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ホーム > 建設情報クリップ > 土木施工単価 > 水源地域の自立的,持続的な活性化に向けた, 水源地域・ 矢木沢(やぎさわ)ダム・ 奈良俣(ならまた)ダムの連携した取り組み

 

インフラツーリズムの第3弾として,水資源機構(みずしげんきこう)にご寄稿いただきました。水資源機構では,国,自治体,地元住民の皆様方と共に地域の活性化に向け連携してイベントを行っており,このイベントを通じて,水源地域の自立的,持続的な活性化を目指しています。今号では,観光資源としてのダム,暮らしを支えるダムを管理する水資源機構のインフラツーリズムについてご紹介します。

 

1. はじめに

日本有数の豪雪地帯である群馬県利根郡みなかみ町の奥利根地域は,水資源機構が管理する矢木沢(やぎさわ)ダム(アーチ式コンクリートダム),奈良俣(ならまた)ダム(ロックフィルダム),国土交通省が管理する藤原ダム(重力式コンクリートダム)などがあり,主なダム型式を一度に見ることができる魅力的な地域です。
 
矢木沢ダムは,利根川本川の最上流部に建設された,関東で唯一総貯水容量が2億㎥を超える,高さ131mの多目的ダムです。
 
奈良俣ダムは,利根川支川楢俣(ならまた)川に建設された,利根川にあるダムの中で1番の高さを誇る,高さ158mの多目的ダムです。
 
また,関東の水瓶とも呼ばれる奥利根湖(矢木沢ダム)と,ならまた湖(奈良俣ダム)は,その周辺に利根川源流部自然環境保全地域が広がっていることから,四季を通じて美しい景観をみせており,地域にとってかけがえのないダム湖としてより一層地域に親しまれ,地域の活性化に役立つことを願って,財団法人ダム水源地環境整備センター(現在の一般財団法人水源地環境センター)により「ダム湖百選」に選定されています。
 
矢木沢ダムと奈良俣ダムでは,水源地域の自立的,持続的な活性化を図るため,国土交通省,地元みなかみ町,地元住民の皆様方とともに「利根川源流水源地域ビジョン」を策定し,地域の活性化に向け,水源地域と連携してイベントを行っています。その取り組みの一つである「みなかみ3ダム(矢木沢ダム,奈良俣ダム,藤原ダム)春の点検大放流」をご紹介します。
 
 

2. 春の点検大放流

矢木沢ダム,奈良俣ダム,藤原ダムでは,洪水期(7~9月。梅雨の時期や台風の時期など,降水量が多く洪水が起こりやすい時期)を迎えるにあたり,例年,ゴールデンウィーク明けの5月中旬の休日に,ダムの放流設備が安全に作動することを確認するための点検放流を行っています。
 
令和元年5月11日(土),12日(日)に,水源地域ビジョン実行委員会(みなかみ町,みなかみ町商工会,みなかみ町観光協会,利根川ダム統合管理事務所,沼田総合管理所等)により,「春の点検大放流」が開催されました(図-1,2)。
 
水資源機構では矢木沢ダムと奈良俣ダムの点検放流を行い,地元みなかみ町が来場者を迎えるための駐車場の設営やシャトルバスの運行,軽食やお土産の店舗の出店を行うなど,水源地域と矢木沢ダム・奈良俣ダムが協力して,地域の活性化に努めました。
 

  【図-1 奈良俣ダム
   イベントパンフレット】

  【図-2 矢木沢ダム
   イベントパンフレット】



 

3. 奈良俣ダムイベント

令和元年5月11日(土),晴天の中,1,300人の来場者があり,ダムから水を放流するための設備である洪水吐の中央にあるクレストゲート(非常用洪水吐)からの放流を午後に1回行いました(写真-1)。当日限定の連絡トンネル探検&エレベーター乗車では,ダム内部のエレベーターで高さ130mを100秒で上昇下降し,ダムから越流した水や群馬県企業局の奈良俣発電所に送る水が流れる水路トンネルの脇にある作業用の連絡トンネルを探検し,トンネル内の涼しさ(通年9℃)を体験していただきました(写真-2)。その他,奈良俣発電所見学や,夜には奈良俣ダム・ヒルトップ奈良俣(奈良俣ダム防災館)にて,利根川源流ダムガイドの会が主催する星空ガイドが開催されました(写真-3)。
 

