建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > スマートメンテナンスハイウェイ(SMH)への取り組み〜高速道路の維持管理・更新の高度化の推進について〜

 

はじめに

社会インフラの老朽化に伴い,維持管理・更新・マネジメント技術のあり方への関心が高まっている背景を受け,NEXCO東日本グループでは,長期的な道路インフラの「安全・安心」の確保に向け,現場の諸課題解決に立脚した検討を推進することを基本に,情報通信技術(ICT)や機械化を積極的に導入し,これらが技術者と融合した総合的なメンテナンスサイクル体制を構築するため,2013年7月に「SMH構想」を公表した(図−1,図− 2)。本稿では,2020年の実現を目指しているSMHプロジェクトの具体的な取り組み状況について紹介する。
 

図−1 維持管理・更新における課題




 

図−2 SMH全体構想イメージ図




 

1. SMH 基本計画

 
2014年5月に「構想」から「基本計画」にプロジェクトレベルの格上げを行い,点検から評価,補修工事の実施,道路保全情報システム(RIMS:Road Maintenance Information ManagementSystem)への登録までの基本的なメンテナンスサイクルの各業務ステップに対応したテーマと検討課題を設定した(図− 3)。
 

図−3 SMH基本計画における検討テーマと検討課題




 
1つ目のテーマは,「ICTを活用したインフラ監視や現場作業の効率化」である。具体的には,①点検作業の機械化や損傷の定量化を推進し,近接目視点検の代替技術や点検困難箇所の可視化技術を開発,②インフラ監視に必要なモニタリングの要求性能(センサー種別,取得データの活用方法等)を明確にし,モニタリングシステムの基準化・標準化を図る,③現場点検時にモバイルPC上に損傷データ・点検写真を直接入力し,システムと連携することで二重登録を解消し現場作業の効率化を図るものである。
 
2つ目のテーマは,「新RIMSの構築と分析・評価の高度化」である。具体的には,構造物の諸元情報・資産情報・点検情報・図面情報・補修履歴情報など多種多様なデータを現在はシステムごとに管理しており,連携が不十分なためデータを有効に活用できていない。これら課題を解決するため,道路管理者が保有すべきデータのモデル化(一元化)を行うとともに分析フレームワークを高度化し,グループ全体で共有できる「インフラ管理情報の見える化とその活用」の仕組みを構築するものである。
 
3 つ目のテーマは,「業務プロセスと整合したアセットマネジメントの高度化」であり,経営目標とプロセス管理目標などの相関関係を「重要な維持管理指標(KPI:KeyPerformance Indicators)」で分析し,インフラ管理戦略の達成状況に応じたリスクアプローチによるアセットマネジメントの仕組みを構築するものである。
 
4つ目のテーマは,前述した3つのテーマの検討内容をメンテナンスサイクルに組み込み,各業務プロセスを有機的かつ効率的に回すため「現場業務負担の改善とSMH業務プロセスの確立」について検討するものであり,業務プロセスをインフラ管理要領(仮称)として文書化するとともにマネジメント力の強化,組織の最適化,人材育成などを通じて持続的でシームレスな管理体制を構築するものである。
 
5つ目のテーマは,大規模更新・修繕事業など今後増加する更新・修繕工事について,施工技術開発および調達方法を検討し,円滑な事業推進に繋げるものである。
 
以降で各テーマの取り組み状況について紹介する。
 
 

2. 各テーマの取り組み状況

2-1 点検における現状と課題

2014年7月の道路法施行規則の改正により,トンネル,橋,その他付属物について,近接目視による5年以内に1回以上の全数監視が義務付けられ,これによりNEXCO東日本の保全点検要領(構造物編)も改訂を行っている(表− 1)。
 

表−1 保全点検要領(構造物編)改訂概要




 
一方,現場においては,検査路や点検用車両を活用しても,接近,肉眼による目視,触診や打音が物理的に困難な箇所が存在している(写真− 1)。
 

写真−1 点検困難箇所の例




 
このような箇所は,足場(吊足場,枠組み足場)を設置したり,表− 2に示すような近接目視と同等の評価が行える手法を活用したりして点検を行っている。
 

表−2 点検困難箇所とその対応例




 
なお,これら各手法を適用する場合においては,その特徴や適用限界に十分に留意しながら,対象構造物の点検部位に応じた適切な方法を選定して点検を実施している。
 
現在は人手中心による近接目視作業であるが,膨大な高速道路資産の進みゆく老朽化に対応していくためには,機械化による代替・支援は必須であり,その可能性について現在様々な技術について試行検証中である。今後は試行検証した技術の現場適用における整理・ルールを明確にした上で,現場作業の軽減・効率化を図っていきたい。
 
