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1 はじめに

独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)は,民間事業者や地方公共団体との適切な役割分担のもと,国際競争力の強化,地域の活性化,防災性の向上等に資する都市再生を推進しています。
 
密集市街地は都市の基盤が未整備のまま市街地化した地域であり,この地域の整備が都市再生の喫緊の課題となっています。国は,平成28年3月の住生活基本計画(全国計画)において,「地震時に著しく危険な密集市街地」約4,450haを平成32年度までにおおむね解消することを目標(平成23年3月の目標を継続)に掲げています。
 
密集市街地整備は,防災性向上による安心・安全なまちづくりにとって重要なテーマですが,細分化された敷地,脆弱な地区内道路,接道不良住宅等の課題に加え,権利関係の輻輳等から,その調整や合意形成に時間を要し,十分な進捗がみられているとは言い難いのが現状です。
 

【図− 1 東京23 区における取り組み状況】




 
 

2 UR都市機構の密集市街地整備

密集市街地整備は,公共施設の整備や老朽木造住宅等の建替えを促進し,防災性の向上等を図るものです。UR都市機構の密集市街地整備は,国の防災政策と連動して昭和56年より取り組んでおり,まちづくりのプロセスにおいて,主体となる地方公共団体との適切な連携・役割分担のもと,総合的な支援を行っています。
 

【表− 1 密集市街地整備の制度とUR の取り組みの変遷】




 
(1)都市の骨格的施設の整備
関東大震災においては,全面的に市街地が壊滅し,多くの死傷者が発生したことを教訓に,広域避難対策を軸として広域避難地の整備,広域避難路とその延焼遮断帯形成という都市の骨格的施設整備による防災対策が課題となりました。UR都市機構は,比較的規模の大きい低・未利用地等の種地(たねち)を活用し,住宅供給(民間誘致による住宅整備も含む)と併せて,避難広場や道路,通路等を整備し周辺も含めた防災性の向上を図る拠点整備を行うとともに,延焼遮断帯形成や緊急物資輸送のための都市計画道路を直接施行制度を活用して整備を行ってきました〔三軒茶屋地区と補助209号線,梅田五丁目地区と補助138号線等〕。
 
(2)地区レベルの防災整備
阪神・淡路大震災においては,基盤が未整備な密集市街地で大火災や建物倒壊が起きたため,これまでの都市レベルの骨格的施設の整備に加え,地区レベルの小広場や主要生活道路等と不燃化建替えの必要性が明らかとなりました。これを契機に,UR都市機構も都市レベルの整備に加え,地区レベルの防災性向上に向けた整備にも取り組んでいます。
 
具体的には,地方公共団体からの受託や小規模な土地区画整理事業等による6m程度の幅員の主要生活道路整備〔太子堂・三宿地区,東立石四丁目地区,根岸三丁目地区等〕。防災街区整備事業等の共同建替え〔京島三丁目地区,門真市本町地区等〕。また,これら密集市街地整備により移転を余儀なくされる借家人等の生活再建策として地方公共団体からの要請に基づく従前居住者用賃貸住宅の整備・管理〔根岸三丁目地区,荒川二丁目地区〕等の手法を総合的に活用し,地区にとって緊急度が高く地区全体の密集改善に向けた波及効果が期待できる取り組みを行っています。
 
(3)新たな取り組み「木密エリア不燃化促進事業」
地区レベルの不燃化を促進していくため,平成25年度より地区内の土地を機動的にUR都市機構が取得し,公共施設整備等に係る代替地,未接道宅地の解消および共同化等の種地等としての活用により土地を流動化させることで不燃化建替えを促進する取り組みを実施しています〔京島周辺地区,弥生町三丁目周辺地区,豊町・二葉・西大井地区等〕。これにより,緊急度の高い先導的な事業のさらなる推進に加え,そこから地区全体に波及する連鎖的展開を狙っています。
 

【図− 2 木密エリア不燃化促進事業のイメージ図】




 
 

3 事例①根岸三丁目地区(東京都台東区)

