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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > 施工者から見たCIMの問題点と対応策《その3》

 

株式会社 大林組 技術研究所
主任技師 古屋 弘

 

情報化施工の開発動向

情報化施工の進展は、建設プロジェクトに関わる人々にとって実感できていることと思われるが、その動向に関して1992年から20年間の主に土木関連の既往の発表を土木学会の文献検索システムを用いて(学会および雑誌投稿論文)約900件を図-1に示すカテゴリー(信頼性設計のツール、ICT施工、CIM)の観点から図-4のように分類した。
記載内容が複数のカテゴリーに分類できるものもあるため、統計の母数は2121件である。
 

図-4 情報化施工の開発動向(1992年~2011年の文献調査)

図-4 情報化施工の開発動向(1992年~2011年の文献調査)


調査対象期間(1992年~2011年)でICT施工が約半数の発表件数となり、その内容は図-4のサブグラフに示す通りである。
特に1998年以降、GPS(GNSS)やTSの活用、2005年以降のネットワークの活用、2007年以降の機械化が急速に伸び、さらに近年では3次元データの活用やCGなどの画像活用も増えつつある。また、RFIDや新しいセンサの活用、無人化施工なども数多く発表されている。
 
従来から行われている信頼性設計のツールとしての情報化施工(観測施工)も毎年コンスタントに報告されており、仮設施工時の計測管理や構造物のモニタリングなど計測・管理対象は多岐にわたっている。
また、これまでは施工中の計測管理が主体であったが、近年では維持管理用のモニタリングの試みも報告されている。
 
また、CIM関連は約30%の報告で、CIMの概念は2011年11月の土木学会公共調達シンポジウムで初めて語られたものであるが、これと同様の概念は2002年に発表されている。
これはCALS/ECの推進や情報共有の重要性の認識によるものであると考えられる。
特にこの発表の中では、電子化、データ交換、データベースの活用、情報共有が8割を占め、その他プロジェクトマネジメント、プロダクトモデルの活用などが報告されている。
 
ただし、これらは発表文献を基にしたものであり、比較的大きな施工現場やプロジェクトに関するものである点には注意が必要である。
CIMはまだ始まったばかりであり、これから実例を増やしていくことにより、数々の研究や実務への適用が増えていくであろう。
 
 

CIMの活用を考える

CIMは、施工の効率化や高度化、品質の担保だけでなくさまざまな変革を建設プロジェクトに携わるものに与える。
建設プロジェクトへのCIM適用によるメリットは、前述の通り多岐にわたる。
ICT施工を発展させたCIMへの移行は、建築では近年急速に導入されつつあるBIM(Building Information Modeling)を用いたプロジェクト管理よりも多岐にわたることが予想され、このような概念は土木では3Dプロダクトモデルの活用などが報告されている。
(参考文献>古屋 弘:情報化施工に取り組む現場―事例紹介―、建設マネジメント技術5月号 pp.41~51(2010.5))
 

図-5 CIMの利用イメージ

図-5 CIMの利用イメージ


これらは図-5に示すように、3次元データを積極的に活用し、調査・設計データに施工中の数々の情報を付加し、施工中は工程・品質などの管理や資機材調達支援を円滑に行い、納品後の維持管理にもこれらの情報を生かそうとするものである。
また、施工中は工程や原価管理にも活用し(4D、5D管理)、特に重要な点は、他のアプリケーションとのデータ交換も意識したモデルを用いることであり、XMLやIFC(Industry Foundation Class)の活用が考えられる。
 
特に、これからの社会資本整備において最も期待されるCIMの活用分野として、品質の担保が考えられる。
ICTの活用は効率化に期待される部分が依然として大きいが、新しい高機能な構造物の施工品質の担保や、社会インフラの劣化に伴う維持管理・リニューアルにおけるICTの活用は、今後の技術開発でも十分に考慮しなければならないと考える。
このような品質管理に関わるCIMの活用は、図-6に示す分野である。われわれ技術者は、これまでの設計・施工において、材料や施工のばらつきを許容できる「安全率(筆者はこれを不確定係数と考える)」によりカバーしてきたが、性能規定を十分に生かすとともに、信頼性の高い構造物の施工には、これらを客観的に把握し対処する管理が必要である。
この分野でのCIMの活用は施工に大きな変革をもたらすことは明白である。
さらに近年では、無線LAN等の情報通信技術の進展に伴い、安価に屋外の現場でも十分なネットワーク網の構築が可能となり、これを十分に活用できるクラウドに代表されるシステムが、より多くの成果を生み出すことが容易に想定される。
これらを統合してシステム化し、技術を形式知化(ソフトウェアへの実装)することにより、例えばマネジメント分野等において技術の継承と省力化が一層期待される。
 
図-6 CIMの品質管理への活用

図-6 CIMの品質管理への活用


 
 
 
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その1》
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その2》
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その3》
施工者から見たCIMの問題点と対応策《その4》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設イノベーション!3次元モデリングとBIM&CIM」
建設ITガイド2013
 
 

最終更新日:2014-06-11

 

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