建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 新しいワークスタイルの創造へ 〜霞ヶ関発 オフィス改革の挑戦〜

 

1. はじめに

“不夜城”と呼ばれる霞ヶ関。膨大な業務量を抱えながらも,旧態依然とした仕事のやり方を変えられない──そんなところに不夜城たる所以があるのかもしれません。今,そんな霞ヶ関の働き方を変えるべく,総務省発で,イノベーティブな働き方改革の取組が広がっています。
 
「オフィス改革」。働き方を変えるために,働く「場」を変えるという試みです。
 
単なる意識啓発にとどまらず,働き方を抜本的に変えていく。このオフィス改革の発想方法は,行政だけでなく,どんな組織の働き方改革にもつながります。本稿が,皆さんの職場の新しいワークスタイルの実現に貢献できれば大変嬉しく思います。
 
 

2. なぜ始めたか

皆さんは「役所のオフィス」と聞いたとき,どのようなオフィスを思い浮かべるでしょうか。紙の書類が山積みになった机が,所狭しと並んでいる様子でしょうか。
 
我々総務省行政管理局のオフィスの写真をご覧ください(写真− 1,2)。改革前後で大きく光景が変わったことがおわかりいただけると思います。
 
このような改革が始まったきっかけは,「働き方改革」が広まる少し前,2014年まで遡(さかのぼ)ります。
 
行政管理局では,国民に効果的・効率的な行政サービスを提供できるよう,政府共通の制度の整備や各府省への支援を行っています。その一環として,電子政府化の推進を担当する部門があり,この部門においては,インシデント対応などにおいて,部門内で迅速かつ緊密に連携して対応することが求められますが,日頃から,担当間でのコミュニケーション不足,緊急時の連絡体制が不十分などの課題を抱えていました。
 
このような中,電子政府先進国であるカナダ政府のオフィスを視察した当時の総務省政務官から,「業務効率化の観点から,日本政府の電子政府部門のオフィスもカナダ政府を参考にしてはどうか」と打診がありました。カナダ政府のオフィスは,まさに日本の先進的なIT企業のようなオフィスであり,行政においてもそのような働き方が可能であることを示すものでした。
 
そこで,このようなトップダウンの提案にも後押しされ,まずは行政管理局の電子政府部門で,日頃抱える課題を改善するため,オフィスを変える改革の実施が決まりました。
 

【写真−1 書類やファイルが所狭しと積まれていた改革前のオフィス】







【写真−2 整然とした執務スペースに生まれ変わった改革後のオフィス】




 

3. 何をしたか

このようにして改革の実施は決まったものの,日本の行政機関においては初の取組のため,全てがゼロからのスタートとなりました。そこで,まずは自分たちの職場の現状を客観的に洗い出すことから始めました。その結果,以下の課題が見えてきました。
 
【課題の見える化】
● 自席での大量の書類・ファイル保存・管理,PCの自席固定 〜テレワークは事実上不可能(写真−3)
● 旧来からの島型座席レイアウト 〜上司部下間での物理的・心理的な壁が生む会話の停滞(写真−4)
● 局内の会議室が少なく確保が困難。会議に向けて相当量の紙資料の準備〜機動的な会議・打合せ不可能。会議室予約・資料印刷に相当の労力
 

【写真−3 自席の机が書類の山で囲まれていた改革前】




【写真−4 役職者が全体を見渡せる従来の島型オフィス】




 
これらの状態は,どのように解消できるのか。若手職員を中心としたプロジェクトチームを結成し,「行政だから無理」という固定観念に囚われないアプローチを考えました。先進的な民間企業のオフィスなども参考にしながら,グループアドレス,ペーパーレスの職場環境を採用することにし,具体的には以下のような改革を行いました。
 
 



【諸改革の断行】
●「個人席」の撤廃,無線LANの導入
・ PC1台で“いつでも”“どこでも”仕事が可能
・ 電子ファイルで書類を管理する文化が醸成
・「シームレスワーク」により,外出先の移動時間や隙間時間を有効活用
 
● 役職順の配席を撤廃,チーム型テーブルの導入
・ チーム内でのコミュニケーション活性化
・ 意思決定がスピーディに(写真−5)
 
● 書棚や個人のロッカースペースの見直しでスペースを捻出
・ 予約不要のフリースペースの創出。機動的な打合せが可能に
・ モニターの導入で各自がPCを持ち寄り,ペーパーレス会議が可能に(写真−6)
 
 

【写真−5 役職順の配席を撤廃し,チーム型テーブルを導入】




【写真−6 モニターを使ったペーパーレス会議】




この改革は,3フロアある行政管理局の全てのフロアで,段階的に行われました。最初は電子政府部門ですが,その後の2フロアでは,電子政府部門で撤廃した管理職席を残すなど,業務の実態に応じて,コンセプトを進化させながら改革を行っています。一連の改革は,最初の政務官の提案こそありましたが,具体的な改革手法は,若手職員中心のプロジェクトチームによって検討され,実現していきました。
 
