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はじめに

(一社)全国コンクリート製品協会(以下 全コン)は,昭和25年にコンクリート製品研究会として設立され,その後全国コンクリート製品協会と改称し,コンクリート製品のJIS化への取組みや製造管理士制度の運用等,コンクリート製品(以下PCa製品)の品質の向上と普及と業界の社会的地位の向上に取り組んできた。関係各位のご協力をいただき本年で67年目を迎えている。
 
 

1. PCa 製品の現場での使用事例

設立当初より,PCa製品の長所として,省人化,工期短縮,高品質な製品を供給するために安定的な品質の確保による信頼あるPCa製品の供給に取り組んできたところであるが,近年,全コンと(公社)全国土木コンクリートブロック協会(以下 全協),プレキャストコンクリート工業会の主催で,国土交通省の技術調査官を議長に,各地方整備局の技術調整管理官等との情報交換会を開催している。
 
PCa製品の現場での使用事例を「プレキャストコンクリート製品事例集」として共有し,現場発信の情報も基に,PCa製品の活用について意見交換している。この事例集は,「長寿命化」,「工期短縮」,「コストダウン」,「新技術・新用途」,「防災・減災」,「環境配慮」という最近の社会ニーズに対応した編集をしており,有意義な意見交換の機会となっている。また,上記の情報交換会と連動して,地方整備局ごとに地域に密着したPCa製品の施工事例を共有し意見を交換する会が開催されており,現場情報のボトムアップと共有化,課題の解決に,ともに取り組んでいる。
 
今年度からは,全コン,全協,(一社)道路プレキャストコンクリート技術協会(以下 RPCA)3団体の緩やかな連携によって,一層,PCa製品全体を踏まえた情報交換ができる会として進展してきている。製品事例集では,今後のインフラ整備や維持更新に求められる要求を満たし,今後の用途拡大への可能性を感じさせるものが多くある。「省人化」のみならず,「安全」で,「工期が大幅に短縮」され,「直接工事費が削減」された事例や交通を遮断すること無く「橋梁を更新」した事例,「PCa埋設型枠」や「ハーフPCa」の事例等々,PCa製品ならではの施工事例が沢山あることを実感している。また,現場打ち設計で発注されたものを「承諾」としてPCa製品に設計変更した事例もあり,当初設計段階からPCa製品の使用ができる積算ができないものかと感じている。
 
 

2. i-Construction「コンクリート生産性向上検討協議会」へのPCa製品業界の参加

コンクリート工の生産性向上では,昨年度「コンクリート生産性向上検討協議会」(以下協議会)が設けられ,学識経験者や発注者および関係団体が一堂に会して真剣かつ白熱した議論を行っている。この度の協議会には無筋コンクリート(URC)鉄筋コンクリート(RC)関係のPCa製品業界から全コンと全協とRPCAで参加しており,この3団体でコンクリート製品に関する様々な事項について連携しながら進めている。
 
協議会は現在までに3回開催されており,PCa製品を活用することで,建設現場におけるコンクリート工事において,大幅に生産性を向上させることが可能であると大きな期待が寄せられていることを感じる。昨年度の2回の協議会で,コンクリート工においては「全体最適」という大目標がまとめられた。そしてこの全体最適を実現するための施策を各関連団体が自主的に提案することが求めれらている。既に数団体から具体的なテーマでの検討案件が提示され検討が始まっている。PCa製品業界では,RPCAからPCa製品の用途を拡大する上での重要な技術課題である「PCaの大型構造物への適用」に関して,大型PCa製品の接合問題をテーマとして挙げられ,実験研究に取り組んでいる。
 
全コンではPCa製品業界の取組みを協議した結果,「生産性向上対策プロジェクト」を立ち上げ,積極的な意見提案を行うこととした。現在,経営的・技術的な視点を兼ね備えた10名のメンバーで組織し,それぞれのメンバーが参画している土木学会やJCI等との連携や情報収集,検討対象の抽出等の意見交換を行いながら,協議を開始している。プロジェクトで検討すべき課題は,①製品の大型化,長尺化 ②性能照査による設計手法 ③施工の合理化 ④ハーフプレキャスト化 ⑤コストメリットの考え方など多岐にわたる。いずれも長年当業界が抱えてきた大きなテーマであり,総花的にならぬよう問題点を具体的に抽出し,深堀し,意見をまとめ上げることが必要である。
 

写真−1 大型ボックスカルバートによる施工

 

写真−2 大型法枠ブロックによる施工

 

