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ホーム > 建設情報クリップ > 建築施工単価 > 青森アートミュージアム5館連携プロジェクト 〜青森県を「アート県」に〜

 

1. はじめに

青森県は,複数の現代美術館を有する地域として知られている。
2020年7月に「弘前れんが倉庫美術館」が開館したほか,2021年11月には「八戸市美術館」が全面建て替えを経て開館を予定している。
また,2020年に「十和田市現代美術館」がアーツトワダグランドオープン10周年,2021年に「青森県立美術館」が開館15周年,「青森公立大学国際芸術センター青森」が開館20周年の節目を迎える。
 
これを契機とし,2020年7月,青森県立美術館,青森公立大学国際芸術センター青森,弘前れんが倉庫美術館,八戸市美術館,十和田市現代美術館の5つの美術施設が連携する基盤となる「青森アートミュージアム5館連携協議会」(以下,協議会)が設立された(写真-1)。

  • 青森アートミュージアム5館連携協議会設立総会(2020年7月)の写真
    写真-1 青森アートミュージアム5館連携協議会設立総会(2020年7月)の写真】

  • 2. 5館連携プロジェクトの概要

    協議会の設立により始動した5館連携プロジェクト「5館が五感を刺激する―AOMORIGOKAN」では,5館が連携することで,各施設が持つ特徴と県内のアートや文化をつないで,県内のアート周遊を促すことを目的としている。
     
    プロジェクトのロゴはアートディレクターの野間真吾が手掛けたもので,数字の“5”とSence(感覚)の“S”の両方をかたどるシルエットとなっている。
    縦になっても横になっても変わることなく“5Sences(=GOKAN)”を表し,5館が五感を刺激し続けることを示唆している(図-1)。
     
    連携した情報発信を行うため,2020年11月に開設された公式ホームページ(注)では,5館の概要やアクセス情報などのほか,各館の展覧会・イベント情報を一堂に見ることができる(図-2)。
     
    2021年2月には,青森アートミュージアム5館連携トークイベント「アート県/圏『青森』の挑戦!!」を開催し,2021年度から新たに,共通テーマを「建築」とする取り組みを始動させることを発表した。
    5館の建築に関わる解説や写真など,アーカイブとしての役割を果たすようなWebコンテンツの構築などを5館共同で目指す。
    また,各館独自の取り組みとして,それぞれ建築ツアーなどを行うこととしている。

  • 青森アートミュージアム5館連携ロゴ
    図-1 5館連携ロゴ】

  • 青森アートミュージアム5館連携協議会ホームページの写真
    図-2 協議会ホームページ(注)

  • 3. 5館の概要

    協議会を構成する5館は,いずれも現代アートを扱う美術施設であり,各々特徴的な取り組みを行っている。
    また,各館の建物も有名建築家による設計で個性的なものとなっている。
     

    (1)青森県立美術館

    青森県立美術館は,建築家・青木淳の設計によるもので,隣接する三内丸山縄文遺跡の発掘現場から着想を得て,地面が切り込まれたトレンチ(壕)に白い箱が覆い被さる構成で独創的な空間を生み出している。
    建物の中心には,縦・横21m,高さ19m,4層吹き抜けの大空間「アレコホール」が設けられており,マルク・シャガールのバレエ「アレコ」の舞台背景画が常設展示されている。
    このほか,美術家の奈良美智,板画家の棟方志功,「ウルトラマン」のデザインなどを手掛けた彫刻家の成田亨など,個性豊かな郷土作家の作品や,日本画や洋画,現代アートまで幅広い収蔵品を有しているほか,演劇・音楽など舞台芸術活動への取り組みを行い,豊かな芸術の魅力を発信している。

  • 【青森県立美術館】(2006年開館 設計:青木淳)

  • 【青森県立美術館】(2006年開館 設計:青木淳)
    【青森県立美術館】(2006年開館 設計:青木淳)

