用し、既に存在する公共事業に関する複数のシステムの機能を、人<BCPサポータ>によってつなげ、ワンストップサービスとして提供することで、BPRの推進を図ることを目指したプロジェクトである。本プロジェクトでのBCP対象期間は災害発生段階のみではなく、復旧・復興段階も含むものとした。
 
公共事業の各段階である、「計画」、「設計」、「工事」、「管理」そして、再度、「計画」へとつながる「建設生産システムの循環」の全てについて、これまで構築・利用されてきたサービスやシステムを対象とし、ワンストップサービスとして提供することを目指している。特に、被災地では、限られた人員で輻輳する現場を効率的・効果的にマネジメントすることが求められ、そのマネジメントに関わる課題が顕在化していると考えられ、今回提案するBCPサポートシステムを活用することが有効であると考えられる。BCPサポートシステムの概要を図-1に示す。
 

図-1 BCPサポートシステムの概要

図-1 BCPサポートシステムの概要


 

BCPサポートシステムプロジェクトの検討内容

図-2 BCPサポートシステムのイメージ

図-2 BCPサポートシステムのイメージ


BCP サポートシステムプロジェクトは、BCPサポータが受発注者の担当者に現地で寄り添い、担当者の新たな業務の増加にならないよう、日々の業務をサポートすることを通じて、公共事業におけるICTを用いたBPRの推進についてニーズを把握し、診断を行い、具体的な支援事項について提案を行うものである。そして提案するシステムを利用していただくことで、現在の業務がどのように変わるかを、受発注者の担当者に手にとって実感していただくことを目指している。
平成23年6月および7月に被災地の現地調査を行ったが、情報通信インフラについては、モバイル機器の無線通信環境は概ね良好であった。設備等の復旧に時間を要する有線通信より、無線通信の方が迅速で柔軟な対応が可能であり有効であった。また、CALSが取り組んできた各事項の具体的な効果事例として、名取川の工事現場で津波により現場事務所が流出したが、工事の情報共有システムを導入していたためデータの復元が可能となり、その後の出来高確認や支払いを円滑に進めることができた事例が確認された。
 
図-3 電子図書館サービス

図-3 電子図書館サービス


これらの事象からBCPサポートシステムのメニューとして、クラウドサーバを利用した工事の「情報共有システム」をベースに電子成果品や電子情報を利活用するための「電子図書館サービス」、日々発生する膨大な現場写真を効率的に整理・管理するための「写真管理サービス」の検討を行った。
これらはクラウドサーバとモバイル機器(タブレット端末)とを組み合わせたシステムによるサービスである。また、タブレット端末による簡易版TV会議システム等による現場の可視化等の検討を行った。BCPサポートシステム、電子図書館サービス、写真管理サービスのイメージを図-2、3、4に示す。
 
 
 
 
 
 
図-4 写真管理サービス

図-4 写真管理サービス


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

CALSのレビュー

図-5 CALSの成果事例(激特事業に景観を)(1/3枚)

図-5 CALSの成果事例(激特事業に景観を)(1/3枚)


BCPサポートシステムのメニューを検討するきっかけとなった、名取川の工事現場における工事の情報共有システムの導入事例のように、CALSの成果を最大限生かすために、JACICはCALSのレビューを行ってきている。その中で、分水路整備の設計検討でのICT活用事例は、データモデルと情報共有ツールを利用し、ICTを駆使して短期間に景観に配慮した事業を実施したCALSの成果事例である。この事例は、JACICの助成研究において熊本大学小林教授の空間情報デザイン研究室が実施した研究である。(図-5、6、7)
 
平成18年7月鹿児島県川内川流域で記録的豪雨が発生し、河川激甚災害対策特別緊急事業(激特事業)の一環として、奇岩奇石の豊な自然環境が広がる曽木の滝公園地で、外水氾濫を防ぐための分水路整備事業が計画された。従来の激特事業では時間的余裕がないため、景観に配慮した設計は困難であった。しかし、3次元モデルとコミニュケーションツール(情報共有システム)を利用して、短期間で景観を保全した事業を実施した。
 
図-6 CALSの成果事例(激特事業に景観を)(2/3枚)
 
 
 
 
 
 
 
具体的には、3次元モデルを用いた設計により、景観検討に水理計算をフィードバックさせ、その結果の景観を3次元モデルにより確認することを繰り返し、最終案を決定した。併せてコミニュケーションツール(情報共有システム)を利用し、産官学の各関係者が時間と距離の壁を越えて協議を進め、短期間での合意形成により事業を推進した。
 
この事例において利用している3次元モデルとコミニュケーションツール(情報共有システム)は、CIMの重要なツールである。
図-7 CALSの成果事例(激特事業に景観を)(3/3枚)

図-7 CALSの成果事例(激特事業に景観を)(3/3枚)


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
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【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 

 

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