写真−3 橋脚急速施工




 
 

3. コンクリート工の全体最適におけるPCa 製品の役割

 
コンクリート工における「全体最適」の概念は広く,その内容は「生産プロセス全体で最適化を図る技術・工法の導入」とされ,「全体最適化に向けては,インフラの調査・設計から維持管理・更新まで含めたプロセス全体で最適化が図られるよう配慮することが重要」とされている。
 
本年度開催された第3回の協議会に於いて,この全体最適の具体化についての協議がなされた。建設現場での生産性向上とはコンクリート工において,施工の効率化が図られる各技術(以下「要素技術」)を導入した場合,どの程度効果があるかを試算し,重点的に普及させる技術等の選定について参考データが示された。試算を行った要素技術は,①埋設型枠,②機械式継手・機械式定着工法,③高流動コンクリート,④プレキャストの4項目で,施工時の人工,工期を算出し,参考として直接工事費も算出されている。この試算は,あくまで効果の程度を確認するものであり,実際に導入する適用範囲等は,別途,検討が必要で,採用にあたっては,コストについても検討したうえで,採用を判断する必要があるとしている。
 
具体的な試算の工種では「橋梁下部工」と「道路改良工」について事例が示され,要素技術ごとの資料が提示された。
 

写真−4 場所打ち側溝補修

 

写真−5 橋梁の架け替え




 
「橋梁下部工」においては,従来工法と,①埋設型枠,②機械式定着・機械式継手,③高流動コンクリートを使用した場合のそれぞれを比較し,各要素技術の導入による試算の対象物において,約2〜13%の効率化が図られるとの結果が示されている。
 
一方,「道路改良工」での④PCa製品導入時の試算検討として,L型擁壁の構築を事例として,現場打ち従来工法に比較してH-3mのPCa製品では人工は0.21倍,工期は0.36 倍,H-5mのL 型擁壁では人工は0.14倍,工期は0.33倍となっている。また,参考として示されている直接工事費はH-3mで1.09 倍,H-5mで1.46倍となっている。実際の導入に当たっては,適用範囲・コスト等について検討が必要とされているが,上記の①②③の効果に比べてもPCa製品を活用することで,省人化,工期が格段に生産性向上に寄与するが事例として示されるとともに,積算についての課題が挙げられている。
 
また,プロセス全体の最適化で,サプライチェーンマネジメントの導入についての課題が提起され,工事情報について関係者でより早期かつ具体的に共有できる仕組みを検討し,工事情報が関係者間で共有されることで,早期に調達計画を検討できるとともに,材料調達のミスマッチの解消が出来るのではないか? また,施工関連情報の電子化,クラウド化によって共有の推進を図ることで適切な工程管理,書類の簡素化や材料確認,検査の合理化が図れないか? 将来的には補修・点検結果を追記することで,維持管理段階での活用が期待できないか? などの論点提起がなされた。
 
今後の予定として,各対策,要素技術の効果の試算や効果の算出方法の検討,ガイドラインの策定,品質規定の見直し,規格(サイズ等)の標準化,全体最適を図る設計手法の検討,サプライチェーンマネジメントの導入の検討,土木学会との連携が挙げられ,平成30年度までの年度ごとに2から3回程度の協議会の開催が予定されている。
 
(以上,国土交通省HP 第3回コンクリート生産性向上検討協議会資料参照)
 
 

4. PCa 製品の可能性を実現へ

今回のコンクリート生産性向上検討協議会で,建設技能職の減少への対処として,建設現場での省人化を重点テーマに上げて検討する方向性が示されたことは,PCa製品にとっては極めて評価できることである。しかし,今後のPCa製品の技術的課題や業界の数々の課題に対して,PCa製品業界が一致協力して対応することが必要である。
 
まず,参考データとして示されている直接工事費についての算出方法,施工積算の適合性,現場管理費等の経費率の適合性,施工工期の短縮,社会コストの積算価格への反映,そして,全体最適の観点から,品質向上による維持更新費用や取換え容易性を有するPCa製品の廃棄までをも含めたライフサイクルでのコスト評価やサスティナブルな資源循環型,低炭素型の資材としての評価方法等,その可能性と優位性を実現するためには乗り越えるべき課題は多い。これらの多様な課題解決には,産学官が連携してのコンソーシアムを組織しコンクリート工の全体最適を共有した課題解決の取組みが必要であり,より良い持続可能な社会インフラの構築ができるよう,継続的なマネジメントができることを望みたい。
 