 

2-2 モバイルPCを活用した現場点検作業支援

これまでは手書きの現場点検結果メモを作成し,帰社後,メモの内容をシステムに入力していたが,現場点検結果をモバイルPCに直接入力し,USB等でシステムへのデータ連携を図ることで帰社後の作業をなくし,効率化を図るシステムをNEXCO東日本グループ会社において開発したところである(図− 4)。
 

図−4 モバイルPCを活用した現場点検作業支援




 
現場における一部試行検証は終了し,今後は,全社において試行しながら順次展開していく予定である。
 
 

2-3 画像解析技術による損傷評価支援

点検で取得した変状データに対して,過去の類似した変状データを自動抽出することで,変状の判定を支援する「変状評価支援システム」を開発し,試行検証が終了したところである。今後は,試行結果を踏まえたシステムの改良を実施した後,全社へ展開を図っていく予定である(図− 5)。
 

図−5 変状評価支援システム




 
本システムは,熟練技術者による判定情報等を速やかに自動検出することができ,熟練技術者の判定のノウハウ(暗黙知)の可視化が可能になることから,技術者が損傷の判定を行う際の支援や若手技術者の効率的な育成,変状評価のばらつきをなくし平準化を図ることに寄与するものと考えている。
 
 

2-4 新RIMS の構築〜多種多様なデータの処理・蓄積・解析・応用技術の開発(SIP事業)〜

新RIMSの構築とRIMSデータの可視化においては,内閣府の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」の採択プログラムである標記研究開発の成果を活用している。なお,本研究は,NEXCO東日本および大学等研究機関との共同開発である。
 
構造物の老朽化対策を効果的に実施するためには,環境条件,設計図面,点検記録情報,補修記録,損傷状況写真などの各種データから構造物の健全性を評価し,適切なタイミングでの補修を可能とする補修計画を策定する必要がある。しかし,これら各種データは,現状では保存形式(データテーブル等)が不統一であり,また,「データ(資産)管理系」「マネジメント系」「業務処理系」で独立した各システムで管理されている(図− 6)。
 

図−6 RIMSの全体構図




 
このため現状では,過去の補修履歴や最新データに基づいた適切な補修計画を策定するにあたり,各システムから必要なデータを抽出し,社員がパソコンで加工して資料を作成している。
 
このように従前は統一的に扱うことが困難であった多種多様なデータを統合化し,一つのデータベースとして機能させ,技術者が構造物の健全度判定や補修計画策定に関する高度な判断をするためのデータをいつでも容易に入手でき,自動解析・可視化する技術を研究開発している(図− 7)。
 

図−7 研究開発の全体構成図




 
なお,本研究開発では実際にNEXCO東日本が高速道路の維持管理・更新で使用しているRIMSに格納されている多種多様なデータを題材として実施しており,研究成果は自治体等へも展開していくことを想定している(図− 8)。
 

図−8 自治体等への展開イメージ図




 
本研究開発ではこれまでに,①RIMSのデータベースを分析し,インフラ管理において優先度が高いデータとして,「構造物の諸元情報」「点検管理情報」「図面管理情報」を特定し,各システムに蓄積されているこれらデータを横断的に検索するキーとして,「緯度・経度情報」を選定,②「緯度・経度情報」をキーとして複数のデータベースを串刺しするプログラムを作成し,上記情報を包括的に検索・取得できることを確認している。
 
 

2-5 RIMS データの可視化

2-4において,道路のインフラ管理で使用している多種多様なデータについて,これらデータが蓄積されている各システムを横断的に検索し,必要なデータを抽出するプログラムを作成した。このプログラムおよび実データを用いて,インフラ情報を統合的に可視化させ,適時適切な対応判断をしていく検証を現地のモデル事務所において実施中である(図− 9)。
 

図−9 モデル事務所における可視化検証




 
今後,同様な検証を他事務所へも展開し,現地事務所での日々の維持管理業務を通じて,現場ニーズにマッチしたより実践的なシステムを構築していく。
 
 

おわりに

SMHへの取り組みは,今後もさまざま機会を通じて進捗状況を報告していく予定である。
 
 

東日本高速道路株式会社 津田 剛彦

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年04月号



 

 

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