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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料公表価格版 > 特集 農業土木 > 農業農村整備民間技術情報データベース(NNTD)

 

1.はじめに

1-1 NNTDとは

一般社団法人農業農村整備情報総合センター(以下「ARIC」という)では、
設立目的である“農業農村整備に関する官民の情報の流通の促進と技術支援により、
技術水準の向上や、農業農村整備事業の円滑な施行の確保と発展に寄与する”ため、
「農業農村整備民間技術情報データベース」(以下「NNTD」という)を運営している。
NNTDにはARICのHPから接続できる(図-1)。
 

図-1 ARICのHPからNNTDへのリンク(http://www.aric.or.jp)

図-1 ARICのHPからNNTDへのリンク(http://www.aric.or.jp)


 
NNTDは、民間企業等が開発した「農業農村整備に資する技術」の情報を登録し、
ウェブサイト(http://www.nn-techinfo.jp)を通じて広く一般に提供を行うもので、平成24年2月に公開を開始した。
平成27年7月末現在における登録技術数は348件、トップページのアクセス回数は累計で約60,000回となっている(図-2)。
 
図-2 NNTDトップページ

図-2 NNTDトップページ


 

1-2 NNTDの有効性

工事を発注する現場の技術者等が、新工法の導入を検討する場合、あるいは新工法の提案があった場合、
農業農村整備事業における採用実績、導入結果、類似工法と比較評価などの情報を把握できれば、大変有効である。
 
NNTDでは、工事、設計それぞれの新技術について豊富な情報を掲載するとともに、
農業農村整備事業等で採用された事業地区名等を掲載しており、実績情報を収集する上で有用な情報源となる。
一方、更新整備や長寿命化の技術など多様な技術体系を必要とする農業農村整備事業では、
日進月歩で技術の改良が繰り返され、新技術が次々と提供されている。
 
このような時代にあって、調査・設計業務を担う者や発注者が、常に新しい技術情報を入手し、
最先端の技術として農業農村整備事業で普及させていくことは極めて難しい。
したがって、民間企業等が開発した技術を集約した情報基盤を創設・発信し、また、その実績情報を現場技術者に提供し、
新技術に関する情報交流を促進していくことが、開発者・発注者の双方から求められている。
 
農業農村整備事業で普及させる技術は、機能性だけで評価できない。
農業農村整備事業の事業費は農業水利施設の所有者・管理者である農業者や地元市町村が負担する部分があり、
施設は主として土地改良区や水利組合、地域住民等が管理している。
このため、農業農村整備事業の技術として普及していくためには、ランニングコストも含めた経済性や管理の容易性、
生活空間としての農村の景観や環境、住民や管理者の安全性、営農面での利便性など、
管理者による評価といった観点も重要である。
よって、農業農村整備事業での新技術の導入にあたっては、技術情報として豊富な情報量が必要であるとともに、
できる限り詳細な実績情報を容易に収集できることが極めて重要な要素となる。
 
ARICでは、上述のような観点から、今後さらに多くの民間企業や研究機関等から新たな技術を掲載していただくため、
NNTDの意義等のPRを展開するとともに、多くの発注者の方々にも、
技術情報ツールとして活用いただくことを念頭に利用促進を図ることとしている。
また、登録技術数が増えることによって、先述した新技術を導入する際に、
NNTDが施工実績情報、比較対象技術情報、技術提案向けの参考情報などの交流を促進する
基盤としての役割を果たすことを目指している。
 
 

2.NNTDの登録情報

NNTDの構築に当たっては、国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)や各地方自治体の新技術関連のウェブサイト、
さらには(公社)土木学会の技術推進機構による技術評価制度、
建設技術審査証明協議会による建設技術審査証明事業なども参考としながら、
技術情報の登録だけでなく、技術そのものの評価も視野に入れて検討を行った。
 
その結果、技術そのものを「評価」するためには、
多くの施工実績やモニタリング結果の蓄積、地域特性、現場条件等を考慮した検証を積み重ねる必要があり、
こうした対応は行政機関や研究機関などにより進められるものと考えた。
したがって申請された技術をARICが評価や基準化するのではなく、
農業農村整備事業の現場へ情報提供を行うという「官民における情報の流通促進に徹する」こと
がNNTDの構築コンセプトになっている。
 
登録できる情報は、民間企業等が開発した農業農村整備の推進に資する技術であり、
採用実績(施工実績)を有することを原則として、ARICが定める要領に基づいて申請された技術がカテゴリー別に掲載されている。
大分類として、土木工事、機械設備、電気通信設備、調査・測量・設計のほか、
施設長寿命化対策、環境配慮対策など、農業農村整備事業の分野全体を網羅するカテゴリーを用意している。
中分類について登録数の多いものは、
水路工、ダム、ため池、法面工、擁壁工、海岸、地盤改良などいわゆる一般的な農業土木技術のカテゴリー
およびストックマネジメントに要する補修・補強工法が大部分を占め、環境保全対策に関する工法などがこれらに続いている(図-3)。
 

図-3 NNTDへの主な登録技術件数

図-3 NNTDへの主な登録技術件数


 
発注者や設計者が、登録された技術を素早く閲覧できるよう、技術情報の検索は分野別検索のほかに、
フリーワード検索、条件検索(技術の目的・効果、区分、採用実績など)の計3つの方法を採用し、
簡単な操作で目的の技術を参照できるようになっている。
条件に合った技術は一覧表で画面に表示され、技術の内容(要約)、登録会社名、採用実績件数、開発年などを俯瞰できるため、
同種・類似の技術を比較検討することが容易である。
 
