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「建設DX」とは

「CALS」「BIM/CIM」「情報化施工・ICT施工」「i-Construction」そして「建設DX」と細かい内容は別として、建設現場でも聞いたことある単語が多いのではないだろうか。
 
コロナ禍もあり、「DX」という単語をよく目や耳にするようになった。そもそも「DX」は建設業だけで使われているものではなく、ご存知のとおり「デジタルトランスフォーメーション」の略 称で、大まかに言うと「デジタル技術による業務の変革」を意味する。「D」はもちろん「digital」で、「X」は英語圏で「trans〜」を意味する。
 
現在、建設現場ではパソコンやスマートフォン、タブレット端末をはじめ、さまざまなデジタルツールを活用しながら、さまざまな建設物、いわゆる「モノ」をつくりあげている。朝、現場事務所に到着すれば必ずと言っていいほどパソコンの電源を入れるだろう。スマートフォンやタブレットを用いて現場の状況を確認したり、測量 や施工にもGNSS、写真は電子小黒板、職人さんとの打合せでもデジタルツールを用いている。笑顔のコミュニ ケーション以外の多くはデジタルツールを用いた業務となっているのが現状で、逆を言えば、以前これらのない時代はどのようにして「モノ」をつくりあげてきたのか、疑問すら感じる人も多いのではないだろうか。以前の話はさておき、「建設DX」の意味の中で「業務の」を忘れてはならないと筆者は感じる。ただデジタルツールを使うのではなく、デジタルツールの活用によって「業務」、いわゆるプロセスを変えることがこの「建設DX」に重要なことだ。会社の規模や分野、現場の規模や工種によって大きく異なる建設現場の業務であるが、そういう意味では、「デジタル技術によってプロセスを変革する」と踏まえれば、どんな立場であれ、それぞれの「建設DX」はすぐ近くにあると言えるだろう。
 
 

建設現場にも必要な「建設DX」の狭義・広義の意味

「建設DX」の取り組みとして国土交通省などが「インフラ分野のDX」として提唱しているものを狭義の意味、前述したような身近な業務をデジタル技術によってプロセスの変革を行うことを広義の意味として少し説明したい。まず狭義の意味として、インターネットの検索で「国土交通省DX」と検索すると、国土交通省でも「インフラ分野におけるDXの推進」として、さまざまな部署で取り組みを行っているのが分かる。「第1回国土交通省インフラ分野のDX推進本部」の資料2(図-1)によると、DXの概念は「進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活 をより良いものへと変革すること」とされ 、インフラ分野のDXとは「社会経済状況の激しい変化に対応し、インフラ分野においてもデータとデジタル技術を活用して、国民のニーズを基に社会資本や公共サービスを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、建設業や国土交通省の文化・風土や働き方を変革し、インフラへの国民理解を促進するとともに、安全・安心で豊かな生活を実現」と分かりやすい表現がされている。
 
上記のスライドにもあるように、「行動」「知識・経験」「モノ」の3つのDX に分けて社会資本や公共サービス、組織、プロセス、文化・風土、働き方改革の変革をうたっている。末広がりの DXを取りまとめるのに、この3つの柱は非常に分かりやすい。簡単に紹介すると、
 

行動のDX:どこにいてもさまざまな 業務が可能
例:遠隔操作、遠隔臨場、Web会議、遠隔監視など
 
知識・経験のDX:技術の継承
例:AIによる施工管理支援など
 
モノのDX:3Dや4D(+時間)、5D (+コスト)でつくる「モノ」を簡単に理解
例:BIM/CIM化、ICT施工など
 
また、フィジカル(現実)空間の事象をサイバー空間に再現する「デジタルツイン」を目指す取り組みも始まっている。国土交通省では「国土交通データプラットフォーム」が開設され、国土 交通省が所有するデータと民間などのデータの連係を目指している(図-2)。現状は国土地理院のベースマップに各データがポイントごとに掲載されているマッピング状況であるが、将来的には同一インターフェイスからの検索と同位置の3次元地図上での表示やダウンロードが可能となる。建設現場でも国土交通データプラットフォームのサイバー空間から施工箇所をダウンロードし、施工した「モノ」を手元で更新し、再度アップロードするという時代が近いことが分かる。
 

