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ホーム > 建設情報クリップ > 土木施工単価 > 「防災公園の計画・設計・管理運営ガイドライン(改訂第2版)」および「身近な公園 防災使いこなしブック」について

 

1 はじめに

都市公園は,良好な都市景観の形成,都市環境の改善,生物多様性の確保,人々のレクリエーション空間などの多様な機能を有しているが,災害に対しては,火災の延焼防止や地域住民の避難の場など,都市の防災性の向上に資する機能も有している。
 
このようなことから,国土交通省では,阪神・淡路大震災後の平成11年に公表した「防災公園の計画・設計に関するガイドライン(案)」をもとに,地方公共団体が取り組む主に地震に起因する市街地火災の発生時(図-1)に,避難地や防災活動拠点等となる都市公園(防災公園)の整備を推進してきた。その後,東日本大震災等の災害で確認された防災公園等の新たな役割(津波エネルギーの減衰や津波からの緊急避難場所となる高台としての役割等)(図-1)を踏まえ,平成27年9月に同ガイドラインの改訂を実施した。
 
一方,災害時に防災公園等が期待される役割を十分に発揮するには,整備に加えて,平時の備えを含めた管理運営の取り組みも重要と考えられる。実際に,平成28年4月に発生した熊本地震でも,これまでに整備が進められた防災公園等が役割を発揮(図-1)する一方,利活用上の課題が確認された。そのため,国土交通省国土技術政策総合研究所(以下,「国総研」という。)は,国土交通省都市局とともに,熊本地震における都市公園の管理・活用に係る教訓や知見等をもとに,主に公園管理者を対象に平常時および災害時に果たすべき管理運営上の役割や対応をとりまとめ,平成29年9月に同ガイドラインの再改訂を実施した。
 
なお,とりまとめに当たっては,学識経験者,行政関係者により構成される「防災公園計画設計・管理運営ガイドライン改訂検討委員会(委員長:輿水 肇 明治大学客員研究員)」を設置し,委員長はじめ各委員の皆様より貴重なご指導,ご助言をいただいた。
 

【図-1 過去の震災において公園緑地が担った防災上の役割の例】




 

2 ガイドライン再改訂のポイント

再改訂の主な内容としては,新たに第Ⅳ章として「防災公園等の管理運営」を追加するとともに,防災公園等の利用に関する地域住民向けの普及啓発資料として「身近な公園 防災使いこなしブック」を参考資料に付したこと,また,第I章「総説」に平成28年熊本地震の事例を追加したほか,第Ⅲ章「防災公園の計画・設計」に管理運営面からみた計画設計段階の留意事項を追記したことなどが挙げられる。以下では,これらの改訂箇所のうち,第Ⅳ章の冒頭に記した「防災公園等の管理運営の基本的考え方」と,同ガイドラインの参考資料として掲載した「身近な公園 防災使いこなしブック」を中心に紹介する。
 
 

3 防災公園等の管理運営の基本的考え方

本ガイドラインの「第Ⅳ章 防災公園等の管理運営」では,災害時に各種の防災公園等が求められる機能を適切に発揮できるよう,はじめに公園管理者(行政の公園所管部局の職員のほか指定管理者を含む)が行うべき管理運営の基本的な考え方を示した後,それぞれの項目についてより詳しい解説を行っている。基本的な考え方としては,図-2 に示すような5 点を挙げており,その概要・ポイントについて以下の(1)~(5)に記載する。
 

【図-2 防災公園等の管理運営の基本的考え方】




 

(1)各防災公園等に求められる機能や位置づけを明確にする

災害時に防災公園等に求められる機能や位置づけは,地域防災計画における都市全体の防災の考え方,都市や避難圏域の状況,防災関連施設の状況,および都市公園等の立地や内容によって公園ごとに異なる。また,それらの役割は,時系列的に内容が異なってくる。そのため,公園管理者は,災害時に防災公園等に求められる機能や位置づけを時間経過も考慮しつつ,公園ごとに明確にしておく必要がある。
 
なお,都市施設の一つである防災公園は,防災機能の全てを担うことはできず,また,地震火災だけでなく,津波や水害も対象とした総合的な防災対策において,全ての防災公園が全ての災害に対して防災機能を備えることも難しいという前提のもと,都市全体の防災性を向上させるために,あらかじめ他の都市施設や防災施設との間で相互に連携を図ることが重要である。
 
 

