建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料 > 特集:東日本大震災から3年 本格復興に向けて|仙台市における下水道施設の復旧

 

仙台市建設局下水道経営部下水道計画課
甲野藤 弘憲

 

1 はじめに

平成23年3月11日に発生した東日本大震災から間もなく3年が経過しようとしている。
 
仙台市では死者行方不明者が900名に達し、建築物被害は一部損壊を含めて25万棟に及んだ。
 
震災からの復旧状況は、比較的内陸の市中心部は震災前に戻った様子であるが、
津波被害を受けた沿岸部や地滑り被害を受けた郊外の住宅団地ではまだ復興途上にある。
 
本稿では被害を受けた下水道施設の復旧を中心に述べることとする。
 
なお、これまで仙台市をはじめ、被災各地に対しまして全国各地より多くの支援をいただいており、
本誌面をお借りしてお礼申し上げます。
 
 

2 被害の状況

東日本大震災では、これまでの地震災害の特徴とは大きく相違し、津波による被害が顕著となっている。
特に、ポンプ場や沿岸部に位置し建屋を持つ下水処理場は津波浸水により機能停止に陥った。
被害状況並びに被害額は表-1、表-2のとおりである。
 

表-1:下水道の被害状況

表-1:下水道の被害状況


 
表-2:下水道の被害額(災害査定決定額)

表-2:下水道の被害額(災害査定決定額)


 

①管きょの被害

管きょの主な被害は地震動による破損や破断、たるみ、逆勾配、液状化による蛇行やマンホールの突出であった(写真-1参照)。
 

  • 写真-1 マンホール突出

    写真-1 マンホール突出

  • 塩ビ管の破断

    塩ビ管の破断

  • マンホール躯体のずれ

    マンホール躯体のずれ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
被害延長は管きょ総延長の約2%であるが、地震規模からみると比較的被害は少なかったと感じている。
その要因の一つとして、社会資本整備総合交付金を活用した耐震化を進めていたことが挙げられる。
耐震化を進めていた市中心部の布設年度の古い管きょでは被害がほとんどなく、耐震化対策の効果が実証された。
 

②ポンプ場・処理場

地震動による大きな被害としては、雨水ポンプ場のポンプ棟傾斜があったが、その他の被害は比較的小さな規模で済んだ。
反面、津波による被害は大きく、沿岸部に位置していた施設は機器類が水没あるいは流出し機能停止が続出した。
 
特に、仙台市民の約7割の下水を処理する南蒲生浄化センターは、10mを超える大津波に呑み込まれ処理機能を喪失し、
その被害額は575億円余に達した(写真-2参照)。
 

  • 写真-2 傾斜した雨水ポンプ棟

    写真-2 傾斜した雨水ポンプ棟

  • 瓦礫に埋もれる雨水ポンプ場ゲート

    瓦礫に埋もれる雨水ポンプ場ゲート

  • 津波と瓦礫の衝突により破壊された南蒲生浄化センターの送風機室

    津波と瓦礫の衝突により破壊された南蒲生浄化センターの送風機室

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

3 復旧の状況

①応急復旧対応

今回の震災においては、まず、下水が使用できないことによる二次災害防止のため、
トイレ使用を継続させつつも市街地での下水溢水を防止することを戦略として対応に当たった(写真-3参照)。
 

写真-3:ポンプ場における仮設状況

写真-3:ポンプ場における仮設状況


 
バキューム車の手配、仮設排管や仮設ポンプ、仮設電源の準備、そして主要ポンプ施設等への燃料補給を重点化し、
関係企業の皆様の尽力並びに職員の努力により、大きな溢水を回避することができた。
震災直後でも約半分の家庭で水道が使用されていた状況を考えると非常に効果のある対応ができたと感じている。
 

②復旧状況

甚大な被害を受けた南蒲生浄化センターを除き、
管きょ及びポンプ場・処理場施設のほとんどは平成25年度末に復旧が完了する見込みである。
 
震災からの早期復旧には、まず被害状況の把握のための迅速な調査が必要であり、
今回、管きょについては地元清掃業等組合との覚書に基づき発災翌日から緊急調査が実施され、
下水道災害時における大都市間の連絡連携体制に関するルールにより発災3日後には支援による1次調査が開始された。
震災を想定した事前準備の重要性を痛感した。
 
