建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 2017年・建設産業の動向 ― 働き方改革本格始動,業界一丸で週休2日定着へ ―

 
政府が掲げる「一億総活躍社会」の実現を目指し,近年の大きな社会問題になっている長時間労働の是正を柱とする「働き方改革」に向けた取り組みが本格的に始まった。政府は3月に初めてとなる働き方改革実行計画を策定し,労働基準法に基づいて労使間でいわゆる36(さぶろく)協定を結んでも超えることができない罰則付の時間外労働の上限規制を全産業に設定した。これまで上限規制の適用除外業種だった建設業にも関係法令の施行から5年の猶予をおいて規制を適用することを定めた。
 
今後,人口減少や少子高齢化による生産労働人口の急減に伴って産業間の人材獲得競争がさらに厳しさを増す中,当面の建設業の最優先課題は技術者・技能労働者としての若者の入職・定着の促進になる。そのため,日本建設業連合会(日建連)などさまざまな建設業団体が,政府の時間外労働上限規制の適用猶予期間より前倒しして自主的に週休2日の導入や時間外労働の段階的な削減に取り組んでいく方針を決めた。ここにきて団体の垣根を越えた「オール建設業」で働き方改革を推進し,若者に魅力のある産業として形成・発展させるための職場づくりを進めていこうとする環境が整いつつある。
 
一方,建設業の安定的な経営基盤を支えるためには一定の工事量が不可欠になる。最近の建設市場の動向をみると,当面,首都圏では2020年東京オリンピック・パラリンピックの開催を契機に計画される大会施設や関連インフラの整備を中心とするおう盛な工事量が見込まれる半面,地方では最低限の人材や資機材を着実に確保するための十分な工事量がないとの苦しい状況を訴える声が強まっていると同時に,公共事業予算の安定的な確保に向けた17年度補正予算の早期編成を求める政府への要望の声が日を追うごとに高まっている。
 
国土交通省が建設業の人手不足に対応して取り組んでいる建設現場の生産性向上策i─Constructionの普及・拡大も着実に進んできてはいるが,今年も7月の九州北部豪雨などの大規模災害が全国各地で頻発する中,引き続き国民の安全・安心を守るための国土強靱化や防災・減災対策,公共施設の老朽化対策などを担う建設業の役割はより重要になってくる。
 
働き方改革の本格始動によって新たな局面を迎えつつある建設業の今年1年を振り返り,来年を展望してみたい。
 
 

働き方実行計画を策定

政府の「働き方改革実現会議」(議長・安倍晋三首相)は3月28日,初めてとなる全産業を対象にした働き方改革実行計画を策定した。
 

【図−1 建設関係団体による自主的な働き方改革の主な動き】




 
同会議に出席した安倍首相は,「働き方改革実行計画の決定は,日本の働き方を変える改革にとって歴史的な第一歩だ。2017年が日本の働き方が変わった出発点として後世に記憶されるだろうと確信している」と述べた。働き方改革実行計画で導入を決めたさまざまな規制は,厚生労働省が所管する①労働基準法②じん肺法③雇用対策法④労働安全衛生法⑤労働者派遣法⑥労働時間等設定改善特別措置法⑦パートタイム労働法⑧労働契約法─の計8本の法律を一括改正して具体化する。当初は今秋の臨時国会に提出して審議される予定だったが,10月22日投開票の第48回衆院選が急きょ決まった影響で先送りされた。10月末時点では最短で来年の通常国会に提出して審議入りするとみられている。
 
計画の最大の柱は,近年相次いでいる入社して間もない若手社員の過労死を教訓に全産業を対象に設定した時間外労働の上限規制の導入になる。具体的な上限を原則として「月45時間・年360時間」,繁忙期は例外として「月100時間未満,年720時間」とそれぞれ定め,これらの内容に違反した企業には罰則を科すという内容だ。ただし,建設業への適用については,堅調な国内市場の影響で深刻な人手不足が懸念されるため,時間外労働の上限規制を定める改正労働基準法の施行を予定している19年4月1日から5年間猶予する。
 
