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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > 現場から始まった維持管理CIMの推進

 

はじめに

M-CIM 研究会は任意団体として、2015 年10 月に株式会社 補修技術設計 中馬勝己代表取締役をはじめとして国内の中小調査設計5 社で発足した。
 
橋梁構造物の維持管理において3次元計測および3次元データのプロダクトモデリング化が今後重要な課題となる。活動期間は1年と短いものの、会員各社においては橋梁構造物の3次元計測による維持管理調査において合理性や正確性において、より確かな効果を持ちえてきている。またM-CIM研究会の意義に賛同する法人も加わり2016年10月には会員会社は9社になった。本編においてはM-CIM研究会の活動や活用事例の紹介をするとともに研究会活動の中で調査現場での有効なツールとして開発した製品を紹介する。
 
 

研究会の活動

3次元計測現場トレーニング活動
 
M-CIM研究会会員は橋梁構造物の点検、調査、補修設計の業務を通して3 次元データの活用については高い関心を持っている。M-CIM研究会の初年度活動は主として会員会社に対し3 次元計測技術についてのオペレーショントレーニングを主たる活動とした。
 
まず3次元レーザースキャナーを利用した構造物の実計測の現場講習会(写真- 1)。
 

写真-1 現場講習会状況




 

表-1 会員対象3次元レーザースキャナー講習会




 
取得した3 次元点群データの処理について専用ソフトウエアを操作し3次元CADデータの制作、2次元CAD図の制作等の社内講習会を実施した。概ね本講習会を通して会員会社は3次元レーザースキャナーを使用した既設橋梁構造物の計測を習得することができた。
 
 
技術研修会
 
技術研修会は初年度3回、東京にて実施した。講習会のテーマは3次元計測、3次元モデリングの制作から会員会社が独自に取り組んでいる技術等の紹介までをテーマとして会員相互のCIMや建設ロボット関連情報の技術交流を図った。
 
第1回
・3次元レーザースキャナーType1の紹介およびデモ
 
第2回
・3次元レーザースキャナーType2の紹介
・デジタル画像から3次元モデル制作
 ソフトContext Captureの紹介※1
・リアルタイム通信システムの紹介
 
第3回
・橋梁点検ロボット
・ドローンを使用した土工計測
・ターゲット方式デジタルカメラ3次
 元計測
・その他
 M-CIM研究会は構造物計用3次元レーザースキャナーを2 機種管理している。
 表-2は各機種の概略仕様であり、それぞれの長所短所を理解した上で使用している。
 

表-2 3次元レーザースキャナー概略仕様




 
 

3次元計測と3Dモデリングの活用事例

・3次元レーザースキャナー計測
 
橋梁構造物を中心とした構造物調査において、3次元レーザースキャナーを使用した計測は初年度において約100件の実績があり、会員会社の技術者は3次元レーザースキャナーのオペレーティングから3次元点群処理を通して3次元CADを使用し3次元プロダクトモデル作成までスムースに処理できるよう情報交換している。M-CIM研究会は構造物調査において3 次元データの活用から3次元計測や3次元CADを自由にオペレートできる技術者養成もその一つである。図- 1は3次元の点群データから3次元プロダクトモデル作成過程のイメージである。
 

図-1 3次元点群データから 3次元プロダクトモデル作成過程  提供 会員会社:山陽ロード工業株式会社(岡山)




 
 
・デジタル画像に3 次元モデルの自動生成
 
デジタルカメラの普及に伴い、デジタル画像を活用したアプリケーションが多く開発されている。M-CIM研究会では前述の仏国ベントレーシステム社製Context Captureを活用している。本製品は構造物の損傷部等を複数撮影し2次元画像から3次元モデルを作成するアプリケーションソフトウエアである。本ソフトウエアで作成した橋梁支承部劣化部位イメージを図-2に記す。
 

図-2 デジタル画像による3次元モデルイメージ




 
 
このモデルを3次元ビューワーにて観察することにより、よりリアルな状態で損傷状況をみることができる。またこのモデルに座標を属性化することにより3次元プロダクトモデルとして利用することも可能である。
 
 

開発製品

M-CIM研究会活動を通して業務改善や生産性向上を図るツールのニーズが求められる。M-CIM研究会の代表でもある補修技術設計では新たなツールを開発したのでここに概要紹介する。
 
 
・データ変換ソフトの開発
 
 M-CIM研究会では現在用途に応じて、2 種類の3 次元レーザースキャナーを管理しているが計測した点群データ形式は互換性がない。各社が提供するアプリケーションソフトもオペレーターの使い勝手では一長一短がある。研究会メンバーは橋梁調査に適したものとして操作性においてFARO社SCENEを選択した。従ってZ+F社IMAGE5010Cで取得した3次元データをFARO社SCENEでオペレートできる形式に変換するソフトを開発した。本製品によりオペレーターは1種類のソフトウエアをマスターすることで学習効率を上げることができ、かつ便宜性の良いソフトで統一した作業環境が確保できた。今後計測機種に捉われず点群データの標準化が望まれる。
 
