建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 土木施工単価 > 東日本大震災から10年の歩み〜復興道路・復興支援道路の整備〜

 

1 はじめに

平成23年3月11日14時46分。未曾有の大災害である東日本大震災が発生した。あれから10年の歳月が流れ,被災地では本格的な復旧・復興に向けた取り組みが進み,目に見えてその姿を実感することができる。
 
特に,リーディングプロジェクトとして復興をけん引してきた,国が主体となって整備を進めている全長550kmにも及ぶ「復興道路・復興支援道路」(以下,復興道路等)は,かつてないスピードで整備が進んでおり,令和3年内に全線開通を迎えることとなった。
 
本稿では,東北地方整備局道路部が行ってきた,東日本大震災での初動から現在までの取り組みを振り返り,地域の皆さまや関係機関の皆さまと一体となった復旧・復興の軌跡を紹介する。
 
 

2 道路の被災状況

国道45号は,宮城県仙台市を起点とし,青森県青森市に至る延長535kmの主要幹線道路であるが,この大震災では岩手県と宮城県内において,22区間で通行止めを余儀なくされるなど被害が集中した。
 
地震による法面崩壊や路面段差の発生に加え,津波によって岩手県陸前高田市の気仙川に架かる気仙大橋(橋長181.5m)(写真−1)をはじめとした5橋の上部工が流失,また,橋梁の流失はなかったものの背面盛土が流出し,落橋に匹敵する致命的な被害を受けた橋梁が2カ所発生した。
 

  • 津波により上部工が流失した気仙大橋
    写真−1 津波により上部工が流失した気仙大橋】

  • 3 初動「くしの歯作戦」の決行

    発災から30分後,東北地方整備局長から被害に関する情報収集,窓口の一元化および被災県へのリエゾン(災害対策現地情報連絡員)派遣が指示された。
    同じ頃,辛うじて津波を逃れ仙台空港から離陸した防災ヘリコプターみちのく号からのライブ映像(写真−2)により,大規模な津波型災害であることを把握することとなった。
     
    これにより,最優先すべきは県・自治体への応援と救援輸送ルートの確保であることを判断し,この救援輸送ルートの確保を行うための道路啓開作業,いわゆる「くしの歯作戦」が計画,決行された。
    建設業界等の貢献により,3段階のステップを踏んで実行されることとなった(図−1)。
     
    第1ステップとして内陸の縦軸ラインである東北道,国道4号を発災後1日で確保,第2ステップとして,被災地に向かう横軸ライン16本のうち15本を発災後4日までに確保,第3ステップとして,被災した国道45号等を発災後7日で97%確保し,救援輸送ルートを確保した。
    この素早い初動対応による救援輸送ルートの確保が,この後の被災地の復旧を大きく後押しすることとなった。

  • 防災ヘリ「みちのく号」からのライブ映像(仙台空港)
    写真−2 防災ヘリ「みちのく号」からのライブ映像(仙台空港)】

  • 「くしの歯作戦」の計画
    図−1 「くしの歯作戦」の計画】

  • 4 復興道路等に着手

    政府の諮問機関である東日本大震災復興構想会議において,太平洋沿岸軸(三陸縦貫道等)の緊急整備や,太平洋沿岸と東北道をつなぐ横断軸の強化について提言(平成23年6月)がなされた。
     
    この提言を受け,ルートやICの検討を進め,平成23年9月から事業評価手続きを実施し,11月には第3次補正予算の成立により,三陸沿岸道路等の未事業化の18区間・224kmが新たに事業化となり,ここに復興のリーディングプロジェクトである復興道路等の整備のスタートが切られた(図−2)。
    また,東北中央自動車道の霊山〜福島間(延長12km)については,都市計画決定を経て,平成25年5月に新規事業化となった。
     

  • 復興道路・復興支援道路 位置図(令和2年12月末現在)
    図−2 復興道路・復興支援道路 位置図(令和2年12月末現在)】

  • 5 事業のスタートダッシュに向けて

    〔復興道路会議の設置〕

    全ての関係者に対する事業進捗の合意形成と関係機関の一体的な連携が諸課題の解決に必要不可欠であることから岩手・宮城・福島の各県で知事,関係市町村長,地元経済界代表等による復興道路会議を設置し,官・民が連携して整備促進を図った。
     

    〔復興道路着工式〕

    復興道路等が,被災地の1日も早い復興と,復興の槌音が途切れることなく被災された地域の方々に明日への前向きな力が戻ることを祈念し,平成23年11〜12月にかけて宮城,岩手,福島,青森の4県で「復興道路着工式」(写真−3)を開催した。
     

    〔民間技術の活用:事業促進PPPの導入〕

    事業促進PPP(PublicPrivatePartnership)を導入することで,これまで官が行ってきた施工前段階の調査・設計・用地取得等について,官と民間技術者チームがパートナーを組み,官民双方の技術力・経験を生かしながら,一体となって効率的なマネジメントを行うことにより,早期着工,円滑な事業の促進,早期完成を図った(図−3)。
     

  • 復興道路着工式(福島県相馬市)
    写真−3 復興道路着工式(福島県相馬市)】

  • 施工前段階の業務内容
    図−3 施工前段階の業務内容】

  • 6 かつてないスピードによる整備

    〔工事着工〕

    通常の道路事業においては,新規事業化から工事着工まで4年程度かかるが,事業促進PPPを導入した事業は,約1〜2年程度で着工が可能となった(図−4)。
     
     

