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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > 公共建築におけるBIM実例 -気象庁虎ノ門庁舎(仮称)-

 

工事概要

工事名称:気象庁虎ノ門庁舎(仮称)・港区立教育センター新築工事
発注者:鞆絵サイエンスパートナーズ株式会社(PFI事業発注者:国土交通省関東地方整備局、気象庁)
設計者:気象庁虎ノ門庁舎(仮称)・港区立教育センター大成建設・梓設計 設計共同企業体
施工者:大成建設株式会社東京支店
工期:2017年4月~ 2020年2月末予定(35ヶ月)
主要用途:事務所、博物館、図書館
延床面積:42,861.63㎡(12,988.37坪)
階数:地下2階、地上14階、塔屋1階
 






 

はじめに

PFI事業提案項目の一つである「BIMの活用」を主題に、プロジェクト初期である設計段階の設計BIMデータを引き継ぎ、施工段階の施工BIMの活用を進めています。
 
初めは施工所員や関係者にBIM経験者が少なくどのように扱うべきか、試行錯誤の船出となりました。時間やコストに制限がある状況で、本社BIM計画室のバックアップの下BIMの効果を期待できる範囲や目的を絞って実践することにしました。
 
 

 

「BIMを使う」~所員全員で共有・活用~

「BIMを作る」のではなく「BIMを使う」ことを意識して取り組みました。
 
まず、BIM計画室のスタッフ講師を招き作業所所員や設備業者が参加し「BIMを容易に操作できるビューワソフト(Navisworks)の基本操作の勉強会」を開催しました。設計から受領したLOD200の設計BIMを、LOD300~400の施工BIMにブラッシュアップしました。施工BIMは仮設計画、BIM施工図、免震干渉チェック、躯体・内装・設備の納まり検証に活用しました。会議や所内定例ではプロジェクターでBIMを投影し、所員全員がBIMの新しい世界に触れました。
 
 

BIMで仮設計画

作業所員と作業所常駐のBIMオペレーターで建物BIMに仮設を取り込んだ仮設計画BIMを作成し、施工検証や関係者への周知に活用しました。
 
(1)地上施工STEP検証
BIMを利用して地上の施工STEPを見える化しました。
見る方向や角度、視点を自由に変えることができるので、施工検証や関係者とのイメージ合意が容易に行えました。
 

地上躯体・外装工事のSTEP計画




 
(2)球体プラネタリウム回りの仮設検証
BIMを活用して球体プラネタリウム回りの仮設計画を作成しました。仮設足場の施工STEPを見える化することで、施工性、安全性の検証がスムーズに行えました。
 

球体プラネタリウム回りの仮設計画(鳥瞰内観、鳥瞰外観)




球体プラネタリウム躯体の施工STEP仮設計画




 
(3)外部スライディング足場の検証
BIMを利用して外部足場に採用したスライディング足場の施工STEPを作成し、施工性、安全性の検証および関係者への周知に活用しました。
 

スライディング足場の施工STEP




 

BIM施工図に挑戦

LOD300にブラッシュアップした施工BIMで躯体図作成に挑戦しました。
 
工事担当者やBIMオペレーターと何回もやりとりしBIMデータで躯体図を作り込みました。今までの2次元CAD躯体図に特有な、柱梁スラブ等の符号表記、フカシの描線、寸法線の表記を図面レイアウトに出力調整として重ね、床伏躯体図の承諾申請図として活用できました。
 

LOD300にブラッシュアップした施工BIM




 

施工BIMから出力した床伏躯体図




 

免震層の地震挙動干渉チェック(建築物・設備機器)

施工BIMを活用し、地震挙動に対する免震層の躯体や設備機器相互の挙動干渉チェックを行いました。
 
免震層は施工BIMをLOD400にブラッシュアップしました。免震装置は各固定ボルトや定着板等部品ディテールまで再現し、躯体はフカシや面取り形状を再現しました。設備機器や配管類はエルボやフランジ、保温材等部品ディテールまで再現しました。BIMデータパラメータの地球側と建物側を色分けで表現し、免震装置の挙動範囲を疑似モデル化し、躯体、免震装置、設備機器、配管等相互の挙動干渉チェックを干渉レポートで確認しました。また、ウォーキング機能を活用し、免震装置の将来メンテナンス用ルート確保の検証を行いました。
 



LOD400にブラッシュアップした免震装置
 
 

地震挙動に対する干渉レポート(自動干渉チェック)




 
 

球体プラネタリウム製作図にフル活用

BIMの利点を生かし、プラネタリウム回りの3次元固有の球体や斜め部材相互の納まり検証、設備部材等の取り合い検証を行いました。
 
2Dの図面だけでは難しい階段と球体取り合いを、さまざまな角度からの鳥瞰図や断面図や重ね図で映し出し、納まり検証、干渉チェックをしました。ブラッシュアップした施工BIMから躯体図検討図を出力することができました。
 

プラネタリウム(躯体図)




 

BIM活用の効果

(1)BIMの世界によるイメージの視覚化により、複雑な納まりの早期理解や正確な認識と判断が可能になりました。また相互のイメージの共有化により、複雑な納まりに対する関係者の認識合意を早期に得ることができました。
施工段階における施工図面の作り込みや協議、図面承諾行為にかかる全体作業時間を約40%削減することができました。
 
(2)建築モデルと設備モデルを統合することで建築と設備の3 次元的な干渉チェックが相互容易に可能となりました。干渉範囲は干渉レポートとしてリスト化され、干渉部材の見える化が容易となりました。干渉部材の改善方針を決定し改善後の再干渉チェックを行うことで、建築と設備の最終的な納まり決定の合意につながりました。
 
(3)ウォーキングビュー機能を活用し、
免震層BIMでは空間把握が容易になり、免震装置交換ルートのイメージ共有ができました。今後は運用維持管理計画に反映する予定です。球体プラネタリウムBIMでは映写室へ向かう回廊を視覚化し、異空間への導入アプローチイメージの共有や内装材の材質感・色艶・材料形状の仕様検討を早期に認識合意することができました。
 
 

BIM活用の課題

(1)現状は従来の2D CADとBIMのソフトが混在する中で、BIMのソフトだけでも複数あり、互換性の問題でうまくデータ移行ができないことがあります。そのため互換性の確認業務から作業が始まります。
 
(2)さまざまな情報を統合する関係上ファイル容量(情報量)が大きくなります。そのため高性能なパソコンが必要になります。
 
(3)BIMと従来の2D CADで符号表現が異なるため、BIM符号に慣れるか従来の符号をBIM出力後に貼り付けるかの手を加える必要があります。
 
 

今後への手応え

経験を重ね、BIMへの理解が深まればBIMはますます有効なものになると確信します。
 
BIMを作成、操作するオペレーターやBIMマネージャーだけでなく、作業所所員、関係専門工事業者やその作業員、そして設計者やお客さま、施設を運用・管理する人たち、それぞれがBIMを理解し、「BIMを使う」ことができたら私たちの仕事は大きく変わると思います。
 
 
 

大成建設株式会社 気象庁虎ノ門庁舎(仮称)・港区立教育センター新築工事作業所 追手 裕

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集2「進化するBIM」



 

最終更新日:2019-04-22

 

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