建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建築施工単価 > 公共建築物における木材利用の取り組み〜「公共建築物の木材利用事例集」を7年ぶりに取りまとめ〜

 

1. はじめに

「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行,同法に基づく基本方針(注1)の策定から10年が経過しました。国は,基本方針において積極的に木造化を促進するとされた低層の公共建築物の原則木造化を進め,また,多くの地方公共団体においても木材利用促進に関する方針が策定され,多くの木造の公共建築物が全国で建てられています。
 
全国営繕主管課長会議(都道府県及び政令指定都市の営繕担当課長と国土交通省大臣官房官庁営繕部が参加)は,国,地方公共団体等の事業計画等の参考とするため,2012,2013(平成24,25)年度に「公共建築物における木材の利用の取組に関する事例集」等の取りまとめを行いました。
 
上記事例集等の取りまとめ後,木材利用に係る技術開発の進展と地方公共団体により多様な木造建築物が整備されていることを踏まえ,今般,新たに,国および全国の地方公共団体の木材利用の取り組みに関し,「公共建築物における木材の利用の取組に関する事例集(令和2年版)」(以下,本事例集)として,国土交通省大臣官房官庁営繕部が事務局となり,取りまとめを行いました。
 
本事例集では,CLTの活用などの木材利用に係る新たなテーマが設定され,これに即した国(2件),都道府県(43件)および市区町村(32件)が整備した77件の木造公共建築物および1件の施策が木材活用の取り組みとともに紹介されています。本稿では,その内容を通して,公共建築物における木材利用の取り組みを紹介します。
 
なお,本事例集は,国土交通省のホームページ(注2)に掲載しています。
 
 
 

2. テーマの設定

新たな事例集の作成に当たり,全国営繕主管課長会議の構成員の有志による「公共建築物における木材の利用の取組に関する事例集等の拡充検討会(東京都(委員長),北海道,長野県,静岡県,岡山市,国土交通省大臣官房官庁営繕部(事務局))」(以下,検討会)を設置しました。
 
事例の収集に当たり,事前に構成員に対して,事例集への収録を希望する取組内容についてアンケートを行い,以下の8つのテーマを設定しました。
 ①CLT
 ②混構造・部分木造
 ③大規模・大空間
 ④準耐火建築物
 ⑤地域産材の活用
 ⑥維持管理
 ⑦コスト計画
 ⑧その他
 
 
 

3. テーマごとの代表的な取組概要(表−1)

【表−1 事例集におけるテーマごとの代表的な取組概要】



① CLT

【写真−1 CLTパネル工法による公営住宅】
(福島県復興公営住宅 磐崎団地)


CLTとはCross Laminated Timberの略称で,ひき板(ラミナ)を繊維方向が直交するように積層接着した木質材料です。日本では2013(平成25)年にJAS(日本農林規格)が制定され,2016(平成28)年にCLT関連の建築基準法告示が公布・施行されました。また,近年の技術開発の進展を受けて,2017(平成29)年の「公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針」の変更において,公共建築物の整備に当たっては,CLTや木質耐火部材等の新たな木質部材について活用を促進する旨が規定され,CLTの活用が進んでいます。本事例集では,新たな木質材料であるCLTを活用するに当たって取り組まれた内容を紹介しています(写真−1

②混構造・部分木造

【写真−2 混構造+免震構造によるフレキシブルな空間】
(長門市庁舎)


公共建築物の木造化に当たり,平面混構造,立面混構造に加え,主要構造部の部材の一部に木材を使用するなど,混構造などに関しての技術開発が進んでおり,混構造と免震構造の組み合わせによるフレキシブルな事務空間や,屋根を木造化することによる軽量化などが取り組まれています。本事例集では,これらの適材適所に木材を活用するに当たって取り組まれた内容を紹介しています(写真−2)。

③大規模・大空間

【写真−3 定尺材アーチトラスによる大空間】
(能代市 道の駅ふたつい)


近年,運動場,体育館,武道場,集会場などの施設においても木材を活用する取り組みが進んでいます。本事例集では,大スパンを確保するために技術的な工夫を凝らした取り組みの内容を紹介しています(写真−3

