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建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 東京都における緑を保全・創出するための取り組み

 

1.はじめに

東京都における緑の保全・創出は、行政が主体となって事業を進める都市計画公園等を整備する取り組みと、
既存の民有地の緑を保全するための取り組みの2つの柱で進めている。
 
この取り組みを計画的に行うために「都市計画公園・緑地の整備方針」と「緑確保の総合的な方針」という2つの計画を策定している。
これら計画の概要と具体の取り組み例を紹介する。
 
 

2.「都市計画公園・緑地の整備方針」

2-1 概要

都市計画公園・緑地を計画的・効率的に整備するために、事業主体である東京都と23区、26市、2町が共同で策定した計画である。
平成18年3月に最初の計画を策定し、その後、事業の進捗状況や社会情勢の変化に加え、
平成23年3月に発生した東日本大震災を踏まえ、防災の視点を重視して、平成23年12月に改定を行ったものである。
 
本計画は、平成32年度までの10年間の都市計画公園・緑地の計画的な整備促進と
整備効果の早期発現に向けた取り組みの方針を明らかにしている。
 

2-2 目標

本方針は、以下の4つの目標を掲げている。
 
①安心・安全な都市の実現、
②自然と共生する都市環境の形成、
③質の高い生活環境の形成、
④魅力ある美しい都市の創造
 

2-3 事業化計画に基づく事業の重点化

現在、東京都において都市計画決定されている公園・緑地は約1,800haであり、このうち未供用の面積は約5,900haである。
ここから防災都市づくりの視点を重視して、計画期間である10年間に優先的に整備する公園を「重点化を図るべき公園・緑地」として、
209箇所を抽出した(表-1)
 

表-1 重点化を図るべき公園・緑地

表-1 重点化を図るべき公園・緑地


 
さらに、事業効果を早期に発現するため、この「重点化を図るべき公園・緑地」において、
平成32年度までに事業認可を取得する予定区域を「優先整備区域」として公表することとした(表-2)
 
表-2 「重点公園・緑地」、「優先整備区域」

表-2 「重点公園・緑地」、「優先整備区域」


 
なお、平成18年度の当初計画策定時から、
「優先整備区域」以外の都市計画決定区域における地権者に負担軽減や建築物の更新による防災性の向上を進める観点から、
都市計画法第53条による建築制限を緩和する基準(※1) を定めている。
※1:木造・鉄骨造等の構造であれば、3階建ての建築を可能としている(江戸川区・日野市を除く)。
 
 

3.「緑確保の総合的な方針」

3-1 概要

東京都において初めて、既存の民有地の緑を保全するために平成22年5月に策定した計画である。
減少の進んでいる丘陵地や崖線に残された緑や農地・屋敷林などの緑を保全するために、
東京都と23区、26市、3町(瑞穂町、日出町、奥多摩町)、1村(檜原村)が共同で策定した。
 

3-2 緑を系統に分類

平成32年度までに保全することが望ましい緑を明確にするために、丘陵地・崖線・屋敷林・農地等のように、
日頃から認識されている緑は、地形や歴史・文化に根ざした緑であることから「系統」として整理し、
新たに植栽された緑との差別化を図っている(図-1)
 

図-1 緑の系統図

図-1 緑の系統図


 
これらを都区市町村別に、確保することが望ましい緑として位置や面積をリスト化するとともに、
5万分の1の図面に記載して公表している。
なお、確保すべき候補地(「確保地」)として抽出した緑は、82箇所、面積約300haである。
 

3-3 まちづくりの中で取り組む緑の確保

東京都では、様々なまちづくりが活発に行われている。
これらの土地区画整理事業や市街地再開発事業などのまちづくり事業にあって、
平成32年度までに創出されると考えられる緑について、区部77、多摩30、計107の区域について、
緑のまちづくり指針図として1万分の1の図面に記載して公表している(図-2)
 

図-2 緑のまちづくり指針図の例

図-2 緑のまちづくり指針図の例


 
この指針図により、現在、どんな公園緑地が確保されているのか、
また、どのようなまちづくりが行われ、今後どのように緑が確保されるのかについて、実態を把握することができるようになっている。
 
また、後で詳述する「農の風景育成地区」制度や
「民間基金と連携した緑地保全制度」(基金を活用した市民活動の支援)などの11の新たな施策を示した(表-3)
 
表-3 11の新たな施策

表-3 11の新たな施策


 

3-4 「農の風景育成地区」制度

都市農地は、レクリエーションや環境学習の場、オープンスペースとして都市環境の改善・防災等の等の様々な機能を有している。
 
「農の風景育成地区」制度は、都市部において、比較的まとまった農地や屋敷林が残り、特色ある風景を形成している地域について、
区市町村の申請に基づき都が指定し、都市計画手法等を活用して、
将来にわたり農の景観を、緑地機能を持つ空間として保全し継承するものである。
 

3-5 特別緑地保全地区の指定推進

相続税の評価減など民有地の緑地保全に有効な「特別緑地保全地区」制度について、制度の周知を図り、指定を推進する。
買取り対策として国の支援制度に加え、補助制度を創設し、平成22年度から5年間、区市町村の支援を行ってきた。
 

