- 2014-10-06
- 土木施工単価
1.はじめに
国土交通省では、公共工事において品質・安全の確保、環境の保全、コスト縮減などを図り、良質な社会資本整備を着実に進めるため、
優れた技術を持続的に創出、活用することを目的に、「公共工事等における新技術活用システム」を運用しており
「新技術情報提供システム(NETIS)」によるNETIS登録技術を一般に公表しています。
NETIS(新技術情報提供システム)HP
http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/newindex.asp
また、工事の設計業務や実際に施工する技術者が、NETIS登録技術の中でも活用され、
有用な技術として指定された有用な新技術を活用しやすくなることを期待して一覧にまとめて公表しています。
NETIS(新技術情報提供システム)HP内「有用な新技術一覧」
http://www.netis.mlit.go.jp/NetisRev/DownLoad/yuuyo.pdf
本稿では、平成26年3月末時点の有用な新技術一覧の中から、新たに指定された技術について紹介します。
2.新技術の紹介
新技術の紹介にあたっては、「平成26年3月末時点の有用な新技術一覧」のうち、
新たに有用な新技術に選定された技術から、「湿気硬化型プレグラウトPC鋼材(QS-110026-V)」を紹介させていただきます。
Ⅰ.技術名称(NETIS登録番号)
湿気硬化型プレグラウトPC鋼材(QS-110026-V)
Ⅱ.技術の概要(NETIS(申請情報)より転写)
(概要)
①何について何をする技術なのか?
●製造時にあらかじめ鋼材(鋼棒、鋼より線)表面に遅延硬化型の樹脂系グラウト材(プレグラウト樹脂)を塗布し、
その外側をPEシースで被覆し、鋼材とグラウト、シースを一体化させた緊張材であり、
プレグラウト樹脂はコンクリート打設による温度と湿気により硬化する
●プレストレストコンクリート(PC)構造物のポストテンション方式内ケーブル工法について、
施工現場でのグラウト作業を省略し、工期短縮を図ることが可能
●マスコンクリートのようにコンクリート硬化時に高温になる条件(コンクリート打設後最高温度95℃)
でも2週間は緊張可能であるため、橋梁の床版横締めのみならず橋軸方向縦締め、柱頭部横締めなど種々の部位に適用が可能
②従来はどのような技術で対応していたのか?
従来工法は、PCグラウト工法(シース+PC鋼材+グラウト)で、本工法については、以下の問題点があった。
●シース配置、コンクリート打設、鋼材挿入、緊張、グラウト注入という5段階の作業が必要であり、工期短縮、省力化が困難
●グラウト注入には作業員の習熟度によるバラツキがあり、
PC鋼材の耐久性およびプレストレストコンクリート部材の品質確保が困難
●金属製シースを使用した場合、不適切なグラウトによるシース腐食の可能性
同種の技術として、熱硬化型のプレグラウト樹脂を用いたものもあるが、
コンクリート打設後緊張が可能な期間(緊張可能期間)が温度の影響を受けやすいため、
複数種類の樹脂を季節、部位ごとに使い分ける必要があり、配置間違いや発注・搬入から緊張までの工程管理に懸念がある。
③公共工事のどこに適用できるのか?
●PC構造物のポストテンション用緊張材
●具体的には、
●PC橋の床版や鋼橋のコンクリート床版の横方向緊張材
●PC橋の主方向緊張材
●PCタンク、卵形消化槽の円周方向緊張材 など
(新規性及び期待される効果)
①どこに新規性があるのか?(従来技術と比較して何を改善したのか?)
●予めPEシース内にプレグラウト樹脂が充填されているため、現場でのグラウト作業が不要
●工場内で連続的に一定量のプレグラウト樹脂を塗布した後、外側をPEシースで被覆するという順で製造するため、
グラウト量を鋼材製造時に管理することができ、不適切なグラウト充填の発生を避けることが可能
●PC鋼材は工場出荷時に被覆されているため、現場保管時や配置後グラウトまでの期間に錆を生じる懸念はない。
また、エポキシ樹脂硬化後は重防食鋼材として高い耐久性が確保される
●温度に対して影響を受けにくい湿気硬化型プレグラウト樹脂を使用しており、寒中・暑中グラウトの対策が不要。
また、使用部位、季節などによる緊張可能期間が大きく変化しない
②期待される効果は?(新技術活用のメリットは?)
