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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン」について〜 最適な入札方式の選択が可能に 〜

 
 
国土交通省が「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン」を策定した。
多様な入札・契約方式を体系的に整理し、
国や地方自治体など公共工事の発注者が工事の性格や地域の実情に応じて最適な方式を選択する際に活用してもらうのが狙いだ。
CM(コンストラクション・マネジメント)方式や事業促進PPP方式、設計・施工一括発注方式をはじめとする
各方式の概要や選択の考え方などを示す「本編」とそれらを実際の工事に活用した31事例を収録した「事例編」で構成している。
 
2014年の通常国会で「公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律」(改正公共工事品確法)が成立し、
同6月4日に公布・施行となった。
改正公共工事品確法では、公共工事の品質を「今」だけでなく、「将来」にわたって確保できるよう、
品質確保に欠くことのできない担い手を育成・確保するために、
公共工事の発注者が何をしなければならないかが「発注者の責務」として示されている。
 
改正公共工事品確法には、「多様な入札契約方式」に関する項目も立てており、発注者が「公共工事の性格、地域の実情等に応じ、
多様な方法の中から適切な方法を選択し、又はこれらの組み合わせによることができる」(第14条)と規定された。
 
2005年4月に施行された最初の公共工事品確法は、
価格と価格以外の技術的な要素を重視した総合評価落札方式の適用を原則化した。
これを契機として各発注者において同方式の導入に弾みが付き、これまでに国、都道府県、政令市のすべて、
また、市区町村でも6割を超える機関で同方式を取り入れるまでに至っている。
 
1990年代に不正行為を防止する目的で、
それまでの指名競争入札から移行した一般競争入札と、
多くの発注機関で導入が進んだ総合評価落札方式を組み合わせた入札契約のあり方を巡っては、
画一的、硬直的で時代のニーズや政策目的に対応しきれないこと、
そして総合評価落札方式の拡大で受発注者双方に過重な負担となり、
また、それにも関わらず応札者の提案内容に優劣が付きにくくなっているなどの課題が指摘されるようになっていた。
 
こうした課題を解決するために、改正公共工事品確法では、
「技術提案交渉方式」「段階的選抜方式」「地域社会資本の維持管理に資する方式(複数年契約、一括発注、共同受注)」
などといった多様な入札契約方式の考え方が打ち出された。
多様な入札契約方式を導入・活用することは、
「地域の担い手」として地域の社会資本を支える企業を確保し、発注者の能力・体制の補完が図られることへの期待も高い。
 
改正公共工事品確法の施行後、
2014年9月30日に閣議決定した「公共工事の品質確保の促進に関する施策を総合的に推進するための基本的な方針」(基本方針)や
2015年1月30日に公共工事の品質確保の促進に関する関係省庁連絡会議で申し合わせた発注者の共通ルール
「発注関係事務の運用に関する指針」(運用指針)においても、
多様な入札・契約方式を選択・活用することが記述されている。
 
このうち運用指針は、連絡会議で申し合わせた「本文」(第1部)と、
本文の理解・活用の促進を図るために具体的事例や既存の要領などを解説した「解説資料」(第2部)、
そして運用指針本文に位置付けられた取り組みの実務面での参考となるよう各省庁が今後策定することになる
「その他要領」(第3部)の3部構成となっている。
 
国土交通省が今回策定した「公共工事の入札契約方式の適用に関するガイドライン」は、
運用指針の第3部資料の一つとして位置付けられる。
その内容は、
2013年11月に設置した「発注者責任を果たすための今後の建設生産・管理システムのあり方に関する懇談会」
(座長・小澤一雅東京大学大学院教授)がこれまで積み重ねてきた議論を踏まえて取りまとめ、
5月15日付で国土交通省の担当部局から各地方整備局に文書で周知した。
また、ガイドラインについては、
直轄工事だけでなく、その他の国関連の発注機関や地方自治体の発注工事においても活用が図られるよう、
地域発注者協議会や地方公共工事契約業務連絡協議会(地方公契連)などを通じて周知することを各地方整備局に求めている。
 
ガイドライン本編で選択肢に挙げた入札契約方式は以下の通りである。
 

表-1 運用指針の全体構成(出所:国土交通省)

表-1 運用指針の全体構成(出所:国土交通省)


 

発注者を支援する方式

●CM方式(対象事業のうち工事監督業務等に係る発注関係事務の一部又は全部を民間に委託する方式)
●事業促進PPP方式(調査及び設計段階から発注関係事務の一部を民間に委託する方式)
 

