建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 建設ITガイド > 東北地方整備局における BIM/CIMの取り組みについて

 

東北地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みについて

東北地方は、他地域に比べて少子高齢化の進行が速く、生産年齢人口が今後一層速い速度で減少していく状況にあり、建設分野における生産性向上は待ったなしの状況にある。
 
東日本大震災からの復旧・復興現場では、橋梁やトンネルなどといった多くの構造物の整備が急ピッチで進められた。復興期間に完成した、これらの構造物は、同時期に整備されたことから、将来、一斉に老朽化し、補修が必要となる可能性が高い。こうした課題に対して、BIM/CIMの活用は設計・施工段階の各種データを共有、かつ蓄積できることから、構造物の点検や維持管理に有効的な手段となり得る。構造物の長期的な維持管理の効率化や、メンテナンス費用の抑制・平準化などの課題を解決する“切り札”の一つとしてBIM/CIMへの期待は高い。
 
東北地方整備局におけるBIM/CIMの取り組みは、全国と歩調を合わせ平成24年度からスタートし、平成28年度末の「CIM導入ガイドライン」策定を契機に新基準に従った取り組みを積極的に進め、図-1に示すとおり、令和元年度までに設計業務・工事合わせて約100件で活用を行ってきたところである。構造物別の内訳を見ると、橋梁での活用が最も多く、次いで水門、トンネルの順となっている(図-2)。
 

東北地方整備局におけるBIM/CIM活用業務・工事実施状況

図-1 東北地方整備局におけるBIM/CIM活用業務・工事実施状況


 
BIM/CIM活用範囲

図-2 BIM/CIM活用範囲


 
BIM/CIMの活用については、令和5年度に小規模なものを除く全ての公共工事で原則適用される方針が打ち出されたところであり、これまでは設計段階におけるBIM/CIM活用が多数であったが、今後は、施工段階(工事)におけるBIM/CIMの活用が本格化していくことが想定される。
 
そこで、東北地方整備局管内の施工段階におけるBIM/CIM活用事例として、「一関遊水池舞川水門新設工事」での取り組み内容を紹介する。
 
 

施工段階におけるBIM/CIMの活用事例

(1)一関遊水地舞川水門新設工事でのBIM/CIM活用

舞川水門は一関遊水地(岩手県)において北上川最下流の小堤に設置されたもので、水門の大きさは全長109m、幅45 ~ 60m、高さ23m、コンクリ-ト量2.5万m3の巨大な構造物であり、2年7カ月をかけて建設された。
 
工事現場の生産性向上を目的に、工事期間中はICT施工やウェアラブルカメラを用いた遠隔臨場等、さまざまな取り組みを積極的に行っており、BIM/CIM活用もその一環として実施されたものである。
 
本工事では、水門コンクリートを対象にBIM/CIMを活用し、「工事計画の可視化」「3次元出来形管理」「過密鉄筋部の干渉チェック」等を行い、手戻り防止や施工管理の効率化を図った。
 

(2)工事計画の可視化

 
施工に当たっては、クレーンやコンクリートポンプ車等の揚重機の配置スペースやアジテータトラックの走路を確保しながら手戻りのない施工を行う必要があることから、施工順序を細分化した施工計画を立案している。今回は、本体掘削から本体構築、築堤盛土までの施工順序を3次元モデルで可視化し、ステップごとの変化や状況をシミュレーション動画で把握できる施工ステップ図として活用することで細分化した施工計画の妥当性・実現性の確認を行った。3次元モデルの作成に当たっては、現場条件等により変更が生じた際にモデルの変更・加筆・修正が容易にできるようなモデル構築に留意した。
 
作成した3次元施工ステップ図は、工事打合せや現場見学会などに活用した。3次元モデルを用いた工事説明を実施し、工事状況を分かりやすく情報提供することで、協議における早期解決や子供・学生に向けた建設現場の魅力発信、地元関係者の工事理解につなげることができた。
 

施工ステップを可視化した施工シミュレーション

図-3 施工ステップを可視化した施工シミュレーション


 
LS計測による3次元出来形管理

図-4 LS計測による3次元出来形管理


 

(3)3次元出来形管理

 
現在、土工や舗装工等で行われている3次元データを活用した出来形計測について、水門本体を対象に試行し、コンクリート構造物における施工管理の効率化の可能性について検証を行った。
 
計測機器は地上型レーザースキャナーを用い、構造物の底面、側面、上面を施工段階に応じて漏れのないように計測した。計測箇所は底面8回、側面・上面が3回の計11回行い、点群密度は1点以上/0.0001m2とした。
 
検証結果として、設計図を利用した出来形図の寸法値に3次元計測値と直接測定値を記載し、比較を行った(図-5)。その結果、直接測定値と3次元計測値はおおむね5mm以内の差に収まっており、最大でも20mm程度と3次元計測の精度としては良好な結果が得られた。
 
なお、計測データを基に水門本体の3次元モデルを作成することで、施工時の形状を高精度な点群データで記録保存することも可能となった(図-6)。

3次元出来形計測結果と直接測定値の比較

図-5 3次元出来形計測結果と直接測定値の比較


 
3次元計測データによる3次元モデル

図-6 3次元計測データによる3次元モデル


 

(4)過密鉄筋部の干渉チェック

施工中の手戻りによる時間的・経済的なロスの発生を事前に防止するため、3次元モデルによる照査を実施した。
 
水門本体底版と堰柱の接合部における鉄筋干渉チェック(図-7)と遮水矢板と胸壁鉄筋の干渉チェックを行い、問題がないことが確認できたことで、現場作業の中断もなく、施工の効率化が図られた。
 

鉄筋干渉部の3次元モデル

図-7 鉄筋干渉部の3次元モデル


 
 

BIM/CIM原則適用に向けた人材育成

BIM/CIMの活用が急速に進展しつつある状況下において、BIM/CIMに携わる人材の育成は喫緊の課題である。特に、BIM/CIMを初めて担当する場合であってもスムーズに活用・更新が可能となるよう、関係者全体の習熟度を向上させる必要がある。
 
東北地方整備局では職員全体の習熟度向上を目的に、BIM/CIM活用に必要な知識や各種ソフトウエアの利用法等の基礎技術について、ハンズ・オン形式(体験型学習方法)による職員向け研修を令和元年度から開始している。実際に手で触れ操作することで理解が深まり、習熟度向上が期待できる。
 

BIM/CIM研修状況

図-8 BIM/CIM研修状況


 
 

BIM/CIM活用の今後

BIM/CIM活用は“生産性革命のエンジン”であり、i-Construction推進にあたって必要不可欠な重要要素である。令和5年のBIM/CIM原則適用に向けて、受発注者とも、早々にその取り扱いを経験し、習熟していく必要があると考える。
 
BIM/CIMがいち早く受発注者間に浸透し、普段使いのツールとして活用され、建設生産プロセスの各段階における生産性の向上に大いに寄与してくれることを強く願っている。

国土交通省 東北地方整備局 技術管理課

 
 

【出典】


建設ITガイド 2021
BIM/CIM&建築BIMで実現する”建設DX”
建設ITガイド_2021年


 

 

同じカテゴリの新着記事

最新の記事5件

カテゴリ一覧

バックナンバー

話題の新商品