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神戸市 企画調整局 企画調整部 総合計画課

 

1.阪神・淡路大震災の概要

(1)地震の概要

平成7 年1 月17 日(火)午前5 時46 分,淡路島北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が発生しました。この地震により,神戸と洲本で震度6を観測したほか,東北地方南部から九州にかけての広い範囲で有感地震となりました。
 
その後の気象庁による現地調査の結果,大阪から神戸にかけてと淡路島北部の一部地域では,気象庁が震度階を制定して以来,初めての震度7の激震であったことが判明しました。
 
この地震には次の二つの特徴がありました。
一つ目は,神戸市を含む阪神地域で発生した近代史上初めての都市直下型大地震であり,震源が大都市部に非常に近い位置にあったこと。
 
二つ目は,深さ16kmという浅い部分で地震が発生し,膨大なエネルギーが一挙に解放されるタイプであったことです。このため,地震の継続時間が約20秒と短かった反面,揺れの振幅が18cmと当時の観測史上最大の地震でした。
 

(2)被害の概要

神戸市の人的被害としては,死者4,571人,負傷者は1万4,678人に達しました。特に,地震発生直後における死者は,家屋倒壊によるものがほとんどで,窒息死・圧死が全体の約70%を占めています。
 
また,建築物,構造物の被害では,全壊が6万7,421棟,半壊が5万5,145棟にのぼりました。さらに,今回の地震では長田区を中心に,同時多発的に火災が発生し,加えて建物倒壊や道路損壊,さらに水道配管が断水し,消火栓が使用不能となるなど,消火活動を阻む大きな障害によって,過去に類を見ない大規模火災となりました。
 
大都市を直撃した地震のため,電気,水道,下水道,ガスなどのライフラインにも大きな被害が発生しました。電気と水道は市街地を中心にほぼ全面的に供給を停止したのをはじめ,ガスは約80%が停止し,電話は約25%が通話不能となりました。
 
建物の倒壊や焼失で多くの住民が家を失い,また,度重なる余震への不安から,多くの市民が学校や公園などの避難所に避難しました。神戸市の避難所は,ピーク時で599カ所,避難者数は23万6,899人にも達しました。
 
 

2.復興計画の策定と総括・検証

(1)神戸市復興計画

震災により大きな打撃を受けた市民生活の安定と,都市機能の回復に向けた取り組みを進める一方で,市民が安心して暮らすことができ,21世紀にふさわしい活力と魅力にあふれるまちとして再生していくため,平成7 年6 月に「神戸市復興計画」を策定しました。復興計画では,基本的視点として,「都市の機能性とゆとりとの調和」「自然の恩恵・厳しさとの共生」「人と人とのふれあいと交流」の3点をあげ,これらを踏まえて,復興まちづくりの目標として「安心」「活力」「魅力」「協働」の4つを掲げました。
 

(2)復興の総括・検証

計画策定だけでなく,
①復興状況の把握や残された課題を整理し,復興の総仕上げに反映する
②震災を契機に生まれた新たな取り組みや仕組みを,これからの神戸づくりへ継承・発展させる
③震災と復興過程で得た経験や教訓を,将来の災害に生かせるよう,被災地の責務として次世代に継承するとともに,広く国内外に情報発信する
 
以上のことを目的とし,復興過程での課題を踏まえ,市がなすべき取り組みや国・県に対する要望事項をまとめ,市民・学識経験者などへのヒアリングを行い,過去に2度(平成11 年,15年),復興の総括・検証を行っています。
 
 

3.まちの復興

震災では,市街地の広範囲に被害が及びました。とりわけ,戦災を免れた地域や古い住宅が密集した地域では火災が発生するなど,被害が甚大でした。このため,被害が大きく,防災面などから都市基盤の整備改善を図る必要がある地区について,早期に震災復興の土地区画整理事業,市街地再開発事業の都市計画決定を行いました。
 