【写真-1 奈良俣ダム点検放流】


  • 【写真-2 連絡トンネル探検】

  • 【写真-3 星空ガイド】



 

4. 矢木沢ダムイベント

令和元年5月1日(日),この日も晴天に恵まれて,3,000人の来場者があり,総放流量6万tの点検放流を午前と午後に1回ずつ行いました。矢木沢ダムの巨大な滑り台のようなスキージャンプ式洪水吐水路からの放流は,大迫力で,飛び散る水しぶきを浴びつつも多くの方々が近くで見学してくださいました(写真-4,5)。
 
堤体内見学コースは,ダム堤体をエレベーターで108m下降し,内部温度10℃のダム内部を体験,ネイチャービュー矢木沢(矢木沢ダム防災資料館)では自然豊かな50年前の矢木沢ダム建設当時の記録映画を上映しました。また,普段は入ることができない,ダムカード撮影スポットのビンズル橋を公開し,ダムカードとほぼ同じアングルでの写真撮影を楽しんでいただきました(写真-6)。その他,猿ヶ京温泉で結成されたチームによる三国太鼓の演奏,群馬県のマスコットキャラクターである「ぐんまちゃん」の登場,地元みなかみ町の特設店舗などもあり,大勢の来場者でにぎわいました(写真-7,8)。
 

【写真-4 矢木沢ダム 最大毎秒30tの放流】


  • 【写真-5 矢木沢ダム点検放流を間近で見学】

  • 【写真-6 ダムカード撮影スポット(ビンズル橋)】

  • 【写真-7 三国太鼓の演奏】

  • 【写真-8 地元みなかみ町の特設店舗】



 

5. 群馬プレデスティネーションキャンペーンとのタイアップ

令和2年4月から3カ月間,群馬県において自治体とJRグループが共同で実施する観光キャンペーン(デスティネーションキャンペーン)に先立ち,平成31年4月1日から令和元年6月30日に「群馬プレデスティネーションキャンペーン」が実施されました。これに合わせ,群馬県と水資源機構が連携し,機構の施設ではこれまでの点検放流を実施するとともに,一般の方々にダムをより知っていただくため,また,水源地域へ多くの方々に訪れていただくため,群馬プレデスティネーションキャンペーンオリジナル特別カードを作成し,期間限定で配布しました。
 
 

6. おわりに

「春の点検大放流」は,水源地域の自立的,持続的な活性化のための観光資源として地元から期待されており,毎年,多くの方々が見学に訪れてくださり,年を追うごとに来場者が増加しています(図-3)。点検放流では,来場者から驚きの歓声が上がる一方,ダム内部の見学では,「人の暮らしを支えるダムの裏側を見られる貴重な機会で楽しみにしていた。来て良かった。」と満足した声も聞かれました。
 
水源地域では,地域の資源であるダムが注目される中,さらに多くの観光客に来ていただくきっかけにしようと,積極的な取り組みが行われています。また,水源地域,利水者や関係機関の皆様方のご理解とご協力により,一昨年,矢木沢ダムは管理開始50周年を迎えることができました。さらに,来年,奈良俣ダムは管理開始30年目を迎えます。
 
昨今,ダムで実施する点検放流を多くの方々が見学に来られるなど,広く一般の方々にダムについて知っていただく機会が増えており,ダムを始めとするインフラそのものが,地域固有の観光資源として注目され始め,インフラツアーへの取り組みがさまざまな工夫を取り入れながら年々充実しています。
 
水資源機構では,今後も水源地域と連携して,矢木沢ダム,奈良俣ダムをはじめとする機構のダム,そして水源地域に多くの方々が訪れていただけるよう,ダム施設等を核として活用したイベントなどの取り組みを通じて,水源地域の発展に貢献するとともに,広く一般の方々にダムの魅力や重要性を理解していただき,水資源や治水に対する意識を高めていただけますように情報を発信してまいります。
 

【図-3 点検放流の来場者数推移】



 
 

独立行政法人 水資源機構

 
 
【出典】


土木施工単価2019秋号



 

最終更新日:2020-01-27

 

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