契約方式

●工事の施工のみを発注する方式(別途実施された設計に基づいて確定した工事の仕様により、その施工のみを発注する方式)
●設計・施工一括発注方式(構造物の構造形式や主要諸元も含めた設計を、施工と一括して発注する方式)、
 詳細設計付工事発注方式
 (構造物の構造形式や主要諸元、構造一般図等を確定した上で、
  施工のために必要な詳細設計〈仮設を含む〉を施工と一括して発注する方式)
●設計段階から施工者が関与する方式〈ECI(アーリー・コントラクト・インボルブメント)方式〉
 (設計段階の技術協力実施期間中に施工の数量・仕様を確定した上で工事契約をする方式)
●維持管理付工事発注方式(施工と供用開始後の初期の維持管理業務を一体的に発注する方式)
●包括発注方式(既存施設の維持管理等において、同一地域内での複数の種類の業務・工事を一つの契約により発注する方式)、
 複数年契約方式(既存の施設の維持管理等において、
  継続的に実施する業務・工事を複数の年度にわたり一つの契約により発注する方式)
 

競争参加者の設定方法

●一般競争入札方式(資格要件を満たす者のうち、競争の参加申し込みを行った者で競争を行わせる方式)
●指名競争入札方式(発注者が指名を行った特定多数の者で競争を行わせる方式)
●随意契約方式(競争の方法によらないで、発注者が任意に特定の者を選定して、その者と契約する方式)
 

落札者の選定方式

●価格競争方式(発注者が示す仕様に対し、価格提案のみを求め、落札者を決定する方式)
●総合評価落札方式
 (技術提案を募集するなどにより、入札者に、工事価格及び性能等をもって申し込みをさせ、
  これらを総合的に評価して落札者を決定する方式)
●技術提案・交渉方式
 (技術提案を募集し、最も優れた提案を行った者を優先交渉権者とし、
  その者と価格や施工方法等を交渉し、契約の相手方を決定する方式)
●段階的選抜方式
 (競争に参加しようとする者に対し技術提案を求める方式において、一定の技術水準に達した者を選抜した上で、
  これらの者の中から提案を求め落札者を決定する方式)
 

支払い方式

●総価契約方式(工種別の内訳単価を定めず、総額をもって請負金額とする方式)
●総価契約単価合意方式
 (総価契約方式において、請負代金額の変更があった場合の金額の算定や部分払金額の算定を行うための単価等を前もって協議し、
  合意しておくことにより、設計変更や部分払に伴う協議の円滑化を図ることを目的として実施する方式)
●コストプラスフィー契約・オープンブック方式
 (工事の実費〈コスト〉の支出を証明する書類とともに請求を受けて実費精算とし、
  これにあらかじめ合意された報酬〈フィー〉を加算して支払う方式)
 
 
 
これら各方式についてガイドラインでは、それぞれの特徴や適用にあたっての留意事項を示している。
 
例えば、ECI方式を適用した場合、設計段階から施工者が関与することにより、
種々の代替案や施工計画の検討を行うといった効果が期待できる。
ただ、設計者と施工者の提案が相反するケースが想定されることから、留意事項として、
発注者が双方の責任の範囲を明確にしながら、提案の内容の調整と採否の最終的な判断を行う必要があるとしている。
 
各種入札契約方式の選択については、事業プロセスの中で適切に行われることが重要だと指摘。
新規事業採択が行われ、予算が個所付けされた事業の開始段階から調査・設計や工事の調達に
どのような方式を適用するのがよいかを考えることが望ましいとしている。
 

表-2 入札契約方式の選択時期(イメージ。ガイドラインより)(出所:国土交通省)

表-2 入札契約方式の選択時期(イメージ。ガイドラインより)(出所:国土交通省)


 
事例編には、国土交通省の各地方整備局のほか、高速道路会社や都市再生機構の発注工事で実際に適用した事例も紹介。
日本スポーツ振興センターが新国立競技場工事で導入した「ECI方式」や、
首都高速道路会社が更新工事で採用した技術提案・交渉方式なども取り上げている。
それぞれの事例には、手続きの概要や適用の背景、適用による効果などを示すことに加え、
実際に利用した入札説明書や特記仕様書といった発注する上で参考になる資料も併せて掲載している。
 
表-3 多様な入札契約方式の活用事例(ガイドライン「事例編」より作成)

表-3 多様な入札契約方式の活用事例(ガイドライン「事例編」より作成)


 
 
 

筆者

株式会社日刊建設工業新聞社 編集局 岩本 英司
 
 
 
【出典】


月刊積算資料2015年7月号
月刊積算資料2015年7月号
 
 

最終更新日:2016-02-08

 

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