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大成建設株式会社
建築本部建築部 田辺 要平

 

時代の流れの中のスマートデバイス

図-1 使い勝手にこだわったユーザインターフェース(iPhoneの場合)

図-1
使い勝手にこだわった
ユーザインターフェース
(iPhoneの場合)


携帯できる端末を持ち歩きながら建設現場で業務を行うという試みは、タブレット型のPCが流通するようになった1990年の中頃から徐々に行われてきた。
その後、Windows CEなどの組み込み汎用OSの端末も市場に登場していたが、初代iPhoneがアメリカで発売された翌2008年に日本でもiPhone3Gが入手・利用できるようになり状況が一気に変化した。
これまで発売されてきたWindows系のOSやPalm OSを搭載したPDA端末、SymbianやBlackBerryを代表する電話用OSによる既存の携帯端末とは、全く異なるアプローチのデバイスであった。
いわば、何年もかけて徐々に作られていくはずの理想的なスマートデバイスがいきなり究極解の形で登場したのだ。
常時インターネットに接続された携帯端末とはどうあるべきなのか…カメラ機能、GPSに加速度センサー、高精細のマルチタッチ液晶パネルの組み合わせによる驚くべきインターフェース。
はじめてiPhoneのデモストレーションを見た時、多くの人が「通話機能でさえ、ひとつの単なるアプリケーションにしか過ぎない」と気がついたはずである。
 
このような脅威的なデバイスが、iTunesとiPodで作り出してきた「コンテンツ、流通、デバイスと周辺機器、そしてユーザーに構成される壮大なる生態系」に投入されたのだ。
(筆者は、iPodで音楽を聴く=パソコンから音楽ファイルを転送するというスタイルが、これだけ多くの人たちに3〜5年で受け入れられたことに驚いている)
 
一方、その間、インターネット上ではASP・SaaS・Paasなどが生まれ、2006年にGoogleのエリック・シュミットによる発言で「クラウド」という表現でくくられるようになり、さらに一般化していった。
 
その「クラウド」上のサービスは、人とのコミュニケーションというファンデーションな部分から台頭し、今ではTwitterやFacebookなどのソーシャルネットワークは社会の一部となってきている。
そして、それを決定付けたのもスマートデバイスの普及であったことを忘れてはならない。
TwitterもFacebookもPC向けのWEBサービスだけでは、今のような状況はあり得なかったといえる。
 
これらの事実は、1990年代からiPhone前までにわれわれがやってきた「建設現場での携帯端末活用」の時代とは全く異なる土壌が育ったことを示し、その要素を取り入れることが重要であると強く考えている。
過去に行ってきた特定業務の専用携帯端末としてではなく、携帯電話の普及に近いものとして捉えるべきであると。
 
 

情報共有を助ける「現代の野帳」

図-2 建設サイトとの利用イメージ

図-2 建設サイトとの利用イメージ


建設現場で働く技術者は、測量結果や調査結果を記入するために「野帳」と呼ばれる小型の丈夫な手帳を常に持ち歩いている。
野帳は建設現場で昔から広く使われてきた代表的なデバイスの1つである。
 
「Field Pad」 は、建設現場でのさらなるクラウド活用を目指して開発したiPhone/iPad用アプリで、「インターネットに常時接続された現代の野帳」を実現させることを目標としている。
 
それは、何か特定業務を対象としたものではなく、さまざまなシーンで利用されるものでなければならず、業務システムというより電子文房具に近いアプローチである。
このコンセプトを具現化するためにアプリ開発のパートナーとして、iPhoneアプリや国産ブラウザ「Sleipnir」で有名なフェンリル株式会社を迎えて業務システムとは異なる使い勝手を実現している。
 
当社は、2003年から三菱商事株式会社が運営するASPサービス「建設サイト」を全面採用しており、常時1,000ヵ所以上の工事ごとに専用のプロジェクトサイトを持ち、本社や支店と各工事間の社内共有だけでなく、協力会社や発注者、そして設計事務所との情報共有を行っている。
それぞれの工事規模に関係なく、インターネット上では同じ仕事のやり方を「建設サイト」の中で行っているのだ。
結果、図面関係のファイルだけを取り上げても、月間50万枚以上の図面がセキュリティの高い「建設サイト」からダウンロードされながら全国の建築工事を行っている。
 
図-3 ピンに添付された情報(iPadの場合)

図-3 ピンに添付された情報(iPadの場合)


このようにクラウドへ依存した施工管理業務では、現場で見たい図面を、現場事務所の自席にあるパソコンまで戻り、クラウドへログインし、ダウンロードしてから印刷、そして現場へ戻るよりも、スマートデバイスでクラウドにある最新ファイルを閲覧する方が便利だと感じるのも自然の流れといえる。
それはまるで電話をかけるために事務所に戻らなくても、その場で話せる携帯電話が便利だと感じた「あのとき」と似た感覚なのだ。
 
また「野帳」に書き込む内容には、場所や箇所情報を含むものが多い。
そこで「Field Pad」には、クラウドからダウンロードした図面の任意の箇所にピンをドロップし、さまざまな情報を添付できる機能がある。
テキストやタグ、写真/動画/音声メモなどが記録できるようになっているのだ。
もちろん、テキスト入力ではiPhoneやiPadに標準で備わっている「Siri」を使うことも可能。
 
これらは全て汎用的な機能として提供されるため、ピンを立てる図面の種類によって、現地調査から始まり、現場場内の安全管理や品質管理までさまざまな業務シーンで利用できるアプリに仕上がっている。
 
図-4「伝票@Tovas」による帳票出力例

図-4「伝票@Tovas」による帳票出力例


またコクヨS&T株式会社の帳票作成サービス「伝票@Tovas」(別途有償)との連携により、撮影した現場写真や記入したデータを「伝票@Tovas」に送って、工事記録写真台帳などの報告書を自動作成できるようになっている。
しかも、この「伝票@Tovas」では、ウイングアーク株式会社の「SVF」をPDF化エンジンに採用しており、各企業ごとの独自レイアウト書類への出力にも対応できるサービスとなっている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
建設現場のクラウド活用−“スマートデバイス”と“Field Pad”−《前編》
建設現場のクラウド活用−“スマートデバイス”と“Field Pad”−《後編》

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2013
特集「建設ITの最新動向」
建設ITガイド2013
 
 

 

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