④準耐火建築物

【写真−4 燃えしろ設計の木造準耐火建築物】
(平城宮跡歴史公園朱雀大路西側地区観光案内・物販棟)


木造の準耐火建築物において,燃えしろ設計により木部を現しとした取り組みの内容を紹介しています(写真−4)。

⑤地域産材の活用

【写真−5 地域産材の強度分布を踏まえた架構】
(大分県立武道スポーツセンター)


公共建築物では住宅などよりも規模が大きくなるため,大量の地域産材を工事業者が調達することになる場合があります。このため,発注者による工事業者の地域産材の調達期間の確保や工事と木材調達を切り離す材工分離発注,また設計者による地域の木材の強度分布を踏まえた適材適所の部材配置などが取り組まれており,本事例集では,これらの公共建築物で地域産材を活用するに当たり,取り組まれた内容を紹介しています(写真−5)。

⑥維持管理

【写真−6 深い軒の出・露出しない接合金物】
(仙台市八木山動物公園 ふれあい館・グーグーテラス)


木造とした場合に木材の耐久性,メンテナンスの手間などを懸念されることがあり,これが木造公共建築物の普及を妨げる理由の一つになっています。本事例集では,深い軒の出による外壁の耐久性の向上,外部に露出しない接合金物の採用による接合金物の錆発生の防止や,外部使用木材の劣化対策など,設計において維持管理に配慮して取り組まれた内容を紹介しています(写真−6)。

⑦コスト計画

【写真−7 格子膜構造による材の軽量化】
(群馬県農業技術センター(本館・会議棟))


木造は鉄筋コンクリート造,鉄骨造などよりもコストが高くなる傾向にあるといわれています。本事例集では材の軽量化,材のサイズ・架構断面の均一化など,木造の建設コストを抑えるために取り組まれた内容を紹介しています(写真−7

⑧その他

【写真−8 宮城県CLT等普及推進協議会と連携】
(宮城県林業技術総合センター)


「地域の協議会等と連携した取組」や「歴史的建造物復原の取組」,「設計者選定に関する取組」など,①〜⑦までに含まれない木材利用に関して取り組まれた内容を紹介しています(写真−8)。


 
 

4. 木造建築物のコスト情報分析

構成員へのアンケートにおいて,事例集の取組テーマのほか,平均的なコスト情報に関する要望がありました。このため,木造建築物に係る企画立案,設計段階でのコスト計画の参考となるよう,検討会において,本事例集に収録した建築物とは別に,全国の木造(混構造含む)公共建築物の建設コストに関する資料(135件のデータ)を収集し,木造建築物のコスト情報分析を行い,本事例集に併せて収録することとしました(表−2)。
 
一般的な木造の建築物(混構造や歴史的建造物復原を除く)においては,工事総額のm2単価が延べ面積の増加に伴ってばらつきが小さくなる傾向がありました。また,木造躯体工事のm2単価は,集成材等の木質部材の使用や耐火性能等により,㎡単価が増加する傾向がありました。
 

【表−2 木造建築物の㎡単価における相加平均・標準偏差】




 
 

5. おわりに

本事例集の取りまとめに当たり,資料を収集,提供いただいた構成員,関係地方公共団体の皆さまには,多大なご協力をいただきましたことに,この場をお借りして御礼を申し上げます。
 
本事例集が地方公共団体における木材利用に係る取り組みの紹介のみならず,構成員間の情報共有・交換を促し,さらなる木材利用の促進の一助になれば幸いです。
 
 
(注)1. 公共建築物における木材の利用の促進に関する基本方針(平成22年10月4日農林水産省,国土交通省告示第3号 変更 平成29年6月16日農林水産省,国土交通省第1号)
   2. https://www.mlit.go.jp/gobuild/moku_torikumi.html
 
 
 

国土交通省 大臣官房 官庁営繕部 整備課 木材利用推進室

 
 
 
【出典】


建築施工単価2021冬号



 
 
 

 

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