工場内の管理された環境で安定した品質の樹脂性グラウトによって被覆されたPC鋼材であり、
●省力化可能: 現場でのグラウト注入工程が不要
●品質向上: 不適切なグラウトによる耐久性低下の懸念が少ない。製造後、運搬・施工中、供用期間を通じて高い防食性が確保される
●耐久性向上: 物質透過性の低いPEシースとエポキシ樹脂を組み合わせる事で、長期に亘る耐久性が確保される
●使用部位や季節などにあわせて、樹脂の使い分けや複雑な工程管理が不要で、実用上十分な長さの緊張可能期間が得られる。
マスコンクリートのように、コンクリート打設後の温度が高温の状況でも実用上十分な緊張可能期間が得られる
(適用条件)
①自然条件
●外気温が0℃を下回っている場合、緊張作業は避ける(樹脂の増粘・凝固による摩擦増加防止のため)
②現場条件
●特に制限なし
③技術提供可能地域
●全国
④関係法令等
MSDS記載の内容を十分に理解して、適切な保護具を着用して使用する必要あり。主な関係法令等は下記に示す。
●労働安全衛生法 第57条の5
●労働安全衛生規則 第594条
●労働基準法 第75条第2項
●消防法 第9条の3
(適用範囲)
①適用可能な範囲
●ポストテンション方式のPC構造物で、
コンクリート打設後のコンクリート温度が最高95℃以下で打設1ヶ月後に45℃以下に低下する場合
(「湿気硬化型プレグラウト鋼材が適用可能な温度の範囲」のグラフ参照)
②特に効果の高い適用範囲
●従来技術と比較して、工期短縮を要する工事
●なお類似技術(熱硬化型プレグラウトPC鋼材)と比較して、下記のような効果が得られる
●プレグラウトPC鋼材を使用する期間に複数の季節が含まれる場合(冬、春、夏(例えば1月~8月)など)に樹脂変更の必要がない
●マスコンへの適用が可能(柱頭部近傍の床版の横方向配置や、横桁を含む部材など)
●一つのケーブルの中で受ける温度が大きく変わる配置。
例えば、PC橋梁の橋軸方向配置、横桁を含む配置、PC容器構造物の縦方向配置など
③適用できない範囲
●保管時の気温が常時40℃を上回る場合
●プレテンション方式でプレストレスを導入する用途
④適用にあたり、関係する基準およびその引用元
●道路橋示方書(平成14年3月)
●コンクリート標準示方書(2007年)
●土木学会規準JSCE-E 145「プレグラウトPC鋼材の品質規格(案)」
Ⅲ.事後評価結果(NETIS(評価情報)より)
●評価基準に基づき「設計比較対象技術」と評価される。
●グラウト注入作業が不要となるため、工期は短縮した。
●グラウトの注入不良が無くなり、品質管項目、管理頻度が減少できた。
●従来工法のグラウト作業を省けるため、グラウト工における熟練工が不要であった。
Ⅳ.留意事項(NETIS(評価情報)より)
●保管時の気温が常時40℃を上回る場合は適用できない。
●外気温が0℃を下回っている場合、緊張作業は避けること。
●温度変化によって緊張可能期間が変化する場合があるので、
設計時に行った温度や工程計画が、実際の施工条件と合致しているか確認する必要がある。
なお、NETIS(申請情報)にも当該技術の留意事項、適用条件、適用範囲が記載されています。
技術について不明な点等がありましたら、NETISに記載されています技術開発者等に問い合わせをお願いします。
【出典】
季刊土木施工単価2014年夏号
最終更新日:2015-01-06
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