3-6 「東京の緑を守ろうプロジェクト」

民間基金であるセブン・イレブン記念財団と東京都が締結した協定に基づき、民間の緑地保全活動を支援する仕組みである。
有識者やNPO等により構成する組織を立ち上げ、助成を受けて地域の緑の保全に取り組むこととしている。
 

図-3 事例位置図

図-3 事例位置図


 
以上は施策の一例であるが、多様化した手法により進めている現在の公園・緑地行政の中から、3つの事例を紹介する(図-3)
 
 

4.優先整備区域設定による都市公園の整備

4-1 都立野山北・六道山公園

①設定の位置付け
東京都の北西部、狭山丘陵の一角に位置する野山北・六道山公園は、昭和48年に都市計画決定した後、昭和63年に一部が開園された。
特に平成8年度から本格的な整備を開始し、開園以降30年近い年月をかけ、
平成27年現在、260haの計画地に対して、約203haを開園し、最大規模を誇る都立公園として整備を続けている。
 
平成18年に、「都市計画公園・緑地の整備方針」で862,100㎡を優先整備区域に定め、
平成23年の方針改定では引き続き、事業推進区域298,100㎡、新規事業化区域27,200㎡を設定した。
重点的に事業を進める対象として位置付け、毎年約10haほどの整備・開園に取り組んでいる(写真-1)
 

写真-1 都立野山北・六道山公園の里山民家と谷戸の田んぼ

写真-1 都立野山北・六道山公園の里山民家と谷戸の田んぼ


 
②整備の考え方
整備にあたっては、従来の都市公園整備にはなかった丘陵地公園という発想のもと、
里山という特色ある自然環境の保全・回復を前提に施設整備、利用促進を図るという基本的な考えに立って計画を進めている。
 
面的整備計画では、公園区域内の地形と、植生を組み合わせて、
樹林地管理区域、利用区域、生息する希少な動植物への配慮が必要な特殊管理区域にゾーニングを行った。
 
公園面積の多くを占める樹林地については、生物の保全を実現するため、
植生管理計画に基づいて、更新伐採や、開園後の管理において林床整理などの手入れを行ってきた。
里山の自然の保全・回復を確認するために、自然環境調査を行い、結果をフィードバックしながら進めている。
 
施設整備においては、管理施設や便益施設等は、既に改変、利用されていた土地に配置するなど、
それぞれの区域の環境特性にあわせた整備を行ってきた。
 
「里山体験エリア」では、狭山丘陵に実在した江戸時代の民家をモデルに復元した里山民家と、谷戸の水田を甦らせ、
様々な体験学習やイベント活動の場とした。
「遊びの森」や「冒険の森」エリアでは、雑木林の中に木製遊具を設け、
子どもたちが樹林の中でのびのびと遊ぶ人気の場所となっている。
そのほか、インフォメーションセンターや、更新伐採した樹木の活用を図るためのリサイクルセンターなど、
景観を生かし、里山体験の場を設けるための整備により、自然観察や、イベントへの参加、四季折々のハイキングなど、
幅広い世代の方に楽しんでいいただく公園として成長を続けている。
 

4-2 三鷹市 新川防災公園(仮称)

①事業概要と方針・計画上の位置付け
三鷹市では、市役所のある市民センターに隣接した約2.0haの敷地に現在、
「防災公園」と複数の公共サービスの拠点を集約する「多機能複合施設」を一体的に整備する
「新川防災公園・多機能複合施設(仮称)(以下「新施設」)整備事業」を進めており、平成28年度末の竣工を目指している。
市では、「都市計画公園・緑地の整備方針」で、
1.5haの本公園を「重点公園・緑地」の「優先整備区域」に新規事業化区域として設定した。
なお、本公園の整備には、独立行政法人都市再生機構の「防災公園街区整備事業」を活用している。
 

写真-2 新川防災公園・多機能複合施設(仮称)完成イメージ

写真-2 新川防災公園・多機能複合施設(仮称)完成イメージ


 
三鷹市の「緑と水の基本計画2022」では、
新施設を中心とした周囲北西から南東のエリアを「新川防災公園(仮称)エリア」として「緑と水の拠点」に位置付けており、
新施設全体でまとまった緑を確保することで、連続した緑豊かな空間を創造するものである(写真-2)
 
②様々な目的に活用できる防災公園
市民の憩いの場なる本公園は、公園中央の下部(地上1階〜地下2階)にスポーツセンターを整備するため、丘状となっている。
本格的な運動からレクリエーションなどのスポーツ活動、健康づくりにも活用できる都市公園として、
限られた敷地を有効活用した施設である。
 
公園全体に多種多様な高中低木や花々等を植栽し、
西側、東側、中央に配置する広場等のオープンスペースは災害時に一時避難場所(最大約7,500人を想定)となることから、
新施設の外周植栽は、防火樹林帯を配置する。
 