また、登録された技術は短期間に改良されたり、新たな技術として更新されたりする場合が多い。
技術情報の管理上、登録された情報の有効期間(掲載期間)は2年間としており、
更新手続きを行うことにより、現場での採用実績の増加、新たな情報の追加等が適切に反映される仕組みとなっている。
 
 

3.技術概要書

NNTDには、 統一様式で整理される技術概要書と、添付資料を登録している。
技術概要書は、各技術の概要を整理したもので、
開発年、開発者、技術の特徴、適用範囲、積算参考情報、連絡先、サポート体制、図表・写真、技術情報が閲覧できる
URLなどの情報が掲載されている。
 
統一様式であるため、データベース内に同種・類似の技術がある場合、内容の比較が容易に行うことが可能となっている。
また、現場への採用実績として、
発注者、施工年度、施工場所(都道府県名)、工事件名、実績報文の有無などが示されている(図-4)。
 

図-4 技術概要書

図-4 技術概要書


 
添付資料には、登録会社が独自に作成したカタログ、パンフレット、動画データ、機関誌等に投稿した発表文献、
単価、歩掛、設計・施工マニュアル等の掲載も可能となっている。
NNTDでは、これらの資料が、自由に閲覧でき、農業農村整備事業に携わる技術者が現場で直接利用できるため、
利用頻度が高くなれば技術情報として目にとまる機会が多くなる。
また、同種の技術の比較や実績情報の分析等も可能であるため、
NNTDの利用者は、技術を提供する民間の積極的な姿勢を評価できるとともに、
登録会社にとっては、自信のある技術のPR効果が期待できる。
 
 

4.新着情報の確認

NNTDには、技術情報の新規登録や更新がなされた場合に、
トップページの「新着情報」から速やかに内容を確認することができるほか、
ARICのウェブサイトからメールマガジンの登録をすることによって、
誰でも新着情報などをいち早くメールで受信できるシステムを導入している。
http://www.aric.or.jp/mailmagazine/index.htm
 
メールマガジンでは、テキスト形式で技術名称・技術概要等を確認することができるほか、
代表写真を掲載した特設ページへのURLを記載しており、
登録者の希望する形態で閲覧することができる(図-5)。
 

図-5 NNTDのメールマガジン(特設ページ版)

図-5 NNTDのメールマガジン(特設ページ版)


 
 

5.NNTDの活用状況と今後の展開

NNTD閲覧回数および登録技術数の推移を図-6に、NNTDに登録されている技術情報の内訳を図-7に示す。
 

図-6 NNTD閲覧回数および登録技術数の推移

図-6 NNTD閲覧回数および登録技術数の推移


 
図-7 NNTD登録技術の内訳

図-7 NNTD登録技術の内訳


 
全登録数の約1/3を施設別(ダム、ポンプ場、水路工等)土木工事に関する技術が占めている。
また、農業水利施設のストックマネジメントが求められるようになったことを受け、
近年はコンクリート補修工法、コンクリート補強工法、パイプライン更生工法に関する技術登録が急激に増加している傾向にある。
 
農業農村整備事業は、効率的な農業基盤整備としての大規模開発から、
整備された財産を効率的に最大限に利用していく補修・補強等による保全事業・更新事業へと事業の範囲を拡大しており、
きめ細やかな新しい技術が次々と必要となる時代になっている。
このような時代に、現場の技術者にとって、
ウェブサイト上で手軽に見られるNNTDは効率的に有用な情報を得るための重要なツールであり、
新たな技術を効率的に普及させていくうえで重要な役割を担うこととなる。
 
このため、NNTDは、発注者や現場の技術者が求める技術情報として、
質と量を兼ね備えたデータベースであるとともに、農業農村整備事業で使用された実績情報を提供していくことが必要と考えている。
 
そのためには、一層多くの方々に本データベースのユーザーとなっていただき、【ユーザー=情報発信者】として、
新技術に関する様々な情報が本データベースの利用を通じて交流されることが必要であると考えている。
NNTDはARICのホームページから誰でも閲覧できるが、
NNTDへのショートカット用アイコン(ロゴマーク)も製作したので、ご活用いただければ幸いである(図-8)。
 
図-8 NNTDへのショートカット用アイコン(ロゴマーク)

図-8 NNTDへのショートカット用アイコン(ロゴマーク)


 
 

6.おわりに

NNTDの運用を通じて、農業農村整備事業の推進、新技術の開発や改良、技術情報の交流等が促進され、
また、発注者・管理者からの情報が逆に開発者に還元することで、さらに有用な新技術として技術改良が促進されることが重要である。
 
現在、耐用年数を超える基幹的農業水利施設の数がピークに達しようとする中、
一層の農業の効率化を促進する担い手への農地の集積や、農地の集団化、規模拡大などの取組みが急務であり、
これらを進める上で一体的な農業基盤整備が不可欠なため、
農業農村整備事業には、多様な技術を効率的に運用できる仕組みが求められている。
 
ARICでは、さらなる研究、改良を進めながら農業農村整備事業に有用な技術の登録を充実させるとともに(図-9)、
新技術を迅速に提供していけるよう取り組み、NNTDが農業農村整備事業に関わる多くの技術者にとって、
わかりやすく、必要不可欠なツールとなるよう努力してまいりたい。
 

図-9 NNTDへの登録推奨

図-9 NNTDへの登録推奨


 
 
 
 

筆者

一般社団法人 農業農村整備情報総合センター 研究第1部 篠崎剛、 有田直樹、衣袋武郎
 
 
 
【出典】


月刊 積算資料公表価格版2015年9月号
特集 農業土木
月刊 積算資料公表価格版2015年9月号
 
 

最終更新日:2023-07-11

 

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