- 2016-01-27
- 土木施工単価
企画部 兼 技術調査部次長
岩崎 辰志
1 はじめに
国土交通省では,「公共工事等における新技術活用システム」を平成18年度から本格運用しています。これは,国土交通省が運営している「新技術情報提供システム(New Technology InformationSystem : NETIS)」という新技術データベースを中核として,新技術情報の収集・共有,積極的な現場導入,導入現場での活用効果の調査,調査結果に基づく事後評価という一連の流れを制度化し,有用な新技術の活用と技術開発のスパイラルアップを図る総合的な取り組みです。さらに,評価結果が優れている新技術については,総合評価落札方式や工事成績評定において加点対象とするなどのインセンティブも付与されています(図-1)。
(一財)先端建設技術センターでは,公共事業等での新技術活用を一層促進するため,国土交通省が運営するデータベース(NETIS)に掲載されている情報に,さらなる付加価値を持たせた新技術情報データベース「NETISプラス」の本格運営を平成25年1月より開始し,技術開発者,設計者,施工者および発注者への情報発信に努めています。本稿では,有用な新技術の活用と技術開発のスパイラルアップの実現に向けた当センターの取り組みである新技術情報データベース「NETISプラス」について,その意義や特徴などについてご紹介します。(「NETISプラス」のサイトhttp://www.netisplus.net/)
2 「NETISプラス」の意義
「公共工事等における新技術活用システム」という制度がうまく機能し,その意義を果たすためには,①現場の設計者や施工者が現場への新技術の導入を判断するために必要十分なきめ細かい情報を提供すること,さらに,②現場に導入した結果を踏まえて開発者がさらに研究・改良を重ね技術開発のスパイラルアップにつなげるために必要な情報を提供することが重要だと考えています。
現在(平成26年8月時点),約4,800件の新技術が登録されている国土交通省のNETISには多種多様な技術が混在する中で,それらの登録,現場導入,活用効果の調査,事後評価に多大の労力がかけられています。NETISへの登録や事後評価は国土交通省が実施すべきものだと思いますが,技術情報をより使いやすくするための細やかな情報の提供は民間でも実施可能であり,結果として官と民が役割分担をすることでより効果的・効率的なシステムにしていくことができると考えられます。
そこで,(一財)先端建設技術センターでは,優れた技術を見極めるために必要な細やかな“機能”,“情報”,“サービス”を提供する新技術情報データベース「NETISプラス」の構築に取り組み,平成25年1月より本格的に運用を開始しました(図- 2)。
3 「NETISプラス」の特徴
新技術情報データベース「NETISプラス」は(一財)先端建設技術センターの自主事業であり,公共事業における新技術活用を促進するため,国土交通省のNETISに登録・公開されている情報に,以下の“3つのプラス(=付加価値)”を持たせたデータベースです(図- 3)。
①“機能”をプラス
データベースの検索方法や検索結果の表示方法に工夫を凝らし,知りたい新技術情報に素早くアクセスすることが可能です(図- 4)。
また,お気に入りの技術を登録(最大10件まで可能)することで,気になる技術の検索を省略し迅速に情報を得ることを可能としています(図- 5)。
さらに,それらの比較表を簡単に作成・印刷できる機能等も今後追加する予定です。
クラウドを用いることで,高いセキュリティーを確保しつつ,いつでもどこでもデータベースにアクセスいただける環境を提供しています。
なお,データベースの検索・閲覧は無料です。
②“情報”をプラス
動画や写真アルバム,カタログ資料などのマルチメディアに対応し,新技術の活用検討のために必要な情報を一元的・効率的に収集することが可能です。開発者サイドとしても,より積極的・効果的に自社の新技術をPRいただけます(図- 6)。
また,国土交通省のNETISに登録・公開されている技術情報を正確に引用しているほか,民間建設工事向けの新技術など,国土交通省のNETISには掲載されていない優れた新技術についても当センターの審査を経て掲載します。
③“サポート”をプラス
検索している方から開発者への質問・回答など双方向のコミュニケーションが可能です。開発者側としても現場の生の声を聞くことにより技術のスパイラルアップにつながります(図- 7)。
また,「NETISプラス」への登録の際には登録様式(国土交通省のNETISと同様の様式)の作成をお願いしていますが,様式作成時に当センターから行うアドバイスは,NETIS登録用様式の作成時において参考になる有用な情報となります。
(一財)先端建設技術センターでは,技術開発者,設計者,施工者および発注者が,新技術情報をより使いやすくなるように,この新技術情報データベース「NETISプラス」を今後も継続的に改良していく予定です。
4 おわりに
技術開発と活用の間にはいわゆる「死の谷」が存在するとよく言われます。特に建設分野においては,技術開発のシーズは民間にあり,基本的に民間で行われるものですが,その活用は公共工事が主体です。積極的に新技術を使っていこうという強い意思がなければその谷はなかなか埋まらず,場合によっては民間の技術開発意欲を低下させる要因にもなります。公共事業の発注者である国や地方自治体等が抱える課題やニーズを踏まえた上で,技術開発の成果を公共工事の現場に導入することが肝要ですが,これは民間だけでは困難です。先端建設技術の開発と現場への導入・普及にあたっては官の役割がとても重要です。
(一財)先端建設技術センターといたしましては,官と民が役割分担をすることにより,「公共工事等における新技術活用システム」がより効果的・効率的なシステムとなるよう尽力いたします。
また,国土交通省では,「新技術の登録申請時及び活用後の評価における技術特性の明確化」,「現場ニーズに基づく技術公募による活用・評価の促進」,「外部機関の活用による評価の効率化」等を行い現場への新技術の導入を促進するため,「公共工事等における新技術活用システム」の実施要領を改正し,平成26年4月より施行を開始しました。
(一財)先端建設技術センターにおいても,継続的に利用者,技術開発者それぞれの視点に立ち,「NETISプラス」の改良を重ね,意欲ある優れた新技術を応援し,建設業界全体の発展に寄与するデータベースとなることを目指します。
「NETISプラス」が,新技術というキーワードを介し,両者の架け橋になれるよう今後も運営していきたいと考えています。
【出典】
最終更新日:2016-09-27
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