なお、南蒲生浄化センターは、
津波浸水が5m程度であった汚泥処理系施設は平成24年度末には復旧が完了して震災前の機能に戻っており、
10mを超える津波で壊滅的被害を受けた水処理系施設については、
平成27年度末完成を目指して日最大40万㎥規模の新施設の建設を進めているところである。
この規模の施設を一気に建設するのは、日本ではこれが最後だろうと関係者の間では話題になっているようである。
 

③南蒲生浄化センターにおける下水処理

水処理機能が復旧していない当浄化センターでは、
震災直後に設置した南蒲生浄化センター復旧検討委員会(委員長:東北大学大村達夫教授)の提言に基づき、
従来の平面的配置の施設のうち、前曝気槽と最初沈殿池は下水の暫定処理のために当面使用し、
生物反応槽と最終沈殿池の場所にコンパクト化(2階槽、深層曝気)した新水処理施設を建設することとした(図-1参照)。
 

図-1:新設水処理施設,暫定処理概要図

図-1:新設水処理施設,暫定処理概要図


 
なお、暫定処理として生物膜を利用した接触酸化法を平成24年1月から導入しており、
現在はBOD200mg/リットルを超える流入水を60mg/リットル程度まで処理しているが、
まだ本復旧まで2年以上の期間があることから、処理動静から目が離せない状況にある。
 
 

4 震災を踏まえて

仙台市では約35年周期で発生が予測されていた宮城県沖地震対策の準備を進めていたが、
東日本大震災はそれを大きく上回る力で下水道をはじめとするインフラに甚大な被害を与えた。
これまでの準備で役立ったことや被災を経験して新たに認識した課題について、以下に述べる。
 
まず、被災を想定した準備についてであるが、準備の全てが役に立つわけではないが、全く役に立たないことは無い。
今回特に有効だったのは、被災調査に関する協定等の締結である。
被災調査には相当の人手と資機材が必要となるため、これらの確保のための準備は非常に重要である。
また、BCP(事業継続計画)の策定も有効である。
人員や資機材等のリソースを考慮した非常時の優先作業を定めることは必須であるが、支援の受け入れ体制の整理も忘れてはならない。
なお、BCPは策定しただけでなく、改良を加えて進化させ、常に意識の下に置くことが重要であり、
飾って置くだけではもったいないものである。
 
さらに、被災時の効率的な復旧対応には、情報の共有と指揮命令系統の確立が欠かせない。
非常時は情報が錯綜することが多く、情報の混乱は対応の混乱に直結するため、
情報を共有する場とその情報を利用する体制を決めておくことも重要である。
 
加えて、下水道台帳の整備も必要である。
本市ではアセットマネジメントの取り組みの中で、
管路台帳について地理情報システムを利用したデータベース化導入途中で震災が発生した。
調査結果をその日のうちに入力集計することが可能となるとともに、
被災状況の色別表示や状況写真等を取り込むことで台帳がビジュアル化され視覚的な被災状況の把握が容易になり、
対応方針決定などに大いに役立った。
 

図-2:仙台市公共下水道計画図

図-2:仙台市公共下水道計画図


 
 

5 最後に

東日本大震災で被害を受けた東北地方は、まだ復興の途上にあり、被災前の元気を取り戻すまでは、まだまだエネルギーが必要です。
多くの方々に被災地を訪れていただくことは被災地の活力につながり大きな支えとなりますので、
引き続き全国の皆様に足をお運びいただければと思っております。
 
 
 

東日本大震災から3年 本格復興に向けて

とりもどそう 笑顔あふれる女川町《前編》
とりもどそう 笑顔あふれる女川町《後編》
仙台市における下水道施設の復旧
 
 
 
【出典】


月刊積算資料2014年3月号
月刊積算資料2014年3月号
 
 

 

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