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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 東北大学復興アクション ─その10年の軌跡と未来─

 

東日本大震災と東北大学

国立大学法人東北大学(以下,東北大学)は,今から114年前の1907年の建学以来,「研究第一」,「門戸開放」,「実学尊重」の理念のもと,多くの指導的人材を輩出するとともに,人類の発展および豊かな未来社会の実現に向けたイノベーション創出の一翼を担ってきました。
そのような長い歴史の中においても,2011年3月11日に発生した東日本大震災という出来事は,東北大学にとって非常に大きな意味をもつ出来事でした。
 
未曽有の大震災は,地震と津波,そして東京電力福島第一原子力発電所の事故等により,東北地方を中心に甚大な被害をもたらしました。
東北大学もその例外ではなく,建物や研究設備を中心に約569億円もの被害を受け,自らの教育・研究活動の再開のために多大な労力を割くことを余儀なくされました。
 
しかし,そのような混乱期にあっても東北大学は,震災直後から被災地での緊急支援活動や大学病院を中心とした緊急医療支援活動を開始したほか,地震・津波に関する各種情報発信と被害状況調査,放射線モニタリング,原子炉施設内への災害ロボット投入など,それぞれの教職員の専門性を生かしたさまざまな取り組みを行ってきました。
また,多くの学生たちが,被災地でのボランティア活動に参加しました。そして,発災からわずか1カ月後の2011年4月には,このような復興支援活動を推進するための全学組織として「東北大学災害復興新生研究機構」(http://www.idrrr.tohoku.ac.jp/)を設立しました。
以来,同機構では,災害科学や地域医療,廃炉などの8つの重点プロジェクトを編成・始動させるとともに,「臨床宗教師」(公的な場で宗派を超越した心のケアを行う専門家)の養成や震災遺構のアーカイブ構築等をはじめとする,教職員が自発的に取り組む100以上の復興支援プロジェクト(復興アクション100+)への支援を行ってきました(図-1)。
 

  • 東北大学災害復興新生研究機構の概要
    図-1 東北大学災害復興新生研究機構の概要】

  • 東日本大震災が東北大 学にもたらしたもの

    この10年間,これほどまでに復興に真摯に向き合ってきた理由の一つとして,東北大学が「社会とともにある大学」であるということが挙げられます。
    建学当初より,民間および自治体等から多大な期待と支援を受け,社会とともに発展してきました。
    そして,この度の大震災では,その復旧や復興活動に多くの方々が支援の手を差し伸べてくれました。
    混迷の中にあってもなお,今日まで活動を続けてきたのは,そうした方々への感謝の気持ちと,被災地にある唯一の総合大学としての使命を強く自覚し,また,自らのもつ多様な学知と人材力を社会へ還元することこそが,支えてくれる社会に対する一つの恩返しであると考えているからです。
    東日本大震災という出来事は,まさに「社会とともにある大学」という本来のアイデンティティを,再認識させてくれた重要な出来事であったといえます。
     
    このような姿勢は,あらゆるところに現れています。
    東北大学は,2017年6月に文部科学大臣より指定国立大学法人の最初の3校に指定されましたが,その際,特に強みを有する研究領域として,災害科学や未来型医療等を挙げています。
    また,2030年までに目指すべき姿として2018年11月に掲げた「東北大学ビジョン2030」や,それを加速すべく2020年7月に策定した「東北大学コネクテッドユニバーシティ戦略」においても,社会との共創や,あらゆる壁を越えて社会とつながることが宣言されています。
     
     

    震災復興にとどまらずその先の新たな時代へ

    震災から10年を迎えるに当たり東北大学は,2020年7月より「震災10年の知と未来事業」(https://tohokuuniversity-lessonsfrom311.com/)を新たに始動させました(図-2)。
    この事業は,10年間に培ってきた知や経験,教訓を4つのカテゴリーで総括,発信し,それらを震災復興にとどまらず世界が直面するあらゆる社会課題の解決へとつなげていくためのものです。
     
    未曽有の大災害からの復興を経験した東北大学だからこそ,その経験と知見を,グリーンかつレジリエントで豊かな未来社会をデザインし,その実現に向けた一歩を踏み出すための大きな力として,一層発展させていかなければならないと考えています。
     
    震災から10年を迎える今,新型コロナウイルス感染症や,頻発化・激甚化する気象災害をはじめとする新たな災害への対応,「仙台防災枠組2015-2030」,「持続可能な開発目標(SDGs)」,「パリ協定」等の世界的な取り組みへの貢献,世界の防災・減災を促進する「防災ISO」国際規格の提案,脱炭素社会の実現へ向けた協力など,その挑戦の場は広がり続けています。東北大学は,これからも国内外の多くの皆さまからのご支援のもと,震災復興と新しい社会の実現を目指していきます。
     

  • 「震災10年の知と未来事業」の概要
    図-2 「震災10年の知と未来事業」の概要】

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    東北大学災害復興新生研究機構長
    原 信義(はら のぶよし)

     
     
    【出典】


    積算資料2021年4月号


    最終更新日:2021-10-25

     

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