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1 はじめに

2019年4月に「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の本運用が開始されてから1年半余りが経過し,これまでの導入期から裾野を拡大していく時期に差し掛かっています。一方,その間にさまざまな問題点も明らかになりました。本稿では,CCUSの登録状況,2020年10月からの制度改正,さらに今後の取り組みなど最新の情報をご紹介します。
 
 
 

2 登録の状況

これまでのCCUSへの登録状況をみると,2020年10月末までの累計登録数の内訳は,技能者が約40万人,事業者が約7万5,000社(一人親方等を含む)となっています(図−1)。初年度100万人という当初の目標と比べると低い数字にとどまっていますが,毎月の登録数は増加傾向にあり,着実に登録が進んでいます。
 
また,登録済みの事業者を資本金別にみると,最も多いのが1,000万円〜5,000万円未満の事業者(29.9%),次いで一人親方など資本金のない事業者(28.6%)となっています。一方,1億円以上の事業者の割合は1.7%となっています。
 

【図−1 登録数の推移】



3 制度改正について

CCUSの運営状況ですが,財政面では当初想定していなかった大幅な赤字(2019年度末における累積赤字57.4億円)が発生しました。その原因は,加入インセンティブを偏重した低い料金設定や審査・サービスコストの増加などによって収支のバランスが失われたこと,当初の要件定義が未熟であったことなど,さまざまな要因が複合的に生じたことによるものと考えられています。
 
こうした現状を踏まえ,CCUSを今後とも安定的に運営していくため,2020年9月8日に開催された「建設キャリアアップシステム運営協議会総会」において10月からの制度改正が審議・承認されました。次に,制度改正の内容について説明します。

(1)料金の改定

10月1日より事業者登録料,管理者ID 利用料,現場利用料が改定されました(図−2)。
 
技能者登録料については,今回の変更はありませんが,2021年4月より2段階登録方式を導入する予定です。2段階登録方式では,必須項目(本人情報,社会保険加入の有無など)のみの登録を行う簡略型登録の登録料は2,500円に据え置き,任意項目(保有資格,健康診断受診履歴など)も含めた全ての項目の登録を行う詳細型登録の登録料は4,900円となる予定です。
 

【図−2 料金改定】



(2)電話によるお問い合わせ受付の終了

「建設キャリアアップシステムお問い合わせセンター」では,これまで電話およびメールによるお問い合わせを受け付けていましたが,電話受付については大変つながりにくい状態が続いていたことから,メールでの受付に一元化することで,サービスの向上を図っていくこととなりました。
 
これに伴い,2020年9月末をもって電話受付が終了し,10月以降のお問い合わせは,建設キャリアアップシステムホームページの「お問い合わせフォーム」をご利用いただいています。

(3)郵送・窓口での申請受付の終了

9月末をもって事業者,技能者の登録申請のうち,郵送による申請および受付窓口での申請の受付が終了しました。これに伴い,10月以降は原則としてインターネットによる申請をご利用いただいています。ただし,認定登録機関においては,登録申請の受付から審査・登録までを行っており,そちらでは引き続き書面による申請を行うことができます。
 
 
 

4 今後の取り組み

これまで述べたとおり,CCUSの登録者数は着実に増えていますが,厳しい財政状況を踏まえると,登録だけでなく利用も含めた,より一層の普及拡大が必要といえます。ここではCCUSの普及促進に向けた今後の取り組みについてご紹介します。

(1)官民施策パッケージに関連した取り組み

2020年3月に公表された「建設キャリアアップシステムの普及・活用に向けた官民施策パッケージ」においては,令和5年度からの建設業退職金共済事業本部(以下,建退共)のCCUS完全移行およびそれと連動したあらゆる工事におけるCCUS完全実施を目指すこととされています(図−3)。
 
具体的な施策としては,「建退共のCCUS活用への完全移行」「社会保険加入確認のCCUS活用の原則化」「国直轄での義務化モデル工事実施等,公共工事等での活用」などが挙げられています。
 