台東区の北部に位置する根岸三・四・五丁目地区(約33.2ha)において,区は,平成14年度より,地区の骨格道路である防災区画道路の整備実現を目指し,密集市街地整備に着手しています。特に防災区画道路B路線は,沿道に高齢者借家人の多い木造アパートが存在する幅員3m未満の道路で,かつ,その南端は木造アパートがあり行き止まりとなっていました。
 
UR都市機構は,借家人の生活再建策として区有地を活用した従前居住者用賃貸住宅の整備について区より事業協力の要請を受けました。これをきっかけに,従前居住者用賃貸住宅整備(34戸)だけではなく,道路整備スキームについても検討し,区有地を活用した土地区画整理事業により土地の再配置を提案しました。そして,その施行(個人施行:平成21〜24年度)も担っています。
 
当事業は,住民等の生活再建に配慮して進めています。土地所有者については,区有地に再配置することで再建に配慮しています。課題であった借家人については,UR都市機構が区有地を取得し,従前居住者用賃貸住宅を建設・管理することとし,それを区が必要戸数を借り上げることで区と従前居住者が直接契約し,入居者の収入や住宅の立地条件・規模等に応じて定まる応能応益家賃で住宅を提供することで借家人の生活再建ができる仕組みとしたことが,円滑な事業推進に繋がっています。
 

【図− 3 整備計画図】




 

【図− 4 根岸三丁目地区における土地区画整理事業等の取り組み】




 

【写真− 1 防災区画道路B 路線の整備(左:整備前,右:整備後)】




 
 

4 事例②荒川二・四・七丁目地区(東京都荒川区)

荒川区のほぼ中央に位置する荒川二・四・七丁目地区(約48.5ha)において,区は,平成17年度より,主要生活道路(幅員6m)の整備実現や不燃化建替えの促進を目指し,密集市街地整備を進めています。
 
UR都市機構は,地区内の都営アパート跡地を活用した従前居住者用賃貸住宅の整備について区より事業協力の要請を受けました。これをきっかけに,区の計画する主要生活道路を道路事業として積極的な整備へと切り替えて進めていくことを区に提案しました。そして,その権利者調整業務をUR都市機構が受託して進めています。
 
密集市街地は,狭小な敷地が多く,主要生活道路の拡幅にあたっては,沿道権利者の生活再建策を用意していくことが必要不可欠です。その再建策の一つが従前居住者用賃貸住宅です。UR都市機構は区からの要請に基づき,当該住宅を都営アパート跡地に整備しています。前述の地区と同様に,必要戸数を区が借り上げ,区と従前居住者が直接契約し,応能応益家賃で住宅を提供することで生活再建を可能としています。
 
当地区の主要生活道路整備にあたっては,道路用地として買収した残地が狭小で住宅の再建が困難なケースがあり,その残地の扱いや代替地の確保が課題で,従前居住者用住宅による生活再建策だけでは不十分でした。そこで,「木密エリア不燃化促進事業」を導入し,道路整備による再建困難な残地取得や代替地確保等を行っています。
 
このように総合的な取り組みにより,住民等の生活再建の選択肢を充実させ,主要生活道路整備を促進しています。
 

【図− 5 荒川二・四・七丁目地区の主要生活道路整備とその促進策】




 

【図− 6・写真− 2 木密エリア不燃化促進事業で道路拡幅の残地取得と敷地統合を行った例】




 

【図− 7 密集市街地整備のイメージ】




 
 

5 おわりに

密集市街地では若年層の流出に伴う高齢化の進捗など都市問題が先鋭的に現れています。密集市街地の整備をさらに推進するためには,地区の特性を活かした魅力ある住宅市街地の再生という視点が必要です。そのため,早期の防災性向上(ボトムアップ)に向けた取り組みに加え,地域に共感が得られる住環境向上(バリューアップ)に向けた取り組みとの両輪展開により,今後も密集市街地の整備を推進してまいります。
 



 
 

独立行政法人都市再生機構 都市再生部 事業管理第1課

 
 
 
【出典】


積算資料2017年10月号



 

 

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