  • (2)青森公立大学 国際芸術センター青森

    青森公立大学国際芸術センター青森は,「アーティスト・イン・レジデンス」「展覧会」「教育普及」を3つの柱として,現代芸術の多様なプログラムを発信するアートセンターである。
    設計は安藤忠雄によるもので,周囲の自然環境を生かし起伏に富んだ地形を壊さないように配慮し,建物を森に埋没させる「見えない建築」をテーマとし,創作棟と宿泊棟,さらにギャラリーや円形の屋外ステージを備えた展示棟の3棟から構成されている。
     
    表現者の創造的活動の支援,優れた芸術の発信,活動が生み出すつながりによる国際的ネットワークの構築,アーティストとの出会いや表現・学びの機会の提供などを通じて,地域内外へと波及する文化芸術の創造・発信の中心(センター)であることを目指している。

  • 【青森県立美術館】(2006年開館 設計:青木淳)
    【青森公立大学 国際芸術センター青森】(2001年開館 設計:安藤忠雄)

  • (3)弘前れんが倉庫美術館

    弘前れんが倉庫美術館は,明治・大正期に建設され,近代産業遺産として弘前の風景を形づくってきた「吉野町煉瓦倉庫」を改修して開館した。
    約100年前に酒造工場として建てられ,戦後はシードル工場として使われたれんが造りの建物を可能な限り残し,「記憶の継承」をコンセプトに建築家・田根剛が改修の建築設計を担当した。
    光の角度によって刻々と移り変わる「シードル・ゴールド」の屋根は,美術館のシンボルである。
    空間の魅力を最大限に生かした国内外の先進的なアートを紹介することで,現代アートを通じて,地域と世界を結び,多様なビジョンと豊かな個性に触れ,過去から現在,そして未来へと繋がる新たな創造性を喚起する「クリエイティブ・ハブ」(文化創造の拠点)を目指している。

  • 【青森県立美術館】(2006年開館 設計:青木淳)
    【弘前れんが倉庫美術館】(2020年開館 改修設計:田根剛)

  • (4)八戸市美術館

    旧八戸市美術館は,施設の老朽化などにより2017年に閉館されたが,建築家の西澤徹夫・浅子佳英・森純平の設計により新しい美術館として2021年11月に開館を予定している。
     
    「種を蒔き,人を育み,100年後の八戸を創造する美術館」をビジョンに掲げ,アートを通した学びを誘発し,人を育み,まちを創る取り組みを戦略的に展開する,「出会いと学びのアートファーム」としての新しい美術館として整備している。
    建物は「学びの拠点」(ラーニングセンター)という概念により,エントランスとしての役割だけでなく,教える人と学ぶ人が同じ場を共有でき,同時に展開されるさまざまな活動を飲み込める巨大な空間「ジャイアントルーム」と,これを取り囲むようにそれぞれ個性のある部屋が配置されているのが特徴で,複数の部屋を連携して使うことで美術館における学びの循環を実現する。

  • 【青森県立美術館】(2006年開館 設計:青木淳)
    【八戸市美術館】(2021年11月開館予定 設計:西澤徹夫・浅子佳英・森純平)

  • (5)十和田市現代美術館

    十和田市現代美術館は,官庁街通りに面し,「アートを通した新しい体験を提供する美術館」として開館した。
     
    設計は,建築家・西沢立衛によるもので,個々の展示室を「アートのための家」として独立させ,敷地内に建物を分散して配置し,それらをガラスの廊下でつなげているところに特徴がある。
    各展示室を独立配置させることで,作品に合わせて建築空間をつくることができ,両者がより密接な関係を結ぶことができる。
    この分散型の構成は,広場と建物が交互に並ぶ官庁街通りの特徴から着想を得ている。
     
    本美術館でしか見ることができない恒久設置作品が展示されている常設展は,草間彌生,奈良美智など世界の第一線で活躍するアーティストたちによるコミッションワークにより構成されている。

  • 【青森県立美術館】(2006年開館 設計:青木淳)
    【十和田市現代美術館】(2008年開館 設計:西沢立衛)

  •  



     
     
     

    青森アートミュージアム5館連携協議会

     
     
    【出典】


    建築施工単価2021夏号



     
     
     

    最終更新日:2021-11-15

     

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