一方,建設業団体は24年4月になるとみられる時間外労働規制の適用開始を前倒しする積極的な対応をみせている。
 
日建連は9月22日の理事会で,長時間労働を是正する働き方改革をさらに推進することを決議し,会員企業に対応を要請した。
 

【図−2 日建連による時間外労働の段階削減イメージ】




 
 
年間の時間外労働を19 〜21 年度に960 時間以内,22 〜23 年度に840時間以内へと段階的に減らす「時間外労働の適正化に向けた自主規制」を導入する。さらに,理事会で決議した「週休二日実現行動計画試案」には,21年度に「適用困難事業所」を除き「すべての事業所で週休2日(週2閉所)を実現する」との目標を明記。19年度に4週6閉所以上(第2,4土曜を閉所)の休日環境を整えることを中間目標とし,?建設サービスは週休2日で提供?日給制技能者の総収入を減らさない?必要な経費は請負代金に反映させる─などを働き方改革推進の基本方針に据えた。
 
全国建設業協会(全建)は9月21日の理事会で,地域建設業が働き方改革に臨むに当たっての指針となる「働き方改革行動憲章」を策定した。本部,都道府県建設業協会,会員企業の姿勢や取り組むべき施策を列挙。長時間労働をなくすための職場風土の改革や就労環境整備に経営者が率先して対応するとうたった。週休2日確保や所定外労働削減に向け,短工期や低価格のダンピング受注は「厳に行わない」と明記した。
 
全国中小建設業協会(全中建)や日本電設工業協会(電設協)などの中小・設備工事関係の団体も働き方改革に向けた検討組織を設け,長時間労働を是正するための具体策などの検討を進めている。
 
ここにきて働き方改革を推進する複数の建設業団体同士が情報交換を行うなどして連携を図る「オール建設業」で対応する新たな展開も出始めている。こうした建設業団体の対応を石井啓一国土交通相は「将来の担い手を確保する第一歩として歓迎したい」と評価している。
 
政府も国交省が中心となって建設業団体の自主的な働き方改革を後押ししている。官民の建設工事を対象にした「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定し,8月28日に開かれた「建設業の働き方改革に関する関係省庁連絡会議」(議長・野上浩太郎官房副長官)で申し合わせた。ガイドラインは建設工事の生産性向上に業界を挙げて取り組むとともに,受発注者が相互の理解と協力の下で,①適正な工期設定・施工時期の平準化②社会保険の法定福利費や安全衛生経費の確保③生産性向上④下請契約における取り組み?適正な工期設定などに向けた発注者支援の活用─などに取り組んでいくという内容になっている。
 
国交省は,このガイドラインに基づき,今後の同省発注工事で建設業の働き方改革を推進するために受注者の負担を減らす適正な工期設定や施工時期の平準化などに取り組んでいく。さらに,8月から10月にかけて,①不動産・住宅②鉄道③電力④ガス─の4分野の民間発注工事を対象にそれぞれの受発注者と立ち上げた建設業の働き方改革に関する連絡会議の場も活用し,ガイドラインに基づく取り組みの着実な実施を促す方針だ。
 
 

日建連新体制が発足

日建連の新体制が発足した。
 
4月28日に開催された定時総会・理事会で,任期満了で中村満義会長(鹿島(株)代表取締役会長)が退任し,副会長建築本部長を務めていた山内隆司大成建設(株)代表取締役会長が新会長に就く人事を決定した。
 

【写真−1 日建連の新体制が発足】




 
役員改選では,山内新会長が建築本部長に押味至一副会長(鹿島(株)代表取締役社長)を指名。土木本部長は宮本洋一副会長(清水建設(株)代表取締役会長)が続投することも決まった。
 
山内会長は就任のあいさつで「建設業のさらなる発展に向け,全力で取り組む」と所信を表明。新体制で臨むに当たり,「担い手の確保・育成と生産性向上の実現に至る道筋を付ける」と抱負を述べた。事業環境への適応と日本経済の再興のための課題に,「働き方改革」「インフラ輸出」「20年東京五輪への貢献」の3点を列挙した。退任した中村会長については「(日建連を)衆目を集める存在に導いてくれた」とその功績を称えた。
 
