建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > 建設現場における「快適トイレ」の導入について

 

はじめに

建設産業は,インフラや住宅,オフィスビル等の建築物の整備を通じて,国民生活の向上や経済の持続的な成長を支えていくという役割を担っています。また,整備されたインフラの日常的なメンテナンスや,耐震化等の防災・減災対策,除雪などを通じて,国民が安心してインフラ等を利用できる環境の維持や企業の事業継続性の確保にも寄与しています。
 
さらに,東日本大震災や熊本地震などでその重要性が再認識されたように,建設産業には,災害時における応急復旧やその後の復興工事など国民生活や経済活動の一日も早い再建に寄与する重要な役割もあります。これらの国民生活の安全・安心や経済成長に貢献する建設産業の担う役割は将来にわたっても変わりません。
 
一方で,人口減少,少子高齢化を背景に,建設技能労働者約330万人のうち,55歳以上の方が3分の1を占め,近い将来これらの方の大量離職が見込まれています(図− 1)。
 

図−1 年齢別の技能労働者数




 
このような中,わが国の建設産業がその役割を持続的に担うためには,働き手の減少を上回る「生産性の向上」と将来の担い手を確保するための「働き方改革」に取り組むことが求められています。
 
特に,担い手確保については,適正な賃金水準の確保や長時間労働の是正,週休2日の確保などの「働き方改革」に取り組むとともに,建設産業の“執務室”となる建設現場の労働環境を改善し,若年層や女性の入職を促進していくことが必要です。
 
建設産業は,さまざまな地理的・地形的条件,および日々変化する気象条件等に対処する「現地屋外生産」という特性を有しています。屋内での生産が主となる産業では当たり前に提供されている労働環境が,建設産業においては当たり前になっていないものが多い状況です。
 
このように,建設産業の“執務室”である建設現場を,男女問わず誰もが働きやすい環境に変えていくことが,建設産業を更に魅力的な産業とし,担い手を確保するために必要不可欠です。
 
 

1. 現場のトイレの改善に向けた取り組み

現在,公共施設や商業施設など,多くの方が利用されるトイレは洋式が主流になっています。一方,建設現場のトイレはその多くが仮設のトイレであり,和式のままとなっていました。職場は1日の多くの時間を過ごす場であり,職場に付属するトイレについても,衛生的で綺麗で快適に利用できるようにしておくべきです。また,和式から洋式への変化に代表されるよう,トイレに求められる機能等も時代によって変化しています。
 
このような時代の変化を踏まえ,国土交通省では平成26〜27年度に,トイレを従来型の和式トイレから,洋式で臭いが少ないトイレを導入するモデル工事の実施に取り組みました(H26:7件,H27:271件)。この結果,導入した多くの工事で,男女問わずトイレの改善について,非常に好評でした。一方で,導入したトイレの仕様や価格はさまざまで有ったことから,快適なトレイを導入しやすくするとともに,仮設トイレメーカーに一定の水準を満たす仮設トイレの開発を促すことを目的に,導入するトイレの最低限の仕様を決めることとしました。
 
 

2. 快適トイレの仕様について

平成28年8月,国土交通省では,男女とも快適に使用できる仮設トイレを「快適トイレ」と名付けるとともに,「快適トイレ」に求める機能を決定しました。この機能は,これまでのモデル工事において実施したアンケート結果や『けんせつ小町』が働きやすい現場環境整備マニュアル((一社)日本建設業連合会)等を踏まえ,設定しました。(図− 2,3,4 参照)
 

図−2 試行工事におけるアンケート結果

図−3 『けんせつ小町』が働きやすい現場環境整備マニュアル




 

図−4 「快適トイレ」の標準仕様




 
仮設トイレには,現在当たり前になっている洋式をはじめ,水洗機能を有していること,できるだけ臭いがしない構造になっていること,照明機能がついていること,安全帯を置いておくことができるよう5kg程度に耐えることができるフックや荷物置きがついていることを求めています。
 