 
・リアルタイム通信システム
 
老朽化が進む社会基盤構造物は今後増え続ける一方で、熟練した橋梁技術者の絶対数は限られている。M-CIM研究会の会員は橋梁を中心とした維持管理分野をフィールドとしているが複数現場を担当することは多々ある、このような環境化において現場と事務所、現場と現場をリアルタイムで映像を共有化する要求がある。これは熟練した技術者不足により現場対応が困難になっている。モバイル通信システムの高度化を利用し遠隔地間をリアルタイムで通信するシステムを開発した写真-2は本システムの運用状況である。①は現場状況、②は事務所側でありチャンネル数は4チャンネルで事務所から複数現場状況リアルタイムで確認でき適切な現場指示等ができ熟練技術者の業務効率化を図ることができる。
 



 

写真-2 リアルタイム通信システム運用状況  提供 会員会社:株式会社 補修技術設計




 
 

その他の会員活動

会員会社の内、数社はドローン(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)を利用した測量を実施している。現在橋梁点検・調査において、その利用は少ないが今後その利用において期待が持てるツールである。ドローン飛行可能地域では生産性の高い方法として期待できる。
 
ここに紹介する事例はドローンを使用した計測であるが、会員会社はi-コンストラクション等土木情報技術を利用した最新テクノロジーについてM-CIM研究会内にて闊達な情報交換ができる。
 
 
会員事例紹介1
(旭建設株式会社:宮崎県)

 
ドローン測量は現場での測量時間が短い点、また人が容易に立ち入れない場所での測量で効果を発揮できる。旭建設の自社が施工する工事等で盛土の土量管理や状況確認の3次元モデル化が可能となる。
 
・土木工事現場の進捗度把握
・工事完成後の水利ダム運用状態確認
 



 

図-3 ドローン利用空中測量成果イメージ




 
 
会員事例紹介2
(技建開発株式会社:長野県)

 
本業務は、砂防設備・地すべり対策施設の損傷や渓流および地すべり地域の状況を把握することを目的として、砂防設備、地すべり対策施設、渓流等の状況を点検および確認するものである。
 
・砂防施設の点検
・砂防施設台帳の写真更新
 

写真-3 ドローンで撮影した砂防施設例 提供 天竜川上流河川事務所




 
 
ドローンを利用した本施設の点検は当域場所において危険性の伴うものである。また自身や台風等の自然災害発生後に実施する緊急点検ではより危険度が高くなる。ドローンによる点検では人口密集地域等の飛行制限区域を除けば高い安全性向上が確保できる方法となる。
 
 

まとめと課題

 M-CIM研究会発起人である中馬勝己代表は当研究会が目的とするニーズは高く評価されていると感じている。これは研究会の会員活動での会員の積極的な取り組みや対外に対しても多くの質問やディスカッションから3次元データを利用した構造物維持管理の経済的な有効性が得られる確信を持ちえている。また遠隔計測による3次元計測やその成果を利用することにより、橋梁維持管理現場調査での安全性を確保した業務遂行ができる点も重要である。構造物維持管理業務を通して、より多くの技術者が3次元計測技術や3次元データ処理のオペレーションを習得することにより技術発展の環境が醸成される。その上で中馬代表は3次元データ利用に当たり重要な課題も認識している。以下は克服しなければならない課題である。
 
1. 維持管理業務を通して3 次元点群データ等のプロダクトデータが標準的な成果物として公認される必要がある。同意する関連団体との連携も含め啓蒙活動の推進が必要となる。本件については欧米が先行しており、日本国内での需要換起が急がれる。
 
2. 3次元CADソフト等、3次元点群データ処理についてソフトウェアメーカーと積極的な技術的な意見交換をし、より操作性の良い製品を提供してもらう。
 
 

おわりに

M-CIM研究会では構造物調査において3次元レーザースキャナーやデジタル画像による3次元モデルを作成・利用し調査技術の新たな展開を図る賛同者を会員として募集しています。 また技術研修会では定員枠内にて非会員の参加対応をしています。本趣旨に関心を持つ方は法人および個人を問わず本部事務局へ問い合わせいただきたくお願いします。
 
M-CIM研究会事務局
(株式会社 補修技術設計内)
〒134-0088
東京都江戸川区西葛西6-24-8
e-mail ire@ire-c.com
電話03-3877-4642
 
最後に本稿執筆に当たり、各情報を提供していただいた会員各位に心より御礼申し上げます。
〈情報提供会員〉
山陽ロード株式会社 岡山県津山市 
技建開発株式会社 長野県飯田市
旭建設株式会社 宮崎県日向市
 
 
 

M-CIM研究会 事務局 小出 博

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2017
特集1「i-Construction時代の到来とCIM」



 
 

最終更新日:2017-07-04

 

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