一方,中村氏は会長退任のあいさつで,13年4月の就任からの協力・支援に謝意を示し,「山内新会長の下,建設業界のさらなる発展と会員各社の成長につながること,日建連の活動のますますの充実を目指すことを期待する」と新体制にエールを送った。
 
 

建設産業政策会議が提言

建設産業の将来の展望や建設業関連制度の基本的枠組みについて検討してきた国土交通省の有識者会議「建設産業政策会議」(座長・石原邦夫東京海上日動火災保険(株)相談役)は6月30日,議論の成果を政策提言としてまとめた。働き方改革,生産性向上,良質な建設サービスの提供,地域力の強化といった分野ごとに,「制度インフラ」の再構築を中心にした施策を盛り込んだ。
 
政策提言のタイトルは「建設産業政策2017+10〜若い人たちに明日の建設産業を語ろう」。10年後を担う若い人たちに夢や希望を与えることができる産業であり続けるとの思いを込めた。働き方改革や生産性向上の取り組みを通じて良質なサービスを提供。安全・安心や経済成長に貢献することで国民の理解と信頼を拡大し,これを若者や女性の入職につなげる好循環の実現を目指すとした。
 

【図−3 建設産業政策会議の提言に盛り込まれた主な施策】




 
 
その上で,今後の建設産業が目指すべき方向性と,制度インフラを中心とした今後の建設産業政策を提示。産業全体で目指す方向性として,技術の進展や施工方法の多様化が見込まれる中,建設企業間や建設企業と建設関連企業との間の一層の連携により,高い生産性の下で良質な建設サービスを提供することを挙げた。具体的な施策については,•働き方改革•生産性向上•良質な建設サービスの提供•地域力の強化─の4分類に沿って方向性を示した。
 

【写真−2 建設産業政策会議の会合】




 
 
働き方改革では,長時間労働の是正や処遇の改善などを強力に推進。民間も含め発注者による適切な工期設定や,施工時期や労働の平準化などを進める必要があるとした。
 
建設産業が進化していくため,建設生産システム全体から個々の企業・個人の取り組みまで,あらゆるフェーズで生産性向上に向けた取り組みも求められるとし,技能労働者の多能工化や下請企業間の契約形態の再構築,ICT(情報通信技術)の活用などを打ち出した。
 
良質な建設サービスの提供では,「技能」や「技能労働者」の位置付けの明確化や,適正施工の確保と発注者の保護,法令違反への対応の厳格化などを盛り込んだ。
 
地域の守り手,地方創生の担い手としての地域建設業の持続性を確保するため,国,都道府県との連携の下,市町村など地域が一丸となった取り組みが必要だとし,地域の建設企業の経営基盤強化や,地域貢献に関する評価の拡充,地域建設業の安定的な担い手確保につながる入札契約方式などの施策を挙げた。
 
施策横断的に取り組むべき重要な課題として,重層下請構造の改善や,請負契約だけではないさまざまな契約の規律の再構築などを列挙。こうした課題に対し,今後継続的にさらに踏み込んだ検討を強く期待するとした。
 
 

九州北部豪雨復旧で代行制度初適用

今年の通常国会では政府提出法案のうち国交省が所管する9本のすべてが成立した。このうち建設業に直接的に関連する法律の一つが,甚大な浸水被害が発生した昨年8月の台風10号などを教訓にした水防法,河川法,水資源機構法,土砂災害防止法の4法一括改正法になる。6月19日に施行された。
 
この一括改正法のうち,改正河川法と改正水資源機構法では,都道府県が管理しているダム(計434カ所)の洪水調節機能を効率的に高める再開発や地方自治体が管理する中小規模の河川の災害復旧について,高度な技術力を必要とする工事を国や水資源機構が代行できる制度が創設された。
 
代行制度では,自治体から要請があれば,施工難易度の高さや土木職員の不足を確認できた時点で自治体に代わって国が工事を進めることができるスキーム。国の土木職員が施工業者を選ぶ入札契約手続きや現場での工事監理などを代行し,施工の迅速化・円滑化や品質確保に役立てる狙いがある。
 