 

4. 効果はいかに

では,このオフィス改革で,具体的にどのような効果があったでしょうか。
 
行政管理局では,複数回にわたり,職員に対するアンケート調査を実施し,その結果をまとめたところ,以下のような効果が見られました。
 
● 9割以上の職員が…
・ 以前より働きやすくなった と回答
 
● 半数以上の職員が,従来型のオフィスと比べて…
・ 班内のコミュニケ―ションが増えた
・ 作業開始前に,案件の処理方針を管理職も含めて議論,作業の手戻りが減った
・ 超過勤務時間が減った  と回答
 
● テレワークの実施者数が,約4倍に増加
 
● 会議・打合せに係わる時間が32%短縮
・ 会議室予約・資料印刷等の様々なプロセスが省略された結果(図−1)。
 

【図−1 会議スタイルの変化】




 
このように,オフィス改革により,職員が効率的に働きやすくなったことがわかります。
 
また,特筆すべき成果として,この一連の改革が,若手職員中心のプロジェクトチームの活動として行われてきた結果,このチームのメンバーが,自発的に考え・行動するようになったことが挙げられます。「働き方は変えられる」,そうしたチームの実感を伴う雰囲気は,他の職員にも伝播していき,導入したツールを活用した新しい働き方を受け入れ,また,もっと効率的な働き方はないか,自ら業務の見直しを考えるような組織になっています。前述の職員アンケートでも,6割以上の職員が「組織マネジメントや自身の働き方について自覚的に考えるようになった」と回答しています。
 
今や当局へ視察に来ていただいた方は2,500名を超え,私たちの取組を参考に,国(省内外)の組織をはじめ,地方自治体や民間企業,また海外政府でもオフィス改革が実施されています(図−2)。また,私たちの取組は,三年連続で,政府のワークライフバランス表彰を受賞し,さらに本年は,「国民の行政に対する信頼性向上に寄与した」と評価され,人事院総裁賞を受賞しました。このように,私たちの取組は働き方改革として確実に評価され,様々な組織で取り入れられており,官民問わず,ICTを取り入れた働く場の改革は,相当な効果を発揮することが証明されています。
 

【図−2 オフィス改革の広がり】




 

5. 終わりに ─メッセージ─

現在の日本は,労働人口の減少,被介護世代の増加,共働き世帯の増加といった社会状況にあります。このような中で,働き方改革により労働生産性を高めていくことは,官民問わず喫緊の課題です。
 
そのためには,働く人一人ひとりを尊重し,組織全体としての労働生産性を高めていくことが重要です。組織のために個人に長時間労働を強いては,組織自体の維持が難しく,一方で,個人の労働時間を数字だけ削減するだけでは,組織の生産性は向上しません。
 
必要なのは,働く個人と組織にwin-winの環境を作ることです。これにより,個人は,付加価値の高い仕事に注力し,仕事の充実感・成果を向上しながら,個人の事情に応じた働き方を実現することが可能となり,組織としては,日常業務を効率化して業績を向上させ,優秀な人材の確保・流出防止にも取り組むことができます(図−3)。
 
 

【図−3 win-win の関係づくり】




 
オフィス改革は,こうした環境を実現させる,有効な手法です。ここまでお読みになり,オフィス改革をやってみよう!と思っていただけたとしたら,最後に,私たちが考える重要なポイントをお伝えしますので,これらの点も参考に取り組んでいただければ幸いです。
 
 
● グループアドレスの導入,ペーパーレス会議などは,あくまで理想の働き方を実現するための「ツール」です。それぞれの職場において,どのような働き方を実現させるべきか,それを考え,ツールを活用し,働き方を一歩でも変えていくことが重要です。
 
●「ツール」の活用に当たっては,それを使用する職員の意識改革が重要です。今までの働き方に固執せず,特に管理職は率先して部下の新しい働き方を認めてあげることが重要です。
 
● オフィス改革は,「総務省だからできた」ではなく,「非効率な行政でもできた」ということです。既成観念にとらわれない改革のマインドが大事です。
 
 
ご関心もたれましたら,ぜひ,総務省行政管理局のオフィスをご訪問ください。皆さんの「やってみよう」の第一歩を後押しできれば幸いです。
 
オフィス視察のお申込みについては,下記からお願いいたします。
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/office_kaikaku/index.html
 






 
 
 

総務省行政管理局 課長補佐 松本 惇(まつもとじゅん)
主査 橋本怜子(はしもとさとこ)

 
 
 
【出典】


積算資料2018年6月号


 

同じカテゴリの新着記事

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品