インフラ分野のDX

図-1 インフラ分野のDX(国土交通省より)




デジタルツインを目指す姿

図-2 デジタルツインを目指す姿(国土交通省より)


「建設DX」推進の背景

「建設DX」を進めるために、2019年に「担い手3法」が法改正され、「新・担い手3法」とも呼ばれている。建設業の維持と生産性向上、「i-Construction」を加速させるために「建設業法」、「品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)」、「入契法(公共工事の入札および契約の適正化の促進に関する法律)」の3つの法律が改正され、随時施行された。
 
「働き方改革の推進」
「生産性向上への取り組み」
「災害時の緊急対応強化、持続可能な事業環境の確保」
 
の3本を柱として、主として監理技術者の兼務(特例監理技術者)や特定専門工事(型枠・鉄筋)での主任技術者の配置省略、プレキャスト製品資材会社への勧告、社会保険加入の確認方法、建退共制度のシステム見直しなどが行われた。
 
もう一つは総務省から2016年度の第5期科学技術基本計画において提唱された「Society5.0」である。一言で表現すれば、「フィジカル空間(現実空間)のセンサーなどから膨大な情報がサイバー空間(仮想空間)に自動的に集積され、このビッグデータを人工知能が解析し、その結果をフィジカル空間の人間にさまざまな形でフィードバックされる社会」で、建設分野でも「Society5.0」を背景に変革が取り組まれている(図-3)。
 
「Society5.0」の実現に、新しい通信技術5Gの普及が急がれるとされているが、建設現場ではどうだろうか。
 
5Gでは新しい帯域(NR:ニューレディオ)として3.7GHz帯・4.5GHz帯(Sub6)と28GHz帯(ミリ波)を使用しているため、今までとは別のアンテナの設置が必要となる。また、新しい帯域は遮断物や雨にも影響され、飛距離が短いため、現況の4G以上の基地局が必要とされている。そのため基地局までのバックボーンの整備も含め、建設現場で5Gが普通に使えるには、ある程度時間がかかるものと考えられる。5Gについてまとめると以下のとおりである。
 
・超高速、超低遅延、多数同時接続・必要箇所から設置、人口カバー率低い
・電波が硬いため雨や障害物によって遮断されやすい
・安定供給には100〜200m程度ごとにアンテナが必要
・アンテナまでのバックボーン(光回線)の整備も必要
・5GのNRにはSub6とミリ波があり端末により異なる
 
では、この5Gが建設現場に入ってくると、劇的に建設現場が変わるかと言うと、答えはノーである。5Gはあくまでも基地局からデバイスまでの通信技術であり、その部分が今までの4Gと比較すると超高速、超低遅延、多数同時接続となるため、あくまでも伝送技術の革命に過ぎない。5Gを生かすためにも、通信技術にまつわる管理ツールの開発や普及がその前に必要となる。また、現在はWi-Fi技術も「Wi-Fi6」へと改革が進んでおり、5Gの整備がある程度進むまではこのWi-Fi6やローカル5G、専用電波などとの混在となるだろう(図-4)。
 
 

Society5.0時代の仕組み

図-3 Society5.0時代の仕組み(総務省より)




5GとWi-Fi6との比較

図-4 5GとWi-Fi6との比較


2030年代、Beyond5G(6G)の時代の建設現場

もう少し先、十数年後の建設現場を想像してみよう。総務省から公開されている「令和2年度情報通信白書」にはBeyond5Gとしていわゆる6G時代の求められる機能と時代背景がまとめられている(図-5)。
 
