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ホーム > 建設情報クリップ > 建設ITガイド > 建設現場の働き方改革を実現する 「建設現場IoTソリューション」

 

はじめに

建設業界における動きの一つとして4週8休の現場の実現、時間外労働の削減などをめざしており、今までと同じ工期で同業他社との競争力を維持するために「生産性の向上」、「時間外削減」への取り組みは必須である。国土交通省は「i-Construction」でICTソリューション活用の取り組みを急ピッチで進めている状況にあり、これらは建設現場へのICT/IoTの導入なくては実現できないと考えられる。
 
 
 

ICT/IoT導入に立ちはだかる壁

ドコモは、2017年より建設現場でのICT/IoT導入検証を行っている。建設現場におけるICT/IoT活用の課題を以下のように仮定し、現場における価値を創出するためデータを取得する方法を検証した。
 
①個別最適システムの導入や、研究目的の技術検証にとどまり、現場利用が進まないのではないか。
 
 
②建設現場を可視化するデータを、精度・費用対効果高く取得することが難しいのではないか。
 
 
③建設現場での活動に関する理解が低く、十分な経済効果が出せていないのではないか。
 
 
④現場における個人情報やバイタル情報を含むデジタルデータ取り扱いの経験が浅いのではないか。
 
まず、「ドコモのIoTは現場主導型」であるべきとした。課題起点でソリューションを検討し、現場のオペレーション(現場運用)まで踏み込む。そして、現場をデジタル化し得られたデータを分析することにより、現場業務プロセスを変革させ、効率化し働き方改革の実現に寄与する。これは、本プロジェクトにおけるドコモのミッションである。
 
 
 

建設現場IoTソリューションで作り上げる世界観

ICT/IoTで取得されたデータを「価値あるもの」とするためには、個別商材の可視化レイヤーで議論をするのではなく、その上位にある分析レイヤーで価値あるデータの組み合わせを発見することが重要であると考えている(図-1)。
 
建設現場に関わるデータを集め、それらを組み合わせて建設現場のノウハウを注入し、その結果、生まれた意味のあるデータによりお客さまに今までにない価値を提供することができるという事業そのものが、「建設現場IoTソリューション」なのである。
 
ドコモは、価値あるデータを組み合わせることを建設業界で共通化できるのではないかと仮説を立てた。その共通化の営みをドコモ自身が取り組むことで、建設業界におけるイノベーションを生み出すことができると考えている。
 
ドコモが2018年2月に、建設現場のデジタル化により、建設現場の工程・品質・安全・原価管理に寄与するトータルソリューションの提供を報道発表した。このソリューションは、業務プロセスの変革を実現し、大きく6つの提供価値の実現をめざしている(図-2)。
 
また、建設現場IoTソリューションは建設向けオープンプラットフォームであるLANDLOG上に構築され、そこに蓄積されたさまざまな情報を相互に連携することで、データの価値をさらに向上させることができる。
 

図-1 建設現場でめざす姿


 

図-2 建設業界向けソリューション




 
 

LANDLOGの取り組み

LANDLOGは、2017年10月にコマツ(代表:大橋徹二)、ドコモ(代表:吉澤和弘)、SAPジャパン(代表:福田譲)、オプティム(代表:菅谷俊二)の4社で立ち上げた、建設現場に関わる全てのモノデータをつなぐプラットフォームを運営する合弁事業会社である。
 
建設業界に関わる各企業は、建設生産プロセスのICT化を進めているが、それぞれのデータは企業ごとに隔離されており、相互につながっていない。実際、コマツのICT建機は建設生産プロセス全体から見た場合、貢献できる領域は一部分であり、生産性だけでなく、現場の安全性も向上させるには、建設生産プロセス全体のデータの収集と一元管理するプラットフォームが有効であるとの発想からLANDLOGが生まれた経緯がある。
 
ドコモが取り組む建設現場IoTソリューションとLANDLOGが相互に協力することによって、これからの建設業界のデジタルトランスフォーメーションに貢献できると考える(図-3)。
 

図-3 LANDLOG




 

建設現場IoTソリューションのPoC

2017年よりドコモは実際の建設現場でPoCを複数回実施してきた。それぞれテーマを決め、実際の現場からさまざまな知見を得ることができた。
 
今回のPoCでは、ICT/IoT機器の利用感のヒアリングにとどまらず、「取得・分析されたデータに異常値が認められた際、何をしていたか?」などの状況確認を行い、分析データが示す意味についても把握した。これにより、建設現場におけるさまざまなシーンで「効率化の余地」があることが分かった。例えば、労務時間短縮の観点では、「現場巡視の導線をマネジメントすること」や、「現場の写真整理を伴う書類作成業務を自動化すること」などが挙げられる。この他にも、「高所作業車の稼働率の把握による有効活用やレンタルコストの圧縮」、「バイタルデータの把握・分析による体調不良や精神疲労の予兆だけでなく、作業環境や作業場所のデータを組み合わせることで、労災を未然に防止する」といった、建設現場におけるICT/IoT活躍の可能性を見いだせた。
 
一方で、ICT/IoT機器に不慣れな現場作業員に対する操作支援など、運用面での課題も浮き彫りとなった。特に重要な気付きは、ICT/IoTを導入する際の本社と、現場での導入効果に対する“指標”が異なる点である。現場における重要指標は、「安全・品質・納期」であるが、本社組織の重要指標は、「コスト削減・時間外削減」である。つまり、現場では「納期遵守や品質・安全」に寄与する仕組みでないと、利用のモチベーションが上がらないということである。このことから、いかに「現場に寄り添い支援する仕組み」を構築していくことが重要であるかを認識した。
 
 
 

そして建設現場IoTソリューションへ

実際に現場に出向いて建設現場従事者の方々とコミュニケーションをしたことで、真に現場で活用できる現場オペレーションを最適化するソリューションを構築することができた。
 
ドコモ建設現場IoTソリューションは、現場のアナログな情報をICT/IoTでデジタル化し、現場で起きるリアルタイムな変化を、建設現場従事者に共有し、意思決定や最適行動を即座にできるよう支援する。
 
これにより、非生産時間である移動時間や手待ち時間、現場巡視時間、書類作成時間などを削減する。さらに、コミュニケーションログやIoTデバイスから取得したビッグデータを解析し、現場での遅延予兆や危険行動の検知も実現することで迅速な現場対応を可能としている。さらに、AIを活用することで、より高度な分析・予兆予測・最適解の導出など、より多くの価値を創出するように進化をめざしている。
 
ドコモのソリューションは、単にアプリケーションを提供するのみならず、デジタルを活用した最適な業務プロセスを提案し、それが現場に定着化するまで支援するチェンジマネージメントの役割も担っている。
 
最後に、ドコモは自らのアセットである通信、データ分析、AIをフルに活用し、建設業界のデジタルトランスフォーメーションの推進を支援していきたい。これは、業界の知見を持ったさまざまなパートナーとの連携が不可欠であり、この取り組みも強化していく。
 
 
 

株式会社NTTドコモ 法人ビジネス本部 IoTビジネス部 ソリューション営業推進担当部長 仲田 正一

 
 
 
【出典】


建設ITガイド 2019
特集3「建設ITの最新動向」



 

最終更新日:2019-04-22

 

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