今年も全国各地で大雨などによる大規模災害が頻発する中,7月の九州北部豪雨で大量の土砂や流木によって甚大な被害を受けた福岡県管理河川の災害復旧工事に改正河川法に基づく国の代行制度が初めて適用された。
 
国交省は7月14日に小川洋知事から要請を受け,同19日に九州地方整備局の筑後川河川事務所が緊急随意契約で地元の建設会社に工事を発注した。10月上旬時点で福岡県朝倉市を流れる筑後川水系の赤谷,大山,乙石の3河川で,土砂や流木でふさがっていた河道の流路を確保するための緊急対策工や,赤谷川に近接して二次災害のリスクがある住宅周辺の河岸防護工がおおむね完了。今後は上流から流出した土砂を捕捉する土砂止め工などを行っていく予定だ。
 
県が国交省に工事代行を要請したのは,「今後の降雨による二次被害の恐れが大きかった上に,流動性の高い土砂の除去には高度な技術が必要」(県土整備部河川課)と判断したためだ。実際に代行制度を適用して国が赤谷川,大山川,乙石川の応急対応に当たったおかげで,「県はその他の県管理河川の応急復旧に全力を挙げることができている」(同)という。
 

【図−4 災害復旧工事に権限代行制度を初適用した河川の位置】




 
総務省によると,自治体の土木職員は減少傾向にあり,市町村の土木職員はこの約20年間で3割減の約9万人(13年),土木費は半額の約6兆円(12年)にまで落ち込んでいる。人口の減少によって執行体制のぜい弱化が進む自治体の公共事業が大きな転換期を迎えている中,国の代行制度は自治体のインフラの整備や維持管理,災害復旧を着実に行っていくための有力な手段として多くの自治体で適用されていきそうだ。
 
 

社整審分科会が今後の道路政策で答申

今後の道路政策を議論してきた社会資本整備審議会(社整審,国土交通相の諮問機関)の道路分科会(分科会長・石田東生筑波大学特命教授)は8月22日,老朽化対策のさらなる強化などを求める建議をまとめた。今後増加が予想される維持管理・更新費を安定的に確保できるようにする方策の検討をはじめ,防災・減災や経済成長に貢献する道路の整備推進やネットワーク機能の拡充などを提案した。
 
建議の題名は「道路・交通イノベーション〜『みち』の機能向上・利活用の追求による豊かな暮らしの実現へ〜」。国交省が道路分科会に道路政策全般を対象にした建議をまとめてもらったのは2012年以来5年ぶり。直近では老朽化対策に特化した建議を14年にまとめた。
 

【図−5 社整審道路分科会の建議の要旨】




 
今回の建議では,国交省が道路政策の最優先課題に位置付ける老朽化対策を中心に新たな施策や現行施策の充実などを提案した。
 
老朽化対策のさらなる強化に向けた施策の提案では,ストックの大半を管理している地方自治体などの道路管理者が行う維持管理や更新にかかる費用を的確に予測し,安定的に確保していくための方策を検討する必要性を指摘した。具体的には,新たに一般道を利用する大型車向けに対距離課金を導入したり,有料道路で建設債務を償還した後も料金徴収を続けたりする方策の検討を求めた。
 
防災・減災や経済成長に貢献するための施策の提案では,昨年4月の熊本地震を教訓に,現在指定されている災害時の緊急輸送道路の絞り込みを求めた。指定路線の中から平時も含めた安定的な輸送確保に向けて重要になる路線を特定し,耐震化を念頭に置いた設備投資を重点的に進めておくことを提案した。
 
さらに,空港や港湾などの交通拠点や物流施設の周辺にある橋やトンネルなどの道路施設構造物については,トラックの大型化に対応した構造の機能強化を求めた。
 
国交省はこの建議を踏まえ,老朽化対策を一段と強化する。17年度末で期限切れとなる道路整備財政特別措置法で運用している国の道路整備費補助金のかさ上げ措置を延長。空港や港湾,物流施設の周辺にある道路施設構造物の機能も強化する。来年の通常国会に同法や道路法の改正案を提出し,建議の内容を具体化する方針だ。
 
