建設資材データベーストップ > 特集記事資料館 > 積算資料公表価格版 > ICT建機と高強度鋼繊維補強モルタルを使った省力化施工

 

はじめに

建設業界においては,熟練作業者の高齢化や若者の建設業離れによる人材不足もあり,生産性向上技術,省力化技術の開発が求められている。
3次元データを活用できるICT建機による土工事が盛んに行われているなか,のり面工の分野にまでICT化は及んでいない。
のり面工において施工実績が最も多いのが,吹付枠工である。平成28年度からICT施工による吹付枠工の省力化技術「ラクデショット」の開発に着手した。
 
また,国土交通省は,令和元年度以降,さらなるICT活用による生産性向上を図るための要領,基準類を改定・発表している。
その中で,ICT施工の工種が拡大され,令和元年度にはICTのり面工(吹付工),令和2年度にはICTのり面工(吹付法枠工)が加えられた。
 
 

1. 従来工法の概要

従来の吹付枠工は鉄筋モルタル造の格子状の枠をのり面上に構築し,安定を図る工法である。
施工は,のり面上に鉄筋と型枠を組み立て,型枠内にモルタルを吹付ける一連の作業をすべて人力で行っている(写真−1)。
そのため,のり面上で作業できる熟練技能者の不足や,のり面上での移動や材料運搬に労力を要すること,のり面を昇降する際に転落・墜落リスクがあることが課題であった。
 

  • ICT施工のイメージ
    〈鉄筋・型枠組立状況〉
    写真−1 従来の吹付枠工の施工
  • ICT施工のイメージ
    〈モルタル吹付状況〉

  • 2. 新工法の概要

    開発した新工法「ラクデショット」は,高強度鋼繊維補強モルタルを専用の自動吹付装置を取り付けたICT建機で吹付けることで吹付枠工を構築する技術である(図−1)。
    ICT建機に取り付けた自動吹付装置から高強度鋼繊維補強モルタルを硬化促進させながら,のり面に吹付けることで,鉄筋レス・型枠レスで吹付枠を構築できる。
    ICT建機は,掘り過ぎを防止するため施工目標面より深くバケットが入らないようアームを自動制御し,かつ施工目標面に沿ってバケット角度を保持したまま掘削する機能(マシンコントロール機能)を備えている(図−2)。
    本技術では,ICT建機に入力するバケットの形状寸法を自動吹付装置に置換え,空中に施工目標面を設定する。
    自動吹付装置を施工開始位置にセットすれば,ICT建機の走行による移動とマシンコントロール機能に委ねたアーム操作による移動だけで連続した枠を構築できる(図−3)。
     

  • 新工法「ラクデショット」
    図−1 新工法「ラクデショット」

  • ICT建機のマシンコントロール機能〈掘り過ぎ防止機能〉
    〈掘り過ぎ防止機能〉
    図−2 ICT建機のマシンコントロール機能
  • ICT建機のマシンコントロール機能〈バケット角度保持機能〉
    〈バケット角度保持機能〉

  • ICT建機を応用した施工
    図−3 ICT建機を応用した施工

  • 3. 各要素技術

    (1)吹付材料

    鉄筋組立作業を省略するために鉄筋モルタル造を鉄筋レスの鋼繊維補強モルタル造に変更した。吹付材料に高強度鋼繊維補強モルタルを用いることとした。
    のり面上においてモルタルのダレ落ちを防止する目的で設置される型枠は,モルタルの硬化を促進させる急硬剤を添加し,自立性の高いモルタルに改質させながら吹付けることで省略した。
    高強度鋼繊維補強モルタルを用いて作製した実物大吹付枠の載荷試験(図−4)を実施した結果,従来の断面200mm×200mmの吹付枠と同等以上の耐荷力を発揮することを確認した。
     

  • 実物大枠の載荷試験
    図−4 実物大枠の載荷試験

  • (2)自動吹付装置

    自動吹付装置は,吹付ノズルの往復スライド機能,揺動回転機能,旋回機能を備えている(図−5)。
    所定の吹付幅と平滑度の高い吹付け面を確保するための往復スライド速度と揺動回転速度の関係を確認した。
    旋回機能は,のり面傾斜方向だけでなく水平方向にも吹付けができるよう設けた。
    ICT建機を用いて自動吹付装置を制御することで,熟練工でなくとも施工目標位置に所定の出来形の吹付枠が構築でき,施工効率が向上し,工程を短縮できる。
     