また,狭い道路が倒壊家屋により寸断され,避難や救援活動に支障をきたしたことや,その一方で道路や公園が火災の延焼防止に有効に機能したことなどが確認されました。このことから,震災復興の土地区画整理事業では,骨格となる道路や災害時に防災拠点となる公園など,安全な都市基盤の整理を進めています。
 

(1)震災復興土地区画整理事業

震災復興土地区画整理事業は,大きな被害を受けた地区において道路や公園などの都市基盤や宅地の整備を行うことにより,被災者の早期生活再建を図り,安全で快適なまちづくりのための事業です。
 
事業実施に当たっては,協働と参画のまちづくりを推進するため,全地区において設立されたまちづくり協議会に対して活動費などを助成するとともに,まちづくりコンサルタント,アドバイザーを派遣するなど,住民の創意と活力を生かしたまちづくりに積極的な支援を行ってきました。
 
また,各地区に現地相談所を設置し,住民の各種相談にきめ細かな応対をするとともに,住民のニーズ・意見の把握に努めており,まちづくりニュースの発行など広報活動にも力を注いできました。
 
平成7 年3 月17日に都市計画決定を行った森南第一,森南第二,森南第三,六甲道駅北,六甲道駅西,松本,御菅東,御菅西,新長田駅北,鷹取東第一,鷹取東第二の11地区において,安全で快適なまちづくりを行い,まちの復興を図るため土地区画整理事業を進めてきました。そして,鷹取東第一地区(平成13 年2 月21日換地処分)をはじめに,順次換地処分が行われてきましたが,施行面積で最大であった新長田駅北地区(平成23 年3 月28日換地処分)を最後として,すべての震災復興土地区画整理事業が完了しました。
 

(2)震災復興市街地再開発事業

震災により壊滅的な被害を受けた東西の都心拠点において,都心機能の導入を図るとともに,道路・広場などの公共施設の整備とあわせて良好な住宅の供給,商業・業務環境の改善を行い,災害に強い東西の都心拠点にふさわしい防災拠点として,早期に復興を進めるため,六甲道駅南地区および新長田駅南地区において,震災復興市街地再開発事業を実施しました。
 
(2 -1)新長田駅南地区
この地区は,昭和40年に策定した「神戸市総合基本計画」において西部副都心として位置付けられ,住環境の悪化・高齢化・産業停滞などの問題を抱えるインナーシティ活性化のため,これまでに地下鉄海岸線の建設や再開発事業によるJR新長田駅の駅前広場の整備などに着手してきました。
 
震災により甚大な被害を受けた市街地の復興と防災公園などを中心とした防災拠点の構築,良質な住宅の供給,地域の活性化や都心拠点にふさわしい都市機能の整備をはかるため,平成7 年3 月17日,市街地再開発事業の都市計画を決定しました。また,地元まちづくり提案を受け,道路・公園・用途地域の見直しなどの都市計画変更を行いました。
 

【市街地整備(新長田)】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
(2- 2)六甲道駅南地区
この地区は,「神戸市総合基本計画」において東部副都心として位置付けられ,JR六甲道駅南側の駅前広場の整備とともに,地区の一部では市街地改造ビルが建設されていました。しかし,大部分は住宅・商業・業務の混在した低利用の地区でした。
 
新長田駅南地区と同様,市街地再開発事業の都市計画を決定し,また,地元まちづくり提案を受け,平成9 年2 月に公園区域の見直しを実施しました。
 
その後,事業計画に基づいて事業を進め,平成17年9月に事業を完了しました。
 

【市街地整備(六甲道)】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

4.震災で得た教訓

(1)「防災」に「減災」の思想を

「復興の総括・検証」では,震災の教訓を一言で『「防災」に「減災」の思想を』に整理されるとしています。
 
震災では,住宅や港湾など多くの都市基盤が破壊され,本来,生命や財産を守る役割を担うハードの施設は,100%安全ではないということがわかりました。これからは,災害による被害が発生することを前提とし,生命などの絶対に守らなければならないものを守りつつ,被害を最小限に留めるという『減災』の思想を,一番の教訓と位置付け,防災対策に取り入れています。
 