 

高さ5m 程度以上でフルハーネス着用義務化

建設現場の装いが大きく変わる。厚生労働省は6月,建設現場の高さ5m程度以上の場所で作業員が着用する安全帯について,胴体部全体を支持するフルハーネス型の着用を今後数年以内に義務付ける方針を決めた。この高さからの墜落・転落時に身体にかかる衝撃の分散効果が大きいことが建設業団体への聞き取り調査で明らかになったためだ。
 

【写真−3 フルハーネス型安全帯を着用している技能労働者】




 
安全帯の着用規定を盛り込んだ労働安全衛生規則(省令)を17年度中に改正し,告示の構造規格を18年度初めごろに見直す。省令は十分な準備・猶予期間を確保するために公布から数年以内に施行し,告示は約半年以内に施行する。構造規格の細則となる任意規格の日本工業規格(JIS)も18年度中に見直す。安全帯の買い換えの目安となる標準耐用期間は約3年。このため,実際にフルハーネス型の着用義務が始まるのは最短でも3年後の20年ごろになる見通しだ。
 
フルハーネス型の構造規格やJISは比較的大柄な欧米人の体格に合わせた国際標準化機構(ISO)の運用規格に合わせて見直す。現在,国内で市販されているフルハーネス型の中で大部分を占めている胴ベルトが不要の「ももベルト水平型」と呼ばれるタイプについて,ISO規格と同様に骨盤の位置にフィットさせるように改善を進める考え。現在は義務付けられていない墜落・転落時に身体にかかる衝撃荷重を低減させる装置「ショックアブソーバー」の設置も新たに規定する方向だ。
 
高さ5m程度以下の高さの場所の作業では,安全性能を高めるなどの条件付きで引き続き胴ベルト型の着用も認める。
 
厚労省が5月にまとめた16年(1〜12月)の労働災害発生状況調査結果によると,建設業の死亡者は294人。うち要因別割合で最も多い134人が高所からの墜落・転落災害で死亡した。一方,06〜15年の間にフルハーネス型着用者の死亡事故は確認されていないが,胴ベルト型着用者の死亡事故は宙づり時にベルトがずり上がって胸などを圧迫されたことなどによって6件起きているという。原則として購入は作業員の自己負担となり,価格は胴ベルト型と比べ5倍程度高いフルハーネス型の普及は課題も多いが,労働災害防止の喫緊課題に当たる墜落・転落災害の撲滅・減少には着実に効果をもたらしそうだ。
 
 

「建設キャリアアップシステム」の運用開始へ

建設技能者の就業履歴や保有資格などを業界統一ルールで蓄積・管理し,来秋の運用開始を目指す「建設キャリアアップシステム」の料金体系が決まった。技能者の登録料はインターネット申請2,500円,郵送・窓口申請3,500円。発行するカードの有効期限は10年で本人確認書類の未提出者は3年。有効期限内にカードの紛失や破損などで交換する場合は,発送費を含め実費相当(約1,000円)の負担を想定している。
 
事業者の登録料は企業の資本金に応じ段階的に設定。利用料は全事業者が対象の「管理ID利用料」と,元請が対象の「現場利用料」の2種類を設ける。
 
運用開始初年度で100万人,5年ですべての技能者に登録してもらう目標を前提とし,一定の運営上のリスクも加味して金額を設定した。
 

【図−6 キャリアアップシステムの5年ごとの事業者登録料】




 
 
5年ごとに支払う事業者登録料は,企業の資本金別とし,資本金500 万円未満(3,000円)から,資本金500億円以上(120万円)までの11段階で設定した。対象は個人事業主を含むすべての事業者だが,一人親方は無料とする。
 
毎年支払うシステム利用料は,事業者情報の管理や技能者情報の閲覧などができる「管理ID利用料」と,現場に入りシステムを利用する技能者の就業履歴回数に応じて設定する「現場利用料」の2種類。管理ID 利用料は1 ID当たり2,400円。現場利用料は技能者が就業履歴を取得する回数1回当たり3円。
 