  • 自動吹付装置
    図−5 自動吹付装置

  • 4. 施工方法

    (1)起工測量および3Dデータ作成

    本工法では,ベースマシンとして3Dマシンコントロールバックホウ(以下,MCBH)を用いる。
    まず,ドローン空撮により施工対象のり面の点群データを取得し,点群データからMCBH入力用3Dデータを作成する。
    3Dデータは,のり面から1.0mオフセットした位置に吹付枠工の格子中心線(グリッド)を記した面データ(図−6)を作成し,MCBHにインプットする。
     

  • MCBH入力用3Dデータ
    図−6 MCBH入力用3Dデータ

  • (1)起工測量および3Dデータ作成

    (2)MCBHの設定と活用方法
    MCBHでは,使用するバケットによって個別に寸法を設定できる。
    本工法では,自動吹付装置をバケット形状に見立て,MCBHに寸法を設定する。
    設定する寸法を(図−7)に示す。
    通常のバケットと同様にA〜Eの寸法を設定するだけでよい。
    横枠吹付け時と縦枠吹付け時は,自動吹付装置を90°回転させるが,簡単のためにバケット形状は,同一としている。
     
    MCBH運転席のモニターには,枠の中心線であるグリッドとバケット形状に変換された自動吹付装置が表示される(図−8)。
    これを利用し,モニター上に表示されるバケットの隅角をグリッドの交点に合わせることで,自動吹付装置の吹付ノズル先端を所定の位置にセットすることができる。
     

  • バケット寸法の設定
    図−7 バケット寸法の設定
  • ノズル先端のセット
    図−8 ノズル先端のセット

  • (3)横枠の吹付手順

    横枠の吹付手順は,同じ段に位置する横枠を吹付け,その後,段を変えて吹付けを行う。
    吹付方法は,自動吹付装置を水平にセットし,吹付けを行う。
    1枠分の横枠の吹付けを終えたら,吹付けを中断することなくバックホウを隣の枠へ走行移動させ連続して吹付けを行う(写真−2)。
     

  • ノズル先端のセット
    写真−2 横枠吹付け状況

  • (4)縦枠の吹付手順

    縦枠の吹付けは,のり肩からのり尻に向かって行う(写真−3)。
    吹付方法は,自動吹付装置が縦枠と平行となるようにセットし,吹付けを開始する。
    厚さが概ね10cm程度になれば,装置をのり尻方向へ平行移動させる。
    MCBHのバケット角度保持機能により,ノズルがのり面と直交した状態かつ一定の離隔(1.0m)を保持された状態で吹付ける。
    のり長が長い場合は,バックホウを一旦後退させ,同様の手順でのり尻まで吹付ける。
    厚さ10cm程度の縦枠をのり尻まで構築した後,のり尻からのり肩に向かって10cm程度の仕上げ吹きを行い,厚さ20cmの縦枠を構築する。
    こうして格子状の枠を構築する(写真−4)。
     

  • 縦枠吹付け状況
    写真−3 縦枠吹付け状況
  • 格子枠吹付け完了
    写真−4 格子枠吹付け完了

  • 5. 出来形管理

    図−9)に吹付厚の管理の概要を示す。
    自動吹付装置に傾斜計とレーザー変位計を設置した。
    計測値をバックホウキャビン内に設置したタブレット端末に表示し,運転手にリアルタイムで伝える。
    傾斜計の計測値からのり面と自動吹付装置が平行(ノズルと吹付面が直交)した理想的な状態であることを確認できる。
    また,レーザー変位計を用いて吹付面との離隔を計測することにより吹付厚を確認できる。
    この管理手法を用いて実際にのり面上へ枠を構築した。その出来形を(図−10)に示す。
    国土交通省の出来形管理基準の規格値を満たした。

  • 格子枠吹付け完了
    図−9 吹付厚管理の概要
  • 枠の出来形
    図−10 枠の出来形

  • おわりに

    従来の吹付枠工は,鉄筋・型枠組立が,全作業量の50%を占めている。
    「ラクデショット」は,鉄筋・型枠組立作業が皆無であるため,作業量の低減による省力化が可能である。
    また,作業量の低減によって従来技術に対し25%の工程短縮が可能である。
    さらに,鉄筋・型枠組立作業の省略および吹付作業の機械化によって,のり面上で親綱にぶら下がりながらの苦渋作業を無くし,のり面からの転落・墜落災害リスクを低減することができる。
    今後は,数多くの現場へ展開を図っていきたい。
     
     

     



     
     
     

    株式会社 大林組 土木本部 生産技術本部 技術第二部
    川本 卓人

     
     
    【出典】


    積算資料公表価格版2021年6月号


     
     

     

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