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1. はじめに

本年6月20日,国土交通省では「水防災意識社会の再構築に向けた緊急行動計画」をとりまとめた。平成27年の関東・東北豪雨災害,平成28年8月の台風10号等による豪雨災害を受け審議された社会資本整備審議会の答申を踏まえ,取組を進めている「水防災意識社会」の再構築に向け,国・都道府県管理河川において概ね5年で実施する各種取組の方向性,具体的な進め方や国の支援等について,国土交通省としてとりまとめたものである。
 
本稿では,水防災意識社会の再構築に向けた緊急行動計画について,とりまとめた背景とその内容について概説する。
 
 

2. 背  景

(1)平成27年関東・東北豪雨災害とその対応

平成27年9月関東・東北豪雨では,鬼怒川の堤防が決壊し,氾濫流による家屋の倒壊・流失や広範囲かつ長期間の浸水被害,住民の避難の遅れによる多数の孤立者が発生した。
 

【写真−1 岩手県小本川の氾濫状況(平成28年8月)】




 
 
この災害を踏まえ,社会資本整備審議会より答申された「大規模氾濫に対する減災のための治水対策のあり方について(答申)〜社会意識の変革による「水防災意識社会」の再構築に向けて〜」では,気候変動により施設の能力を上回る洪水の発生頻度が高まることが予想されることから,社会の意識を「施設には限界があり,施設では防ぎきれない大洪水は必ず発生するもの」へと変革し,社会全体で常に洪水氾濫に備える「水防災意識社会」を再構築することが必要であると提言された。
 
この答申を踏まえ,「水防災意識社会再構築ビジョン」として全国の国管理河川において関係者が連携して防災・減災の取組を進めているところである。
 
 

(2)平成28年台風10号等による豪雨災害を踏まえた対応

平成28 年8 月,相次いで発生した台風第7号,第11号,第9号はいずれも北海道に上陸し,台風第10号は暴風域を伴ったまま,太平洋側から岩手県に上陸した。これら一連の台風に伴う豪雨により,国が管理する河川では十勝川の支川札内川や石狩川の支川空知川,岩手県が管理する小本川,久慈川,安家川などで氾濫被害が発生し,特に小本川では要配慮者利用施設において入所者が逃げ遅れ,犠牲になるなど甚大な被害が発生した。
 
この一連の台風により甚大な被害を受けた各河川は,国管理河川の支川や都道府県が管理する中小河川であり,整備水準が必ずしも高くないことに加え,今後,人口減少の影響を大きく受ける地域であることから,このような社会情勢も踏まえた水害対策を早急に検討していく必要がある。これらの災害は同年8月の国土交通省「水災害に関する防災・減災対策本部(第4回)」において,これまで国管理河川で取組を進めてきた水防災意識社会の再構築の取組を中小河川へ拡大して進めることとしたところで発生した災害であった。
 
このようなことから,中小河川等における水防災意識社会の再構築を如何に進めていくべきかについて,社会資本整備審議会河川分科会の大規模氾濫に対する減災のための治水対策検討小委員会で審議された。答申では,現在ハード対策は整備途上であり,直ちに完了させることができない中,同様の被害を繰り返さないため,逃げ遅れによる人的被害をなくすこと,及び,地域社会機能の継続性を確保することを目指すべく,「水防災意識社会」の再構築のための取組を拡大,充実すべきであるとされた。主なポイントは以下の通りである。
 
● 命を守るための確実な避難を実現するため,浸水想定区域や浸水実績,出水時の河川水位などの水害リスク情報等の公表を推進し,地域と共有するとともに,要配慮者利用施設においては避難確保計画の作成等を徹底させること
 
● 被災すると社会経済に大きな影響を与える施設や基盤の保全を図るため,治水対策の重点化・集中化を進めるとともに,ダムなどの既存ストックの活用等,効率的・効果的な事業を推進すること
 
