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ホーム > 建設情報クリップ > 積算資料 > 中央環状線山手トンネル(高速湾岸線~3号渋谷線)-中央環状品川線-の開通《後編》

 

首都高速道路株式会社 東京建設局

 

5.工事工程

平成18年11月1日、長距離掘進するシールドの発進立坑となる大井北立坑予定地において、品川線の起工式が行われた。
大井北立坑は、47mの掘削深さに対して無人化ニューマチックケーソン工法で施工され、平成20年6月に完成した。
シールドマシンの組立が平成20年12月に完了したのち、立坑から外回りのシールドマシンが先行して発進し、
平成24年3月に終点である目黒区青葉台に到達した。
 
工程のクリティカルパスである五反田出入口工事は、
シールドマシンが現地を通過する平成20年10月の前に土留めを完成させるべく工事着手した。
しかし、地下埋設物の移設や防護などの前処理に時間を要したために、土留めの一部がシールド通過後の施工となり、
また河川近傍の複雑な地層から形成される水みちを把握しきれず、
平成24年9月、土留め内の掘削時にシールドと土留めとの境界面において出水を発生させる結果となった。
工事は一時的に中断したが、出水箇所および類似の区間に対して地盤改良と凍土による止水を行い、
平成26年夏までに掘削と分合流部の躯体構築を終え、同年9月には地上の出入口躯体を完成させた。
 
大橋地下JCT工事の南側分合流部(大橋地下JCT南側) は、上下層4本のシールドが完成した後に、補強工などの前処理を終え、
平成24年5月にシールド間の掘削に着手し、約1年7カ月後に断面を併合した(写真-3。図-10 TYPE-Cに該当)
 

写真-3 工事中の品川線本線トンネルと大橋連結路トンネル(図-7 ①の箇所)

写真-3 工事中の品川線本線トンネルと大橋連結路トンネル
(図-7 ①の箇所)


 
大橋地下JCT北側の営業中シールドの切開き工事は、シールドと平行して構築した細長い立坑を作業坑として、
平成24年1月に上層の頂版に着手し、その後は逆巻き工法で底版までの構築を進め、
断面を併合した後の平成25年2月にシールドセグメントの撤去を終えた。
 
大井JCTの橋梁工事および換気所の工事などは、いずれも上記の工事期間内に施工した。
供用前の約1年間は、建築・機械・電気設備などのトンネル付属施設や舗装・路面工事を行い、
工事完了後は諸設備を稼働させて総合調整を実施した。
 
 

6.主な技術提案

外径12mクラスのシールドにおいて8km以上を1基のマシンで掘進した実績はこれまでになく、
カッタービットなどの消耗部材および各種機器の耐久性を確保する技術提案を求めた。
これに対して、ビットを交換することが可能なリレービット方式や損傷や損耗が生じると替刃が現れる二重ビット、
可動式レスキュービットならびに3段以上のテールシールなどが、内外回り双方のマシンに装備された。
また、トラブルなど不測の事態による工程遅延に備えて、セグメントの組立と掘進を同時にできる高速施工システムが取り入れられた。
そのシステムに必要な機器として、ロングシールドジャッキおよびバキューム方式のセグメント組立エレクター、
倣ならい制御機構付き半自動エレクターが装備された。
さらに、セグメント幅2mの耐火一体型RCセグメント、合成床版および掘進・床版の同時施工などの提案がなされ、
道路トンネルとして必要な基本構造の早期完成が実現可能な施工計画を受け入れた。
 
五反田出入口のシールド切開き工法は、重交通の交差点や大型の地下埋設物が輻輳(ふくそう)している現場条件に対して、
地上の交通や地下埋設物への影響を抑える技術提案を求めた。
これに対して、従来の直線的なパイプルーフによる非開削工法と比較して、
作業空間に支保工・支持杭を要しないパイプルーフアーチ工法が提案された。
さらに、過密な配筋を避けるために高強度鉄筋や高流動高強度コンクリートなども採用され、
大きな作業空間の確保と躯体施工の合理化により、施工性と品質の両面が改善された(写真-4)
 

写真-4 大橋連結路トンネルにおける鉄筋組込作業

写真-4 大橋連結路トンネルにおける鉄筋組込作業


 
大橋地下JCT南側は、約0.5mの離隔で併設される本線シールドと連結路シールド(外径9.5m)を上層210m、下層180mにわたり、
それぞれ接続して上下2層の分合流部を形成する技術提案を求めた。
これに対して、シールド間をNATMで施工して、
その空間にアーチ状の鋼製拡幅セグメントを用いてシールド同士を接合する世界初の工法が提案された。
完成断面は、鋼製セグメントで覆われた扁平大断面であり、プレキャスト化により施工性と耐久性の向上が期待できる。
また、この連結路シールドのマシンは外胴と内胴の二重構造となっており、
先行したシールドを掘進した後にマシンの駆動部である内胴を引き抜き、後行のマシンへ内胴を再利用して掘進する工法を採用している。
 
 

7.おわりに

中央環状品川線は、東京都との合併施行方式という新しい事業の取り組みや、長距離大断面シールドの高速掘進、
地下ジャンクションの非開削建設技術の活用などにより、工事着手した平成18年から約8年という、
これまでにない事業の進展スピードで開通を迎えることができた。
共同事業者である東京都や各関係機関をはじめ、
技術開発の動向などで技術的ご意見・ご助言を賜った中央環状線トンネル設計施工検討委員会の各委員、
都市内長大トンネルの防災安全に関する検討委員会の各委員の皆様に誌面を借りてお礼申し上げたい。
 
そして、何よりも昭和62年に葛飾江戸川線、葛飾川口線の先行開通以降、中央環状線の全線開通、
山手トンネル全線18.2kmの開通を迎えるに当たり、これまでの先輩方のご努力、
関係機関・関係者の方々のご指導・ご鞭撻、周辺地域の方々のご理解・ご協力、工事関係者の方々のご努力、
こういったことを振り返ると感無量であり、感謝の念に堪えない。
関係者の方々にあらためて感謝を申し上げたい。
 

写真-5 開通式典テープカットの様子

写真-5 開通式典テープカットの様子


 
開通後も都市内長大トンネルの防災安全や交通安全に関する確認、構造物の点検などを着実に実施し、安全・円滑な道路ネットワークを提供していく所存である。
 
 
 
中央環状線山手トンネル(高速湾岸線~3号渋谷線)-中央環状品川線-の開通《前編》
中央環状線山手トンネル(高速湾岸線~3号渋谷線)-中央環状品川線-の開通《後編》
 
 
 
【出典】


月刊積算資料2015年4月号
月刊積算資料2015年4月号
 
 

最終更新日:2015-07-06

 

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