事業者規模別のモデル試算(現場利用料は年間完成工事高1億円で技能者1,000人日と仮定,年間完成工事高のうち7割の現場で就業履歴を蓄積と想定)によると,資本金1,000万円・年間完成工事高1億円の事業者( 1 ID)は,年間の事業者登録料2,400円,管理者ID 利用料2,400円,現場利用料2,100円の計6,900円となる。
 
資本金10億円・年間完成工事高100億円の事業者( 5 ID)は,年間の事業者登録料4万8,000円,管理者ID利用料1万2,000円,現場利用料21万円の計27万円。資本金500億円・年間完成工事高1兆円の事業者( 50 ID)は,年間の事業者登録料24万円,管理者ID利用料12万円,現場利用料2,100万円の計2,136万円となる。
 
今後,国交省は建設キャリアアップシステムに蓄積される就業履歴や保有資格などを活用した技能者の統一的な能力評価基準作りを進め,処遇の改善につなげていく。
 
 

17 年度補正予算が不可欠

(一財)建設経済研究所と(一財)経済調査会が10月30日に発表した最新の建設投資見通しによると,17年度は7月の前回見通しで示した前年度比1.2%増の53兆1,100億円を上方修正し,1.4%増の53兆2,300億円と予測。政府建設投資は修正せず,民間建設投資(住宅と非住宅)が微増となった。18年度の見通しも前回の前年度比3.9%減の51兆200億円を上方修正し,3.2%減の51兆5,500億円とした。
 

【図−7 名目建設投資額の推移(年度)】




 
 
このうち,政府建設投資は,17年度が21兆7,800億円(前年度比3.3%増),18年度が20兆800億円(7.8%減)となる見込み。17年度は前回見通しと同じで,18年度は東日本大震災復興特別会計で関係省庁の概算要求の内容を踏まえて事業費を推計して前回から4,600億円を上積み。13年度から6年連続で20兆円台を突破する見通しを示した。民間非住宅建設投資(建築・土木)は,17年度が16兆円(前年度比1.9%増),18年度が15兆9,200億円(0.5%減)とそれぞれ前回予想よりも800億円,300億円上乗せした。企業収益の改善や個人消費の緩やかな持ち直しなどを背景に,企業の設備投資が底堅く推移していくと予測。事務所,工場,倉庫ともに着工床面積が引き続き堅調に推移するが,店舗は中長期的に増加を後押しする要因が見当たらず減少するとみている。
 
一方,全建が7〜8月に会員に行った調査によると,災害対応にも欠かせない人員や機材を維持しようにも事業量が足りないと考えている地域建設業者が多いことが明らかになった。「必要な事業量を下回る」との回答が半数を超え,約4割は「必要最低限」の維持にとどまる。
 
会員からは,「河川,道路復旧工事で影響が出た」など,災害対応にすでに支障を来しているとの意見が寄せられた。除雪作業から撤退する地域建設業者が増えている地域もあり,「必要最低限の小型機械しか保持できないのが現状」という指摘もあった。人員や機材を維持するため,発注・施工時期の平準化や受注機会の均等化を求める意見もあり,全建は当初予算の増額や大型補正予算の早期編成など事業量の確保と経営の安定化に必要な措置の実施が不可欠と考えている。
 
そのため,全建は10月に国交省と全国9地区で開いた17年度地域懇談会・ブロック会議で窮状を説明し,経営の安定化に向けた事業量確保の必要性を訴えた。
 
11月1日に発足した第4次安倍内閣。先の衆院選で自民党は政権公約に安定的・持続的な見通しを持って計画的に必要な公共投資を実施していくことを掲げ,公明党はストック効果の高い社会資本の整備に戦略的に取り組むとしていた。まずは地域建設業者が安定的な経営基盤を築き,次代の担い手を確保・育成し続けていくためにも,17年度補正予算の編成では安定的な事業量を確保することが求められる。
 

【写真−5 全建による自民党への17年度補正予算編成要望活動】




 
 

株式会社 日刊建設工業新聞社  片山 洋志(かたやま ひろし)

 
 
 
【出典】


積算資料2017年12月号



 

 

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