また,PCa製品の強みとして,先述のとおり「高品質」をその強みとしてきた。全コンではJISの制定,運用についてPCa製品の品質向上に長年努めてきたが,今現在は,JIS関連12団体で構成する(NPO)JIS 協議会において,JIS規格の性能規定化への移行に取り組むとともに薄肉断面の限界状態設計法を学会等へ発信している。
 
1995年,日本がWTO/TBT協定に参加して国際標準に適合する方向が示されて以来,コンクリート構造物やコンクリート製品は性能規定型設計法への移行をテーマとして取り組んできた。発注者においても,設計条件の要求性能を明示することが求められており,発注者,学会,PCa製品業界との密な連携の中で,確かな品質を保証できるPCa製品を供給することが必要である。その上で,建設産業の生産性向上に資する建設資材として供給されねばならない。協議会に於いても,学識経験者からは,「品質を向上することも生産性向上である」との品質を重視したご意見があった。モノづくりの基本は「良いものを安く生産し供給する」ことにある。
 
性能規定型において求められている要求品質は,かつての「良いもの」よりはその要求性能事項が多様化し要求レベルが格段に高くなっている。構造物の重要度と性能の関係や,レベルⅠ,レベルⅡ地震動に対応した構造設計が求められている。そして,耐久性や構造物の照査では,薄肉断面の設計,分割型のPCa製品を一体的に組み上げた場合のジョイント部と一体構造としての構造照査とそれぞれの耐久性照査が必要である。また,製品単体の照査のみでなく,建設現場で組み立て連結施工された構造物としての照査もPCa製品業界に課せられたテーマである。これらの課題の解決には,施工者や発注官庁との連携が不可欠である。また,低炭素型のインフラ整備についての要望に対して,PCa製品は,地域で発生する各種スラグの骨材利用など,構造物としての品質管理が可能である長所を活かして,資源循環型の資材としても期待されている。
 
このように多様な社会からの要求に対して,実証実験研究を行い,性能規定化での設計法を確立することは産学の連携で対応すべきテーマである。既に,PCa製品の「大型構造物への適用」については先述のとおり,接合問題について産学連携による実験研究がなされている。安定した品質で信頼あるPCa製品を供給するという社会的な責任を自覚し,建設産業の生産性向上に資すると,より長寿命で良質なインフラ整備に貢献できる信頼されるPCa製品を提供し,もってPCa製品の普及拡大が図られることを切に念願するものである。
 
 

5. 今後の協議会での検討の主たるテーマ

協議会ではコンクリート工の規格の標準化について,○ガイドラインの策定 ○品質規定の見直し ○規格(サイズ等)の標準化のテーマが挙げられている。硬化したPCa製品を多様な建設現場に適応させることは接合問題と基本的なPCa製品の課題であり,また一方で,性能規定型設計法への移行で,創意工夫を生かした研究開発で生産性向上に資することもが求められている。規格(サイズ等)の標準化の考え方と,性能規定型設計による創意工夫による合理的な製品開発・改良の方向の両方の要求に応えることは,今後,PCa製品業界や協議会にての十分且つ慎重な協議検討が必要である。
 
また,今後は,昨年10月から活動してきた土木学会2種委員会の「生産性向上および品質の向上のためのコンクリート構造物の設計・施工研究小委員会」の成果を共有し検討が進められる予定であり,土木学会との連携で,プレキャストコンクリートが学術的な裏づけのある一層信頼される製品として位置づけられ,建設産業の生産性向上に活かされるものになることを期待したい。尚,当委員会には,全コンから3名の技術委員が参加しており,12月にライブラリーが発刊される予定である。土木学会のコンクリート標準示方書との連動で,PCa製品の技術基盤が一層強化され,社会的信頼がさら高まることを楽しみにしている。
 
 

最後に

この度の,コンクリート生産性向上検討協議会は,PCa製品業界始まって以来の,産学官連携の場であり,需要者,供給者の各団体が一堂に会する貴重な機会となっている。その期待に応えられるよう,PCa製品業界が一致協力して,熱意を持って真摯に且つスピーディーに取り組み,コンソーシアムへの参加など外部への積極的な関係性の中で,信頼されるPCa製品として,将来の安全安心で豊かな社会へのインフラ整備に無くては成らない主要な建設資材として一層貢献し普及拡大することを期待したい。
 
 

(一社)全国コンクリート製品協会副会長 ランデス株式会社代表取締役社長  大月 隆行

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年01月号 特集②



 

 

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