5Gよりさらに超高速、超低遅延、多数同時接続が果たされるが、エリアは5Gより絞られ、必要とされる箇所のみの予定だ。建設現場は地方や海上での施工も多いため、HAPS(高高度基盤ステーションと呼び、成層圏にアンテナを搭載した飛行物体を自動飛行させる通信技術、衛星通信より距離が近いため通信速度が高速)との組み合わせなどが必要となるだろう。
 
また2030年代には、人工知能のAIはシンギュラリティと言い、人類の知能をAIが超える時代を迎えると言われている。さらにあらゆるモノに、インビジブルコンピュータ(見えない通信モジュールのようなもの)が埋め込まれ、全てのモノがフィジカル(現実)空間でも管理される。これらを踏まえて見えてくる建設現場のキーワードは以下のとおり。

・構築物はほぼプレキャスト化
・重機類の自動運転、自動施工
・遠隔監視、遠隔管理、複数現場同時管理

とは言え、100%全てが自動施工を行うことは難しいため、ある程度、人でないとできない部分があるだろう。この時代に向け、建設会社として、個人として、それぞれの規模、それぞれの立場で、何ができるのかをそろそろ考えていく必要もあるだろう。
 
 

Beyond5Gに求められる機能など

図-5 Beyond5Gに求められる機能など(総務省より)


PRISMから見える近未来建設現場技術

「PRISM:官民研究開発投資拡大プログラム」が平成30年度から始まり、最先端技術の実証実験が各地で行われている。令和元年度も同様に実施され、取り組み内容を個人的ではあるが表-1にまとめてみた。
 
多いのは、3Dスキャン等による自動的出来形管理関係で、次に重機・車両・人の動きを自動的に把握し、どこに無駄があり、どうすれば生産性向上が図れるかの改善支援を行う研究と続いている。品質管理や検査の自動化も多く、作業を止めずに、そして人を介せずに行う管理も研究されている。これらの実証実験が実を結び、近い将来、建設現場の多くで取り入れられることだろう。現場監督として、これらで空いた時間を別のことに上手に使い、より高品質な管理を行う必要があると考える。
 

PRISMから見る近未来建設現場技術

表-1 PRISMから見る近未来建設現場技術
(建設現場サイト「現場主義より」)


身近な建設DXツール

少し現実的な話に戻そう。現在、建設現場の管理で一番使用されているデジタルデバイスはパソコンとスマートフォン・タブレットではないだろうか。私の経験上ではあるが、土木現場ではスマートフォンが普及し、建築現場ではタブレット端末が普及しているように感じる。屋外作業の多い土木とある程度進むと屋内作業が多くなる建築と環境の違いもあるが、そもそも業務の進め方に違いがあることがこのスマートフォンとタブレット端末の違いにつながってくるのではないだろうか。
 
その中でも、どちらでも普及しているスマートフォン・タブレット端末活用事例としては、以下のとおりである。
 
・ビジネスチャット
・オンラインストレージ
・Web会議システム
・野帳、ノートツール
・工事写真(電子小黒板)アプリ(土木)
・図面PDFに写真など情報を埋め込むアプリ(建築)
 
LINEのようなチャットツールを使っている人はすでに多いが、ビジネスチャットでは端末にデータが残らない、既読者と未読者が判別できるなど、無料版のLINEとは異なる機能がある。身近な建設会社で導入されているビジネスチャットの種類は以下のとおりである。
 
・LINEWORKS(ラインワークス)
・direct(ダイレクト)
・WowTalk(ワウトーク)
・InCircle(インサークル)
・TAGS(タッグス)
・MicrosoftTeams(マイクロソフトチームズ)
・ChatWork(チャットワーク)
 
それぞれに機能の特徴や操作性、コストなどの違いがあるが、基本的には必要に応じてグループを作成し、その中で会話することが多い。チャットツールではメールより素早くコミュニケーションが取れる、スマートフォンやタブレット端末を使用してどこからでも発信・確認が可能であるが、次のようなデメリットもあるため、注意が必要だ。
 