(2)自助・共助の意義

災害対策の基本として,自助・共助・公助がうまくかみ合うことが重要とされています。
 
阪神・淡路大震災では,行政による公助だけでは市民の生命・財産を守ることに限界があることが明らかになりました。それと同時に,近隣住民によって多くの人ががれきの中から助け出され,日常のコミュニティ活動の大切さが再認識され,自助・共助の意義も明らかになりました。
 
それを基に,市民の防災意識の普及,防災意識の啓発を目的に,小学校区単位で「防災福祉コミュニティ」を平成7年から結成し,災害活動などにつながる訓練などの活動を積極的に実施しており,神戸市では,助成や防災資機材の配備,市民防災リーダーの育成などの支援をしています。現在は市内全域で結成され,その数は191団体になり,年間800回以上の訓練を実施しています。
 
また,平成25年4月に「神戸市における災害時の要援護者への支援に関する条例」を施行し,災害時に手助けが必要な方(要援護者)を地域ぐるみで助け合う取り組みを推進しています。
 
 

5. 震災での経験・教訓の継承に向けたさまざまな取り組み

神戸市では,1月17日を「市民防災の日」と定め,さまざまな追悼行事の実施,安全に関する啓発活動を行っています。他にも,阪神・淡路大震災によって得られた貴重な経験・教訓を,震災を知らない次世代の市民や,神戸以外の各方面に広く伝えていくため,多様な方法により継承・発信に取り組んできています。将来の神戸を担う世代や国内外の人々に継承・発信していくことは,被災地の責務です。
 

(1)被災者への追悼・記憶の風化の防止

災害対策だけでなく,震災で亡くなった方への追悼や記憶の風化の防止のため,平成7年から「神戸ルミナリエ」や「阪神・淡路大震災1.17のつどい」などを開催し,毎年実施しています。
 

(2) 次なる災害に備えて

平成23年の東日本大震災では,家屋の倒壊よりも,津波による甚大な被害がありました。東日本大震災後,内閣府などにおいて,その経験・教訓を踏まえた今後の防災対策のあり方や,特に近い将来発生が予測される南海トラフ地震・津波防災対策などさまざまな検討が進められてきました。
 
こうした中,神戸市では,東日本大震災の経験・教訓を踏まえて,近い将来の発生が予測される南海トラフ巨大地震や,これに伴う津波への対策を進めるため,専門部会を設置して,さまざまな立場から専門的な意見を聴取するなどの取り組みを実施しています。また,平成26年2月には兵庫県が南海トラフ巨大地震による最大クラスの津波想定結果を参考に,神戸港津波ハザードマップを作成し,神戸市内の全戸に配布をしています。
 

【ハザードマップ】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

(3) 震災20年継承・発信事業

平成27 年1 月17日に震災から20年を迎えるのを機に,震災で得た経験や教訓を次世代を担う市民や国内外の人々に広く伝えていくため,『震災の経験や教訓の継承と発信』『「貢献する都市としての神戸」の意識醸成と定着,活動の展開』という二つのコンセプトに基づいてさまざまな事業を市民とともに展開しています。
 
これらの事業を通じて,震災21年目以降にも事業の成果が引き継がれ,震災の記憶や教訓が,震災経験者から震災を知らない世代へ,そしてさらにその後の世代にまで継承されていくことを目指しています。
 
21年目以降も, 震災の経験を生かしていく「貢献する都市」として,震災での経験や教訓の継承・発信に引き続き努めていきます。
 

【震災20年継承・ 発信ロゴマーク】


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
【出典】


土木施工単価2015冬号

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

最終更新日:2016-09-27

 

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