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大阪大学 大学院工学研究科
環境・エネルギー工学専攻 教授 矢吹 信喜

 

OpenINFRA:土木用プロダクトモデルの新開発母体

OpenINFRAが生まれるまで

2007年にIFC-Bridgeに関しては、前述のように日仏二国間共同研究SAKURAが終了し、これより他の資金が獲得できなかったことから、開発・推進が止まってしまった。しかし、フランス国内では大手建設コンサルティング・エンジニアリング会社EGISと大手建設会社BouyguesがIFC-Bridgeに関心を示し、10社を集めて、COMMUNIC(Collaboration par la Maquette Multi-UsageNumerique et l’Lingenierie Concourante:共有デジタルモデルとコンカレント工学による協調)と称するグループを作り活動を実施した。その結果、buildingSMART(IAIは発音がしにくく意味がわかりにくい等の理由から、この名称に変更となった)に対して、道路や橋梁などの社会基盤(インフラストラクチャ)のプロダクトモデルを開発するコンソーシアムを形成し、認めてもらうように運動することとなった。そこで、2011年7月、パリでIFC-Infra会議が開催され、同調する主にヨーロッパの国々の技術者や研究者が参加した。この会議で、IFC-Bridge、LandXML、日本のIFC-ShieldTunnelなどを対象とすることとなった。同年10月の会議では、コンソーシアムの名称をIFC-InfraからOpenINFRAに改名し、運営会議を毎月行うことになった。筆者はWebExによるインターネット会議で参加していたが、2012年2月に別途用事があったことからフランスへ出張し、パリ郊外のEGIS Internationalでの運営会議に出席した。同年3月のbuildingSMARTの国際全体会議へOpenINFRAのプロポーザル(提案書)を提出し、正式にbuildingSMARTの下部コンソーシアムとして活動することが認められた。OpenINFRAでは、社会基盤(インフラストラクチャ)のプロダクトモデルを開発するためにIFCの拡張、IDM(Information Delivery Manual)やMVD(Model View Defi nition)などを策定することとなった。
 

OpenINFRA東京Meeting

写真-3 OpenINFRA東京Meeting(JACIC撮影)

写真-3 OpenINFRA東京Meeting(JACIC撮影)


2012年10月に、ISOとbuildingSMARTの国際会議が東京で開催された際、専門小委員会のような形で、JACICの会議室にて、OpenINFRA東京Meetingが開催された(写真-3)。海外からは英国、米国、フランス、フィンランド、ノルウェー、韓国が参加し、日本からは国土交通省、JACIC、土木学会関係者が参加し、総勢30名を超える盛況であった。この会議では、国際的な活動としてLandXML、IFCBridge、IFC-Geotechnica(l IFC-Tunnel)およびProcess Mapの4つのワーキンググループを作り、buildingSMARTに認可してもらうことと各国の独自の取り組みとしてbuildingSMART Nordic ChapterのInfraBIM、フランスのMINND、ヨーロッパとしてのV-Con(Virtual Constructionfor Roads)の概要紹介が行われた。
 
この中で、buildingSMART Internationalの事務局長であるChristopher Groome氏から「IFCはISOの国際標準となることが、今回の東京でのISOの会議でほぼ完全に決定したので、今後3年間は、インフラストラクチャへのIFCの拡張に注力していきたい」という支援の発言があった。これまで、IAI、buildingSMARTに対して10年近くにわたって、橋梁やトンネルのプロダクトモデルをIFCの拡張として認めてくれと言っても、建築のIFCをISOの国際標準にすることで忙しいし、資金を持ってこないと駄目だと言われ続けてきた筆者やフランスの仲間達にとっては、やっとここまで来たと感慨ひとしおであった。
 