・人数が多い中でメッセージが多数あるときは判読が困難
・業務によりメッセージ内容を認識できない場合がある
・大量のメッセージは読む側のストレスとなる
 
元請職員幹部のみ、元請職員全員、元請職員+協力業者職長、場合によっては発注者や元請会社の間接部門を入れたグループなど、さまざまなグループを使用してメッセージのやり取りをするため、上記のような問題が発生する。特にグループ内での会話が早すぎるとついて行けないなど、同じような経験をしている方が多いのでは。発信者側は、なるべくメッセージが多くならないような工夫が必要で、受信者側も「了解です」などの返信を省略し、やり取りがスムーズに行くようなルール付が必要である。ビジネスチャットを使われるシーン例として以下のような使い方があるが、それぞれに上記で述べた点をルール化し、上手に運用することが必要である。
 
・安全巡視時の指摘事項を写真付きで指示、同是正報告
・発注者などからの連絡事項を素早く通知
・協力業者を含め作業間の調整(機械やエリアなど)
・検査状況や作業の進捗状況を共有・現場状況を間接部門に定期的に報告
 
 

建設現場における 遠隔臨場、遠隔確認

国土交通省や農林水産省から要領(案)が公開され、公共工事でも広がりを見せる遠隔検査であるが、現場の円滑な施工のためにもぜひ取り組んでほしい。図-6は遠隔検査のシステム構成例であるが、スマートフォンやタブレットとWeb会議システムがあれば簡単に構築できる。ポイントは立会調書のやり取りを行う端末の準備と、検査する範囲に応じて現場側端末を複数にすることだ。そうすることで、0点や読み値の確認などを同時に行うことができ、現場担当者の移動時間を省略できる。
 

遠隔検査システム構成例

図-6 遠隔検査システム構成例


公共工事で工事写真に落書きが可能に

次に国土交通省などにおける工事写真の電子納品について、2020年3月に「デジタル写真管理情報基準」が改定され、それまでは「写真ファイルの記録形式はJPEG」とされていたものが「JISに示されているJPEGやTIFF等とし」と変更された。これにより、動画のMPEG形式や今回紹介するSVG形式での納品が可能となる。SVG形式の工事写真を簡単に説明すると、
 
「被写体」+「電子小黒板」+「注釈」
 
といった感じのレイヤの3層による構造となり、「注釈」では写真の上にマーキングなどのいわゆる落書きを書くことができるようになる。「被写体」と「電子小黒板」のレイヤには今までどおり改ざん防止機能が付くが、「注釈」には付かないため、何度でも編集が可能となる。例えば配筋検査では色付きのマグネットやビニルホースをマーキングとして鉄筋に付けていたが、これが不要となり、図-7のように写真撮影後にマーキングや矢印などの注釈を追加することが可能となる。もちろん配筋検査写真以外にも大いに活用できるだろう。
 
さらに「電子小黒板」や「注釈」は、表示・非表示の選択が可能となる。民間建築現場では既に使われている機能でもあるが、公共工事でも電子納品として納品が可能となる。
 
建設現場でのデジタルツールを紹介したが、前述したとおり上手に使うには所内や社内において、ある程度のルール化が必要であり、使いこなしてこそのDXである。さまざまな情報にアンテナを張り、業務の変革に結び付く情報を取り入れてほしい。
 

注釈が可能となる工事写真(イメージ図)

図-7 注釈が可能となる工事写真(イメージ図)


さいごに

コロナ禍での緊急事態宣言時に「エッセンシャル・ワーカー」という言葉を耳にしたことはないだろうか。一般社団法人日本建設業連合会では、われわれ建設業に携わる関係者も「エッセンシャル・ワーカー(日常生活を支える欠かせない存在)」であるとし、この自負と誇りを建設業に携わる人々が堅持しつつ、市民および現場で働く人の命や心身の健康を守ることを前提に事業継続できる体制整備が必要とし、PR活動を開始した。建設業に携わる一人ひとりがこれを自負し、プロセスの変革も含めた建設DXを推進し、答えていくことが重要である。
 
 
 

現場主義×山政 睦実

 
【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 

 

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