● 協議会を活用した減災対策の推進,発災前の警戒段階から災害復旧に至るまでの地方公共団体への各種支援など,関係機関が相互に連携・支援し,総力を挙げて一体的に対応すること
 
詳細については答申本文を参照されたい。
このうち,法制度による措置が必要な以下の6項目については,平成29年5月の水防法等の一部改正により,制度化された。
 
①協議会による取組の継続・実効性が確保される仕組み構築
②浸水実績等水害リスク情報として周知する仕組み構築
③要配慮者利用施設において避難確保計画や避難訓練実施を徹底させるための仕組み構築
④浸水被害の拡大を抑制する自然地形等を保全する仕組み構築
⑤ダムの再開発等の工事や大規模な災害復旧工事を国等が代行する仕組み構築
⑥建設業者がより円滑に水防活動を実施できる仕組み構築
 
 

3. 「水防災意識社会の再構築に向けた緊急行動計画」の概要

平成27 年,28年の災害を踏まえ,水防災意識社会の再構築に向けた取組を中小河川も含めた全国の河川でさらに加速させるため,中小河川向けの各種ガイドラインの作成など各種取組を進めているところであるが,両答申において実施すべき対策とされた事項のうち,改正水防法の内容を含め,緊急的に実施すべき事項について実効性をもって着実に推進するため,国土交通大臣指示に基づき,概ね5年(平成33年度)で取り組むべき各種取組に関する方向性,具体的な進め方や国土交通省の支援等について,国土交通省として緊急行動計画をとりまとめた。
 

【図−1 「水防災意識社会」の再構築に向けた緊急行動計画①】




 
具体的には,
 
1)多様な関係者が連携して洪水氾濫による被害を軽減するためのハード・ソフト対策を総合的かつ一体的に推進するための「水防法に基づく協議会の設置」
 
2)都道府県管理河川における水害対応タイムラインの作成促進,要配慮者利用施設における避難体制構築の支援,簡易な方法等も活用した浸水想定や河川水位等の情報提供,防災教育の促進などの「円滑かつ迅速な避難のための取組」
 
3)水防活動に係わる建設業者を含む関係者による重要水防箇所の共同点検などの「的確な水防活動のための取組」
 
4)長期間にわたり浸水が継続する地区等における排水計画の作成などの「氾濫水の排水,浸水被害軽減に関する取組」
 
5)堤防整備,既設ダムの嵩上げ等によるダム再生などの「河川管理施設の整備等の取組」
 
6)地方公共団体等へ災害対応のノウハウを技術移転する人材育成プログラムによる研修などの「減災・防災に関する国の支援の取組」など,32項目について定めている。詳細については緊急行動計画の本文を参照されたい。
 

【図−2 「水防災意識社会」の再構築に向けた緊急行動計画②】




 
 

4. おわりに

近年の豪雨被害を踏まえると,気候変動の影響により水害が頻発・激甚化するとの懸念は既に顕在化しつつあり,ハード・ソフト一体となった減災対策は待ったなしの状況である。社会全体で洪水に備える「水防災意識社会」の再構築に向けて,本稿で紹介した緊急行動計画に基づき,関係機関がこれまで以上に緊密に連携して取組を進めるとともに,行政機関だけでなく,あらゆる関係者が連携・協力し,地域が一体となって防災・減災の取組が推進されることを期待する。
 


(参考)
「水防災意識社会の再構築に向けた緊急行動計画」(国土交通省水管理・国土保全局 記者発表)
http://www.mlit.go.jp/river/mizubousaivision/pdf/koudoukeikaku.pdf

大規模氾濫に対する減災のための治水対策検討小委員会の答申(国土交通省HP)
http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/shouiinkai/daikibohanran/index.html
 
 

国土交通省 水管理・国土保全局 河川計画課 河川計画調整室

 
 
 
【出典】


土木施工単価2017秋号



 

 

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