    〔施工確保の取り組み〕

    復興道路等の整備がかつてないスピードで進められていることから,資機材等に係わる諸問題に対して適切に対応することが1日も早い復興につながることになる。
    そこで,国土交通大臣や知事等の出席の下,第1回復興加速化会議(平成25年3月3日)において,被災地においては今後生コンクリートの需要が逼迫(ひっぱく)するおそれが大きいことから,三陸沿岸道路専用の生コンプラントを宮古市と釜石市に設置するよう大臣指示があった。
    平成26年8月から宮古地区,9月からは釜石地区で安定供給に向け稼働を開始した(写真−4)。
     

  • 事業のプロセス
    図−4 事業のプロセス】

  • 公共生コンプラント(宮古市田老地区)
    写真−4 公共生コンプラント(宮古市田老地区)】

  • 7 復興道路等の開通

    かつてないスピードで進められてきた復興道路等のうち,平成29年11月,三陸沿岸道路の山田宮古道路(山田IC〜宮古南IC延長約14km)が開通した(写真−5)。
    震災後の平成23年11月に新規事業化となった区間では初めての開通である。
    事業促進PPPなどの導入により,約6年という異例のスピードで開通することができた。
     
    令和2年度は,7月に三陸沿岸道路の宮古中央JCT〜田老真崎海岸IC間および宮古盛岡横断道路の宮古港IC〜宮古中央IC間の開通を皮切りに,8月には相馬福島道路の伊達桑折IC〜桑折JCT間が開通(写真−6),さらに11月下旬から12月にかけて,次の4区間で開通となった。
     
     
    〇三陸沿岸道路
    ●11月21日:小泉海岸IC〜本吉津谷IC間
    ●12月12日:洋野種市IC〜階上IC間
    ●12月19日:田野畑北IC〜普代IC間
     
    〇宮古盛岡横断道路
    ●12月5日:区界〜簗川間
     
     
    また,令和3年の春には三陸沿岸道路(岩手県内の一部区間除く)や宮古盛岡横断道路,相馬福島道路で開通を予定している。
     
    工事従事者をはじめ,関係者一同が令和3年内の1日も早い全線開通を目指し,事業を進めている。
     

  • 三陸沿岸道路「山田宮古道路」開通式典
    写真−5 三陸沿岸道路「山田宮古道路」開通式典】
  • 相馬福島道路「伊達桑折IC〜桑折JCT間」開通式典
    写真−6 相馬福島道路「伊達桑折IC〜桑折JCT間」開通式典】
  • 令和2年度末開通に向け工事が進む気仙沼湾横断橋
    写真−7 令和2年度末開通に向け工事が進む気仙沼湾横断橋】

  • 8 整備効果の発現

    全線開通の見通しが立つ中,これまでの開通を含めた効果の発現が見えてきている。
     
    例えば,三陸沿岸道路と東北横断自動車道釜石秋田線の結節点に位置する釜石港では,内陸部の工業集積地と釜石港を連絡する東北横断自動車道釜石秋田線の整備に伴い,コンテナ取扱量および釜石港を利用する企業数が年々増加し,令和元年も過去最高を記録するなど,着実な効果が表れている(図−5)。
     
    また,三陸沿岸道路全線開通時の都市間連絡時間をみると,仙台市と八戸市間の連絡時間は平成22年当時と比べ,約3時間短縮される。
    これにより,社会経済活動をはじめ,地域間交流などの促進に大きな効果をもたらすものと期待される(図−6)。
     

  • 釜石港利用企業数・コンテナ取扱量の推移
    図−5 釜石港利用企業数・コンテナ取扱量の推移】
  • 都市間連絡時間の変化
    図−6 都市間連絡時間の変化】

  • 9 おわりに

    この10年,東北地方整備局道路部は,くしの歯作戦による初動対応からスタートし,リーディングプロジェクトである復興道路等の整備,国道45号の本復旧などの復興だけでなく,被災地が未来に向けて進むための社会資本整備を一丸となって取り組んできた。
     
    我々がかつてないスピードで事業を進めて来られたのは,地元の皆さまをはじめ,被災した県・自治体の皆さまや関係機関の皆さま,そして工事関係者の皆さまのご協力なくしては成し得なかったであろう。
     
    また,これだけの未曾有の大災害は多くの教訓をもたらしたことも事実である。
    頻発化・激甚化する自然災害から命を守るための教訓を生かし,防災意識社会の実現に向けて,我々の取り組みが何かのお役に立てれば幸甚である。
     
    復興への取り組みが進む中,整備された道路を活用して多くの人々が足を運び,かつてのにぎわいを取り戻しつつある。
    被災地の方々をはじめ,地域全体が元気になり,輝く未来へ向かって力強く進むことを期待してやまない。
     
     

    「震災・復興10年 進もう!次の東北へ」

     

  • 多くの人々でにぎわう南三陸さんさん商店街(写真:南三陸町観光協会)
    写真−8 多くの人々でにぎわう南三陸さんさん商店街(写真:南三陸町観光協会)】


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    国土交通省 東北地方整備局 道路部

     
     
     
    【出典】


    土木施工単価2021春号



     

     

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