以下では,官民施策パッケージに関連して,建退共事務での活用,公共工事での活用および拡張サービスの実証実験についての最近の動きをご紹介します。
 

【図−3 建設キャリアアップシステムの普及・活用に向けた官民施策パッケージ】



①建退共事務での活用
建退共における掛金の積立ては,これまでは共済手帳に証紙を貼付する証紙方式が採用されてきましたが,これに加えて新たに電子申請方式が導入され,2020年11月2日から電子申請システムが稼働を開始しています。この電子申請方式においては,CCUSに蓄積された就業履歴のデータを建退共のシステムに取り込むことが可能となり,事務の効率化につながるとともに,CCUSの活用にも弾みがつくことが期待されます。
 
現在,電子申請方式の試行的実施が行われており,2021年3月中に全面的・本格的実施が予定されています。
 
 

②公共工事での活用
国の直轄工事では,CCUS義務化モデル工事(発注者指定・目標の達成状況に応じて工事成績評定にて加点/減点)および活用推奨モデル工事(受注者希望・目標の達成状況に応じて同評定にて加点)が試行されています。
 
また,都道府県においてもCCUSに登録済みの事業者を評価する企業評価の導入が広がってきています。2020年10月時点の国土交通省の調査によると,42都道府県において企業評価を導入または検討中となっています。導入している県においては,総合評価における加点,入札参加資格審査における加点,国と類似のモデル工事の実施などが行われています(図−4)。
 

【図−4 企業評価の導入状況と加点の例】




③拡張サービスの実証実験
官民施策パッケージに掲げられたCCUSのサービス拡張に係るニーズ,事業性,運営体制等の検証のため,大規模実証実験を行うことが予定されています。
 
実証実験では,中小現場での導入促進のため,カードリーダーを設置せず,技能者のスマホ等で入退場登録できる方法の実効性やニーズなどについて検証を行う予定となっています。この実証実験の結果を踏まえて,2021年度のCCUS運営協議会において,サービス実装の妥当性について検討することとされています(図−5)。
 

【図−5 建設キャリアアップシステムの拡張サービス実証実験について】



(2)ユーザーサポートの充実に係る取り組み

これまでご紹介したCCUSの普及・活用に係る取り組みと併せて,ユーザーの疑問や悩みを解決するサポート機能を充実させるための取り組みも進めています。以下では,最近の取り組みについてご紹介します。

①CCUS サテライト説明会
これまでのCCUSに関する説明会は,大都市に所在するホール等の会場を使用して開催される場合が多く,新型コロナウイルスの感染拡大防止を図るとともに説明機会を充実させることが課題となっていました。このため,9月よりWeb会議システム(Zoom)を活用した「CCUSサテライト説明会」の実施を開始しました。
 
「CCUSサテライト説明会」は,説明者と参加者が一堂に会する必要がなく,ユーザーからの申し込みにより全国どこでも開催できますので,地方の事業者・技能者の方も参加しやすくなり,CCUSに対する理解の促進に役立つものと期待されます。
 
 

② FAQのリニューアル
先に述べたとおり,CCUSに関するお問い合わせは,現在はお問い合わせフォームを使用したメールにより受付を行っていますが,問い合わせをしなくてもユーザーの方が自己解決できるための機能を向上させる必要があることから,11月に「FAQ(よくあるご質問)」をリニューアルしました。
 
リニューアル後のFAQでは,単語または文章によるキーワード検索が可能となるほか,従来よりもカテゴリーの分類を増やし,知りたい回答をより探しやすくなりました。FAQは今後も拡充を図っていく予定です。
 
 
 

5 おわりに

CCUSは,ユーザーである建設技能者・事業者の方々にとっても,運営の関係者にとっても初めての試みであり,これまでは手探りの状態で走ってきたと言えるかもしれませんが,本運用から1年半余りが経過し,現実的な数字や課題が明らかになってきました。
 
今後必要なことは,持続可能なシステムとするため可能な限りコスト縮減を図りつつ,さらなる普及拡大のための取り組みを進めることとなります。特に,CCUS導入の目的である建設業の担い手の確保や,CCUSがもたらすメリットの実現のためには,登録者数および利用率の向上がカギとなります。
 
建設業振興基金では,これまでに得られた経験や反省を踏まえて,今後ともCCUSの安定的な運営と普及促進に力を尽くしてまいりますので,引き続き皆さまのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

 
 
 

一般財団法人 建設業振興基金 建設キャリアアップシステム事業本部

 
 
【出典】


積算資料2021年1月号



 

 

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