LandXML

LandXMLは前述のように既にLandXML.orgのWEBサイトが閉鎖されたため、心配しているCADユーザーも多いと思われる。しかし、フィンランドの国立技術研究所VTTが中心となって、OpenINFRAを通じてbuildingSMARTに対して、LandXML Version 1.2のMVD(Model ViewDefi nition)を開発するプロポーザルを2012年10月に提出した。このプロジェクトは、フィンランド政府やフィンランドの企業が研究資金を投入しており、2013年の1月から12月のわずか1年間でMVDを開発し、IFCにマッピングを行うというものである。buildingSMARTはこれを既に認可し、他の国や地域のbuildingSMARTの支部はこれに参加し支援するよう促した。既に、英国、フランス、ドイツなどが参加しており、日本からは筆者が参加することになった。他に参加を希望される方は、筆者に連絡をされたい。
 

IFC-BridgeL

IFC-BridgeはOpenINFRAの最重要ワーキンググループの一つである。フランスを中心に、日本、ドイツ、フィンランド、ノルウェー、英国、米国などが参加している。日仏共同研究以来、なかなか支援が得られなかったが、現在はOpenINFRAの中で活動し、土木版IFCの第一として認められるよう努力したい。
 

IFC-GeotechnicalまたはIFC-Tunnel

これまでに筆者らが開発してきたIFC-Tunnelを土木版IFCとするワーキンググループである。OpenINFRAのリーダーであるフランスEGISのChristophe Castaing氏はIFC-Tunnelの地層と空洞の表現に強い関心を持ち、これはトンネルだけでなく、他の地盤を掘削したり盛土する全ての構造物に関係するから、IFC-Geotechnicalとした方がいいと提案しているが、われわれとしては、IFC-Tunnelとして進めていきたいところである。
 

Process Map

Process Mapのワーキンググループは、ドイツを中心として、英国、フランスが参加して、事業のプロセス、特に施工のプロセスを中心に、IFC等を用いてマッピングを施すことを目指している。
 
 

CIMに関する大学や国際会議

CIMのような技術革新を伴う事業を成し遂げるためには、産官のみならず、基礎的な学理を追究する大学の参画が重要である。冒頭に記したように、欧米では日本の土木と建築の区分の仕方と異なっていることから、BIMも日本でいうCIMも一緒に行われていることが多い。CIMに関する研究や教育に力を入れている大学は、米国ではカーネギーメロン大学、スタンフォード大学、テキサス大学オースチン校、バージニア工科大学、ジョージア工科大学など複数ある。カナダでは、ブリティッシュ・コロンビア大学、アルバータ大学、コンコーディア大学などが挙げられる。ヨーロッパでは、英国のノッティンガム大学、ティーズサイド大学、ドイツのミュンヘン工科大学、ルール大学ボーフム校、ワイマール大学、ダルムシュタット工科大学、スイスのETH、EPFLなどである。ヨーロッパは大学以外では、国立研究所が強く、フィンランドのVTT、フランスのCSTB、ルクセンブルクのLippmanなどで実施している。アジアについては、既に紹介した大学で意欲的に進めている。日本の大学の土木、建築いずれの学科でも、BIM、CIMを研究・教育しているところは少ない。なお、筆者は環境・エネルギー工学専攻(学科)の所属である。
 
CIMやBIMに関する研究成果を発表する国際的な主な場としては以下の国際会議が挙げられる。
ICCCBE(International Conference on Computing in Civil and Building Engineering):2年に一度で、2014年は米国フロリダ州オーランドー、2016年は日本の大阪で開催される。
ASCE(米国土木学会)IWCCE(International Workshop on Computing in Civil Engineering):ほぼ毎年で、2013年はロサンジェルスで開催される。
ECPPM(European Conference on Product and Process Modeling):ほぼ毎年で欧州で開催される。さらに、2013年11月7日~8日、東京国際交流館で第1回ICCBEI(International Conference on Civil and Building Engineering Informatics:土木建築情報学国際会議)を、新たに設立したAGCE(I Asian Group for Civil Engineering Informatics:アジア土木情報学グループ)と土木学会土木情報学委員会で主催する(http://www.iccbei.com)。
ぜひ、論文投稿、企業による事例紹介、スポンサーなど、いろいろな形で参加して、盛り上げていただければ幸いである。
 
 
 
海外のCIM事情《その1》
海外のCIM事情《その2》
海外のCIM事情《その3》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 

最終更新日:2014-06-11

 

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