③植栽の考え方
本公園は、
「ボリュームある緑に包まれた柔らかい印象を与える特色ある景観を創出」、
「生物の生息・中継地となる多様な緑を創出」、
「市民参加による緑の育成の場を創出」、
「防火機能に留意した林を創出」
を植栽の基本的な考え方とし、
市の木や市の花などとして定めているケヤキやハナカイドウをはじめ、四季折々に変化する木々や花々をちりばめ、
時間の経過とともに変化していく公園風景の創出を目指している。
 
西側広場は、メインエントランスに近いことから人々を招き入れるような扇型状に植栽し、
東側広場は市民やNPO法人等との協働等による植栽管理を想定した市民花壇の設置を予定している。
 
④人にも環境にも配慮した公園整備
中央の広場は地上から約6mの高さで、約3,300㎡と他の広場(西側:900㎡、東側:1,400㎡)に比べ大変広く、
芝生植栽による開放的な空間となる。
中央の広場へ向かう園路の傾斜は、歩く際の負担が小さくなるよう、
「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」や「東京都福祉のまちづくり条例」などにより定められた勾配よりも
緩やかに整備する。
利用者が立ち入らない傾斜や落差のある場所にも
メッシュカゴなどによる段状緑化やパラペット際・庇上緑化によるつる性植物を下垂・登はんし、可能な限りの緑化に努める。
 
防災公園と一体的に整備する多機能複合施設にも屋上、壁面、バルコニーに緑化を施す。
(新施設に係る施設名称はすべて仮称である)
 
 

5.世田谷区における「農の風景育成地区」の取り組み

5-1 農の風景育成地区の指定

世田谷区は、「世田谷区農地保全方針」に基づき指定した、区内の農地保全重点地区の中で、
農地や樹林地の割合が高く、制度の趣旨に最もかなっている喜多見4、5丁目について、平成25年5月に東京都第1号の指定を受けた。
 

5-2 地区の概況

喜多見4、5丁目地区は世田谷区の南西部に位置し、面積約50ha全体に農地や樹林地、住宅地のみどりが比較的多く分布し、
いたる所で、世田谷区の原風景といえる、農の風景が感じられる。
 
地区内には、歴史のある寺社の樹林地や市民緑地にまとまったみどりが残っており、
古墳や史跡が点在する歴史的資源の豊富な地区でもある。
 
また、農業振興等の拠点として、2箇所の農業公園が都市計画決定されている。
昭和58年に開園した次大夫堀公園、平成23年12月に都市計画決定している(仮称)喜多見農業公園予定地があり、
次大夫堀公園では、区民参加の農作業等活動が行われ、今後一層の展開が見込まれる(写真3-5)
 

写真-3 お寺の塔が見える風景

写真-3 お寺の塔が見える風景


 
写真-4 次大夫堀公園民家園の畑

写真-4 次大夫堀公園民家園の畑


 
写真-5 次大夫堀公園案内板

写真-5 次大夫堀公園案内板


 

5-3 農の風景育成地区の取り組み方針

次のような取り組み方針のもと、世田谷区では地域住民と協働し、本地区の農の風景を保全、育成している。
 
①農地を活用し農を生かしたまちづくり
農業振興等拠点として、用地取得したところから農業公園として整備し、
区民参加型農園および食育や環境教育、若年者・高齢者・障害者等の自立支援等を目的とした教育・福祉農園として活用する。
 
②農地および屋敷林等の保全
育成地区内の都市計画公園・緑地に指定した農地等は、可能な限り営農を継続し、
将来継続が困難になった場合、区が取得し農業公園として整備する。
宅地化農地は生産緑地地区への追加指定を働きかける。
保存樹林地の支援の面積要件を緩和して拡充に努め、樹林地は重点的に市民緑地等に指定する。
 
③農地景観の向上
育成地区の多くは「世田谷西部地域喜多見地区」および「世田谷西部地域大蔵・喜多見地区」地区計画の区域にあり、
土地利用の方針に基づき、農園住区として宅地系土地利用と農・緑地系土地利用との調和を目指す。
生産緑地の道路に面する部分は、原則として柵等を設置しないものとし、
設置する場合は、緑化助成制度を活用した生垣設置を促進するなど景観への配慮を図る。
また、農地や屋敷林に隣接する敷地は、境界部の緑化によりみどりの連続性をつくるなど、農の風景との調和に努めていく。
 
④営農環境の向上
農業者の育成や生産物の区内流通の拡大等、農業の振興を進める。
 
⑤地域への普及啓発
地区内の農地や歴史的な資源の場所を回遊して風景を楽しみ、
歴史や文化、自然を理解できるよう「世田谷・みどりのフィールドミュージアム」の取り組みを実施していく。
案内サインや解説版の設置、マップ等の作成等により普及啓発を図る。
 
また、農業に関する情報提供や地域交流の場とするため、既存の農作物直売所を充実し、周辺に情報コーナー等の設置を促進する。
 
⑥地域環境・景観へ配慮する
世田谷区は緑化助成制度を活用し、地域環境・景観に配慮するため、住宅地の緑化を促進する。
 
 
 

筆者

東京都 都市整備局都市づくり政策部 緑地景観課
 
 
 
【出典】


月刊 積算資料公表価格版2015年8月号
特集 公園・緑化・体育施設資器材
月刊 積算資料公表価格版2015年8月号
 
 

 

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