トイレが快適なものになったとしても,備える付属品等が適切でなければ,快適に使用はできません。例えば,女性の利用者からは,トイレ入り口が周辺から見える状況は使いづらいとの声がありました。このような声も踏まえ,快適トイレとして活用するために備える付属品として,男女別の明確な表示,トイレ入口への目隠しの設置,サニタリーボックス,鏡付きの洗面台,便座除菌シートなどの衛生用品を元請けの責任として設置することを求めることとしました。
 
また,仮設トイレの普及状況を考慮すると,現時点において標準仕様とすることは困難ですが,将来的には仕様や付属品として求めたい機能を明確にしました。具体的には,一定以上の室内寸法,擬音装置,着替え台(フィッティングボード等),フラッパー機能(臭い逆流防止機能)の多重化,窓など室内温度の温度調整が可能な設備,小物置き場等(トイレットペーパー予備置場)を設定しています。(図− 5)
 

図−5 快適トイレの標準仕様イメージ




 

3. 快適トイレの導入について

国土交通省では,平成28年10月1日以降に入札手続きを開始する土木工事において,導入するトイレは快適トイレを基本としています。技術者・技能労働者に女性がいなかったとしても,運転手や外部からの見学者に女性がいることが想定され,建設業は男性も女性も快適に働ける最低限の設備は整っているということを示すためにも,「快適トイレ」に要する費用について,一定の金額の範囲内を上限に,男女別で設置した場合に対して,2基分の費用計上を認めることとしています。
 
また,「快適トイレ」の原則化に先立ち,平成28年9月には,「快適トイレ」の標準仕様を満たすトイレをまとめた「快適トイレ」の事例集を作成し,ホームページで公表しています。この事例集では,作成にあたり「快適トイレ」の標準仕様を満たすトイレの事例を募集し,要件を満たす68件を掲載しています(図− 6参照)。
 

図−6 「 快適トイレ」の事例集 表紙




http://www.mlit.go.jp/common/001146979.pdf
 
なお,当該事例集はあくまで募集期間に応募のあったものを掲載しており,事例集に掲載されていなくても,標準仕様を満たすトイレは,「快適トイレ」として活用できます。
 
 

4. 工事現場以外への普及の期待

東日本大震災や熊本地震など,大きな災害になるとまず問題になるのはトイレの問題です。すぐに仮設トイレが設置されますが,現在市場に出回っているものの多くが和式であるため,災害直後に設置されるトイレも和式が多い現状があります。このため,かがむことが難しい方にとって利用が大変困難であったり,不衛生に感じてトイレを我慢したりするなどの課題が指摘されています。災害直後は仮設トイレの改善を求める報道も多くされますが,災害用に用意されているわけではないため,建設現場やイベント等,平常時に使用する際に求めるトイレの機能を向上させていく必要があります。
 
国土交通省が発注する工事で使用されている仮設トイレは全体の1割程度と言われています。また,国土交通省が行っている事業は全国にわたっており,「快適トイレ」のニーズが全国で生まれていることになります。市場に出回っている仮設トイレの1割が「快適トイレ」に変われば,災害直後に持ち込まれるトイレも,一定程度「快適トイレ」に変わるのではないかと期待しています。
 
国土交通省において「快適トイレ」を基本としてから1年が経過し,実態の調査を行うこととしています。今後,調査結果も踏まえ,現場の環境がより快適になるよう必要な取り組みを行ってまいります。
 
 

おわりに

国土交通省では,受注者と発注者双方が連携し,給料が良く,休暇が取得でき,(将来に)希望が持てる,“新しい3K”の魅力ある建設産業となるよう,「生産性向上」や「働き方改革」に取り組んでいますが,あわせて,今回説明した「快適トイレ」など建設現場の労働環境の改善に取り組み,将来の担い手の確保を実現していきたいと考えています。
 
 

国土交通省 大臣官房 技術調査課 事業評価・保全企画官 竹下 正一

 
 
 
【出典】


積算資料公表価格版2017年11月号


 
 

 

同じカテゴリの新着記事

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品