(2)公園管理者に求められる役割を把握・整理する

一般的に大規模な地震等の災害が発生すると,行政機関は災害対応の体制に移行し,公園所管部局も災害応急活動全体の中であらかじめ定められた役割分担を踏まえながら,分掌事務を行う体制に移行する。その中で公園管理者は,公園利用者の安全確保,被災状況調査および災害復旧,災害時利用の全体調整,復旧工事など,公園管理に係る震災関連業務の分掌事務を担うことになる。公園管理者は,これらの災害時における対応についてあらかじめ把握するとともに,関係機関や地域住民との役割分担を踏まえながら,都市公園の施設管理者の立場として,責任をもった対応を行うことが求められる。
 
 

(3)防災公園等の管理運営に関わる関係機関や地域住民との連携体制を構築する

防災公園等が災害時にさまざまな機能を発揮するには,行政の防災関係機関や地域住民などとの役割分担・連携が不可欠である。そのため,公園管理者,防災関係機関,地域住民からなる組織等を含んだ全体的な体制づくりや災害時の利用のルールづくりを検討する。また,必要に応じて公園の施工や管理に関わる民間の造園業者等と災害時の協定を締結することも検討する。
 
なお,指定管理者においても,「公園管理者としての責任を全うする」意識を日頃から醸成するとともに,行政の公園所管部局と指定管理者双方の公園管理者としての役割分担について認識共有することが重要である。
 
 

(4)災害時の円滑な利用の観点から平常時に定期的な施設の維持管理を行う

災害時に防災関連施設の機能を十分に発揮させるには,平常時のメンテナンスにおいて,他の公園施設とも共通する安全性の観点からだけでなく,防災関連施設として十分機能するかという観点からも定期的な点検・修繕などを行うことが重要である。
 
なお,公園内の防災関連施設は,公園部局以外の部局(例えば備蓄倉庫は危機管理部局,耐震性貯水槽は水道部局,マンホールトイレは下水道部局など)が設置管理しているケースも少なからずあることから,公園管理者においては公園内の防災関連施設を誰がメンテナンスするのか,その責任分担を逐一確認・把握しておく必要がある。
 
 

(5)日頃から防災関連施設の積極的な活用や普及啓発を図る

被災直後については,行政側の支援体制が整っていないため,避難者等の地域住民が主体となって公園施設の実質的な管理・運用がなされるケースが想定される。また,災害時における「地域の防災力」を高めるためには,日頃から地域住民や住民組織等が協働する機会を創出し,協力体制を築いていくことが重要である。このため,公園管理者においては,既に公園に整備されている災害用マンホールトイレのイベント時の活用や,かまどベンチを用いた炊き出し訓練等,日頃から防災関連施設の積極的な活用を関係部局と連携して実施し,防災公園等の役割の普及を行うとともに,自助・共助の重要性を啓発する場を提供することが望ましい。
 
また,熊本地震の際には,防災関連施設の機能およびその使用方法をサインなどで周知していたことで,地域住民が防災関連施設の存在を認知し,自らで稼働させることができた例が確認されている。このことから,公園管理者においては,サインやホームページ等を用いて,防災関連施設の存在や災害時における利用方法について,積極的な周知を行うことが望ましい。
 
 

4 「身近な公園 防災使いこなしブック」の作成

国総研では,熊本地震の際に,地域住民が中心となり,身近な公園を緊急避難の場や一時的な避難生活の場として利用した例が多く確認されたことを踏まえ,地域の防災や公園利用に関わる地域住民の方々に,災害時の公園の機能や利用方法,そして日頃からの備えについて知り,地域のさらなる防災力の向上に役立てていただくことを目的として,「身近な公園 防災使いこなしブック」を作成し,本ガイドラインの参考資料として掲載した(図-3)。同ガイドブックでは,「日頃の備え」が「災害時の行動」につながっていることが分かりやすいよう,それぞれのポイントを交互に掲載するかたちで,3ステップで紹介するとともに,使いこなしポイントを踏まえ,具体的なアクションを起こすために必要な情報も併せて掲載している。
 
 

5 おわりに

今後は,多くの地方公共団体に新たなガイドラインを活用いただくよう,周知に努めていく。
 
なお,本ガイドラインは,以下にアドレスを示した国総研ホームページからダウンロード可能である。本ガイドラインを通じ,災害時に防災公園等が効果的に防災機能を発揮し,地域のさらなる防災力の向上に役立つことを期待したい。
 
○防災公園の計画・設計・管理運営ガイドライン(改訂第2版)
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0984.htm
○身近な公園 防災使いこなしブック
http://www.nilim.go.jp/lab/bcg/siryou/tnn/tnn0984pdf/ks098413.pdf
 
 
 

国土交通省 国土技術政策総合研究所                 
社会資本マネジメント研究センター 緑化生態研究室 研究官
 荒金 恵太

 
 
 
【出典】


土木施工単価2018春号



 

最終更新日:2018-08-10

 

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